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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

【小笠原】マイマイの野生復帰!Reinforcement

2020年12月10日
小笠原国立公園

こんにちは。父島の玉井です。

11月末に、日本初!マイマイの野生復帰を行いました。

上の写真はまさに、マイマイのタマゴを移殖している様子です。

少し緊張気味ですね。

マイマイとは陸産貝類(カタツムリ)のことです。

小笠原のマイマイは島で独自の進化を遂げ、固有種はおよそ100種類にもなります。

しかし、残念なことに現在父島では、

ニューギニアヤリガタリクウズムシ(プラナリアの一種)の侵入により

固有のマイマイが絶滅の一途を辿っています。

一方で、その影響を受けていない周辺の無人島には細々と生き残っています。

巽島もそのひとつです。

【巽島】

ここには、チチジマカタマイマイとアナカタマイマイが現在も暮らしています。

しかし、ネズミ類の防除や、異常気象による環境の変化などの影響で

その数が減りつつあります。

そこで世界遺産センターで飼育しているマイマイを

いよいよ野外へ戻すステージへと進めてきました。

外来種の防除や、生息環境の予備調査などを入念に行い

まずは、新たな寄生虫を持ち込むリスクの少ないタマゴでの移殖が決定!

もちろん、戻す個体は巽島で保護した個体の子孫です。

しかしながら、この巽島という無人島は

海況や、天候のコンディションが良い日でなければ上陸が難しい島です。

今回も何度か渡島を断念し、1度は海岸に接岸したものの、

危険と判断し、出直しました。

【タマゴを背負い、】

【崖を登る(普通に危ない・・・)】

【冒険感あり】

【アナカタマイマイ移殖中!モニタリングできるようにして、本来の環境に近い状態で土に戻します。】

野生復帰とは、飼育下にいた動物が野生に戻ることで、いわば里帰りです。

国内ではコウノトリやトキの事例が有名ですね。

小笠原でもすでに、兄島でオガサワラハンミョウの野生復帰に取り組んでいます。

野生復帰にはいくつか種類があり、

すでに絶滅した場所に戻すことを"再導入"といい

まだ生き残っている場所に戻すことを"補強"と使い分けています。

いずれにしても、野生に戻される個体としては野生復帰になります。

巽島は、まだ野生の個体が生息しているので、今回の場合は"補強"となります。

2011年から域外保全を始め、ここまでおよそ10年の道のりです。

種の存続が目的ですが、そのためには生態系の保全、生息環境の維持が重要になり

これからも長い取り組みとなりそうです。

まずは、前例のない中で、一歩踏み出せた事は大きな前進だと思います。

玉井