ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2015年5月20日

2件の記事があります。

2015年05月20日あれから2週間

小笠原国立公園 高橋 成明

突然ですが、

どうでしょう??

実はこれ、父島で全戸配布されたチラシです。
世界自然遺産、小笠原。しかし、遺産に登録される際に大きなポイントになった固有種には、外来種の侵入による影響で絶滅の危機に瀕しているものが少なくありません。小笠原で独自の進化を遂げた約100種もの「マイマイ」達もそんな生物のひとつ。有人島である父島では、すでにある地域を除いて絶滅したと考えられています。そして「ある地域」は許可無く立入ることが出来ません。父島での普段の生活の中で固有種のマイマイを見る機会は実はほぼ100%無いのです。
そんなマイマイに興味を持ってもらうにはどうしたらいいだろう・・・

実際に見てもらえばいい!

というわけで関係行政機関・地元NPOの方々の協力の下、今月6日に兄島視察会に行ってきました。

(兄島は父島の北にある無人島。たくさんの外来種問題を抱えてはいますが、過去に人の手がほとんど入っていないため現在でも貴重な動植物が残されており、生態系保全上重要な地域です。)

当日は宮之浜に集合して、まずは外来種対策。
父島のマイマイに壊滅的なダメージを与えている外来種ニューギニアヤリガタリクウズムシを兄島に持ち込むことは許されません。靴の裏に付いた土や泥はすべて取り除き、お酢をかけることで確実に退治します。

実際にニューギニアヤリガタリクウズムシにお酢をかけてもらい、効果をみていただきました。

宮之浜から船に乗ること約10分。
兄島ではマイマイ以外にも父島ではなかなか見ることが出来ない生物を観察することが出来ます。

左)沢で水生生物を観察中
右)固有トンボの産卵用に設置したバケツの中を観察中

ほとんど未整備の急峻な道を登っていくと乾性低木林が広がっています。ここで、もう一度外来種対策。
滝之浦海岸にはニューギニアヤリガタリクウズムシとは別種の貝食性プラナリア(外来種)が生息しており
それらを兄島の台地上に持ち込まないためです。

左)良好な乾性低木林の残る兄島
右)台地を移動する前に二度目の外来種対策

道中、グリーンアノール対策で設置している柵や捕獲用トラップ、ノヤギの駆除で個体数が回復傾向にある希少植物などを見ていただき、いよいよマイマイ探し。
同行していただいた地元NPO職員の方からマイマイの生息地、探すに当たっての注意事項等を説明していただき、地面に落ちた葉の下、木の幹などいろいろな場所を探します。小さいものは数ミリ程度の大きさなので、探すのは一苦労ですが、一度見つけると目が慣れてくるのか時間が経つにつれ見つけることも容易になってきます。参加者の方は老若男女を問わず皆さん真剣で、マイマイの隠れ人気を肌で感じました。

左)マイマイについての説明中
右)こんなところにもマイマイが?

でも、「今回の視察会では生きたマイマイを見つけることも出来ました、よかったね~」
と素直には喜べません。実は兄島のマイマイもかなり厳しい状況にあるというのが現状です。兄島には外来種であるクマネズミが生息しており、ネズミによる食害で兄島のマイマイにも絶滅のおそれがあります。兄島で生息調査を行うとネズミ食害を受けたマイマイの死殻を見つけることは非常に簡単で、かつては兄島全島に生息していたマイマイも今では生息地・個体数ともに激減しています。

ネズミ食害を受けたマイマイの死殻

マイマイ探しの後には、クマネズミ捕獲用に設置しているカゴ罠も見ていただき、剣山山頂でお昼ごはん、最後に滝之浦海岸で意見交換を行いました。


兄島では様々な外来種対策が行われていますが、接する機会がない方々にとってその問題について考える事は難しいのではないでしょうか。ですが今回視察会に参加いただいた方々には実際に現場を見ていただくことでマイマイや世界遺産について、何故兄島での対策が必要なのかについて興味を持っていただけたのではないかと思います。また私自身も普段の業務では見ることがなかった兄島の一面を見たように感じます。

最後になりましたが、兄島視察会にご参加いただいた島民・小笠原諸島ネズミ対策検証委員の皆様、ご協力いただいた関係機関の皆様、本当にどうもありがとうございました。

*定員の都合で視察会にご参加いただけなかった方々へ
 この度は大変申し訳ありませんでした。
 今後、改めて視察会を行うことを考えておりますので、情報をお待ちください。

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2015年05月20日本州から戻ってきたNo.180の行方

佐渡 後藤 由香

佐渡自然保護官事務所の後藤です。

着々と田植えが進む佐渡では、トキのふ化がピークを迎えています。

野生下のトキの繁殖状況は放鳥トキ情報(http://blog.goo.ne.jp/tokimaster)などでも逐次お知らせしていますが、これまで1羽のトキにスポットを当ててお伝えする機会があまりなかったので、今回は佐渡のトキの中でも特に注目されている!?No.180というメスのトキの様子をお伝えしたいと思います。

2014年6月に放鳥されたNo.180のこれまでの動きを、分かりやすく時系列にまとめてみました。

2014年

6月6日    3ヶ月間の訓練を終え、佐渡市の野生復帰ステーションから放鳥(第10回放鳥)

7月1日     海を渡った新潟県村上市で確認。その後同県新発田市などでも目撃される。

2015年

3月26日    佐渡島内に戻って来ていることを確認

4月13日    モニタリングチームの市民ボランティアがNo.84(6歳オス)と行動を共にしている様子を確認。

4月18日以降  数日間No.180の確認がなくなる

4月26日    No.90(6歳オス)と2羽で探餌しているのを確認

5月4日    スギの樹上に造巣を開始している様子を確認

5月7日    抱卵を確認

5月8日    抱卵中止を確認

これまでの観察から、メスは繁殖期になると相手を探して広範囲を移動すると考えられており、一度島外へ出たNo.180も相手を探して佐渡に戻ってきたのかもしれません。

佐渡に戻って来た後も相手を探しているためか、島内の広い範囲で確認されていました。

そして、4月13日には1羽で巣材を運び巣作りしていたNo.84(6歳オス)と一緒に行動していることが確認されました。

〈巣をいじるNo.180(中央)と近くにとまるNo.84(左)と様子を見に来た?若鳥1羽(右))











しかし、4月18日以降1度No.180は観察されなくなります。

観察されなくなった理由は不明ですが、その間、No.84は足環なし(年齢、性別不明)と行動している様子が観察されています。

その後No.90(6歳オス)という別のオスとペアになり営巣し抱卵まで至りましたが、すぐ中止が確認されました。中止した理由は不明です。

実はNo.180は中国から供与された溢水(イーシュイ)の孫にあたり、これまで放鳥数が少ない系統であるため、繁殖成功が期待されていました。

今年は再営巣するには時期的にも少し遅いため、来年の繁殖期に期待したいところです。

今回はNo.180の動きについてご紹介しましたが、広い佐渡島において1羽のトキの行動を詳細に把握出来ているのも、ほぼ毎日モニタリングに出て下さっているボランティアの方々のおかげです。

感謝の気持ちを忘れず、今後とも協力して観察を行っていきたいです。

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