2018年6月
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2018年06月07日50周年
小笠原国立公園 田谷以生
みなさん、こんにちは。小笠原自然保護官事務所の田谷です。
本州は梅雨入りしたようですね。
小笠原では村の花、ムニンヒメツバキが咲き始め、ボニンブルーの海の透明度も増してとっても良い季節です。
上)ムニンヒメツバキ 下)父島境浦海岸
6月と言えば梅雨、ジューンブライド、祝日がない月、などなど。
皆さんにとって6月はどんな印象でしょうか?
小笠原では6月と言えば返還祭!
6月26日に小笠原諸島は返還50周年を迎えます。
太平洋戦争中は全島民が強制疎開させられ、激しい戦渦に巻き込まれました。
終戦後はアメリカの統治下におかれ、23年後の1968年6月26日に日本に復帰しました。
毎年6月26日は父島で返還祭が開催されますが、今年は50周年という大きな節目を迎えるということで、記念式典や祝賀パレード、母島での記念セレモニーも行われます。
屋台の出店、太鼓やフラ、南洋踊り、カヌーレースの練習など島では各々がイベントに向け準備に忙しそうで、活気に湧いています。
昨年のアウトリガ―カヌーレース出場の様子
返還祭に先がけテレビや新聞の取材の方が多く来島しています。
普段はなじみが薄いかもしれませんが、6月下旬から7月にかけて「小笠原」を目にする機会が増えるかと思います。皆さん注目してみてください。
2018年は1年を通じて例年よりもパワーアップしたイベントが盛りだくさんです。
世界遺産センターでも、観光や島民の皆さんに楽しんでいただけるようなイベントを企画中です。
ぜひ小笠原へ、世界遺産センターに遊びにいらして下さい。
2018年06月05日6/2自然観察会「初夏の箱根の滝を巡る」行事報告
富士箱根伊豆国立公園 三瓶雄士郎
みなさん、こんにちは
富士箱根伊豆国立公園管理事務所の三瓶です。
先日、箱根ボランティア解説員連絡会主催の行事
「初夏の箱根の滝を巡る」にスタッフとして参加してきました。
その様子をご紹介いたします。
コースは、箱根登山鉄道「小涌谷」駅を出発し、千条(ちすじ)の滝、鷹巣山(標高834m)、飛龍の滝、柱状節理を巡り、畑宿寄木会館まで行く標高差約430m、5.5時間かかる健脚向けのコースです。
↑今回のメインである千条の滝(左)と飛龍の滝(右)
9:30 開会
行事担当のパークボランティアさんが司会進行を行い、スケジュール、観察会の内容、班のリーダー・サブリーダーの紹介をしていきます。
↑開会の様子
9:50 観察会スタート
参加者は受付時に伝えられた班にまとまり、移動します。
滝までの移動中はこの時期に見られる花や野鳥の紹介、いくつか眺望が良い場所も通過するので、そこから見える山々の紹介をしていきます。
また、コース一帯はコアジサイやサルナシなどの初夏を代表する花が満開でとても良い香りがに包まれながら進んでいきます。
↑正面に見えるのが明星ヶ岳、夏に「大文字焼」が行われる山です。
↑千条の滝の前で解説するパークボランティア。地元の方で、昔から今までの様子をお話ししてくださいました。
↑コアジサイ。コース上でよく観察できます。カーネーションに似た少し甘い香りがします。
↑深緑の登山道を進んでいきます。明るい場所なので下記の花が観察できました。
↑左よりヒメウツギ、サルナシ、シモツケソウ
↑飛龍の滝。箱根の中では最大級で落差は上段15m、下段25mと二段に分かれているのが特徴です。水量が多く、とても見ごたえがあります。
↑柱状節理(箱根ジオ)。見上げるほど高く、その姿は圧巻です。
15:00 時間通りにゴールである畑宿寄木会館に到着し、解散しました。
みなさん、季節の草木と滝を見られることができ、とても満足されていました。
開催したパークボランティアさんも無事成功してほっとされていました。
このコースはどなたでも行くことが可能で、場所によってはマイカーで近くまで行くことができます。
ただ、石畳や急登、滑りやすい場所が多いため、服装や靴の準備やアクセス方法の確認など
計画を立てられてから訪れるようにしてください。
パークボランティアさんと箱根を歩くと、植物や地学、歴史など様々なことを学ぶことができます。
次回は7月8日(日)「イワタバコを探して 堂ヶ島を歩く」を予定しております。
早川沿いを歩くコースで、早川渓谷の様子やイワタバコの群生を訪れます。
よろしかったらぜひお申し込みください。
↓詳細はコチラ↓
http://hakonevc.sunnyday.jp/shitashimuundou.html#
2018年06月05日鳳凰三山の魅力
南アルプス国立公園 本堂舞華
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
南アルプスの山はそれぞれが異なった特徴を持ち、優れた山容が楽しむことができるのでわたしは大好きです。大好きな南アルプスの山の中で今回は鳳凰三山の魅力についてみなさんにご紹介したいと思います。
△オベリスク
この岩の塊は地蔵ヶ岳にある高さ約20m、通称「オベリスク」と呼ばれる大石柱です。鳳凰三山のシンボルといえるでしょう。明治時代にW・ウェストンが初登攀したことでも知られています。鳳凰三山は薬師岳(2,780m)、観音岳(2,841m)、地蔵ヶ岳(2,764m)の三山から成る山で、日本百名山、山梨百名山に選出されています。
みなさんにご紹介する上でわたしのおすすめポイントを3つにまとめてみました!
■たくさんの高山植物をみることができる
△タカネビランジ
鳳凰三山は新・花の百名山にも選出されており、シーズンになるとたくさんの高山植物を見ることができます。標高の変化につれて咲いている花の種類が変わってくるのでどの場所でもお花を楽しむことができます。昨年、ご紹介した北岳で見ることができる高山植物はもちろん、鳳凰三山でしか見ることができない「ホウオウシャジン」があります。また、南アルプスの特産種である「タカネビランジ」も見ることができます。鳳凰三山に咲くタカネビランジは淡いピンク色が特徴です。
■南アルプスの主峰、日本の名峰がお出迎え
△薬師岳から見る白峰三山
△観音岳から見る薬師岳・富士山
稜線に出ると白峰三山や甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳はもちろん、富士山や八ヶ岳を一望することができます。また、鳳凰三山の稜線は白っぽい花崗岩の砂地に覆われており、砂浜を歩いているような不思議な気持ちになります。雄大な山々に囲まれ、ハイマツやコケモモ、シャクナゲの緑を楽しみながら砂地の稜線を歩いてみてはいかがでしょうか?
■地蔵ヶ岳直下にあるお地蔵さん
△地蔵ヶ岳直下にあるお地蔵さん
なんでこんなところにお地蔵さんが・・・?と思う方も多いかと思います。このお地蔵さんは「子授け地蔵」と呼ばれており、子授けのために登拝した夫婦が、奉られている地蔵1体持ち帰り、子宝を授かれば2体にしてお礼の登拝をするといいます。鳳凰三山登山の歴史は古く、平安時代には修験者が登山しており、江戸時代に編纂された「甲斐国史」では鳳凰三山や北岳について綴られています。鳳凰三山は信仰としての山でも古くから多くの人々に親しまれています。
このように鳳凰三山では、一度の登山で素晴らしい景色や自然を楽しむことができます。また、山岳信仰にふれることもできる魅力いっぱいの山です。南アルプス登山を計画中の方、鳳凰三山はいかがでしょうか。夜叉神峠登山口、青木鉱泉、御座石温泉までマイカーで行くことができるのでアプローチは比較的楽ですが、歩行時間が長いためしっかり計画を立ててください。
★2015年度より「自然大好きクラブ」HP内において、特設ページを設け「山の日」の周知をしています。
今月は南アルプス国立公園の「鳳凰三山」が紹介されてます。
ぜひご覧ください!
→ https://www.env.go.jp/nature/nats/yamano-hi/
2018年06月01日92×200の奇跡
佐渡 近藤陽子
皆様、こんにちは。
新潟県佐渡市では、爽やかに晴れ渡る日が増え、出かけるのが楽しくなる季節になりました。
<佐渡市鷲崎、二ツ亀 2018.5.26撮影>
現在、佐渡のトキたちは繁殖期真っ只中。しかし、今年は多くのペアで繁殖の失敗が確認されています。巣を作っていたけれど、途中で作ることをやめてしまったペア。卵を温めていたけれど、途中で温めるのをやめてしまったペア。ヒナが誕生していたけれど、天敵の捕食にあったのか、ヒナが確認されなくなってしまったペア。今年、誕生したヒナの羽数は、昨年の3分の2ほどにとどまっています。
そんな波乱に満ちた今年の繁殖期、職員が驚くような繁殖成功もありました。
それは、No.92(オス)とNo.200(メス)ペアの繁殖成功です。
たかだか繁殖成功と思うかもしれませんが、データ上、このペアが繁殖に成功することはほぼないとされていました。
その大きな理由に、このペアの有精卵率の低さがあります。
トキの繁殖失敗が観察で確認されると、職員は巣の下へ行って卵の殻を回収します。この卵の殻から有精卵か、無精卵か、トキが何個卵を産んだのかを調べます。
<トキの巣の下に落ちている卵殻 ※写真は92×200とは別ペア>
2015年からペアとなり、毎年繁殖に参加している92×200(職員が記録を取る時、ペアを92×200、92/200などと記載します)。回収された卵殻の解析の結果、92×200の有精卵率はずっと1割ほど。自然界で繁殖している他のトキ達と比較しても、これはかなり低い数字です。
有精卵率が低くなる要因として、トキの飼育形態が影響していると考えられています。No.92は人・人(じんじん:「人工ふ化・人工育雛」の職員が使用する略語。No.92は、ふ卵器内でふ化し、育雛器内で育ちました。)で、No.200が人・自(じん・じ:「人工ふ化・自然育雛」の略語。ふ卵器内でふ化し、トキの親に育てられたトキのこと)。
トキのトキへの刷り込みは、ヒナの目が見えるようになった時期に起こっていると考えられています。ヒナの目が見えるようになった時期に育雛器に入っていると、初めて見る生き物が人間となり、こうして育ったトキは繁殖期にトキに対する繁殖へのモチベーションが、トキの親の元でふ化し育ったトキに比べて低くなるようです。その結果、上手く交尾ができずに有精卵を産むことができないのではないかと考えられています。
<親が育てない等の理由で人工育雛されているトキのヒナ>
こうした背景もあり、3年連続で繁殖に失敗している92×200に対して、職員は今年も繁殖成功はしないだろうと予測していました。
しかし!今年の繁殖期、92×200はついにヒナを誕生させました!しかも2羽!
<左からNo.92とヒナ2羽>
毎年92×200の巣作りから抱卵、抱卵中止を観察し続け、頑張ってるけれど成功しないこのペアを見守ってきた私たち職員にとって、本当に嬉しいニュースでした。
「繁殖の経験を積むほど有精卵を産む確率は高まる」とのデータは出ています。が、ここまで有精卵率が低かった92×200ペアの今年の大逆転は、これからのトキの前途が大きく開かれていくような希望を与えました。
今後は、このヒナたちが無事に巣立ち、再来年、92×200の子供たちが繁殖する姿を見られることを夢見て、今年の繁殖期を引き続き見守っていこうと思います。
<ヒナに吐き戻したエサを与えるNo.92>
2018年06月01日小笠原諸島・兄島のカタツムリを救う!
小笠原国立公園 玉井徹
こんにちは!
はじめまして、小笠原自然保護官事務所・新任アクティブレンジャーの玉井です。
今回は小笠原諸島・兄島でのカタツムリを守る対策についてご紹介します。現在小笠原では、"独自の生態系"と"固有種"を守るために、さまざまな外来種駆除の取り組みが行われています。なかでも兄島では、固有のカタツムリを捕食しているクマネズミの駆除活動が進められています。
〉上 ネズミに補食されたカタマイマイ
〉下 兄島固有のクチベニカタマイマイ
〉兄島。奥に父島が見える。
兄島は父島の北、約500mの海峡をはさんだところに位置しています。無人島で、世界的にも珍しい乾性低木林が広がっており、今でも原生の自然が残っています。また、兄島固有のカタツムリも多く生息しています。
クマネズミの駆除を行うため、兄島へは、父島の宮之浜というビーチから出発します。宮之浜は、町からもアクセスがよく、海の底はほとんどがサンゴで人気のあるビーチです。ここから兄島へ向かうわけですが・・・このときからすでにカタツムリ保全の取り組みは始まっています!靴底についた泥の中にはプラナリアが潜んでいる可能性があります。このプラナリアは、カタツムリを捕食し、絶滅へと追いやってしまいます。そのため、兄島にプラナリアを持ち込まないために、履物はすべて泥を落としてきれいな状態にします。さらに、お酢のスプレーを使って死滅させます。また、リュックや衣服についていないかもチェックします。これでようやく乗船です。
船に揺られること約10分。さっそく、兄島のビーチに着きました。ここから険しい道のりを歩荷します。
〉海抜0mからの急な登り、安全には十分注意します。
設置予定エリアに到着、作業開始です。
この日の作業はベイトステーションの設置です。
〉とにかく暑いです!日差しが非常に強く、5月でも汗が滝のように流れます。水分・栄養補給は欠かせません。
〉ベイトステーション。両端に入り口があり、ネズミがそこから入って、中の殺鼠剤を摂食するという仕組みとなっています。
作業は事前に決めておいたルート上にベイトステーションを設置していきます。もちろん、整備された道ではないので、作業中、足下には十分注意します。なぜなら、何気ないところでも落ち葉の下には固有のカタツムリがたくさん生息しているからです。作業によって、カタツムリへの影響を及ぼすことのないように気を配ります。この日は約80個のベイトステーションを設置し作業が終わりました。今後は殺鼠剤の補充や痕跡の確認、調査などが始まります。
このように、兄島にプラナリアを持ち込まないことや、ネズミを駆除することで、固有のカタツムリの保全に取り組んでいます。小笠原諸島は世界自然遺産であるとともに、人が自然を守る最前線であることを知ってもらえたらと思っています。
2018年06月01日360度アジサイの花に包まれる 伊豆半島下田公園
富士箱根伊豆国立公園 吉川貴光
(下田公園 アジサイ)
この時期、下田公園ではたくさんの花を咲かせたアジサイを楽しむことが出来ます。今年は例年よりも開花が早いようで、6月に入る前にはもう5分咲きになっていました。
歩道を歩いていると次々と目に飛び込んでくる色とりどりのアジサイがとても綺麗です。
(開国記念碑)
歩道の途中には、黒船艦隊を率いたペリーによって下田が開港してから100年を記念した開国記念碑があります。
(空堀)
戦国時代、攻め入る豊臣軍に対して、北条軍が南伊豆の防衛拠点としていた下田城の跡が下田公園です。当時防衛の為に作った空堀の跡が残っています。
そこから更に先へ進むとアジサイの群生地があります。山の斜面を埋め尽くすように咲いたアジサイに圧倒されます。下田公園のアジサイの数は15万株300万輪といわれ、見応えは十分です。
1つ1つが大きく、手のひらを超えるような見事な花が咲いています。
100種以上のアジサイが咲いており、様々な形や色の花を楽しむことができます。
背丈ほど伸びたアジサイは歩道を覆っており、アジサイのトンネルを歩くような感覚でした。下から見上げるアジサイもとても綺麗でした。
伊豆急下田駅から徒歩20分程歩いたところにある下田公園では6/1~6/31までアジサイ祭りが開催されます。これから梅雨を迎え、どんどん花が増えていくと思います。アジサイ以外にも見所満載の下田公園にぜひ足を運んでみてください。
初めまして、2018年4月から箱根地域に着任致しました、池田です。
箱根地域の自然の魅力や、素晴らしい文化などを発信出来るよう努めていきたいと思いますのでよろしくお願いします!
箱根地域では仙石原にある湿原植生を保護するために、様々な対策をしています
その、一つがシカから植生を守る取り組みです。
もともと箱根にはシカの生息がほとんど生息していなかったのですが、1980年頃から目撃されるようになりました。
今後さらにシカが増えてしまうと、シカによる食害が増えるなど、植生や生態系の影響が懸念されています。
そこでシカの現状を把握するために定点カメラを設置しています。
こちらがシカ調査に使用している定点カメラです。
赤外線センサーにより熱を感知した際に自動で撮影します。
このように、シカが現れそうな環境を選び、その付近の木の幹に括り付けるように設置をしています。
先日、定点カメラデータの回収業務を行いました。
そこで写っていたのは、、、
ヒョコっと顔を出してカメラ目線のシカが!
話には聞いていましたが、実際に、定点カメラに写っているのをみると箱根にもシカが生息しているのだなと実感をしますね。
仙石原湿原ではシカの進入を防ぎ湿原植生を守るために、植生を植生保護柵で周囲を囲っています。
そんな植生保護柵の近くに置いてある、定点カメラでは時に、こんな場面を写していることもあります。
一頭のシカが湿原植生側の柵に向かって走り出していきました!
柵にアタック!?
かなり勢いよく走ってガシャーンと体当たりです!
シカ柵によって跳ね返されところもパシャリ。
実際にシカ柵によってシカの侵入を防いでいるということが
定点カメラによって確認が取れた瞬間でした。
仙石原の植生を食害から守るためにも、
これからもシカとより良い共存の形を探っていきたいものですね。