ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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尾瀬国立公園 片品

13件の記事があります。

2020年05月18日#STAYHOME 尾瀬国立公園とニホンジカの今 その2

尾瀬国立公園 片品 尾池こず江

 みなさん、こんにちは。片品自然保護官事務所の尾池です。

コロナウイルスの影響で、静かにゴールデンウィークが過ぎ去りましたが、どんな世情であろうと野生動物達は尾瀬で活発に活動を始めているようです。シカは栃木県、群馬県、福島県と県境をまたぐ移動をしています。移動を自粛していただきたいものですね。

 1月10日に尾瀬のニホンジカの取組について書きましたが、今回は春と秋に日光と尾瀬を移動するシカについて紹介したいと思います。

 尾瀬のシカの多くは、夏は尾瀬、冬は日光に生息していることが分かっています。

その距離は、なんと約30㎞!!長距離の季節移動をしています。尾瀬の雪解け頃になると、日光方面から尾瀬にやってきます。彼らにとって尾瀬は旬な高級食材が揃うビュッフェなのかもしれません。ミズバショウ、ニッコウキスゲ、ミツガシワ等々好きなものから食べてお腹いっぱいにしているように思えます。

 尾瀬では、シカにGPSを付けて調査をしていますが、今年は3月中旬頃に日光から移動を開始し、現在は調査中のほとんどのシカが尾瀬方面に向かっています。

▲日光から尾瀬方面へ移動するシカ(春の移動)

 夏は尾瀬で過ごし植物を食べてしまいます。稀少な植物への被害も目立つので、関係者一丸となり柵の設置や捕獲を行っています。尾瀬の象徴的な景色でもある「下ノ大堀のミズバショウ」も食害にあっており、今年度から環境省で柵を設置する予定です。

 秋になり尾瀬に雪が降る頃、冬を越すため日光方面へ移動します。尾瀬は、数メートルもの雪が積もり、食べるものもなくなってしまうためです。越冬地は男体山、足尾、利根町根利などです。

▲尾瀬から日光方面へ移動するシカ(秋の移動)

上記の写真はセンサーカメラが撮影したものです。

環境省では、集中通過地域にセンサーカメラを設置し、シカの頭数等を調査しています。

集中通過地域とは、ほとんどのシカが通る地域のことでボトルネックともいわれています。

センサーカメラは、カメラの前を動物が通ると、その動きや熱を感知して自動で撮影してくれる優れものです。24時間365日撮影可能で色々な動物が撮影されます。


▲クマではなく、カメラ点検に来た私です。

 

(おまけ)

今回紹介したい花は・・・

▲ヒメシャクナゲ

花言葉は「危険・警戒・尊厳」

ヒメシャクナゲは、シャクナゲの仲間でこんなに小さくても樹木なんだそうです。

葉には毒があるためこのような花言葉がつけられているようです。ピンク色の花が下向きに可愛く咲いていますが、油断してはなりませんね。

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2020年05月01日#STAYHOME 「花言葉」

尾瀬国立公園 片品 尾池こず江

 緊急事態宣言が発出され、みなさんどのようにお過ごしでしょうか。

今の世情を踏まえ、それぞれの人が今できることは何か、日々新たな取り組みを考えているのではないでしょうか。できることは限られてしまいますが、少しでも心の和む日記をお届けできたらと思っています。

 今回は、過去の尾瀬シーズン幕開け頃の写真を「花言葉」と共に載せます。

▲下ノ大堀のミズバショウと至仏山(しぶつさん)2019.5.28 撮影

花言葉「美しい思い出、変わらぬ美しさ」

尾瀬と言ったらミズバショウ。雪解けとともに顔を出します。

▲リュウキンカ 2019.5.28 撮影

花言葉「必ずくる幸せ」

ミズバショウと共に咲くリュウキンカは知名度が低いかもしれませんがとても綺麗です。

 皆さんもぜひ、「花言葉」を調べてみてはいかがでしょうか。

-----「#STAYHOME おうちで国立公園を楽しもう!プロジェクト」について-----

 利用者の皆様におかれましては、入山自粛へご理解・ご協力いただきありがとうございます。

 尾瀬では「#STAYHOME」の取組に賛同し、「#STAYHOME おうちで国立公園を楽しもう!プロジェクト」を実施しています。

 新型コロナウイルスの感染拡大防止のための外出自粛により、国立公園を訪れていただくことができない状況の中で、来訪を楽しみにされていた方に向けて、また、収束後に国立公園の美しい自然や文化を満喫したいと思っている多くの方に向けて、国立公園の魅力をインターネット上で広く情報発信することを進めていきます。

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2020年01月10日尾瀬国立公園とニホンジカの今 その1

尾瀬国立公園 片品 尾池こず江

 事務所付近では、年末なかなか雪が積もらず、年が明けてやっと20㎝程度積もりました。

尾瀬では、これから数メートルもの雪が積もり、長い冬を迎えます。

▲冬の尾瀬(至仏山から尾瀬ヶ原)

 今回は尾瀬のシーズンも終わり、落ち着いたところで尾瀬国立公園とニホンジカについて少し書きたいと思います。

 近年、シカは全国的に生息数が増加しており、国立公園においても様々な被害が報告されています。尾瀬地域は、元来シカによる影響を受けずに成立した生態系であると言われていますが、1990年代半ば頃から本格的な調査により、シカによる被害が確認されています。

本州最大の高層湿原である尾瀬では主に2つの被害があります。

【被害1】植物の採食

・シカが湿原や林内の植物を食べてしまうことによって、希少な植物を含む植生の生育に影響が出てしまいます。

▲シカの食害を受けたニッコウキスゲ

【被害2】裸地化

・シカが土壌を掘り返して泥浴びをしたり、踏み荒らしたりしてしまうことで湿原が露出してしまいます。

また、ミツガシワという植物をシカが根を掘り起こして食べてしまうことも裸地化の一因になります。

そこで、尾瀬では被害軽減に向けた様々な取組を行っているのですが、シカと植物の調査をもとに、対策を実施しています。どんな調査を行っているかというと、大きく3つの調査を行っています。

【調査1】シカの生息数の傾向を知る

・ライトセンサス調査

(夜間、湿原に出没するシカをライトで照らし、シカの数をカウントします)

・カメラトラップ調査

(林内に設置した自動撮影カメラに写ったシカの撮影頻度から生息数を把握します)

【調査2】シカの行動を知る

・GPS首輪

(シカの行動を知るために捕獲したシカにGPS首輪を装着して移動経路を追跡します)

GPS首輪を付けたシカと遭遇

【調査3】植物への影響を知る

・植生被害調査

(シカに食べられた植物を数えて被害状況を把握します)

・裸地面積の把握

(ドローンで湿原を空撮し、裸地面積の増減を把握します)

こうした調査の結果をもとに、大きく2つの対策を実施しています。

【対策1】捕獲

・くくりわなや銃器による捕獲を行い、シカの個体数調整を実施しています。

【対策2】柵設置

・調査の結果等から優先防護エリア(優先的に守るエリア)関係者で決め、

 各機関で分担しながら防護柵の設置をすすめています。

尾瀬国立公園の貴重な生態系を未来に残すため様々な関係者が連携、協力をして取組を行っています。

次回は、春と晩秋に尾瀬と日光を移動するシカについて更新したいと思います。

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