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アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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富士箱根伊豆国立公園 伊豆諸島

49件の記事があります。

2018年08月15日伊豆諸島の紫陽花リレー:ラセイタタマアジサイ<伊豆諸島地域>

富士箱根伊豆国立公園 伊豆諸島 椋本 真里奈

梅雨が明けて猛暑の到来、夏休み真っ只中ですね。

しかし、「梅雨の花」として知られるアジサイが夏季も見られるってご存じでしたか?

伊豆諸島には、主に2種類のアジサイが自生しています。

  •  ○ ガクアジサイ

  •  ○ ラセイタタマアジサイ

ガクアジサイは入梅時(6-7月)に花を咲かせますが、ガクアジサイが花期を終えた頃ラセイタタマアジサイの出番がやってきます。まさに今からが見頃です!

ガクアジサイとラセイタタマアジサイは共に伊豆諸島の準固有種で、伊豆諸島地域の全ての有人島(大島、利島、新島、式根島、神津島、三宅島、御蔵島、八丈島)で見られます。

伊豆諸島ではこの2種のアジサイがセットで分布することが多く、沢筋の不安定な立地等に群落を作ります。林の縁にもよく自生しているので、山側の車道を通れば簡単に見つかります。

※ガクアジサイについては、昨年度の花期に記事にしたので詳しくは以下をご覧下さい

https://kanto.env.go.jp/blog/2017/06/post-380.html

では今回紹介するラセイタタマアジサイとはどんなアジサイでしょうか?

一言で言うと、とにかく大きい!!

これは、ラセイタタマアジサイ(左)とガクアジサイ(中央)と一般的なアジサイ(右)の葉っぱを比較してみたものです。

ガクアジサイも普通のアジサイより大型ですが、ラセイタタマアジサイはそれをさらに上回るこのサイズ!

2mほどの低木がこのサイズの葉を付けるとなると、その存在感は圧巻です。

その様子から、大島では「サワフサギ(沢塞木)」なんて別名があります。

2018/8/7 大島・間伏林道にて撮影)

なるほど、びっしり沢を塞いでいますね!

分かりにくいかもしれませんが、中央の赤いラインが沢の流れです。

若い火山島である大島は、土壌に多く火山灰が含まれているため大変水はけがよく、川や池はほとんどありません。雨が降ったときしか沢に水は流れませんが、紫陽花とは根っこの強い植物なのでその流れにも耐えられるのでしょう。

ラセイタタマアジサイの「タマ」は、その蕾が球形であることから由来すると言われています。

直径3-4cmほどのまんまるの蕾です。

一般的な花をイメージすると、何枚かの苞葉が花を一包みにしているのかと思ってしまいますが、なんとこのラセイタタマアジサイ、それぞれの苞葉の間に蕾を持っているようです。

外側から内側へ、苞葉⇒蕾⇒苞葉⇒蕾...と交互にサンドイッチされているような構造なのですね。


全ての蕾が開ききっても、ラセイタタマアジサイの花は葉っぱに足して小振りなものです。

ガクアジサイほど色味のバラエティもなく、白~淡紫色と控えめで質素な咲き姿がまさに「日本の花」といった様子です。

ちなみに、花に見える部分は「装飾花」と呼ばれる萼片(がくへん)であり、おしべやめしべは持っていません。種を作るのは、中央にある本物の花たちです。

ガクアジサイ-ラセイタタマアジサイ群集は、伊豆諸島固有の風景です。

ここでしか見られない野生植物を、ぜひ観察しに来てください。

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2018年05月23日第3回 カンムリウミスズメ観察会@神津島

富士箱根伊豆国立公園 椋本 真里奈

「カンムリウミスズメ」は全長24cm程の小柄な海鳥で、ウミスズメ科の中では絶滅が最も危ぶまれている種です。

個体数については不明な点が多いですが、世界に約3,500-10,000羽と推測されており(1)IUCNレッドリスト(絶滅危惧Ⅱ類)、(2)環境省レッドリスト(絶滅危惧Ⅱ類)、(3)国指定天然記念物に指定されています。

伊豆諸島はカンムリウミスズメの南限の繁殖地として、およそ1,000-2,000羽が営巣していると言われています。

繁殖期(2月中旬~5月初旬)に先駆けて、12月頃から営巣地へ飛来します。

伊豆諸島地域において国指定鳥獣保護区に指定されていれる3つの無人島((ただ)(なえ)島、大野原島、鳥島)は、いずれもカンムリウミスズメにとって重要な繁殖地および利用域です。

(神津島天上山から見た祇苗島)

その内祇苗島近海において、513日(日)に開催されたカンムリウミスズメ観察会(開催:NPO法人 神津島盛り上げ隊)に、伊豆諸島ARの椋本も同行させていただきました。

参加対象は小学生以上の神津島島民。

20名を乗せた船舶は8:00頃三浦漁港を出発し、祇苗島方面へと向かいました。


「いた!」「かんむりんだ!」

うねる波の間からカンムリウミスズメが飛び立ち、参加者から歓声が上がりました。

「かんむりん」とは、カンムリウミスズメをモチーフにした神津島観光協会のゆるキャラです。初めて見る本物のかんむりんに、地域住民の皆さんもカンムリウミスズメをより身近なものに感じたようでした。

小柄な上にモノトーンカラーのカンムリウミスズメを大海原で見つけ出すのは想像以上の難易度です。

大人も子どもも立ち上がって、夢中でカンムリウミスズメを探していました。

祇苗島東側の潮目付近に差し掛かると、船の両側で続々とカンムリウミスズメが現れました。

潮目とは異なる2つの潮流がぶつかり合う場所で、水の衝突によって海底のプランクトンが巻き上げられ停留する為、それらを餌とする魚類が集まる良い漁場とされています。その魚を狙って、カンムリウミスズメも潮目によく集まるようです。

カンムリウミスズメは、繁殖期以外のほとんどの時間を海上で過ごす泳ぎのプロです。潮目で獲物を捕らえるために潜水する姿も見られました。

2時間の航海で観察できたカンムリウミスズメは計12羽。三度開催された観察会の内最多だそうです。

こちらは祇苗島の岸壁です。

ご覧の通り激しく切り立っていますが、岩礁の割れ目や穴などに巣を作るカンムリウミスズメにとっては適した地形なのです。

船を寄せてみると岩壁から鳴き声は聞こえるものの、どこに巣があるのか目視では確認できませんでした。(もしかしたらこの写真にもカンムリウミスズメが写り込んでいるかも?)

このように地形の面で営巣に適した伊豆諸島ですが、環境の悪化により営巣規模が縮小しており、航路での観察頻度が減少していることも報告されているそうです。

1940年代に食用として採卵され、50年代以降は近海で流し刺し網にかかりたくさんの成体が死亡しました。

現在、伊豆諸島で最も深刻な影響と疑われているのは、「釣人が放置するゴミやまき餌に、カンムリウミスズメの捕食者であるカラス類が誘引されること」です。

正確な個体数や減少理由など、カンムリウミスズメにはまだまだ不明確なことが多々ありますが、神津島盛り上げ隊はこの観察会を今後も継続していくとのこと!

固有の自然環境に地域住民が関心を持ち見つめ続けていくことは、環境保全においてとても大切なことですね!

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2018年01月24日伊豆諸島とツバキ

富士箱根伊豆国立公園 伊豆諸島 椋本 真里奈

伊豆諸島地域、2018年最初のAR日記です。

みなさま、本年もよろしくお願いいたします。

年も明け、伊豆諸島から最初に紹介しなければならないのは、なんといってもツバキです!

伊豆諸島地域では年間を通してさまざまな植物が見られますが、その中でもツバキは特に島の人々の暮らしに深く結びついてきた重要な花樹です。花を愛で、実から油を絞り、幹は燃料や工芸品に利用されてきました。

現在でもツバキは集落のいたるところに防風林として植えられています。

(大島 岡田地区の防風林)

8世紀ごろの日本ではツバキへの信仰があり、室町時代には園芸としてツバキの栽培が始まりました。

現在ツバキは鑑賞樹として海外でも広く注目され、品種改良によって無数の園芸品種が存在しますが、伊豆諸島にもともと自生するツバキは、それら園芸品種の掛け合わせのもとになった「ヤブツバキ」のみです。

一口にヤブツバキと言ってもその花色や花形はさまざまで、例えば三宅島ではたくさんの白色や桃色の花が見つかっています。野生のツバキは通常花びらが5-6枚ですが、大島では大輪や八重化したものも確認されています。また、花だけでなく枝葉の形や模様(斑入りか否か)も変異するそうです。

ツバキはもともと香りの少ない花ですが、伊豆諸島の野生ツバキは日本各地と比べて香りのあるものが多いのが特徴です。

香り成分の科学的分析によって明らかにされたヤブツバキの香り構成は以下の円グラフの通りです。

「爽やかですっとした、甘く漂う香り」と表現されています。

(参考:椿資料館

伊豆諸島のツバキといえば大島が有名ですが、利島ではツバキが土地の8割を覆っており、その総数は約20万本とも言われています。

江戸時代、真水が湧かず平地も少ない利島では、年貢として米の代わりに椿油を納めていました。

利島は土壌が肥沃なため樹木の生育に適しており、他の島に比べて実が大きく育ちます。

そこから絞り出す椿油はオレイン酸含有量が約85%(オリーブオイルで約75%)という高品質で、江戸時代から現在まで絶えず続いてきた椿油の生産量は全国でも1,2を争います。

(利島のヤブツバキ)

大島は、日本で1番早くにヤブツバキの開花を迎える場所です。

その温暖な気候から、夏の涼しさで花芽が促進され秋の暖かさで開花が早まるためだと言われています。

極早咲きは9月末から、遅咲きのものは5月中旬まで開花しているため、1年の大半ツバキを見ることができます。

見頃は本州より1ヶ月以上も早く、2月頃...そう、まさにこれからの季節です!1

さらに、大島ではすでに寒咲大島(オオシマザクラの花期の早い品種)がちらほら開花しています。

2018年初最初の旅行は、伊豆諸島でお花見を楽しむのはいかがでしょうか。

1/28(日)からは第63回 伊豆大島椿まつりも始まりますよ。

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2017年11月08日島のススキ野とその由縁

富士箱根伊豆国立公園 伊豆諸島 椋本 真里奈

近頃は日が短くなり、空の色も寒々としてきましたね。

年中暖かいと思われがちな伊豆大島も、すでに冬の気配がしています。

現在、大島ではハチジョウススキ(別名:ハチジョウガヤ)が見頃です。

今回はこのススキの紹介と併せて、大島の植生の特徴を簡単に解説したいと思います。

過去の記事ですでにガクアジサイやオオバエゴノキなどの島嶼種を紹介したことはありますが、大島の植物がどうして独特なのか、今更ながら説明させてください。

大島の植生に影響するのは大きく分けて3つの環境条件だと言われています。

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【 1 】 火山活動

前の記事でも紹介した通り、大島は活火山島です。

約25,000年間に渡って噴火を繰り返して、大島の大地は異なる時代に噴出した溶岩の層になっています。

(地層大切断面)

溶岩の荒原にはまず地衣類(藻類と共生している菌類の仲間)が生え、次にハチジョウイタドリ、ハチジョウススキといった順番に自然草原ができます。

その過程を経てオオバヤシャブシなどの落葉樹林になり、最終的にスダジイなどの照葉樹林に至りますが、現在三原山東側の一部ではハチジョウススキ→オオバヤシャブシの段階が見られます。

10/26 新火口展望台より三原山とハチジョウススキ)

ちなみに三宅島でも、2000年噴火の火山ガスにより森が失われたところに現在はハチジョウススキが広がっています。

2 】潮風

一般的に、海浜植物は潮風の影響を受けやすいため背の低いものが多いです。

しかし、内陸でも比較的強い風の吹く島という環境において、大島の植物は本州の近縁なものと比べて葉っぱが大きく厚い傾向があります。

大島では、植生の発達とともに大型の植物が内陸から海岸へと移ってきました。

高さがなんと約2mもあるハチジョウススキもその1つです。

葉も厚く葉幅が広く、冬でも枯れないのが特徴です。

ハチジョウススキが影を作り、強い日光が必要な海浜植物(オオシマハイネズなど)を枯らしてしまうので、大島公園海岸遊歩道では意図的に抜き取っているそうです。


(サンセットパームラインにて)

しかし、海岸型に茎が太くなった頑健なハチジョウススキも潮風にかかればこの通り。内陸のものに比べて覇気がありませんね。

3 】隔離

海に囲まれた環境から自然的な動物の出入りがほとんどなく、大島には長い間植物を食べるほ乳類(ウサギなど)があまり生息していませんでした。

身を守る必要がないため、ハチジョウススキはトゲが退化したと考えられています。

それどころか葉っぱのざらつきすらなくなり光沢があります。平和ボケでしょうか。

ちなみに、利島以南の伊豆諸島では花のほとんどない季節があるため授粉に重要なハチの一種が生息しておらず、そこに生息する別種のハチに適応して花の形が浅くなったり花期が変化したりしています。

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以上の3点は自然の要因ですが、もちろん有人島である限りそこに暮らす人々の活動も影響してきます。

例えば、林業や農業など。かつて酪農が盛んで「ホルスタイン島」とも呼ばれた大島では、牛の飼葉用として畑でハチジョウススキを栽培していた過去もあるそうです。

ありふれた植物に見えていたものも、そうなった由縁を聞いてみると面白く感じませんか。

知れば知るほど伊豆諸島は宝島!

大島だけでなく、その他7つの有人島にもぜひ足を運んでください!

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2017年09月29日【富士山がある風景100選】三原山山頂口(伊豆諸島エリア)

富士箱根伊豆国立公園 伊豆諸島 椋本 真里奈

富士箱根伊豆国立公園80周年を記念して選ばれた"富士山がある風景100選"!

伊豆諸島地域からは大島の3箇所が選定されました。今回は、『三原山山頂口』をご紹介します。

("富士山がある風景100選"については富士五湖小西アクティブ・レンジャーの日記をご覧下さい。

http://kanto.env.go.jp/blog/2017/06/100-1.html

こちらのスポットは、島中央にそびえる三原山の北西部に位置しています。

路線バスを利用すれば港から直行できますし、車があれば元町集落から開放感のある『御神火スカイライン』を登っていくのがオススメです。

大島から見る富士山は他の地域に比べてどうしても遠くなってしまいますが、広大な相模灘を挟んで望む富士山もまた格別です。

むしろ、広角から眺めることでその他の山々まで見渡せて富士山の壮大さが感じられます。

三原山山頂口は登山遊歩道の起点なので、富士山の景色を楽しんだ後は今なお活動している火山の様子も体感できます。

三原山は大島の自然環境の基盤です。繰り返す噴火と再生が造った景色を堪能しましょう!

三原山の標高は764m。

遊歩道を歩けば登山初心者にも優しいカルデラ火山です。

遊歩道からでもスコリアなどの火山噴出物や溶岩の流れが造り出した景観が見られます。

【地表から吹き出た溶岩が冷えて固まったもの】

【カルデラ内の東部に広がる火山荒原(砂漠)】

今の季節なら熱すぎず寒すぎず比較的軽装でも問題ありませんが、山頂の火口周りは一部で舗装道路が途切れて足場が悪くなるので、適切な履物を選んでください。

蹴り跳ねたスコリア(火山噴出物の粒)が靴に入ったり足首を傷つけたりするので、スニーカーよりは丈のあるトレッキングシューズがおすすめです。

霧が出ると水分で体が冷えるので、ぱっと羽織る物があれば安心ですね。

なお、三原山山頂口から内側(カルデラ内)は全域が「特別保護地区」に指定されています。

貴重な自然景観を保全するため、車両(自転車含む)の乗入れや動植物の採取は禁止されています。

持ち込みや持ち出しはせず、そこにあるものを五感で楽しみましょう!

++++++++++"富士山がある風景100選"とは +++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

富士箱根伊豆国立公園指定80周年記念事業の一環として、国立公園内と周辺地域の代表的な富士山の展望地を"富士山がある風景100選"として選定しました。
その他の選定地などの情報につきましては環境省関東地方環境事務所のページをご覧下さい。
http://kanto.env.go.jp/pre_2017/80_1.html

http://kanto.env.go.jp/to_2017/post_94.html






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2017年08月30日AR写真展開催のお知らせ(伊豆諸島)

富士箱根伊豆国立公園 伊豆諸島 椋本 真里奈

8/22(火)から9/10(日)まで、伊豆大島にて国立公園・野生生物フォトコレクション -アクティブ・レンジャー写真展-を開催中です!

会場は、大島中央にそびえる三原山の山頂口。

駐車場で最初に目に入るこちらの休憩所です。

目の前がバスの停留所なので、登山を終えて帰りのバスを待っている合間に気軽にお立ち寄り頂けます。

展示総数は39枚。どの写真も、プロが撮ったようだと好評です。

パネルの裏まで続いているのでぐるりとご覧ください。

関東地方の国立公園についてのパンフレットやチラシなども配布中です。

伊豆諸島が属する富士箱根伊豆国立公園の写真はこちら。

伊豆諸島地域からは3枚展示しております。

大島を訪れた際は是非ともお立ち寄りください!

なお、休憩所の開放時間はバスの最終便までとなっており期間中は15:30には施錠されるので、レンタカー等でお越しの方はご注意ください。朝は9:00頃に開錠です。

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2017年08月09日伊豆大島:夏休み親子噴火実験教室

富士箱根伊豆国立公園 伊豆諸島 椋本 真里奈

8/4()、伊豆大島火山博物館において「夏休み親子噴火実験教室」が開催され、スタッフとして参加してきました。

伊豆大島は火山島であり、地球の活動の歴史を感じられる場所として2010年に日本ジオパーク認定を受けました。

この実験教室は、自分たちの住む島がどのようにできたものか楽しく学び、いずれまた起こる噴火に備えるねらいで、3年前から始まったものです。(主催:伊豆大島ジオパーク推進委員会 教育文化部会、環境防災部会)

今年の参加者は、島の小学1-5年生の児童21名とその保護者。

中には、前年または前々年からのリピーターも!

当日最初のプログラムは、火山講義です。

いざ噴火したとき一体何が起こるのか、31年前に大島の三原山が噴火したときのニュース映像を交えて解説してくれました。この噴火は、約1ヶ月の全島避難を伴う大規模なものでした。

自分たちの島で実際に起きた、自分たちの知らない時代の大災害に、子供達は興味深そうに聞き入っていました。

講義の後は、噴火に伴う諸現象を再現する実験を行いました。

こちらは、伊豆大島の模型を使った火山灰・噴石の噴出実験の様子。

中央の三原山火口からいろいろなサイズの麩を一気に噴出させ、噴出物の大きさや風向によって堆積する場所が違うことを勉強しました。本物の溶岩や火山灰などにも触れて、重さや質感も体験しました。

小麦粉と水を混ぜて作った溶岩での噴出実験です。

粘り気の違う2種類の溶岩をボードの穴から噴出させ、噴火後の流れ方の違いを確認しました。

大島の溶岩は比較的サラサラで流れやすく、三原山は平らな形に拡がっています。島の子供たちは、白い溶岩山(写真右側)が三原山だとすぐに気が付きました。さすがです。

伊豆大島の地形を精密に再現した模型を使っての溶岩流実験です。

大島の溶岩粘度に合わせたシャンプーを火口に流し入れ、あふれた溶岩が流れる方向を確かめました。溶岩が流れやすい野増(のまし)地区には、民家を守るための溶岩導流が作られており、模型上に粘土を置くことでその働きを学びました。

しかし、実際は火口以外のどこからも噴火する可能性があります。子供たちは「どこから溶岩が流れ出すと自分たちの家や学校が飲み込まれてしまうのか」熱心に検証していました。

他にも、炭酸水を使った水蒸気噴火など計6つの噴火実験を行いました。

最後の質問タイムには次々と手が挙がり、島の子供たちの好奇心や防災意識がうかがえました。

三原山は神聖なものだとして、地元では御神火様(ごじんかさま)とも呼ばれ崇められてきました。

自然災害のリスクだけでなく、さまざまな恵みを与えてくれる活火山と未来も共存していくために、保全や防災に繋がる環境教育はとても大事なことなのですね。

魅力あふれる地域資源を活かし地域の活性化を図るため、国立公園は今後もジオパークと連携していきます。

伊豆大島ジオパークについてもっと詳しく(公式サイト):http://www.izu-oshima.or.jp/geopark/

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2017年06月28日雨期のお花見

富士箱根伊豆国立公園 伊豆諸島 椋本 真里奈

降り続く雨に憂鬱になってしまいますね。

こんな時期だからこそ、思い切って外で気分転換しませんか。

雨の日だって、国立公園は楽しめます!

伊豆大島では、まもなくガクアジサイが見頃です。

ガクアジサイとは、房総・三浦・伊豆半島から伊豆・小笠原諸島にかけて分布する準固有種で、主に海岸付近の日当たりの良い斜面に育ちます。雨期の花なのにお日様が好き、という意外性。

伊豆大島では、海岸沿いから三原山カルデラ内まで広く自生しています。

今回は、三原山山頂口~海岸線遊歩道の巡視で見かけたガクアジサイを紹介します。

(2017/6/22 あじさいレインボーラインにて)

「まだ三分咲きじゃないの」と思った皆さま。これ、ほぼ満開です。

多くの人がアジサイの「花」だと思っている部分は、実は花ではないのです。それは装飾花と呼ばれる萼片(がくへん)であり、おしべやめしべは持っていません。種を作るのは、中央にある小さな本物の花たち!萼片が花を縁取るように囲んでいることから、この種はガクアジサイ(額紫陽花)と名付けられました。

アジサイの語源は【集真藍(あづさあい)】...真の青い花が集まっている姿から由来しています。多くの人がイメージするような、ぽってりと真ん丸いアジサイは、ガクアジサイを品種改良してできた園芸種です。万葉集で詠われたアジサイはこちらのガクアジサイだったのかもしれませんね。

アジサイは土によってその彩りを変える、というのはちょっと有名な話ですが、ガクアジサイの萼片は特にその傾向が強いそうです。(根っこから吸収される養分が酸性⇒青系、中性~弱アルカリ性⇒赤系)

残念ながら、この日の巡視では赤系のガクアジサイは見つけられませんでした。どうやら伊豆大島の土壌は酸性気味のようです。

(2017/6/22 大島公園にて)

例えば、こちらの株の萼片は青色が濃くはっきりとしています。花も、萼片の色合いと相関して濃藍です。

大島公園の土壌はあじさいレインボーラインより強酸性のようです。

こうした雑学は、お花見散歩をより盛り上げてくれます。

雨ニモ負ケズ元気いっぱい、凛と咲く日本の花を愛でに出かけましょう!

※雨で足元が緩み危険な場所もあります。状況や指導に従って安全な公園利用を心がけてください。

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2017年06月02日お山の衣替え

富士箱根伊豆国立公園 伊豆諸島 椋本 真里奈

ご挨拶が遅れましたが、2月に伊豆諸島自然保護官事務所のARに着任いたしました椋本(むくもと)です。

伊豆諸島各島の個性や魅力を発信していけたらと思います。

富士箱根伊豆国立公園伊豆諸島地域には8つの有人島がありますが、まずは当事務所のある大島の春花情報をお届けいたします。

伊豆大島と言えば、なんと言っても椿。

91km2の大島に300万本あると言われるヤブツバキが、早咲きから遅咲きまでが代わりばんこで、初冬から晩春にかけて色鮮やかに山を染め上げていました。

椿とバトンタッチするかのように、次に山を飾るのは、オオシマザクラ。

伊豆諸島と伊豆半島~房総半島の海沿いに自生する野生の山桜です。

ソメイヨシノと違って開花と同時に葉が出てくるのが特徴で、真っ白な大輪と新緑が春山を美しく彩ります。

(写真は大島公園のヤシと海とのコラボです。島の桜、美しくてたくましいですね。)

それでは、桜も散り切った6月初旬の今、一体山々は何に色づいているのでしょうか?

...

今回取り上げるのは、「オオバエゴノキ」です!

(この時期に山で一番目を引くのは、実は派手色のオオシマツツジなのですが、今回はあえてマイナーどころをご紹介します。)

オオバエゴノキは、本土のエゴノキの島嶼変異型。

花はオオシマザクラに似た乳白色ですが、お辞儀をするように下向きに垂れて咲いていて、なんだか清楚な印象です。木の根を見つめているようなので、島ではオヤニラミ(親睨み)とも呼ばれています。

今が花期ですが、咲いているときより落花後の方が目を引きます。まるで白い絨毯のよう。

さらに、オオバエゴノキは本土のエゴノキよりも強く甘く香ります。

視覚も嗅覚も楽しませてくれるオオバエゴノキは、この季節の散策を華やがせてくれますね。

そしてもう一種、固有種や島嶼型ではないですが、この時期に山で映えているのが「スダジイ」です。

穂状に咲く花は萌葱色で、椿や桜のように目立ちはしませんが、スダジイの葉色は他の木々よりワントーン明るいため、遠目から山を見るとどこにスダジイがあるのかは一目瞭然!

(写真は裏砂漠から樹林を望んだもので、画像中央の萌葱色がスダジイの群落です。)

本来は大島を広く覆っていたスダジイですが、人が住み着くとともに薪や炭の材料として伐採された時代があり、現在ではごく僅かが群落として残っています。大島でスダジイ群集が残る区域は、自然公園法によって第2種特別地域に指定されており、写真の樹林もその一部です。

そんな歴史を持つ伊豆大島では、山中を歩くとこんなミニ遺跡とも出会えます。

中央のくぼみが見えるでしょうか。こちらは直径6mほどの「炭焼き場跡」です。

当時は、伐採した木々をそのまま山中で炭にすることで、運ぶ重量を減らしたのかもしれませんね。

いつの季節でもその固有性を味わえる伊豆大島、気軽に足を運んでください。

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2017年01月24日火山が生み出す景色【伊豆大島】

富士箱根伊豆国立公園 森山希美

寒い日が続きますね。寒さで外に出るのにためらいを感じることもありますが、こんな時こそ空気が澄んでいて、きれいな景色を見ることができる側面もあります。今回は最近伊豆大島島内で撮影した写真より、火山島ならではの景色をご紹介します。

●地層大切断面

地層大切断面

ご覧いただき分かるように、巨大な露頭です。島の外周を一周する道路の一角に姿を現します。伊豆大島では島内全域に影響を及ぼす大噴火が100から200年の周期で繰り返し発生してきたといわれており、噴火による噴出物が重なってこのような層を作っています。約100層、2万年分の噴火の歴史が刻まれています。

●トウシキ遊泳場

トウシキ遊泳場

夏には海水浴やスノーケリングを楽しむ人々でにぎわうこの場所は、外からの波や潮の流れが溶岩によって遮られ、天然のプールのようになっています。伊豆大島の海岸線では、このように溶岩が生み出した複雑な形をした入り江や潮溜まりがたくさん見られます。

●ボムサッグ

ボムサッグ

激しい噴火で飛ばされた石が地面にめり込んで残っており、これをボムサッグといいます。トウシキ海岸にあるこの石は約500m離れた波浮港(はぶみなと)から飛んできたと推測されています。

<おまけ>

●三原山中央火口

三原山中央火口

(写真提供:伊豆大島ジオパーク)※残念ながら巡視中に撮った写真ではありません

伊豆大島の中心にそびえる三原山の火口です。噴火のたびに姿を変えてきました。現在の火口は径約300m、深さ約200mの大穴となっています。

伊豆諸島の島々は、火山活動によって生み出され、姿を変えてきました。今回ご紹介したもの以外にも、火山島ならではの景色を各所で見ることができます。ぜひ「絶えず変化し続ける地球」を体感しに、伊豆諸島へお越しください。

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