ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2020年9月30日

5件の記事があります。

2020年09月30日【小笠原】旅立ちの季節

小笠原国立公園 近藤希

こんにちは。小笠原の近藤です。

夕日の時間がどんどん早くなっていき、夕方には涼しい風が心地よくなってきました。

まだ暑いですが少しずつ秋を感じています。

みなさんはハンミョウという昆虫を知っていますか?

ハンミョウは肉食の甲虫で、ここ小笠原諸島には固有のオガサワラハンミョウが生息しています。

かつては兄島と父島で生息が確認されていましたが、現在は兄島の限られた地域でしか

生息が確認されなくなってしまいました。

私たちの働く世界遺産センター内では、このオガサワラハンミョウを飼育しており

先日この飼育していた個体を兄島に移殖してきました!

オガサワラハンミョウは、この写真のような裸地を好みます。

ですが、ハンミョウの生息に適した裸地は外来植物によって近年減少してきています。

特にモクマオウという外来植物は、ハンミョウの巣穴をその落葉で覆い隠してしまいます。

これによって生育環境が悪化し、個体数が減る大きな要因となっています。

というのも、ハンミョウの幼虫は地面に巣穴を掘り、地表を歩く小さな生き物を待ち伏せして捕食します。

なので巣穴が落葉で覆われてしまうと、餌がとれなくなってしまうのです。

本当に繊細ですね・・・思わぬことが、ある種を脅かす要因になることを実感しました。

▲ハンミョウの巣穴がモクマオウの落葉に覆われている様子。赤丸がハンミョウの巣穴。

さて、移植を行う裸地では、地面に遺産センター育ちのハンミョウの入ったケースを並べて準備完了。

しばしケースの中から外を観察させて新しい環境に慣らし、時間になったら一斉に蓋を開けます。

蓋を開けると、すぐに外に出て行くハンミョウもいましたが、やはりいつもと違う環境に

驚いているのかしばらくケースの中でじっとしているハンミョウもいました。


※飼育個体であることを判別できるようにマーカーをつけています。

ですが、しばらくすると・・・

おそるおそるだったり、元気よく飛んでいったり、各々が無事に兄島の地へ旅立っていきました。

遺産センターで育てられた彼らが無事に新しい場所で卵を産み、

またその子供達も元気に育っていくことを願います。

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2020年09月30日 三伏峠・塩見岳の巡視に行ってきました。【三伏峠編】

南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

9月中旬に三伏峠、塩見岳の巡視に行ってきました。三伏峠、塩見岳方面は山小屋の休業および林道が通行止めになっているため、長野県より入山自粛が求められており、例年のような賑わいはありませんでした。今回の巡視のようすを2回に分けてお伝えしたいと思います。

三伏峠は標高2,580mにあり、¨日本で一番高い峠¨にと言われています。長野県から塩見岳や小河内岳に登る際は必ず通過する峠です。三伏峠までの登山道には1/10、2/10と目安になる地点に看板が設置されています。このような標記があると、登山中の気持ちの持ちようが変わりますね。

今回の巡視は高山植物の時期とズレているので植物を見ることはできませんでしたが、花期シーズンの登山道ではコウシンヤマハッカやダイモンジソウ、シロバナノエンレイソウなどを見ることができます。可愛らしいお花たちが疲れた身体を癒やしてくれます♪

三伏峠から南に向かうと、防鹿柵が設置されています。三伏峠には南アルプスを代表するお花畑がありましたが、ニホンジカの採食圧により草原化してしまいました。そのため、静岡県が平成19年、20年、24年に防鹿柵設置しています。(設置作業のようすはこちらから。)

三伏峠にある防鹿柵は初夏から晩秋のみ設置している季節型と、1年中設置している金属製柵の2タイプがあり、初夏の柵内ではシナノキンバイやミヤマクロユリ、サンカヨウなどが咲きます。(上の写真は金属製柵)8月中旬頃にはタカネマツムシソウが大群落を作ります。

今回の巡視では咲き残りを見ることができました!花そのものが大きいので、見つけやすいです。綺麗なタカネマツムシソウが群落を作る防鹿柵の横には・・・

悲しいことにニホンジカの糞が落ちていました。しかも、1箇所ではなく数カ所に。今回の巡視では個体を見ることはできなかったものの、ニホンジカの糞や食痕が多く見られました。今年は入山自粛で人の出入りが少ないため、登山道添いで被害が多く見られる、という話も聞かれます。南アルプス山域ではニホンジカの被害と切っても切れない状況になっています。いつか、防鹿柵が無くても高山植物を楽しむことができる南アルプスになるといいですよね。

ニホンジカの痕跡が多く見られる中、旅の途中で羽を休めているアサギマダラやヒガラに出会えました。どちらも群れを成しており、私たちを出迎えてくれているようでした♪

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2020年09月30日2020年の富士山の楽しみ方③「富士山自然休養林ハイキング」

富士箱根伊豆国立公園 義高樹

初秋を迎え、記録的な猛暑に見舞われた静岡も、朝夕はめっきり涼しくなってきました。

今年の夏は暑いばかりでなく、コロナ渦の影響で自粛続きの異例な夏だったと思います。

世界文化遺産であり、日本のシンボルである富士山も、2020年度は残念ながら閉山となりました。

早朝の富士山

そのため「2020年の富士山の楽しみ方②」に引き続き、登らない富士山の楽しみ方をご紹介したいと思います。

ご紹介するのは「富士山自然休養林ハイキング」です。

例年、多くの方々が利用するのは、富士山の五合目から頂上に至る【富士宮】【御殿場】【須走】【吉田】といった主要登山道でしょう。こちらは未だに荒々しい火山噴火の痕跡を見ることができますし、日本一の高みへ到達できる非常に達成感のあるルートです。

しかし、富士山の魅力はそれだけではありません。五合目より下の広大な山麓には自然の宝庫と呼ぶべき原生林が広がっています。主要登山道が閉鎖中であるこの機会に、少し麓へ目を向けて見ませんか。きっと、富士山に対するイメージが変わると思いますよ。

富士山自然休養林のハイキングコースは多くありますが、今回は静岡県裾野市の水ヶ塚公園から御殿庭下までのコースをご紹介します。

下記のサイトではDコースとして紹介されています。

富士山自然休養林ハイキングマップ(富士山自然休養林ハイキングコースご案内)

このコースは、始めは起伏が少なくゆったりとハイキングを満喫することができます。

モコモコです

中盤を過ぎると、少し傾斜がきつくなって木々の密度が減り始めます。

綺麗な広場に出ました

道中ではブナやカラマツを初めとした原生林の豊かさに見入り、綺麗な空気の中で心身ともにリフレッシュすることができます。

まるで森と一体化したような静かな時間を過ごしてみては如何でしょう。

こんな所に可愛いホタルブクロが

これから秋も深まり、ハイキングには最適な季節となります。

なるべく少人数で、飛沫に注意するなどコロナ対策を行ったうえで、富士山が初めての方も、今年登れなくてがっかりしている方も、是非、富士山自然休養林を訪れてみて下さい。

【注意】

御殿庭下より先には宝永山へ至るルートがありますが、今年度は利用することができません。また、富士山の登山道は吉田口を除き麓から閉鎖(吉田口も五合目より先は閉鎖)しておりますので、ハイキングコースから当該地に立ち入ることはご遠慮下さい(主要登山道、宝永山、双子山等への道には注意書きとテープがあるので、指示に従うようにして下さい)。

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2020年09月30日富士山の「初冠雪」と「初雪化粧宣言」

富士箱根伊豆国立公園 富士五湖 小西 美緒

こんにちは。富士五湖の小西です。
ここ数日ぐっと寒くなり、本日この秋初のババシャツ着用です。

すでにご存知の方も多いかと思いますが、28日に甲府気象台が富士山の初冠雪を発表しました。

初冠雪の富士山(2020年9月28日朝8時 山中湖パノラマ台より)

ここのところ、お天気のよくない日が続いていて、久々に顔をのぞかせた富士山が白く雪化粧をしていたので
ビックリしました。例年より2日早いということで、特別早かったわけではありませんが、去年の初冠雪が10月22日でしたので

「え、もう?」

という印象でした。

さすが日本一の山なので、初冠雪のニュースは全国的に配信されていましたね。

ところで、実は富士山にはもうひとつ初雪にまつわるものがあるのはご存知でしょうか?

それは麓の富士吉田市が発表する「初雪化粧宣言」です。

気象庁が発表する「初冠雪」というのは、直線距離で35kmほど離れている甲府市にある「甲府気象台」から目視で確認できて初めて「初冠雪」となります。ただ、それだけ離れているので、麓の町からは富士山が見えていても甲府からは見えないということもよくあります。

そのために、富士吉田市が麓から目視で雪を確認した際に、独自の「初雪化粧宣言」を出しています。こちらは全国的にはニュースになっていないかもしれないですね。

今年の「初雪化粧宣言」は4連休中の9月21日でした。

富士山"初雪化粧"宣言(富士吉田市 報道発表)
https://www.city.fujiyoshida.yamanashi.jp/div/teian/pdf/200921kisya.pdf

外国人にも人気のスポット新倉山浅間公園より(9月21日7時撮影 山梨県富士吉田市提供)

見えますか???アップにすると・・・・・

山頂付近にわずかに雪が・・・(9月21日撮影 山梨県富士吉田市提供)

本当に粉砂糖を振りかけたようにわずかな降雪だったのと、朝早くしか富士山が見えていなかったため、見逃してしまいました。

麓の人間にとっては富士山があること自体が「日常」ですが、こうやって日々富士山をチェックすることも地元の人にとっては何気ない「日常」なのかな、と思いました。

28日に降った雪もほぼ消えましたが、こうやって少しずつ季節が進んで行きますね。これから紅葉が楽しみです!

皆さんも新型コロナ対策をしっかりした上で遊びにいらしてください!


新型コロナに関連する情報



山梨県では、安心してお店や宿を利用していただくために、県が定めた感染症予防対策の基準を遵守している施設(宿泊、飲食など)について「グリーンゾーン認証制度」を導入しています。
https://greenzone-ninsho.jp/

また、グリーンゾーン認証された宿に宿泊する際には割引(1泊あたり最大5000円)を受けることができる「やまなしグリーン・ゾーン宿泊割り」を実施しています。(Go toキャンペーンとの併用可)

独自の割引制度を実施している自治体は多いですが、対象が地元民のみというところが多いです。この割引は誰でも利用できてお得です!
https://yamanashi-syukuhakuwari.com/


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2020年09月30日三伏峠・塩見岳の巡視に行ってきました。【塩見岳編】

南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

前回の三伏峠・塩見岳の巡視に行ってきました。【三伏峠編】に続き、今回は塩見岳編をお伝えします。

塩見岳の山頂は双耳峰(山頂が2つ)になっており、標高は今年1月に西峰の3,047mから東峰の3,052mに改定されました。あまり知られていませんが、山頂の北側は北岳にもある、¨バットレス¨(切り立っている急峻な岩壁)になっています。

三伏峠からは三伏山、本谷山を経由して山頂へ向かいます。道中、縞枯現象(シラビソ、オオシラビソ一部分が帯状に枯れ、白い縞模様ができること)に似ている景色の中を歩きます。

木々の間からは荒川岳や小河内岳を見ることができます。

森林限界を超えると塩見小屋(今年は休業中)があり、付近からは仙丈ヶ岳や甲斐駒ヶ岳、小河内岳や烏帽子岳が一望できました!

△仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳方面      △小河内岳、烏帽子岳方面

写真では分かりづらいですが、所々で紅葉が始まっていました。

塩見小屋を過ぎ、「天狗岩」が見えてきたところで塩見岳最大の核心部であるガレ場を登ります。

危なくないように見えるこの場所は落石が多く、足場も悪いです。ヘルメットの着用を強くおすすめしたい地点です。このガレ場を超えると・・・

△南アルプス北部方面

△南アルプス南部方面

南アルプスの真ん中に位置する塩見岳からは北部と南部を一望できます。この日は天気がとても良かったため、南部の中盛丸山や兎岳などもよく見えました。

塩見岳東峰直下では環境省事業として、伏工を実施しています。以前の塩見岳東峰直下はシナノキンバイやハクサンイチゲが広がるお花畑でしたが、ニホンジカの採食圧・踏圧によりお花畑が消失するだけでなく、土壌が流失し、裸地化してしまいました。そのため、植生回復および表土浸食防止を目的とし、平成21年から伏工(植生マット)を行っています。今年度は新型コロナウイルスの影響により、伏工の実施業務が中止となっていまいましたが、過年度に設置した植生マットには植物が根を付けていました!


一見、暴風で植生マットが飛ばないように設置している石しかないように見えますが、よく見ると植物がしっかりあります。着実に戻ってきている様子を今年も確認することができて安心しました。

今回の巡視は比較的晴れている時間が多く、山頂からは富士山と蝙蝠岳がよく見えました。


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