檜枝岐

ミズバショウの尾瀬

2021年05月28日
檜枝岐 前川公彦

みなさん、こんにちは。

檜枝岐自然保護官事務所の前川です。

檜枝岐村の桜もほとんどは散ってしまいましたが、尾瀬ではミズバショウの花が咲き始めました。なんと言っても尾瀬のシンボルはミズバショウですので、シンボル化されたミズバショウは村内のいたる所で一年中目にすることができます。ちなみに事務所に飾られている尾瀬国立公園の旗はミズバショウですし、環境省の尾瀬のパンフレットにも同じシンボルマークが使われています。そういえば旧檜枝岐村役場の正面に掲げられているのもミズバショウですので、尾瀬にとってミズバショウはとても大切な存在です。

檜枝岐村入口に立つ尾瀬のシンボル 事務所に飾られている尾瀬国立公園の旗

檜枝岐村入口に立つ尾瀬のシンボル     事務所に飾られている尾瀬国立公園の旗

先週、尾瀬の中央にある尾瀬沼地区に行く機会があり、歩いている途中で咲き始めのミズバショウを見ることができました。雪の残る沼山峠から大江湿原に降りた頃には雪はほとんどなくなり、川や水たまりにたくさんのミズバショウが出てきていました。木道に沿ってミズバショウが生えているのは歩く人を歓迎してくれているように思え、何ともうれしい気持ちにさせられます。ここでは時期がまだ早いのか、小ぶりの花が多いと思いました。

木道の脇に咲くミズバショウ 樹木の下の水たまりに顔を出したミズバショウ

木道の脇に咲くミズバショウ        樹木の水たまりに顔を出したミズバショウ

また、御池から燧ヶ岳の裏側を通って見晴地区(尾瀬ヶ原)に行った際にも、途中の温泉地区を過ぎてからはたくさんのミズバショウに出会いました。尾瀬沼と比べて、見晴地区では開花が早いのか、こちらの花の方が大きく咲いていました。草原が広がる尾瀬ヶ原では、あたり一面に広がるミズバショウを楽しむことができました。特に見晴地区から至仏山に向かって歩くと、木道の周りのミズバショウに極楽浄土への道へと誘われているような気分になり、「至仏山の名前の由来はこういうことだったのか」と勝手に納得していました。

至仏山に至る木道周辺に咲くミズバショウ

至仏山に至る木道周辺に咲くミズバショウ

一面に咲くミズバショウの群落

一面に咲くミズバショウの群落

今回は動物に食べられたミズバショウを見ることはなかったのですが、調べてみると冬眠明けのツキノワグマは根茎を食べることがあるそうです。ただ、アルカロイド(毒性があり、服用すると吐き気、脈拍の低下、呼吸困難、心臓麻痺などを起こす)が含まれているので、食料というより、体内にたまった老廃物を排出するための嘔吐剤や下剤として利用しているようです。サトイモ科とはいえ、食用にはならないようです。

檜枝岐村を尾瀬方面に向かう途中に中土合公園があり、以前訪れた際には尾瀬沼よりも一足早くミズバショウが咲いていました。久しぶりに訪れてみると花はすっかり落ち、巨大なバナナのような葉が生い茂っていました。その迫力にミズバショウの生命力を感じました。

花が落ちたミズバショウの葉が茂る中土合公園の池

花が落ちたミズバショウの葉が茂る中土合公園の池

次回はシーズンを迎えた尾瀬の様子をお伝えしたいと思います。