2021年8月
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2021年08月13日鳳凰三山にて、新たな取り組み
南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
7月中旬に鳳凰三山に設置された防鹿柵設置現場の巡視に行ってきました。南アルプス山域ではニホンジカ対策を関係者で積極的に取り組んでおり、対策の1つとして、防鹿柵が設置されています。環境省では今年度より南アルプスユネスコエコパーク韮崎市地域推進協議会と連携し、新たに鳳凰三山で防鹿柵を設置しました。
防鹿柵は南御室小屋、薬師岳小屋、地蔵ヶ岳直下・賽の河原、鳳凰小屋の4か所に設置されています。¨これまで守ってきた高山植物を引き続き守ろう¨、¨柵を設置して、昔の植生を取り戻そう¨など、それぞれの設置場所で目的や意図は異なりますが、今回の設置が良い傾向に向かうといいな、と思います。
鳳凰三山は「花の百名山」にも選定されており、この時期はさまざまな高山植物が咲きます。
巡視に行った7月中旬はクルマユリ、ヤナギラン(つぼみ)、キソチドリ、テガタチドリ、そして、南アルプス山域固有種のタカネビランジが咲いていました。中でも、オレンジ色が鮮やかなクルマユリがとても印象に残りました。ちょうど今はヤナギランや鳳凰三山の固有種・ホウオウシャジンが咲いているのではないでしょうか♪
今回の巡視はこれまでの防鹿柵設置のガスガスの天気と打って変わって、日差しが眩しい夏らしい巡視になりました。
■鳳凰三山の登山を計画されている方へ
1.今年度、鳳凰三山山域のテント場の営業は南御室小屋のみとなります。(完全予約制)
2.8月23日まで韮崎駅-御座石温泉・青木鉱泉の登山バスは運休しています。(8月13日現在)
3.広河原峠、白鳳峠から入下山される場合、コースタイムやご自身の体力とよく相談してください。
◎各小屋でコロナ対策が異なるため、必ず確認をしてください。
2021年08月13日伊豆半島で出会える夏の昆虫たち -カワトンボ科編-
富士箱根伊豆国立公園 下田 齋田滉大
みなさん、こんにちは。私が作った竹とんぼだけ上手く飛ばない齋田です。
さて、伊豆半島の夏も後半戦に差し掛かり、国立公園内では多くの動植物が観察できる季節となりました。
山や河川、草原や湿地、どこへ行っても生き物たちと出会うことのできる、自然観察にはもってこいの季節ではありますが、コロナ禍が続くなか泣く泣く外出を自粛している方も多いのではないでしょうか?
そんな生き物好きのみなさんに伊豆半島の夏の雰囲気をお伝えするべく、前回の日記に引き続き、巡視(国立公園を構成する施設の点検や利用状況の把握等を行う業務)の際に見かけた昆虫たちをご紹介します。
まずはこちら、河津七滝から浄蓮の滝を結ぶ踊子歩道で出会った「ミヤマカワトンボ」です。
【ミヤマカワトンボ】
写真ではとても小さく見えてしまいますが、腹長60mm前後と大きく(みなさんが都市部で見かけるハグロトンボは45mm前後)、カワトンボ科の中では世界でも屈指の大きさを誇るトンボです。
後翅の濃い褐色帯や体サイズ等の特徴から、遠目でも識別しやすく、比較的覚えやすい種類かと思います。
富士箱根伊豆国立公園では、山地の樹林に囲まれた渓流を中心に多くのエリアにて観察することができます。
初めて出会う方は、腹部を碧く光らせながら渓流沿いを優雅に飛ぶ姿に思わず見とれてしまうことでしょう。
続いて、こちらも同じく踊子歩道で出会った「アサヒナカワトンボ」です。
【アサヒナカワトンボ(伊豆個体群)】
写真を見て「ニホンカワトンボに見えるけど?アサヒナカワトンボの色とはちょっと違うよなあ」と思ったみなさんは流石です。そこそこのトンボ好きですね。
たしかにニホンカワトンボの橙色翅型に酷似していますが、残念ながら伊豆半島には生息していません。
ちなみに、アサヒナカワトンボとニホンカワトンボの間では両者の中間的特徴を持つ種間雑種が知られていますが、文献によると伊豆(単独生息域)個体群はニホンカワトンボとの雑種由来集団と考えられているようです。
さて、気になる見分け方ですが、アサヒナカワトンボの胸部はニホンカワトンボのそれよりもわずかに小さいらしく、一般的には「頭でっかち(頭部が相対的に大きく見える)がアサヒナ」と言われています。トンボ屋の友人に貰った様々な写真を見比べましたが、私はあまりピンときませんでした。
富士箱根伊豆国立公園では、踊子歩道や伊豆山稜線歩道等の渓流や細流にて観察することができます。
今回は、夏の季節に富士箱根伊豆国立公園にて観察できるカワトンボ科の昆虫のうち、代表的な2種について紹介しました。
先週よりまん延防止等重点措置の実施区域が拡大され、地域によっては一層の外出自粛が呼びかけられていますが、この日記を通じて少しでも伊豆半島の夏を感じて頂ければうれしく思います。
次回も伊豆半島で出会った昆虫たちを紹介します!虫好きの方もそうでない方もお楽しみに!
※外出の際には、咳エチケットの徹底やソーシャルディスタンスの確保等の基本的な感染症対策に努めましょう。また、各自治体のガイドライン等によく目を通し、責任ある行動を心掛けましょう。
2021年08月12日【小笠原】『夏休み×遺産登録10周年』特別企画展 実施中!
小笠原国立公園 小笠原 鈴木尚之
こんにちは、小笠原の鈴木です。
世間はすっかり夏休み。小笠原世界遺産センターへの来館者も親子連れが増えたような気がします。
さて、そんな小笠原世界遺産センターでは8月31日まで毎年恒例、夏休み企画展を開催中です。
今年は遺産登録10周年という事で、夏休み企画展は遺産価値の1つであるマイマイ尽くし。
日本で初めて実施したマイマイの野生復帰についての紹介や本物の殻を使っているマイマイの模型など
普段は見る事の出来ない展示も山盛りです!
<マイマイ野生復帰の紹介コーナー>
また、お子様から大人まで誰でも楽しめる「マイマイ ハント」も開催中。
遺産センター内に隠れたマイマイを見つけていただいた方にはなんと豪華景品が!
見つけたマイマイの数によって手に入る景品の数が増えるので、展示を見ながらじっくりと探してみてください。
(景品は数に限りがあるため、在庫切れになる場合がございます。ご承知おきください。)
<マイマイ捜索中>
<豪華景品チラ見せ>
多くの方のご来館をお待ちしています。
小笠原 鈴木
※緊急事態宣言中、小笠原世界遺産センターは平日(9:00~17:00)のみの開館となります。
詳細は小笠原世界遺産センター開館情報をご覧ください。
また、会議や感染症対策のため一時的に閉館している場合もございます。
ご理解とご協力の程、よろしくお願いいたします。
2021年08月06日伊豆半島で出会える夏の昆虫たち -カミキリムシ科編-
富士箱根伊豆国立公園 下田 齋田滉大
みなさん、こんにちは。仰向けに転がった蝉が突如として動き出すとびっくりする齋田です。
巷ではこの現象を「セミファイナル」と呼ぶそうですね。半ば/蝉「semi」と最後「final」を掛けた言葉遊びでしょうか。
さて、伊豆半島の夏も後半戦に差し掛かり、国立公園内では多くの動植物が観察できる季節となりました。
自然観察にはもってこいの季節ではありますが、コロナ禍が続くなか、外出を自粛している方も多いのではないでしょうか?
今回の日記では、みなさんに伊豆半島の夏を感じて頂ければと、巡視(国立公園を構成する施設の点検や利用状況の把握等を行う業務)の際に見かけた昆虫たちをご紹介します。
まずはこちら、バームクーヘンでおなじみの恵比須島にて出会った「ホシベニカミキリ」です。
【ホシベニカミキリ】
関東以西の温暖な地域で見られる南方系のカミキリムシ。どことなく南国チックな風貌をしていますね。
富士箱根伊豆国立公園では、海岸線付近の極相林やその周辺にて観察することができます。
真っ赤なボディにアシンメトリーの黒斑を持つオシャレさんですが、防潮林として植えられたタブノキを食べてしまうやっかいものとしても知られています。
続いて、河津七滝を通る踊子歩道にて出会った「シロスジカミキリ」です。
【シロスジカミキリ】
山間部で見られる大型のカミキリムシ。人差し指と比較すると大きさがイメージできるかと思います。
その圧倒的な体サイズからなる迫力もさることながら、筆で描いたような白い模様に目が引かれますね。
富士箱根伊豆国立公園では、クリやコナラの二次林を中心に多くのエリアで観察することができます。
「カブトムシを探しに行ったらでっかいカミキリムシを見かけた」という場合は本種であることが多いです。
今回の日記では、夏の季節に富士箱根伊豆国立公園にて観察できるカミキリムシ科の昆虫のうち、代表的な2種について紹介しました。
伊豆半島の豊かな自然の中では、このほかにもさまざまな生き物たちと出会うことができます。
「夏の生き物といえば昆虫でしょ!」という声が聞こえた気がするので、しばらくは伊豆半島で出会った昆虫たちにスポットを当てた内容をお届けします。
不要不急の外出自粛が呼びかけられているなか、みなさんにはこの日記を通じて少しでも富士箱根伊豆国立公園の夏を感じて頂ければうれしく思います。
※外出の際には、咳エチケットの徹底やソーシャルディスタンスの確保等の基本的な感染症対策に努めましょう。また、各自治体のガイドライン等によく目を通し、責任ある行動を心掛けましょう。
2021年08月05日南アルプス国立公園写真展@広河原インフォメーションセンター
南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
さっそくですが、写真展開催のお知らせです!!
8月17日(火)まで野呂川広河原インフォメーションセンターの1階階段の脇、2階奥のギャラリーにて、南アルプス国立公園写真展を開催しています!
1階階段には展示されている写真の中でもイチオシの9枚が展示されています。2階奥のギャラリーでは写真のほかに南アルプス国立公園でくらす生きもの・地質・文化・ニホンジカ問題についての展示も行っています。南アルプス国立公園や南アルプスユネスコエコパークに関するパンフレットの配布も行っています。バス・乗合タクシーの待ち時間などにぜひお立ち寄りください♪
南アルプス国立公園写真展も4会場目に突入しました。普段、登山をされない方や南アルプスの山々へ登ることが難しい方などに南アルプス国立公園の自然の素晴らしさや自然保護の活動を伝えるにはどのようにすればいいだろうかと考えた末、¨写真展¨という方法で取り組むことにしたこの写真展。これまで開催したすべての会場でアンケートのご協力をお願いしています。「登山はできないけど、写真を見て登った気持ちになった」、「南アルプスのことを知るいい機会になった」などの温かいご感想をいただき、大変嬉しく思うのと同時に¨開催してよかった¨と心から思います。写真展をよりよいものにしていくための貴重なご意見もいただいておりますので、反映させていきながら残りの会場も開催したいと思います!
連日、30度を超える日が続いていますね。標高が高いから涼しいだろう、と思う方もいらっしゃると思いますが、山も暑いです。そして、紫外線も強いです。日焼けもしますし、暑さで体力も奪われます。今年は熱中症で行動不能になった方からの救助要請が多いようです。水分不足は足の攣りの原因にもなります。帽子、アームカバー、サングラスの着用、多めに水分を持ちこまめに水分補給をするなどして暑さ対策するようにしてください。
2021年08月04日尾瀬沼に新ビジターセンターがオープンしました
尾瀬国立公園 前川公彦
みなさん、こんにちは。
檜枝岐自然保護官事務所の前川です。
尾瀬には尾瀬沼と山の鼻の2箇所にビジターセンターがあります。そのうち福島県側のビジターセンターである尾瀬沼ビジターセンターが新築され、7月にオープンしました。
尾瀬沼ビジターセンターは当初昭和39年に設置され、昭和60年には建替え工事を行い、翌年の昭和61年にリニューアルオープンしました。旧ビジターセンターは尾瀬の自然情報のみならず、公園の利用やマナーといった幅広い情報を提供する利用拠点として親しまれてきましたが、30年以上が経過し、老朽化が進んできたため、今回の新ビジターセンターの開設となりました。
新ビジターセンターは旧ビジターセンターに隣り合って建設され、写真のように晴れた日には旧ビジターセンター越しに燧ヶ岳を望むことができるという恵まれた立地です。建物は旧ビジターセンターと同様に周りの景色になじむようなこげ茶色です。
新ビジター周辺から見た燧ヶ岳 正面から見た新ビジターセンター
(画像はクリックすると拡大します)
では、まずテラスを通って、靴の泥をよく落としてから館内に入ります。入口正面の右側には尾瀬の天気予報やコースタイムなどの情報が表示されています。左側はリュックなどの荷物を収容するための大型の棚があり、山から下山した人でも利用することができます。建物に入るとすぐ右側には受付があり、尾瀬やこのビジターセンターに関して質問すれば、知識の豊富なスタッフが何でも親切に答えてくれます。左側を振り向くと、尾瀬周辺の山などに関する情報が掲示されていますので、これからどこか尾瀬周辺に向かう人にはとても役立ちます。
入口正面の様子 続々と来訪者が訪れます
受付と常設展示コーナー 入口近くで尾瀬の情報を集める来訪者
入口からまっすぐに進むと常設展示コーナーがあります。ここは新ビジターセンターのメインの展示場所となります。まず最初に目にするのが正面に置かれている尾瀬のジオラマです。大変丁寧に作り込まれていますので、これを見れば自分がどこにいて、これから向かおうとする場所の位置関係や距離感を立体的につかむことができます。尾瀬という湿地の特殊な地形もよく分かると思います。
常設展示コーナーをジオラマから壁面に沿って時計回りに見ていくと、まず尾瀬国立公園や尾瀬の自然環境についての概要説明があり、尾瀬の成り立ちについては液晶スクリーンで視覚的に知ることができます。続いて、尾瀬の生きものたち(昆虫、両生類、魚類、野鳥、花)、尾瀬と人の歴史のパネルが展示されています。中央部の展示台の上にはさらにはキツネの剥製など尾瀬に生息する動物たちと、シカの皮や角が展示されています。また、このコーナーの最後には尾瀬の周辺情報のパネルがあり、周辺観光地の写真が展示されています。この写真は尾瀬近隣の市町村や関係団体から選りすぐりの写真を提供していただいたもので、これを見ると尾瀬周辺には本当にきれいな景色がたくさんあることに驚かされます。
常設展示コーナーを巡る来訪者 一番奥に設置されているキツネの剥製
入口から左側に向かうと企画展示コーナーになります。ここではホワイトボードスクリーンを使って、オコジョとヤマネに関する情報を提供しています。両方とも非常にかわいい動物なので、尾瀬のアイドル的な存在です。貴重なオコジョの映像もあり、オコジョやヤマネに是非会いたいと思っている方はここで情報を仕入れていくのが良いと思います。
企画展示コーナーの奥にはレクチャー室兼休憩コーナーがあります。大型スクリーンや音響システムが設置されており、講演会などで活用する予定となっています。両側の壁には尾瀬でのベストショットの写真パネルが飾られており、尾瀬の自然を歩くことの楽しさが伝わってきます。
企画展示コーナーのオコジョとヤマネ レクチャー室兼休憩コーナー
これまで旧尾瀬沼ビジターセンターにおいても、現在の尾瀬がどのような状態にあり、いつ、どこに行けばどのような動物や植物に会えるというような訪問者への対応やリアルタイムの情報発信がなされてきました。さらに定期的な自然観察会や自然ふれあいイベントを通じて、これまで数多くの方々に自然に親しむ機会を提供してきました。
このようなビジターセンターの活動は今後も新ビジターセンターにおいて引き継がれ、これまで以上にたくさんの方々に尾瀬の自然の素晴らしさに気付いてもらえるような活動を行っていきますので、皆様方のご来訪をお待ちしております。
2021年08月04日尾瀬国立公園アクティブ・レンジャー写真展開催のお知らせ
尾瀬国立公園 尾池こず江
尾瀬国立公園の群馬側入り口である片品村において、令和3年8月3日(火)から9月2日(木)まで「道の駅尾瀬かたしな」で「アクティブ・レンジャー写真展-アクティブ・レンジャーが見つめる世界」を開催しています。
▲写真展チラシ
本写真展では、関東地方の国立公園や国指定鳥獣保護区の自然豊かなフィールドで、自然保護官補佐(アクティブ・レンジャー)が、日々の業務で撮影した一コマを紹介しています。動植物や四季折々の写真を展示していますので、お立ち寄りの際は是非一度ご覧下さい。
さらに8月30日は、尾瀬国立公園指定日になっており、尾瀬の郷片品村民は、恵まれた自然をいつくしみ感謝する日として「尾瀬の日」と定めています。尾瀬国立公園の魅力や自然保護に関することなどに興味を持っていただけると嬉しく思います。
写真展は、道の駅尾瀬かたしなの食堂スペースに展示されており、入場料なしで気楽に立ち寄れますので、ランチやちょっと一休みしながら鑑賞いただけます。
▲写真展の様子
さいごに、最近の尾瀬の様子も載せてみます。
▲尾瀬沼から燧ヶ岳(ひうちがたけ)と夕焼け 8月2日撮影
▲コオニユリ 8月3日撮影
夏の終わりを告げているような風景や、秋の訪れをほんのり感じさせる風が吹いていました。
日中はまだまだ暑いですが、朝晩は涼しくなっています。体調管理をしっかりして夏を乗り切りましょう!
【新型コロナウイルス感染拡大防止についてのお願い】
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、お出かけの際は、各自治体や訪問先が発信している情報を事前にご確認ください。
2021年08月03日富士登山成功のカギは準備にあり!<体力編>
富士箱根伊豆国立公園 小西 美緒
2年ぶりの開山!
富士山が2年ぶりに開山してから1ヶ月(静岡県側では3週間日ほど)ですね。例年梅雨明けまでは登山者も少なく比較的静かで、海の日くらいからいよいよ夏山シーズン本番となってきます。今年も4連休辺りから登山者が多くなってきた印象です。
これから富士登山を計画している方に、現地で働く環境省のアクティブ・レンジャーが安全・快適・楽しい登山にするためのポイントをお伝えしたいと思います。
富士登山成功のカギは・・・・
8シーズン富士山で働き、毎年多くの登山者を見て感じていますが、声を大にして言いたいです!
富士登山成功のカギは「準備」です!!
良い思い出になるかどうかは、かなりの部分を「準備」が占めていると思います。
特に今年は新型コロナウィルスへの対策や救助体制に影響を与えないためにも例年以上に確実な準備をすることが重要です。
自分の行動次第で「より楽しく安全な」登山になるなら、準備するに越したことはありませんよね?
- ●装備とルール
- ●体力強化
- ●プランニング・情報収集
日本一高い富士山は決して簡単ではありません。富士登山を成功に導くにはどの準備も非常に重要です。すでに「装備とルール」については7月14日に高木アクティブ・レンジャーが投稿済(「【富士山編】開山前から出来る装備の状態とルールの確認」ですので、今回は体力強化についてお伝えします。
富士山は楽じゃない!
富士山の五合目から山頂まではルートによって異なりますが、距離は片道4.5km~10.5km、標高差は片道で1,400m~1,800m。登山時間は標準で往復10~13時間。日常生活にはない運動強度です。
五合目 の標高 |
距離 (往復) |
標高差 (五合目〜山頂) |
コースタイム* | ||
吉田ルート | 2,305m | 17.4km | 1,471m | 登り:6.5時間 下り:4.0時間 |
合計:10.5時間 |
須走ルート | 1,970m | 16.1km | 1,806m | 登り:7.0時間 下り:4.0時間 |
合計:11.0時間 |
御殿場ルート | 1,440m | 20.8km | 2,336m | 登り:8.5時間 下り:4.5時間 |
合計:13.0時間 |
富士宮ルート | 2,380m | 12.2km | 1,386m | 登り:6.0時間 下り:4.0時間 |
合計:10.0時間 |
*コースタイムは個人差が大きいのであくまで目安です
それも行きは登りっぱなし、帰りは下りっぱなしと同じ筋肉を酷使します。さらに登るほど酸素は薄くなり、行動すること自体が大変になります。
みなさん、平地で10km歩いたことあるでしょうか??1日に6時間以上歩いたことありますか?それよりも山は何倍も大変です!
何故、体力強化が必要?
体力・筋力がないことで、起こり得るリスクはなんでしょうか?かなり沢山あります。
●ふんばりが効かなくなり身体のバランスが保てない
⇒転倒や落石を起こすなどの危険性が高くなる
⇒自らが怪我をしたり、他の登山者に怪我を負わせてしまうリスク
●予定より大幅に時間がかかってしまう
⇒日没による道迷いや公共交通機関に間に合わなくなる危険性
●バテてしまう
⇒集中力がなくなり道間違いをしたり、危険物に気付かない危険性
⇒景色を楽しむ余裕がない
⇒単純にしんどくてつらい。楽しくない
パトロールをしていると特に下山時にゾンビのように足を引きずって歩いている登山者をよく見かけます。見る度に「もっと準備しておけば、きっと違っただろうに、、、」と残念に思います。
体力は一日にしてならず!
体力強化には時間がかかります。日々の生活にちょっとした運動を取り入れてじっくり「登れる身体」を作っていくことが重要かつ効果的です。まだ身体ができていないと思う方は登山日を遅らせてでも、まずは身体を作る方を優先した方が結果的に安全で楽しい登山をすることができると思います。
今日から行動に移しましょう!
何をすればいい?
まず鍛える必要があるのは、
●長時間バテない持久力
●下半身や体幹
できれば1か月前くらいからこの2つを意識し準備したいところです。
<持久力>
①いつもより沢山歩く習慣を(毎日)
⇒1駅手前で下りて1~2キロ長く歩いてみたり、エスカレーターやエレベーターを使わずに階段を使ったり、急に負荷の高いことをするのではなく、まずは日々の生活に上手に取り入れていくことがポイントです。
⇒日々歩くことに慣れてきたら、登山を想定して、坂道を登ったり、ジョギングをしたりと長めの運動を週に1~2回やってみましょう。息が上がってしまうほどの運動ではなく、長時間続けられるペースを意識してみましょう。少し重い荷物を持って歩いてみるのも良いと思います。水泳や自転車こぎなども持久力アップには有効ですね。
③プレ登山で実際に登山をしてみる(月1~2回)
⇒富士登山の前に山に登ってみましょう。舗装路とはまた違いますし、自分がどんな所が苦手なのか(登り、下り、岩場、ザレ場など)というのを事前に知っておくのも重要です。5~6時間の山に登れば、富士山を1日(1泊2日の場合)登った時の自分の体力の消耗度も想像しやすくなると思います。
持久力の強化は心肺機能の強化にもなるので、空気の薄い富士山では、その効果も期待できると思います。
<下半身や体幹>
①スクワット
⇒登りでも下りでも酷使する「大腿四頭筋」を鍛えましょう!毎日続けることで着実に筋肉はついていきます。
②腹筋・背筋・プランクなど
⇒体幹を鍛えることで体全体の安定性が高まります。体の動きのスムーズさ、重い荷物を長時間背負ったり、不安定な足場でバランスを取ったり、あらゆる状況で助けてくれます。
下半身や体幹のトレーニングの方法はインターネットで検索すると沢山出てくると思いますので、ご自身の体力にあったものを試してみましょう!
何よりも続けることが大切です!そしてその努力が登山をより楽しく安全なものにしてくれます。
日本の宝である富士山を皆さんに思う存分楽しんでもらいたい!!と言うのが 私の願いです。
この日記が、準備不足によるリスクを知っていただき行動に移すきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。
次回は富士箱根伊豆国立公園内で富士登山本番の前の予行練習におすすめの山をご紹介したいと思います!
2021年08月03日荒川岳に防鹿柵を設置しました
南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
7月中旬、荒川岳の西カール底と前岳南東斜面の2カ所に防鹿柵を設置しました。西カール底、前岳南東斜面は前岳・中岳分岐と荒川小屋の間を指します。この2カ所は荒川岳の重要な景観を構成している場所であることから、お花畑を守るために平成23年度より設置しています。
前岳南東斜面のお花畑にある柵は登山道を横断するように設置され、横断箇所にはドアノブ付きの扉が設置されています。南アルプス山域で登山道を横断するように防鹿柵を設置している場所はこの荒川岳のみです。
開けっ放しにしてしまうと、ニホンジカが入り込んでしまい、柵を設置している意味がなくなってしまいます。お花畑を守るためにも、¨開けたら閉める¨を徹底していただきますよう、ご理解・ご協力をお願いします。
今年もシナノキンバイやハクサンイチゲ、ミヤマクロユリなど数多くの高山植物が綺麗に咲いていました。稜線ではミヤマムラサキ、ツガザクラ、チングルマなどが咲いていました。
雨降りの中、水がしたたる高山植物はとても美しかったです。
高山植物が一面に広がるこの景色を見るたび、¨今年も咲いてくれてありがとう¨という温かい気持ちになります。いつまでもこの素晴らしいお花畑が残ってくれることを切に願います。
このところ秋雨前線の影響で雨の日が続き、各地で災害が起こっておりますが皆様のお住まいの地域は大丈夫でしょうか?
8月も半ばにさしかかり、あっという間に富士山の開山から一ヶ月が過ぎました。
富士山に一生に一度は登ってみたい!と思っている方、多いのではないでしょうか。
日本最高峰というだけあって、山頂からの景色は、やはり一度は見てみたいと思いますよね!?
富士山に登りたいと思っている方、富士山は日本最高の独立峰だけに、気象条件も体力的にも厳しい山です。前回の日記に富士登山成功を目指す人のために準備の必要性と体力強化について書いてありますので、まずはそちらをご覧ください。
富士登山成功のカギは準備にあり!<体力編>
いきなり本番ではなくまずは富士山が見える山に一度登ってから富士登山本番を迎えてみるのはいかがでしょうか?
準備をすると必要なものや自分に足りなかったものが見えてきて、富士山登頂がものすごく大変なものから楽しいものにかわるかもしれません。
今回は、富士山登頂の前に準備編として富士山を見ながら楽しく登れる山のご紹介です!
▲長者ヶ岳山頂からの富士山(2021年3月1日撮影)
富士山が見える山はいくつもありますが私がおススメしたいのは、長者ヶ岳です。以前の私の日記にも紹介したことがあります。どこにあるかというと静岡県の富士宮市。標高1335mの山です。
登山口は田貫湖にあります。田貫湖より小田貫湿原に向かう途中、車が数台とめられるところが登山口になっていますが、駐車場が狭いのでトイレもある田貫湖バンガローサイトの駐車場(写真1)を利用するのがおすすめです。
詳しくはこちら
富士宮市のHP 長者ヶ岳について
▲写真1 田貫湖バンガローサイトの駐車場
▲ 長者ヶ岳の地図(富士宮市HPより) 赤丸は登山口、黄色丸が田貫湖バンガローサイト駐車場
田貫湖より東海自然歩道を歩きながら、長者ヶ岳の山頂までは約2時間程の登り。
所々富士山が眺められる場所があり、休憩できるベンチもあります。
▲お天気がよければ山頂から南アルプスも!(2021年3月1日撮影)
山頂にはベンチやテーブルもあり、富士山を見ながらお昼ご飯を食べるのにはよいスポットです。
夏も本番になってきましたので、無理せず熱中症に気を付けて十分な水分補給と帽子をお忘れなく。
富士山を眺めながら、富士登山に備えてみるのはいかがでしょうか。 本格的な夏の登山シーズン到来ですが、感染症予防対策、熱中症対策を十分とって安全に富士登山を楽しんでください!