ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

RSS

2022年2月25日

2件の記事があります。

2022年02月25日冬の里山

佐渡 右田京子

みなさん、こんにちは。

佐渡自然保護官事務所の右田です。

今年も大雪に見舞われ大変な思いをされている地域の方も多いかと思います。

佐渡はというと新潟の山間部ほどの積雪量はないので、私もなんとか佐渡の冬一年目を過ごしています。

事務所の屋根に積もった雪は、融けて凍ってを繰り返して長い長いツララになっています。

さて、最近のトキの様子ですが、繁殖期が近づきペアでの行動が見られるようになってきました。とはいうものの、群れ行動の時期が終わり、少数で行動していることに加え、田んぼでは雪や氷で餌が採りづらいため、今は水路などの凍っていない場所で採餌することが多く、すっかりトキの姿を見る機会が減りました。

その代わり、雪上ではこの時期、様々な生き物の痕跡、そう足跡をみつけることができます。

今回は雪上の足跡コレクションをお届けします。

まずは、トキの足跡から。大きさは10cmを少し超えるくらいです。

写真ではわかりづらいですが、場所は田んぼの畦で、傾斜のきつい斜面です。かなり歩幅もせまく慎重におりている様子が目に浮かびます。

次は大きさ約7~8cmの足跡です。

トキより少し小さい脚で、急ぎ足の様子。

この足跡の持ち主は、キジです。

農道から出てきて私の目の前をとことこ横切り、隣の田んぼで餌を食べていました。

次の2つの足跡は、何の足跡か分かりますか?左の方が少し小さく、右のものは大きめです。

答えはタヌキとテンの足跡。左がタヌキ。右がテンです。

拡大すると違いがよくわかります。

 

タヌキの足跡は、大きさ5cm弱。指の数は4本です。

そしてこちらがテンの足跡。

テンの足跡はタヌキより少し大きく、約5cm~10cm程度で、指が5本あるのが特徴です。(歩行、走行、速歩といった移動スピードの違いによっても足跡の並びが変わります)

テンの足跡の近くには、別の足跡も残されていました。

佐渡の固有種、サドノウサギの足跡です。

前足は4cmくらい、後ろ足は10~13cmくらいで、前足を出した後に、その前方に後ろ足を着地して走ります。

先日、朝出勤した際に、事務所前を駆け抜けるサドノウサギ、それを追うテンを目撃しました。ちなみに、テンはトキの天敵でもあります。

最後にとてもにぎやかな足跡をご覧ください。

田んぼ脇の農道の様子です。

左からタヌキ、キジ、人、サドノウサギの足跡です。同じ場所に暮らし、同じ道を通っているのがわかります。

生き物と人が共生している冬の里山ならではの光景に、思わず笑顔になりました。

ページ先頭へ↑

2022年02月25日【小笠原】オガサワラオカモノアラガイの世界

小笠原国立公園 伊藤竜啓

皆様こんにちは。

小笠原自然保護官事務所 母島事務室の伊藤です。

突然ですが、皆様は透明感のあるものといえば何を想像しますか?

水、宝石、ガラス、ゼリーなど...美しいものばかりですね。

綺麗な人に対して「透明感がある」といえば関西の人が話す「シュッとしてる」に近いニュアンスの誉め言葉になります。(ならないかもしれません)

透明感とは、上品な美しさを求める現代人にあと一歩をくれる重要なファクターです。

そこで今回は、小笠原で随一の透明感を誇る美しい陸貝「オガサワラオカモノアラガイ」のご紹介をします。

オガサワラオカモノアラガイは他の近い種類のなかまと比べても殻が小さいのが特徴です。

小さな殻から溢れんばかりのみずみずしく水分をたたえる麗しい姿で一定の層から熱い支持を集めており、名前の通り小笠原諸島の固有種です。

△抜群の透明感を遺憾なく発揮するオガサワラオカモノアラガイ(飼育ケース内で撮影)

殻の模様のように見える部分は内蔵です。

とても殻が薄いため、このように中身が透けて見えます。大胆ですね。

そんなオガサワラオカモノアラガイは、環境省レッドリスト2020で絶滅危惧I類(CR+EN)に指定されています。

そのため、オガサワラオカモノアラガイの生息域外保全(絶滅のおそれのある生き物を安全な施設で保護、増殖すること)を小笠原環境計画研究所(通称「おかん研」)の人たちと協力して行っています。

ここからは、私たちがどのようにしてオガサワラオカモノアラガイを飼育しているかをご紹介します。

オガサワラオカモノアラガイは葉の表面に付着するカビなどを食べるので、野外で採取してきた葉を用意して飼育ケースに入れます。

彼らは高い湿度を好むため、飼育ケースは加湿器を繋げられるように改造した特別製です。

△オガサワラオカモノアラガイのために用意された新鮮な葉が入った特製のケース

一週間ごとに新しい葉が入ったケースを用意し、オガサワラオカモノアラガイを移し替えることで常に新鮮なカビを食べられるようにしています。

引っ越しの際にはオガサワラオカモノアラガイの数を一匹ずつ数え、先週から何匹死んでしまったか、産卵はあったか、どれぐらい成長したか......など、様々なことを記録します。

オガサワラオカモノアラガイの飼育は過去に例がないため、どんな情報が後から役に立つかわかりません。なので、気が付いたことはできる限り記録に残しておきます。

△引っ越し前の特製ケース(左)と引っ越し先の特製ケース(右)

このオガサワラオカモノアラガイのためだけに用意された特別な空間は、透明なケースの外側を知らない彼らにとって世界の全てでもあります。

せめて彼らの世界が穏やかであることを願いながら、毎週の作業を行っております。

△生まれたてのオガサワラオカモノアラガイ(かわいいですね)

かつては父島でも見られたオガサワラオカモノアラガイですが、ニューギニアヤリガタリクウズムシという貝食性のプラナリアによって絶滅したと考えられています。

母島ではまだニューギニアヤリガタリクウズムシの侵入は確認されていないので、母島を訪れる際は荷物や靴などに付いた土と一緒に持ち込んでしまわないよう、注意しましょう。

オガサワラオカモノアラガイの健やかな未来のために。

△野生のオガサワラオカモノアラガイ(母島・石門山で撮影)

ページ先頭へ↑

ページ先頭へ