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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

恋の季節到来!

2018年12月28日
佐渡 原奈緒子

みなさんこんにちは、佐渡自然保護官事務所の原です。

この冬は例年よりも暖かい日が多く、平野部では雪がちらついてもすぐに溶けてしまっていました。今日は久しぶりに雪が降り、これから年末年始にかけて一気に冷え込む予報でやっと佐渡らしい冬になってきたようです。

▲草地で採餌するトキ のどに泥が付くくらい必死に餌を探していたようです

野生下のトキたちも雪で田んぼが覆われることがないため、広範囲に広がって採餌する様子が確認されています。そんな中で12月26日には今期の繁殖期初めてとなる「羽色変化」が確認されました。

▲羽色変化を行ったNo.320(4歳 オス)

トキは繁殖期になると首回りからはがれ落ちる黒い物質を水浴びの後にこすりつけることによって頭から背中にかけて黒灰色になる羽色変化を行います。繁殖期になると羽色を変化させる鳥の仲間は珍しくありませんが、皮膚のはがれ落ちによる着色を行うのは世界でもトキだけに見られる特殊な生態です。

▲こすりつけを行う様子 晴れや曇りの日中に行うことが多いです

この黒灰色になった羽は生殖羽とも呼ばれ、トキ自身が繁殖の準備ができたとアピールするためや、林の中で営巣する際に保護色になる等の役割があると考えられています。そのため、繁殖に参加しない今年生まれのトキは羽色変化が起きず白いままなので、これからの時期は成鳥(2歳以上)か幼鳥(今年生まれ)かが一目瞭然です。

そして、これからの時期ますます面白くなるのがトキの行動!


トキは非常に表現豊かな鳥で、繁殖期になるとペアとの相性を確かめるために様々な行動を取ります。ペアになりたい相手を見つけるとお互いに羽繕いをしてみたり、オスがメスの上に乗って擬交尾を行います。

▲相互羽繕いをするNo.B34(左・メス)とB38(右・オス)

両方とも2017年生まれ 成鳥として初めての繁殖期

トキは驚いたときや嬉しいときに頭の後ろの冠羽を逆立てます。

▲擬交尾をする No.A19(上・オス)と220(下・メス) 

2017年からペア歴3年目 

周りにいる今年生まれのトキたちに自分たちがペアであることを見せつけているようでした。

これから繁殖期に入りペアを探し始める時期ですが、毎年恒例のペアはちゃんとお互いを見つけ出して着々と準備を進めているようです。放鳥したトキと野外生まれの一部のトキには足環を装着していて個体識別を行えるため、去年と同じペアだなとか今年はより若いメスとペアになっている!などと個体の行動を追うことができますが、果たしてトキたちはどうやってお互いを認識しているのでしょうか。


長年トキを見ている人でも大きさやクチバシの長さでオスかメスの区別がつくくらいで外見だけではとても見分ける事ができません。私たちには見えないトキの世界もあるなと思いつつ、トキの繁殖行動を追いかけていこうと思います。