2020年10月
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2020年10月09日新島の砂浜の色 新島(伊豆諸島地域)
富士箱根伊豆国立公園 伊豆諸島 竹下実生
こんにちは。伊豆諸島管理官事務所の竹下です。
先週、事務所の窓の外からモズの声が聞こえてきました。
(モズは秋に入ると一羽ずつの縄張りを持つようになり、縄張りを宣言してさえずります)
モズの声を聞くと、秋がやってきたなあと感じます。
さて、まだ暑かった9月の初め頃、施設の現況確認や写真撮影のため、新島へ行ってきました。
▲羽伏浦海岸(遠くに見えるのは三宅島)
新島は、東京から約160kmの距離にある伊豆諸島の島です。
東京からの交通は船と飛行機があり、東京竹芝から大型船で8時間30分、高速船で2時間30分、調布飛行場から35分でアクセスできます。
面積は23.87㎢、人口は約2,500人。
観光ではマリンスポーツ、特にサーフィンが盛んです。
上の写真は、島の東側に延びる羽伏浦海岸です。
島の南端まで続く広大な白い砂浜は、他の島にはない景色です。
▲島の中央東側に伸びる羽伏浦海岸は白色、西側に延びる前浜海岸は緑色、北部の山の向こう側にある若郷前浜海岸は黒色の砂浜(新島南部 大峰展望台からの景色)
新島と言えば、最初に紹介した白い砂浜の景色が有名なのですが、
実は、新島には黒色や緑色の砂浜もあるのです...!
一つの島の中に色の異なる砂浜があるのは、なぜなのでしょうか...?
▲若郷前浜海岸(黒い砂浜)
▲前浜海岸(緑の砂浜)緑色と言うよりも灰色に見えるかもしれません。
砂浜の砂をよく見てみると、一色に見える砂の中にも、様々な色の砂粒が入っています。
羽伏浦海岸はガラス質の透明な鉱物(石英)、若郷前浜海岸は黒色の岩石(玄武岩)、前浜海岸は緑色の岩石(変成火山岩)の含まれる割合が大きいそうです。
だから、砂浜全体を見ると、それぞれ白色、黒色、緑色に見えるのですね。
▲左から羽伏浦海岸(白い砂浜)、若郷前浜海岸(黒い砂浜)、前浜海岸(緑の砂浜)の砂
(クリックすると、画像を拡大できます!)
これらの鉱物、岩石は、すべて火山に由来しています。
新島は、一つの大きな火山からできた島ではなく、いくつもの火山が次々に噴火して作られた島です。
新島を作った火山の中には、透明な鉱物(石英)を多く噴き出した火山、黒色の岩石(玄武岩)を多く噴き出した火山、緑色の岩石(変成火山岩)を多く噴き出した火山があり、それぞれの火山灰や火山岩が降り積もって地層を作りました。
地層は波に削られて砂粒となり、水流に乗って運ばれていきます。
透明な鉱物(石英)の多い地層から生まれた砂粒は羽伏浦海岸へ、黒色の岩石(玄武岩)の地層から生まれた砂粒は若郷前浜海岸へ、緑色の岩石(変成火山岩)の多い地層から生まれた砂粒は前浜海岸へ・・・。
・・・こうして一つの島の中に色の異なる砂浜ができたのでした。
新島を作った火山が、独特の景色を残してくれたのですね。
新島を訪れたら、ぜひ足下の砂に注目して、新島の成り立ちに思いを馳せてみてください。
【ご注意ください】
伊豆諸島では、自治体ごとに来島のガイドラインを掲げ、島内での感染拡大防止への協力を求めています(2020年10月8日現在)。伊豆諸島へ旅行を計画されている方は、自治体のホームページで来島のガイドラインをよく読み、最新の情報を必ず確認してください。
2020年10月08日三伏峠・塩見岳の巡視に行ってきました。【塩見岳編】
南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
前回の三伏峠・塩見岳の巡視に行ってきました。【三伏峠編】に続き、今回は塩見岳編をお伝えします。
塩見岳の山頂は双耳峰(山頂が2つ)になっており、標高は今年1月に西峰の3,047mから東峰の3,052mに改定されました。あまり知られていませんが、山頂の北側は北岳にもある、¨バットレス¨(切り立っている急峻な岩壁)になっています。
三伏峠からは三伏山、本谷山を経由して山頂へ向かいます。道中、縞枯現象(シラビソ、オオシラビソ一部分が帯状に枯れ、白い縞模様ができること)に似ている景色の中を歩きます。
木々の間からは荒川岳や小河内岳を見ることができます。
森林限界を超えると塩見小屋(今年は休業中)があり、付近からは仙丈ヶ岳や甲斐駒ヶ岳、小河内岳や烏帽子岳が一望できました!
△仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳方面 △小河内岳、烏帽子岳方面
写真では分かりづらいですが、所々で紅葉が始まっていました。
塩見小屋を過ぎ、「天狗岩」が見えてきたところで塩見岳最大の核心部であるガレ場を登ります。
危なくないように見えるこの場所は落石が多く、足場も悪いです。ヘルメットの着用を強くおすすめしたい地点です。このガレ場を超えると・・・
△南アルプス北部方面
△南アルプス南部方面
南アルプスの真ん中に位置する塩見岳からは北部と南部を一望できます。この日は天気がとても良かったため、南部の中盛丸山や兎岳などもよく見えました。
塩見岳東峰直下では環境省事業として、伏工を実施しています。以前の塩見岳東峰直下はシナノキンバイやハクサンイチゲが広がるお花畑でしたが、ニホンジカの採食圧・踏圧によりお花畑が消失するだけでなく、土壌が流失し、裸地化してしまいました。そのため、植生回復および表土浸食防止を目的とし、平成21年から伏工(植生マット)を行っています。今年度は新型コロナウイルスの影響により、伏工の実施業務が中止となっていまいましたが、過年度に設置した植生マットには植物が根を付けていました!
一見、暴風で植生マットが飛ばないように設置している石しかないように見えますが、よく見ると植物がしっかりあります。着実に戻ってきている様子を今年も確認することができて安心しました。
今回の巡視は比較的晴れている時間が多く、山頂からは富士山と蝙蝠岳がよく見えました。
2020年10月06日尾瀬ヶ原の巡視で
尾瀬国立公園 片品 尾池こず江
こんにちは。片品自然保護官事務所の尾池です。
尾瀬では、夏色から一気に秋色となり草紅葉が見頃になっています。
久しぶりの日記なので、今回は夏から秋にかけて巡視時に出会った尾瀬の様子を一部載せたいと思います。今年は、長雨で夏が短く感じたのは私だけでしょうか。
それでは、まず6月といえば尾瀬で人気のワタスゲです。ミズバショウが終わった頃にワタスゲが期待されはじめます。綿がフワフワと揺れて思わず触ってみたくなりますね。天気が良い日に歩いていると、楽園にいるような感じになれます。実はこの白いフワフワは、花ではなく果穂なんです。
▲尾瀬ヶ原のワタスゲ(6月21日撮影)
次に7月といえば、尾瀬でも主役級のニッコウキスゲです。毎年見頃がいつ頃になるのか気にしている方も多いのではないでしょうか。個人的な感想ですが、ここ数年から比べると今年は全体的に花が多かったように感じました。
▲大江湿原のニッコウキスゲ(7月19日撮影)
続いて、8月の尾瀬では、木道付近まで出てきてしまう黒い動物が頻繁に目撃されました。
もともと尾瀬には生息していて目撃されるのは8月だけではありませんが、私も今年は何度か遭遇しました。色々と対策をしていますが、うまく共存したいものです。
▲黒い動物とは、ツキノワグマです
続いて9月の尾瀬ヶ原の様子です。下田代は、尾瀬ヶ原の中では大きく開けた場所であるため、放射冷却による冷え込みが厳しい所となっています。全体的に花があまり目立つところではありませんが、草紅葉を早く見られるのはここです。
▲下田代展望スペースより(9月17日撮影)
最後に10月に入り、環境省の事業として設置している植生保護柵の撤去を行った時の様子です。尾瀬は豪雪地帯ですので、柵が壊れてしまわないようにこの時期に下ろす作業をします。植物を食べてしまうシカは、雪が降る頃には日光方面へ季節移動して越冬します。
▲植生保護柵を下ろす作業(10月2日撮影)
今、草紅葉が見頃ですが、これから尾瀬の木々の紅葉も進みそうです。
寒くなってきましたので、尾瀬に行く際は、必ず防寒着をお持ちください。
▲秋色の尾瀬ヶ原(10月2日撮影)
※2020年の尾瀬シーズンも、残りわずかとなりました。
山小屋や休憩所等の営業終了日をご確認のうえお越しください。
▼詳しい情報は・・・
公益財団法人 尾瀬保護財団HP
2020年10月05日【小笠原】下を向いて歩こう!!
小笠原国立公園 坂田彩
みなさんこんにちは。小笠原の坂田です。
小笠原に来てから雨に降られることが少なかったように感じますが、最近ではお天気の良い日でも一時的に雨が降ることも増えています。
小笠原の植物にとっては恵みの雨ですね~♪
私にとっても休日の森歩きという楽しみが増えています!!
▲休日に見つけた粘菌
自然豊かな小笠原では、何気なく歩いている道沿いでも固有種を楽しむことができます。今回は林内でみられる固有種の中でもその存在が気付かれにくい植物をご紹介したいと思います!!
▲イワホウライシダ/イノモトソウ科/ホウライシダ属
谷筋の水分を含んでいる崖地を好むのがこちらのイワホウライシダです。
私が見つけたイワホウライシダも沢近くで常に周囲が湿っている、日陰が多い場所にひっそりと生えていました。
花が咲くわけではありませんが、薄い葉が集まり、ひらひらしているなんともいえないこのフォルム♪かわいいですね~
小笠原諸島の中でも兄島・母島に局地的に生息していますが、父島でもみられるようになったといわれています。
環境省レッドリストでは絶滅危惧Ⅱ類(VU) という絶滅の危険が増大している種に指定されています。
▲ムニンエダウチホングウシダ/ホングウシダ科/ホングウシダ属
山地の林床に生えているこちらは、ムニンエダウチホングウシダです。
葉の光沢が強い特徴があり、遊歩道沿いを歩いているとつやつやした葉の緑色が綺麗で癒し効果抜群です!!
小笠原諸島の中では、父島・兄島・弟島・母島に生息していて、環境省レッドリストの絶滅危惧Ⅱ種(VU)に指定されています。
林内を歩いていると季節の花々や美しい色のアカガシラカラスバトに目がいきがちですが、見落としやすい足下に注目すると新しい固有種との出会いが楽しめます。
2020年10月02日第23回放鳥が行われました!
佐渡 菅野萌
皆さんこんにちは。
佐渡自然保護官事務所の菅野です。
朝晩は冷え込むようになり、すっかり秋らしい気候になりました。
勤務を終了してから自宅に帰る頃には辺りが暗くなってきており、どんどん日が短くなっていることを実感します。
佐渡の田んぼでも稲刈りが次々と始まり、餌が採りやすい刈田にトキがたくさん舞い降りるようになっています。
さて、そんな中、第23回放鳥が9月18日と9月24日に行われました。
今回も昨年の秋放鳥と同様にハードリリース方式とソフトリリース方式の2通りで放鳥を行いました。
【ハードリリース方式:9月18日】
ハードリリース方式とは、順化訓練後のトキを放鳥場所に移動させてからすぐに放鳥する方法です。
▲今回の放鳥場所の生椿
今回は島内の生椿(はえつばき)という山間部の棚田で行いました。この場所は日本産のトキが野生絶滅する前から、故髙野高治氏がトキのためにエサ場を整備してきた場所であり、現在もご子息の髙野毅氏が中心になってエサ場整備の取組を続けています。
▲放鳥されるトキ(個体識別用に羽に色が塗られています)
当日は髙野高治氏の写真も掲げられ、生椿の自然を守る活動に携わってきた方々が見守るなか、無事に9羽のトキが放鳥されました。
【ソフトリリース方式:9月24日】
ソフトリリース方式では、トキが約3か月間過ごした順化ケージの放鳥口を開き、直接トキが野外に出て行くのを待ちます。朝6時に順化ケージの放鳥口を開き、当日の13時過ぎに全7羽が無事に飛び立ちました。
新規放鳥のトキの行動は個体によって異なり、慣れ親しんだ順化ケージ周辺をウロウロしているトキもいれば、早くもあちこちを飛び回っているトキもいます。
それぞれの個体が佐渡のどの辺りに落ち着くか、これからが楽しみです。
2020年10月01日箱根のナラ枯れ
富士箱根伊豆国立公園 山口光子
皆さん、こんにちは。
富士箱根伊豆国立公園管理事務所の山口です。
10月に入って、秋の気配が強まってきました。各所でススキが黄金色の美しい穂を風になびかせています。仙石原のススキ草原も、まもなく見頃を迎えるでしょう。そんな良い季節ではありますが、今回は箱根の山に起きている悲しい出来事について報告します。それが「ナラ枯れ」です。
【2020年9月の箱根(紅葉ではありません)】
日本各地で長く問題となってきたこの現象。神奈川県では近年大変問題視されており、箱根も今年は目立って増えています。原因は「カシノナガキクイムシ」という昆虫が運ぶ、ナラ菌による樹木の枯死です。箱根のナラ枯れは初めて観察されてから今年で4年目になり、特にコナラ・ミズナラなどドングリの実る樹木に被害が多く発生しています。被害発生が古木に多いことも特徴の一つです。
箱根ビジターセンター周辺でも、この夏、ミズナラの大きな木が突然枯死しました。6月までは元気に青々と茂っていた木が、9月にはあっという間に枯れています。
【9月に枯死したミズナラ 幹に小さな穴が多数あり、フラスという木くずと虫の糞が混ざった粉が、根元や幹周りに大量に積もる】
ビジターの皆さんが毎年楽しみにしてきたこの木のドングリは、残念ながら今年からは実りません。
でも、枯れ木の足元にはこんな子がいました。
【ミズナラの実生(幼木)】
大木が倒れた後の森には、日が良く差し込み、幼木たちが急速に成長を始めるのです。箱根で増え始めているニホンジカに食べられることなく、強く成長することを願います。
古くはミズナラの古木は、人が切り倒して薪にし、そこに幼木が育つという、自然のサイクルがあったと言われています。今はその循環がなく、カシノナガキクイムシが人の代わりに古木を倒し、幼木の成長を促しているという考え方や、ナラ枯れは5年から8年ほどをピークに終息するとも言われていますが、詳しいことはまだ分かっていません。
ただ、これ以上枯死が増えて箱根の森が衰退しないように、出来ることを実施しようと箱根町、神奈川県が対策作業に取り組んでいます。これから伐採消毒作業や予防薬投与の作業が始まった際には、作業の様子を静かに見守って頂けると幸いです。また、箱根町では新たにHPを作成し、ナラ枯れについての情報を公開して、被害の情報提供を呼びかけています。是非ご一読下さい。
★箱根町HP「ナラ枯れ被害が広がっています」★
http://www.town.hakone.kanagawa.jp/index.cfm/6,21824,23,html
※林野庁や神奈川県のHPも併せてご参照下さい。
【おまけ】
枯れてしまったミズナラの根元には、時折猛毒のキノコ「カエンダケ」が生えることがあります。触るだけで皮膚がただれるので、見つけても絶対に触らないようにお願いします。
【カエンダケ】
みなさんこんにちは!
尾瀬国立公園 檜枝岐自然保護官事務所の細川です。
感染症の影響で開山が遅れた尾瀬でしたが、シーズンも終わりに近づき段々と草木が紅葉を始めました。
今年も、季節ごとに様々な姿を見せてくれた尾瀬ですが、今回は燧ヶ岳について紹介しようと思います。
一般に燧ヶ岳と呼ばれている山頂は2,356mの柴安嵓(しばやすぐら)のことを言いますが、すぐ隣に俎嵓(まないたぐら)と呼ばれる標高2,346mの山があります。標高差が10m程度で2つの山の間を20分程度で行き来できるのでふたつをまとめて燧ヶ岳と呼ぶこともあります。
燧ヶ岳に登るには4つのルートがあります。
①御池から熊沢田代を通り俎嵓に到着するルート(コースタイム3時間30分)
②尾瀬沼の浅湖湿原から俎嵓に到着するルート(コースタイム4時間)
③沼尻から俎嵓に到着するルート(コースタイム3時間)
④尾瀬ヶ原見晴地区から柴安嵓に到着するルート(コースタイム3時間30分)
<燧ヶ岳を登る4つのルートの色別>
①は檜枝岐村の御池登山口に駐車場があり、登山口までは車で行くことができます。歩き始めて1分程で、燧ヶ岳と尾瀬ヶ原に行く道の分岐があるので看板を見落とさないように注意してください。燧ヶ岳方面に進むと、最初に岩場の斜面があり急いで登ると疲れてしまうので自分のペースでゆっくり進みましょう。
<燧ヶ岳と尾瀬ヶ原に行く道の分岐>
<登りはじめの岩場>
②は長英新道と呼ばれる登山道で、今から約60年前に現在の長蔵小屋の主人の祖父にあたる平野長英氏が開拓しました。
他の登山道より滑らかに進むことができますが時間はかかります。山頂近くに尾瀬沼を臨めるミノブチ岳というスポットがあります。
<ミノブチ岳の展望>
③はナデックボと呼ばれる岩場を登るルートで、他の登山道より早く山頂に到着できますが、整地されておらず上級者向けの道なので初めての方は他の道を登ることをオススメします。ナデックボの由来は諸説ありますが、「なだれが多い窪んだ所」を略して呼ぶようになったとも考えられています。
<沼尻平から見たナデックボ登山道>
<俎嵓(2,346m)から臨む尾瀬沼>
④は見晴新道と呼ばれ、約3時間半で柴安嵓に到着します。最近に開拓された道のため、雨水が固まらず滑りやすい道となっており、雨の日やその翌日などは歩くと登山靴がどろどろになります。
思い切って折りたたみの長靴などを持って行くと良いでしょう。新しく木道階段が作られており、少しずつ歩きやすい道に変わってきています。
<見晴新道の新しい木道階段>
<柴安嵓(2,356m)から臨む尾瀬ヶ原>
今まで通りとはいかない半年でしたが、来年はより多くの方が来られることを祈っています。