2020年11月 6日
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2020年11月06日式根島の不思議な地形 式根島(伊豆諸島地域)
富士箱根伊豆国立公園 伊豆諸島 竹下実生
こんにちは。伊豆諸島管理官事務所の竹下です。
もう11月、事務所のある伊豆大島も、だんだんと寒くなっています。
気温が下がって雲や霞が少なくなり、海の向こうの伊豆半島の町並みや富士山の姿がはっきり見えるようになってきました。
さて、前回の日記では、9月の初めに訪れた新島について紹介しました。
(前回の日記はこちら:新島の砂浜の色 新島(伊豆諸島地域)http://kanto.env.go.jp/blog/2020/10/post-946.html
新島を訪れた翌日、隣の式根島に渡りました。
▲新島から見た式根島(新島 富士見峠展望台より撮影)
式根島は、東京から南に約160kmの距離にある伊豆諸島の島です。
東京竹芝桟橋からは大型客船で約10時間、高速船は約3時間でアクセスできます。
新島からはすぐ隣の場所で、大型客船で20分、高速船で15分もすれば到着します。
外周は約12km、坂道は多いものの、歩いて一周できる小さな島です。
上の写真を見てください。
式根島は不思議な形をしていると思いませんか?
手前の新島や奥の神津島と比べると、標高が低くて平らな形をしています。
こんな不思議な形をしていますが、実は式根島も火山なのです。
▲式根島の西部のリアス式海岸(式根島 カンビキ展望台より撮影)
遠くから見ると平らに見える式根島ですが、実際にはいくつかの小さな丘があり、多少凹凸しています。
上の写真は、標高98.5mのカンビキ山にある展望台から撮影したものです。
島の周りはリアス式海岸になっていて、小さな湾が並んでいます。
波静かな湾は、海水浴やシュノーケリングのスポットになっています。
このきれいな景色は、式根島火山の溶岩が作り出しました。
▲式根島の地図(円:火口の推定位置、赤矢印:溶岩の流れた方向、赤線:溶岩のしわの方向)
今の式根島の形を作った式根島火山は、約1万年前に噴火しました。
当時は、上の地図の円(赤破線)で囲んだ辺りに火口があったと推定されています。
噴火の際に火口の縁の一部が壊れて、赤矢印の方向に溶岩が流れ出しました。
式根島火山は流紋岩質で、溶岩は白っぽい色、粘り気の強い性質を持っています。
溶岩は黒い矢印の方向に流れ出し、破線の方向にいくつかの溶岩の「しわ」ができました。
(気になる人は、ハチミツなどの粘り気のあるものをお皿に流し出してみてください。流れる方向と垂直な方向にしわができる様子が分かると思います。)
式根島の海岸の形を見てみてください。
いくつかの湾(写真で見たリアス式海岸)が破線と同じ方向に口を開けているのがわかるでしょうか。
内陸では、溶岩のしわ(赤破線)と同じ方向に、いくつかの小さな丘が連なっています。
この湾や丘が作る地面の凹凸の連なりは、溶岩が流れた時の「しわ」の名残であると見られています。
▲式根島 泊海岸
式根島のリアス式海岸では、上の写真のようなきれいな丸い形の湾が見られます。
このような丸い形の湾は、溶岩が海に流れ込んだ時に、高温のマグマと海水が触れて爆発を起こしたことで作られました。
▲式根島 唐人津城
約1万年前の噴火の時に火口があったとされる島の南西部には、白い流紋岩質の岩場が残っています。
平坦な形をしていて、一見すると火山には見えない式根島ですが、
島の中には、いくつもの火山の痕跡が美しい景色となって残っていました。
のんびりハイキングをしながら、式根島の成り立ちに思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
【式根島の観光情報】
・式根島観光協会 https://shikinejima.tokyo/
ハイキングマップのダウンロードもできます!
【参考資料】
・磯部 一洋(新島村博物館 館外研究協力委員), 海面変動下での新島単成火山群の形成について. 平成29年度新島村博物館研究紀要, p28-50
・産業技術総合研究所地質調査総合センター, 詳細火山データ集 新島火山 新島・式根島・地内島および早島を構成する単成火山群 式根島火山. 2013, https://gbank.gsj.jp/volcano/Act_Vol/niijima/page3_15.html, (参照2020年10月29日)
【ご注意ください】
伊豆諸島では、自治体ごとに来島のガイドラインを掲げ、島内での感染拡大防止への協力を求めています(2020年11月4日現在)。伊豆諸島へ旅行を計画されている方は、自治体や観光協会のホームページで来島のガイドラインをよく読み、最新の情報を必ず確認してください。
皆様、こんにちは。
佐渡自然保護官事務所の近藤です。
佐渡では朝晩冷え込む日が多くなりました。山々の紅葉が深まり、見頃を迎えています。
<野生復帰ステーションの木々も色づき始めました>
さて、私が勤務する佐渡自然保護官事務所では、学校などから見学依頼があった場合に、トキ野生復帰についての解説や施設案内を行っています。
佐渡自然保護官事務所は、佐渡トキ保護センター野生復帰ステーションという施設内にあります。ここでは、私たち佐渡自然保護官事務所と野生復帰ステーションの新潟県の職員さんとが同じ部屋で仕事をしており、見学者の対応は環境省と新潟県が協力して行うことがよくあります。その場合、新潟県はトキの飼育・繁殖・順化訓練に関する話を、私たちは野生下のトキに関する話をしています。
<手前が佐渡自然保護官事務所、奥が新潟県。新潟県側には野生復帰ステーションで飼育されているトキの様子が映し出されたモニターが並んでいます。>
今回は、先月対応した佐渡島内の3つの学校への解説・案内の様子を紹介します。
1.佐渡高校2年生
<順化ケージ内で新潟県の獣医師からトキの訓練について説明を受ける生徒>
新潟県職員とアクティブ・レンジャーがトキの野生復帰の取り組みのレクチャーを行い、野生復帰ステーション内、※順化ケージ、※※トキのテラスなどの施設を案内しました。
※順化ケージ
トキが野生下で生きていくために必要な飛翔能力、採餌能力、社会性などを身につけるために訓練を行う、佐渡の里山環境を再現した大型のケージ。野生復帰ステーションの敷地内にあります。
※※トキのテラス
野生下に再導入したトキを適切に観察できるとともに、トキが生息する佐渡島の自然豊かな里地里山等を展望できる施設。野生復帰ステーション管理棟から徒歩5分ほどの場所にあります。
2.新穂(にいぼ)中学校1年生
<トキのテラスのピロティで解説をしている様子>
アクティブ・レンジャーがトキのテラスでトキの野生復帰の取り組みについて解説しました。
3.新穂小学校3年生
<新潟県の獣医師が児童からのインタビューに答える様子>
新潟県職員とアクティブ・レンジャーが野生復帰の取り組みのレクチャーを行い、順化ケージを案内して、児童からのトキのプロとしてのインタビューに答えました。
トキの野生復帰は、「トキの飼育・繁殖」、「生息環境の整備」、「社会環境の整備」など、様々な側面から様々な人々が関わって進められています。トキを放鳥しても生息環境が整っていなければ、地域の方の理解がなければ、野生復帰は実現しません。
トキの野生復帰の普及啓発を通して、佐渡の豊かな自然環境に目を向け、故郷を大切に思う心が、佐渡の未来を担う子供たちに育まれてくれると嬉しいです。