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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

「STAY HOME」伊豆半島のお家大好きな生き物たち 第4弾 #STAYHOME

2020年05月19日
下田 齋田滉大

みなさん、こんにちは。

自宅にいる時間が長いせいか、すっかりネットショッピングにはまってしまった齋田です。

最近は気にいった雨具を手に入れたため、あれだけ嫌いだった梅雨の時期が少しだけ楽しみに思います。

さて、「伊豆半島のお家大好きな生き物たち」シリーズも、早いもので今回が4回目となりました。

次回の更新からは平常通りの内容をお送りできることを祈りつつ、今回の日記では、とっておきの生き物をご紹介したいと思います。

今回みなさんにご紹介するのはこの生き物!

植物の形態形成を巧みに操る引きこもり集団「モンゼンイスアブラムシ」です。

【イスノキ 静岡県下田市】

青々とした艶のある葉がなんとも美しい立派なイスノキですね!これぞ常緑高木といった様相です。

(どうして唐突に木本の写真?と感じた方が多いとは思いますが、この写真だけで理解してしまったマニアな方は暫しの間お付き合いください。)

アブラムシ(アリマキ)といえば、甘露をアリ等に提供することで外敵から身を守ってもらう「共生(複数種の生物が相互関係をもって生活すること)関係」が有名ですね。一般には、テントウムシからアリに守ってもらいながら植物の汁を吸う小さな虫というイメージが強いと思います。

実は、アブラムシの仲間には植物に寄生して虫こぶをつくる種も少なくなく、このモンゼンイスアブラムシもイスノキに虫こぶを形成することで外敵等から身を守って暮らしています。

さて、写真のどこにモンゼンイスアブラムシたち(の虫こぶ)がいる(ある)か、みなさんはもうお分かりですね?

虫こぶの中で究極の引きこもり生活を行うモンゼンイスアブラムシ。

単純に引きこもるだけならヒト科のみなさんや他の生き物たちと同様ですが、彼らの驚くべきところは、植物の形態等を操作して自分たちにとって都合の良い楽園に変えてしまう点にあります。

モンゼンイスアブラムシの寄生により植物細胞の成長や分化に異常が生じることで形成された虫こぶは、彼らを外的要因から守るだけでなく、同時に食物の供給源にもなるのです。さらに、彼らの排出物は虫こぶの内壁により吸収除去されることが最近の研究で明らかとなっています。

閉鎖された虫こぶの中でほぼ全ての生活を完結させてしまう姿は、これぞまさに引きこもりの究極系と言えますね。

今回は、外部環境と隔絶された虫こぶの中で「STAY HOME」を実施するアブラムシのご紹介でした。

本来であれば、いつもの通り『お家でじっとしている姿は私たちもぜひ見習いたいものですね』で締めくくるところではありますが、虫こぶ内で1,000匹を超える仲間たちと暮らすのは、「密閉」・「密集」・「密接」のいわゆる3密を満たしますので、みなさんは植物の性質を改変しての「STAY HOME」はお控えください。

■タイトル末尾のハッシュタグ #STAYHOME について

新型コロナウイルス感染拡大防止のための外出自粛を受けて、国立公園の魅力をインターネット上で広く情報発信することを目的とした『#STAYHOME おうちで国立公園を楽しもう!プロジェクト』が令和2年4月23日(木)より始動しました。

当日記においても、かねてより「STAY HOME」を呼びかけてきましたが、新型コロナウイルス感染症の収束をより一層に願い、日記タイトルにはプロジェクトの象徴であるハッシュタグ"#STAYHOME"を追加してお送りしています。