ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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富士箱根伊豆国立公園

353件の記事があります。

2020年08月14日清涼を求め『浄蓮の滝』へ

富士箱根伊豆国立公園 沼津 山田優子

みなさま、こんにちは。沼津管理官事務所の山田です。

ついに長かった梅雨が明けましたね。暑い夏は四季の中で得意ではない私も、今年の長すぎる梅雨の中、この時を待ちわびていましたが、梅雨明けした途端にこの暑さ、、、外に出るとサウナの中にいるようで体に堪えますね。それでも青い空と、夏らしい雲は見ていて気持ちがいいです。

今回は、歌手石川さゆりさんの「天城越え」の歌詞に登場する、『浄蓮の滝』を紹介したいと思います。

浄蓮の滝は、静岡県伊豆市湯ヶ島にある落差25m、幅7mの「日本の滝100選」に選定された伊豆最大級の名瀑です。伊豆東部火山群の鉢窪山と丸山から1万7千年前に噴火した溶岩が本谷川に流れ込み、溶岩台地と浄蓮の滝を作りました。昨年、駐車場の目の前に展望デッキが新設され、滝壺までの急な階段を降りずデッキから滝を眺めることが出来るようになりました。

【 展望デッキ 】

滝の近くまで行くと、滝のしぶきが自然のミストシャワーのようにひんやりしていて気持ちがいいです。岩肌に見える六角形の石は柱状節理です。噴火によって流れてきた溶岩がゆっくりと冷え固まって規則正しい割れ目を作りました。この辺りが溶岩台地だということを実感できる美しい自然の芸術です。

そして、滝横の崖には、静岡県天然記念物の「ハイコモチシダ」が自生しています。九州の南部と伊豆半島のみ分布していて、国内で初めてこの場所で発見されたことから、別名「ジョウレンシダ」とも呼ばれているそうです。

【 浄蓮の滝(8月4日撮影) 】

滝の水量は、雨量で大きく変わります。先月巡視に行った際は、長梅雨の影響を受けて、水量が普段の倍以上になっていました。滝壺の目の前の展望スペースまで、小雨のような滝のしぶきが飛んできてすごい迫力でした。

【 浄蓮の滝(7月15日撮影) 】

滝の下流沿いにはわさび田があり、黄緑色の絨毯が美しいです。栽培方法の「静岡水わさび伝統栽培」は世界農業遺産に認定されています。この辺りの主要道路脇にもわさび田があり、この土地で開発された畳石式わさび田を見ることもできます。わさびは食欲増進作用や、多くのビタミンが含まれていると言われていますので、夏にピッタリの食べ物ですね。

【 渓流沿いのわさび田 】

暑い夏も滝の周辺は涼しく、滝から流れてくるひんやりと湿った空気と川のせせらぎ、わさびやシダの緑が心と体を癒やしてくれます。暑さが厳しい夏ですが、日記を読んで清涼な空気を少しでも感じてもらえたら嬉しいです。

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2020年08月11日箱根に夏到来

富士箱根伊豆国立公園 山口光子

皆さん、こんにちは。

富士箱根伊豆国立公園管理事務所の山口です。

今年の長かった梅雨が終わりましたね。そして梅雨明けと共に、暑い夏がやってきました。

7月31日、偶然ですが芦ノ湖で毎年行われる湖水祭に遭遇しました。

【屏風山と芦ノ湖に浮かぶ御供船】

箱根の夏の催事として、例年行われる湖水祭 は1263回目。

今年は小規模開催となり、通常は船の数が3隻ですが、今年は1隻での開催です。

芦ノ湖の守り神である九頭龍明神を崇めるお祭りだそうです。

箱根ビジターセンター周辺や仙石原湿原も、植物の様子が様変わりしています。

【仙石原湿原周辺】

先日まで咲いていたオカトラノオに変わり、ヌマトラノオが咲き始めました。

そこに様々な種類のチョウが乱舞していますよ。

【ビジターセンター周辺】

ビジターセンター周辺では、タマアジサイが咲き始めました。

小さなタマのようなつぼみがはじけると、アジサイらしい花が観察できます。

園芸品種のアジサイとはまた、別の趣がありますね。

タマアジサイは日本の固有種だそうです。

また、最近ビジターセンター周辺では草刈りを行いました。

この草刈り、実はただ刈るだけではありません。作業者の皆さんや各所の公園関係者が協力して、希少な植物たちを守りながら、実施されています。箱根湖尻地域にお越しの際は、ビジターセンター周辺の園地ものぞいてみてください。

引き続き、新型コロナウイルス感染症対策を継続中です。箱根がある神奈川県は、現在警戒アラートが発令中ですので、ソーシャルディスタンスを保って、公園の利用にご協力ください。

※今年度の箱根地域における環境省主催「自然に親しむ運動」イベントは、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を踏まえすべて中止の運びとなりました。何卒ご了承ください。

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2020年08月03日白糸の滝と富士山

富士箱根伊豆国立公園 義高樹

皆様はじめまして。5月より沼津管理官事務所に着任しました、義高と申します。山形より富士箱根伊豆国立公園にやって参りました。着任よりはや三ヶ月。静岡の暖かな気候と、雄大な富士山のおかげでとても充実した日々を過ごしています。

私がこの度取り上げさせて頂くのは、マイナスイオンの降り注ぐ夏に涼しげなスポット、白糸の滝です。静岡県富士宮市にある白糸の滝は富士山の世界文化遺産の構成資産のひとつとなっています。

白糸の滝はその殆どが富士山の湧水であるという驚きの特徴を持っています。実は富士宮市や富士山麓エリアは湧水がとても豊富なのです。それは富士山の溶岩地層が雨水を吸収し、長い時間をかけて濾過するためです。いわば富士山が大きなスポンジとフィルターの役割を果たしているわけですね。白糸の滝はそんな富士山のメカニズムによって生み出された自然現象の一つです。実際に目にすれば、信じられないほど透き通った湧水に思わず息を飲む筈ですよ!

白糸の滝、正面

お鬢水

見ているだけで涼しい気分になってきますね。

さて、白糸の滝はその美しさから多くの人に親しまれています。しかし、美しさだけでなく、富士信仰に纏わる由緒正しい歴史も持っているのです。

富士山は霊山として古くから崇められてきました。だからこそ数々の富士信仰が発展し、浅間大社を代表とする神社などが設けられました。確かに、遠くに富士山が見えたら有り難い気持ちになりますものね。そんな富士信仰の中でも、江戸時代より一大ムーブメントを起こした富士講。白糸の滝はその修行場としても利用されました。富士講の開祖である長谷川角行をはじめ、様々な人々がこの地で修行を行い、富士山への信仰をより強固なものにしました。そんな経緯を知っていると、滝を見る目が少し変わってくると思います。

さらに近年、白糸の滝は景観や利便性といった側面で進歩がありました。静岡県が推進する無電柱化計画により、周辺地域では電線が地中に埋設され、すっきりとした青空と富士山を眺望できるようになりました。観光案内所や公衆トイレ、お店もリニューアル&バリアフリー化したことにより、美しく、多くの人にとって利用し易い園地となっています。

 

観光案内所とお土産店

新型コロナウイルスが依然として流行している昨今。白糸の滝を訪れる際は、感染予防をしっかりされた上でお楽しみ頂きますようお願いします。

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2020年07月30日富士山の麓に9年ぶりの自然現象!

富士箱根伊豆国立公園 小西 美緒

こんにちは。富士山周辺の例年の梅雨明けは7月20日前後ですが、なかなか梅雨が明けません。雨にも飽きてきたので、そろそろ青空の下に映える富士山を拝みたいです。


ただ、この大雨、長雨のお陰で富士山の麓に2011年以来9年ぶりの自然現象を見ることができました!


富士山の山梨県側には「富士五湖」と呼ばれる5つの湖の湖(山中湖、河口湖、西湖、精進湖、本栖湖)があることはご存知の方も多いと思いますが、その精進湖の近くに「幻の赤池」が出現しました!富士五湖に続く「第六の湖」とも呼ばれています。

国道139号線瀬々波橋から見下ろした赤池(7月21日撮影)

樹々の中にひっそりと現れた幻の池(上に見えているのが瀬々波橋です)(7月21日撮影)

この赤池は地下で精進湖とつながっていると言われていて、大雨が降り精進湖の水位が上昇しないと出現しません。2012年に富士五湖で仕事を始めてからずっと見てみたいと思っていたので、長雨に耐えたご褒美をいただいた気持ちです。

赤池のイメージ図

精進湖自体、かつて1万5千年ほど前にできたと言われている「せの湖」という大きな湖が噴火で流れ出た溶岩流によって3つに分断されてできた湖の一つです。そのため、西湖、精進湖、本栖湖も地下でつながっていると言われていて標高が同じです。湖の周りには火山活動の痕跡であるゴツゴツした溶岩を見ることができます。


日々過ごしていると富士五湖の自然の多くは富士山の火山活動よってつくられた、ということをつい忘れてしまいがちですが、今回の赤池の出現が思い出させてくれました。


赤池は7月中旬に出現し、少しずつ小さくなっているので、見られたらラッキーかも?

7月16日には棒(赤矢印)付近まで水があったそうです(7月21日撮影)


*池の近くに行く際に、「キャンプあかいけ(TEL:0555-87-2885)」に駐車される際には施設に一言お声がけください

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2020年07月13日梅雨の箱根植物

富士箱根伊豆国立公園 山口光子

皆さん、こんにちは。

富士箱根伊豆国立公園管理事務所の山口です。

今年の梅雨は、本当によく降りますね。箱根もかなりの雨量です。

この雨による被害が少ないと良いのですが。

なかなか巡視にもいけず、もやもやする日々が続いています。

さてそんな中、箱根パークボランティアさんたちは、新型コロナウイルス感染予防の観点から中止していた活動を一部再開しています。先日7月10日金曜日にも、ビジターセンター周辺の「自然情報収集活動」が行われていました。感染症予防の対策をしっかりと行い、皆さんそれぞれ密を避けて、自然情報を収集しています。その結果が、ビジターセンター内の一角に貼り出され、お客様たちへの情報提供となっています。

この日の成果を直接聞いて、私も思わず公園内へ観察に行ってみました。

パークボランティアさん方に、丁寧に場所を教えて頂けたので、すぐに出会うことが出来ました。

【オカトラノオとウラギンヒョウモン】

雨の止み間に、給蜜に来ていました。

どちらも珍しい植物・蝶というわけではありませんが、この季節らしい旬の生き物です。

【カキラン】

この時期に柿色の可愛らしい花をつけることから、この名が付いています。

神奈川県では絶滅危惧IB類になっているラン科の植物です。

私は初めて目にすることが出来ました。

【木性ベンチの側面が、不思議な赤色に】

こちらをよく見てみると・・・

【イオウゴケ】

通常はもう少し、硫黄が噴出するような火山帯にあるはずの地衣類です。

大涌谷という火山帯が近いので、箱根ビジターセンターでも観察できてしまったようです。

別名モンローリップ、マリリンモンローのようなセクシーな唇という名を持つ生き物です。

こちらも私は初観察でした。

パークボランティアさん方の「自然情報収集活動」のおかげで、私も簡単に季節の生き物たちに出会うことが出来ています。こういった案内は重要ですね。梅雨の季節でも、箱根ビジターセンターでは誰もが気軽に散策を楽しめる工夫がされています。近くを通った際には、是非一度立ち寄ってみてください。新しい発見があるかもしれません。

「湖尻」にある箱根ビジターセンターHP →http://hakonevc.sunnyday.jp/

今後の親しむ運動イベント情報 →http://hakonevc.sunnyday.jp/shitashimuundou.html

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2020年07月08日箱根地域のシカ調査 後編

富士箱根伊豆国立公園 高木俊哉

AR日記をご覧の皆様、こんにちは。

箱根事務所の高木です。

前回の記事では、センサーカメラの設置等を紹介しました。

今回も、後編として引き続きシカ調査について紹介します。

さて、前回までは藪の中をがさがさと入り道なき道を進み、クモの巣や泥を浴びながらデータ回収したところまでをお伝えしたと思います。

まさしく野生動物の気持ちになったつもりで、急斜面のけもの道をじっくりと歩きました。

そんな苦労を乗り越え、実際に撮影できた画像がこちらです。

シカカメラ目線

カメラ目線ですね。。。

シカ若め

こちらは角が生えています。

やや小さく見えるので、少し若いオス個体でしょうか。

シカ以外にも様々な動物が撮影されていました。

イノシシ

イノシシです。

ずんぐりとしていて迫力があります。

キジつがい

キジのつがいです。

私はペアでいるところをあまり見たことがありませんでした。

このように様々な動物が撮影できていましたが、実は全てがうまく記録できているわけではありません。

霧や風で動く植物に反応して撮影してしまうこともしばしば...

シカだけが写っているようなことは自然ではありそうもないですね。。。

これらの得られた情報を基に箱根地域でシカの害が減り、より良い共生が出来る未来があることを望むばかりです。

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2020年07月07日黄色い絨毯と天の川「南伊豆町 ユウスゲ公園」

富士箱根伊豆国立公園 下田 齋田滉大

みなさん、こんにちは。

地元のこどもたちが書いた短冊に、「みんなの願いが叶いますように」、「織姫と彦星が会えますように」といった素敵な願い事を見つけた齋田です。

ちなみに、私の幼少時代はというと、「七夕ゼリーのじゃんけんにぜったい勝つ!」でした。

さて、こどもたちの願いによって織姫と彦星が夜空で再会を果たすころ、伊豆半島の奥石廊では早くもあの花が咲き始めました。

【ユウスゲ(2020.06.29撮影)】

みなさんご存じ、昨年の日記にて「真夏の日差しが大嫌いな変わった花」としてご紹介したユウスゲです。

この可憐な花に出会えるのは、石廊崎周辺の海岸線を一望できる小高い丘に位置するユウスゲ公園。

ユウスゲは、太陽が傾くころに開花し翌朝にはつぼんでしまうワスレグサ属の一日花で、富士箱根伊豆国立公園の指定植物の一つに指定されています。

【奥石廊の池の原一帯に群生するユウスゲ(2019.07.23撮影)】

こちらの写真は、昨年の最盛期、7月下旬に撮影したユウスゲ群落。

西日に煌めく太平洋の碧を背に、草木の緑に包まれた可愛らしい黄色い花弁が磯風に揺れ動く様子は、言葉ではとても言い表すことの出来ない程に情緒的でした。

さてさて、ここまでは昨年の日記でもご紹介した内容ですが、こちらはユウスゲ公園の昼の姿。

今回の日記では、夕方から深夜にかけて楽しめるユウスゲ公園の見どころをいくつかご紹介します!

ユウスゲの花を存分に堪能した後には、崖を打つ波の音や磯風のやわらかさを感じながら、沈みゆく夕陽をのんびりと眺めるのがおすすめです。

【ユウスゲ公園から眺める夕陽(2019.11.29撮影)】

こちらの写真は、昨年の11月下旬に、ユウスゲ群落の写真とは違った画角で撮影した夕陽。

ユウスゲの最盛期である7月下旬から8月中旬には、ユウスゲが群生する斜面と太陽が地平線に沈む方角が重なり合い、辺り一面に幻想的な雰囲気を醸し出します。

なかでも、黄昏時に見られる、黄色と緑の絨毯が燃えるような夕映えにゆっくりと包まれていく光景は、この世の終わりを思わせる程の美しさです。是非ご自身の目でご観賞いただければと思います。

夜のお楽しみは天体観測です。実はユウスゲ公園は伊豆半島有数の星空スポットとしても知られています。

小高い丘の周囲には光害が一切なく、太陽が完全に寝静まった新月の夜には、まるで宝石箱をひっくり返したような満点の星空が楽しめます。

一番の見どころは、白く流れる天の川。ユウスゲの季節には一年で最もはっきりと観察することができます。

天の川が見えてくれば、織り姫星(こと座のベガ)と彦星(わし座のアルタイル)もきっとすぐに見つかることでしょう。この二つの星のすぐ近くに光るカササギの橋(はくちょう座のデネブ)をつなげば夏の大三角のできあがり。

あまりの星の多さになかなか見つけることのできない方は、7月であれば23時頃、8月であれば21時頃に真上に見える一番明るい星が織り姫星(こと座のベガ)と覚えておくとよいかと思います。

伊豆半島の奥石廊でみられるユウスゲの見頃は、7月下旬から8月中旬です。

ユウスゲが開花を始める16時頃には例年多くの見物客で賑わいますが、夏のユウスゲ公園では1日を通して素晴らしい景色が楽しめます。少しでも混みあう場合は時間をずらしての散策がおすすめですよ。

咳エチケットの徹底やソーシャルディスタンスの確保等の基本的な感染症対策に努めながら、伊豆半島の豊かな自然を存分に満喫しましょう!

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2020年07月03日森に住む『モリアオガエル』の産卵

富士箱根伊豆国立公園 沼津 山田優子

みなさま、こんにちは。沼津管理官事務所の山田です。

最近、近所の田んぼの周辺では小さな二ホンアマガエルをよく見かけます。小さな体で元気よく跳ねています。7月に入りそろそろ梅雨明けでしょうか。暑い夏が始まりますね。

今回は、ニホンアマガエルではなく、猫越(ねっこ)岳山頂の池で見つけた『モリアオガエル』の産卵を紹介したいと思います。

猫越岳山頂の池は、伊豆山稜線歩道沿いの仁科峠から天城峠へ向かった途中にある池です。

池の近くまで行くと、聞きなれない音(声)が聞こえてきました。

猫が喉を鳴らす音のような、、、さまざまな音階のコロコロコロ、、、コロコロコロ、、、普段聞いたことのない音、モリアオガエルの鳴き声です。一般的なカエルの合唱とは違い何とも不思議な大合唱です。

しばらく聞いていると、急に静まり返り、指揮者が指揮棒を振ったかのように再び大合唱が始まります。どんなタイミングで鳴いているのでしょうか。しばらく聞き入ってしまいました。

おもに森林に生息するモリアオガエルですが、産卵の時期(4月~7月)は水辺に集まってきます。成体の体長はオスが4㎝~6㎝、メスは6㎝~8㎝で、メスはとても大きいです。夜行性なので、昼間はあまり活動していませんが、鳴き声の先にオスのモリアオガエルの姿を確認出来るかもしれません。

【 モリアオガエル 】

皆さんはカエルの卵というと、田んぼの水の中にあるカエルの卵を想像するのではないでしょうか。ほとんどのカエルが水中で産卵しますが、モリアオガエルは水面の上にせり出した木の枝や、草の上などで産卵します。写真の樹上にある白い繭のようなものが卵塊です。

【 樹上のモリアオガエルの卵 】

樹上の卵はオタマジャクシを狙う鳥や動物から身を守るためと言われています。また産卵の時期は梅雨で雨が多いため、水のない樹上でも卵塊の乾燥を防ぐことが出来ます。卵塊の中で孵化したオタマジャクシは、水面に落下し1ヶ月程でカエルの姿に成長し森へ帰っていきます。

卵塊の位置を見て分かる通り、何メートルも木登りをして産卵しています。1枚目のモリアオガエル写真の長い脚と大きな手の吸盤を見るとなんだか納得出来ます。


【 モリアオガエルの卵 】

上の卵塊の写真は、伊豆半島の別の場所で撮影したものですが、水辺のない場所に産卵していて近くで撮影することが出来ました。もしかすると、産卵時は卵塊の下に水たまりがあったのかもしれません。触ってみると粘着質で弾力のあるメレンゲのような泡でした。

モリアオガエルはどうやって水辺の上にある枝を選んでいるのでしょうか?カエルは動くものを捕らえる能力が高いので、風に波立つ水面の動きを見て、水辺の上だと判断していたとしたら面白いですね。想像が膨らみます。

突然ですがここで、『モリアオガエルを探せ!!』です。下の写真の中にモリアオガエルがいます。どこにいるでしょうか?

【 モリアオガエルを探せ!! 】※クリックすると写真が大きくなります。

ヒント、真ん中の辺り、、、目を凝らしてよく見て下さい!!

見つけられましたか?

【 枝の上のモリアオガエル 】

正解は、写真中央の枝のくぼみにいました。かわいいです。

雨の多いこの時期に出会えるモリアオガエルは不思議がいっぱいでした。

この日は日中でしたが、池の上の枝で産卵を始めたペアがいて、近づく事は出来ないので遠くから少し観察させてもらいました。モリアオガエルは一度の産卵で300~600個ほどの卵を産むと言われています。たくさんのモリアオガエルが無事に森に帰れることを願いたいです。

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2020年06月25日箱根地域のシカ調査 前編

富士箱根伊豆国立公園 高木俊哉

AR日記をご覧の皆様、こんにちは。

梅雨の肌寒さと合間の焼けるような日照りに翻弄されている、箱根事務所の高木です。

実は先日、帰り際にイノシシの幼獣を見かけ、

人生初めての野生のイノシシかつ箱根での目撃でしたので、テンションが上がってしまいました(一瞬でしたが...)。

しかしやはり、大型の野生動物と人の生活の営みが交錯するような状況はあまり思わしくはありません。

適度な距離感を保ってより良い共生が望まれますが、今日、各地でイノシシやシカによる多方面への被害が発生しており、ここ箱根地域も例に漏れずです。

今回は、そんな箱根地域でのシカ対策の一環、センサーカメラによる調査について触れたいと思います。

まず、センサーカメラとは

センサーカメラ

このような野生動物の調査にはよく使われている設置型のカメラです。

前方で動くものを感知すると、勝手に撮影を行ってくれる優れもの!

そのセンサーカメラは、箱根地域の調査では芦ノ湖周辺及び仙石原湿原に設置されています。

仙石原湿原は、一部が国の天然記念物にも指定されている希少な神奈川県唯一の湿原です。

希少な植物が生育しているため、シカなどの動物に踏み荒らされてしまう等の影響から守り、

生態系の多様性を維持しようと周りには侵入防止策も設置しています。

詳しくはこちらのページもご覧ください。

さて、そんな24時間稼働してくれているセンサーカメラの稼働確認、記録されているSDカードの交換の為、作業に向かいました。

仙石原

こちらは、仙石原湿原の中(一般には立ち入り禁止です)

道は無く1、2mの藪で生い茂っており足下は見えず、

おまけにところどころにイノシシが掘ったと思われる穴(まさしく落とし穴でした)で足を取られ、

何度も声にならない声を上げました。。。

こちらは芦ノ湖の西部に位置する、三国山という山です。

登山道から外れた急斜面の中にも設置してあるので、気をつけながら作業を行います。

このような一見道なき道でも、動物にとってはけもの道にもなります。

そうやって、人知れず(知られている?)生息しているシカ達の状況を調査する為、このようにセンサーカメラを仕掛け現状把握を行っているのです。

今回は、実際の現場の雰囲気をお伝えしました。

次回に続きます。

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2020年06月22日「箱根仙石原湿原植物群落」保全活動(箱根地域)

富士箱根伊豆国立公園 箱根 山口光子

皆さん、こんにちは。

富士箱根伊豆国立公園管理事務所の山口です。

今回は今年で12回目となる、箱根ならではの自然を守る特別な作業「箱根仙石原湿原植物群落」ヨシ刈りを紹介します。普段は人の立ち入りが禁止されている特別区での活動ですが、環境省へ作業参加依頼があり、箱根町教育委員会生涯学習課の皆さん、そして箱根湿生花園の職員皆さんと、一緒に作業させていただきました。

昭和9年、箱根仙石原湿原はノハナショウブの群生地として、国の特別天然記念物に指定されました。80年ほど前の箱根では、地元の人たちがヨシやススキを刈り取って、日常生活の中でかやぶき屋根に使ったり、家畜の餌にして、野焼きや草刈り作業が盛んに実施されていました。それが自然に、湿原の維持管理に繋がっていたのです。

ですが、昭和45年以降、生活様式が変化して草刈りや野焼きが行われなくなると、残されていた湿原では「植生遷移」が進みました。驚くべきことに、人の利用がなくなった湿原は約50年で、ノハナショウブの群落や貴重な湿原性植物が消えて、ハンノキの森に変化し始めたのです。実は箱根仙石原湿原は、人との関係性があって今に残されてきた、貴重な湿原だったというわけです。

【野焼きしない実験区はハンノキが成長し、森に変化している/説明者は箱根湿生花園スタッフ様】

これではいけないと、箱根町では平成元年から野焼きを再開しました。しかし野焼きを繰り返すうちに、野焼きだけでは成長の早いススキやヨシが先に繁茂して、背丈の低い湿原性植物は成長が難しいことがわかってきます。

【左:2020年3月の野焼き様子  右:ヨシ刈り前6月の様子】

そこで平成21年から、有識者との相談も経て、以前は生活の中に根付いていた「ヨシ刈り」を再実施することが実験的に開始されました。それが今回私たちが関わった作業です。


【刈り取り作業の様子/写真は箱根町職員様より提供1】

作業前に10m四方の方形区を5箇所設置し、その中で刈り取り作業を行いました。

背丈の高いヨシを30本1束にまとめ、刈り取っていきます。

最終的には、刈り取った本数と、その重量を記録し、これまでのデータと比較します。

草刈り中は、むやみやたらに足跡をつけないように、気を遣います。

足元には、実際に湿原生植物が生きています。


【足元に観察されたモウセンゴケ(絶滅危惧Ⅰ類)】


【方形区外で観察された、可憐なトキソウ(絶滅危惧Ⅰ類)】

刈り取り後の方形区はこのような状態です。

【青い枠内にはヨシが無くなる/写真は箱根町職員様より提供2】

本来の自然の景観「箱根仙石原湿原植物群落」を後生に残す為に、このような活動が箱根では実施されています。7月には更に開花調査も予定され、箱根町の人たちによってこれからも継続されていきます。いつか、ノハナショウブの群落が再び日常に戻る日が来ることを目指して。大変ながらも、素敵な活動でした。アクティブレンジャーとしてこの活動に、今後も関わって行きたいです。

今回は普通では立ち入れない仙石原湿原の様子を紹介しましたが、「箱根湿生花園」に足を運ぶと、湿原の植物たち、そしてそこに暮らす生き物たちに出会え、学ぶことが出来ます。是非こちらにも足を運んでみて下さい。

箱根湿生花園HP ⇒ http://hakone-shisseikaen.com/

湖尻にある箱根ビジターセンターは、6月1日より開館しました。

駐車場も使えるようになっています。

ただし、状況が変わった際には変更がありえます。

箱根を訪れる際には情報を確認してお越し下さい。

「湖尻」にある箱根ビジターセンターHP →http://hakonevc.sunnyday.jp/

今後の親しむ運動イベント情報 →http://hakonevc.sunnyday.jp/shitashimuundou.html

県境をまたいだ移動が徐々に再開されています。ただし、まだ油断は禁物です。

新たな感染者増加の無いように、各自の安全対策実施がこれからは重要です。

ソーシャルディスタンスと手洗いうがいは再度心掛けていきましょう。

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