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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

夜叉神峠の楽しみ方

2018年04月04日
南アルプス国立公園

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

夜叉神峠は標高1,770m、夜叉神峠登山口から1時間ほどの尾根上にあります。南アルプス山域の中でもアクセスが良く、日本第2位の高峰、北岳をはじめとする白峰三山の展望や季節の花を楽しむことができるトレッキングコースとして多くの方に親しまれています。また、鳳凰三山縦走路の登山口としても利用されています。今回はこの夜叉神峠をより楽しめるポイントをお伝えしたいと思います。

◎木の名前が学べる

歩きやすいジグザグの登山道へ入ると落葉樹がお出迎え。近づいてみると、木板に種名が彫られています。ところどころ設置されているので、ぜひ探してみてください。木の名前を知りながら、楽しく歩くことができます。まだ展葉していない今の時期は樹皮や枝ぶり、初夏以降は葉や花の違いも見比べてみると面白いかもしれません。

木板に彫られた木の名前

(木板に彫られた木の名前)

◎芦安の歴史を辿る

ジグザグの登山道をさらに歩いて行くと、途中で幹が5本に分かれている大きなマツがあります。このマツはその見た目から「五本松」と名付けられています。

「五本松」を仰ぎ見る

(「五本松」を仰ぎ見る)

少し見づらいですが、幹が5本に分かれているのがお分かりでしょうか。

この「五本松」のすぐそばに、穴の開いた石組みがあります。

「五本松」のそばにある空洞

(「五本松」のそばにある空洞)

この正体は炭釜跡です。昔、夜叉神峠までの道は林業に使われており、芦安の村人が行き来する途中で炭を焼いていました。炭焼きをするための木は女性が担ぐものだったそうですが、その重さはなんと40キログラム!炭釜跡は「五本松」付近だけではなく、夜叉神峠登山口付近や芦安のさまざまなところに残っているので、探しながら歩いてみるのもいいですね。

◎夜叉神峠にある祠のワケを知る

夜叉神峠を鳳凰三山方面へ少し進むと祠があるのをご存じでしょうか。

夜叉神峠の石祠

(夜叉神峠の石祠)

この祠は古くから伝わる夜叉神を奉るために作られた祠です。昔、暴れ川として知られた御勅使(みだい)川の上流に、夜叉神という神様が住んでいました。大雨を降らせたり土砂を御勅使川に流し込んだりするかと思うと、日照りを続かせるなど大暴れし、村人たちを困らせていました。ある夏、夜叉神さまは荒れ狂ったように大雨を降らせて、御勅使川の大洪水を引き起こし、甲府盆地全体を湖のようにしてしまいました。これを恐れた村人たちが祠を建て、夜叉神を祀って鎮めたことが名前の由来だと言われています(諸説あり)。

参考:文化財Mなび  http://103.route11.jp/?ms=2&mc=53&mi=456

   南アルプスNET http://www.minamialps-net.jp/data/article/74.html

夜叉神峠で雄大な白峰三山を眺めるのもとても良いですが、ほんの少し足を伸ばして、山を守る神となった夜叉神に参ってみてはいかがでしょう。

残雪の白峰三山だけでなく、道々で木の名前や歴史の足跡に触れる静かな山歩きもおすすめです。