佐渡
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2016年09月28日第15回放鳥
佐渡 近藤陽子
皆様、こんにちは。
佐渡では稲刈りの全盛期。晴れた日は朝からコンバインの音がし、通勤路では収穫した米を運ぶ農作業車をよく目にするようになりました。
トキたちは、夏場のように農道やあぜでエサをとることが減り、大好物のドジョウが豊富な刈田に集まるようになりました。
さて、トキたちにとっては食欲の秋となるこの時期、第15回目となるトキの放鳥が9月23~24日、トキ野生復帰ステーションで行われました。今回放鳥されたトキは1歳から6歳までのオス5羽、メス14羽の計19羽です。
今回新たに放鳥されたトキには、目印となる2色のマーカーが翼の2カ所(初列風切と小翼羽)に塗られています。
初列風切に青、小翼羽に緑が塗られたNo.269
放鳥されたばかりのトキは、定まったねぐらを持っておらず、新しい環境の情報を得るために広範囲を飛び回り、普段トキが飛来しないような場所で確認されることがあります。
野外に出た時は、空に目を向けてみてください。トキが舞う姿を見ることができるかもしれません。
初列風切に橙、小翼羽に赤が塗られたNo.263
初列風切に橙、小翼羽に青が塗られたNo.264
初列風切に黄、小翼羽に赤が塗られたNo.276
初列風切に黄、小翼羽に緑が塗られたNo.277
第15回放鳥トキ識別表
2016年09月15日平成28年度「国立公園・野生生物フォトコレクション」
佐渡 近藤陽子
皆様、こんにちは。
平成28年度「国立公園・野生生物フォトコレクション」のご案内です。
環境省関東地方環境事務所では、平成22年度から、管内のアクティブ・レンジャーが撮影した管内の動植物や風景の写真を紹介し、自然の素晴らしさ、大切さを伝え、自然保護や国立公園について普及啓発を行うことを目的に、巡回写真展「国立公園・野生生物フォトコレクション」を関東各地で開催しています。
佐渡では、第7回目となる写真展を、9月3日(土)から9月25日(日)まで、トキの森公園資料展示館で開催しております。関東地方環境事務所管内の11の事務所で勤務するアクティブ・レンジャー合計15名が新たに撮影した写真計45点を展示し、活動現場からの雄大な自然や活き活きとした生き物の姿をご紹介します。
佐渡自然保護官事務所からは、トキの写真3点を出品しております。
トキの森公園へご来場の際は、トキ資料展示館へも足を運んでみてはいかがでしょうか。
2016年06月21日第14回放鳥終了
佐渡 相原夏帆
佐渡は田植えも一段落し、新緑のまぶしい季節となりました。
<水田にて休息するウミネコ>
野生のトキは、繁殖が終わったペアが群れに合流しています。冬は2~3羽で探餌している様子がよく見られましたが、ここ最近は10羽近くの群れで餌を探す様子が見られるようになり、季節の変化を実感しています。
6月10日から4日間をかけて、第14回放鳥が行われました。トキの放鳥は2008年に始まり、毎年春と秋の2回行っています。今回は合計18羽のトキが放鳥されました。
放鳥されるトキは、観察時に遠くからでも識別できるよう、特別にアニマルマーカー(動物専用の染料)を使用して着色されています。この着色された羽は、一年ほどで生え替わります。
<上空を旋回するNo.255>
今回の放鳥では、1日目に18羽中15羽が飛び立ち、残りの3羽は4日目に飛び立ちました。4日目は3羽まとまってドジョウを食べ、満腹になったところで野外へと飛んで行きました。
放鳥されたトキは、その後地上に降りて探餌している様子や、ねぐらで休んでいる様子などが確認されました。うまく馴染めたようで一安心です。
今年は野生下で生まれたトキ同士のペアからヒナが誕生し、無事巣立ちました。野生下のトキの生存個体数は160羽を超え、トキの定着・野生復帰に向けて新たな節目を迎えています。
今回放鳥されたトキが繁殖に参加し、元気なヒナを見せてくれることを期待しています。
2016年06月10日42年ぶり!「純野生トキ」、巣立ち!
佐渡 近藤陽子
皆様、こんにちは。
佐渡では日中、汗ばむ陽気になりました。
昼間のトキたちは暑さから、口を開けて呼吸をし、体温調節をするようになりました。
さて、佐渡ではトキのヒナの巣立ちが続々と確認されています。
6月1日(水)には、1974年以来、42年ぶりに、日本の野生下で生まれ育ったトキのペアから誕生したヒナ、「純野生」トキの巣立ちを確認しました。
<巣立ちした純野生トキのNo. A45>
環境省では「両脚を巣の外に完全に出すこと」を巣立ちと定義しています。
トキの放鳥が始まってから8年。かつて日本中の空を飛び回っていたトキたちと同じように、人の手から離れ、みずからの力で生き抜いて行く、野生トキのペアから誕生したヒナの巣立ち。真の野生復帰への大きな一歩と言えるでしょう。
「純野生」トキたちが、来年も再来年も誕生し、佐渡だけではなく、再び日本各地の空を飛び回る姿が見られる日が来ることを願うばかりです。
巣立ち後もずっと観察できますように。逞しく生き抜いて行ってほしい。
祝!純野生トキ誕生・巣立ち!!
<2016/6/10現在、育雛中の野生下生まれ同士ペアとヒナ2羽>
2016年05月13日5月の佐渡
佐渡 近藤陽子
皆様、こんにちは。
<飛翔するNo.135:2016年4月5日撮影>
気が付けば山を覆っていた雪は溶け、水田には稲が植えられ、新緑のまぶしい季節になりました。
佐渡ではトキの繁殖期真只中。5月10日には今期初となるトキのヒナへの個体識別のための足環装着も行われました。
<今期初、足環を装着されたNo.A33:2016年5月10日撮影>
繁殖期のモニタリングは通常のモニタリングと異なります。
普段のモニタリングでは、どこにどの番号のトキがいて、何をしていたかを確認します。
繁殖期のモニタリングでは、どのトキとどのトキがペアか、そのペアがどこに巣を作っているのか、そのペアにヒナは生まれたのか、そのペアのヒナは何羽いるのか、といったペアごとの詳細を確認するモニタリングになります。
2016年5月13日(金)現在、確認されている営巣中のペア数は27。日ごとに変わる全てのペアの状況を把握するのはなかなか大変です。
しかし、こうして多くのペアからヒナが誕生し、そのヒナが成長していく姿を観察できることは大きな喜びです。
モニタリングを行う中で、ふ化しても弱って死んでしまったり、ある程度成長しても天敵に襲われてしまったりと、トキたちが自然の中で生きることの厳しさを目の当たりにします。それでも、多くのヒナは巣立ち、成長し、逞しく生き抜いていきます。
<巣立ちしたヒナ2羽:2015年5月28日撮影>
<巣立ちしたヒナ1羽:2015年5月25日撮影>
<巣立ちしたヒナ1羽と親鳥2羽:2015年6月1日撮影>
佐渡の自然と佐渡の人によってトキは約150羽まで増えました。
今年も多くのヒナが巣立ち、1年後も2年度もたくましく生きる姿が観察できることを願い、今日もモニタリングに励みます。
<飛翔する2015年生まれのNoA32:2016年3月10日撮影>
2016年02月16日着任のごあいさつ
佐渡 相原夏帆
はじめまして。
新しく佐渡自然保護官事務所に着任いたしました相原夏帆と申します。
これからこのAR日記を通して、日々の活動を伝えていきたいと思います。
先日さっそく、佐渡ARの重要な仕事である野生トキのモニタリングを行いました。
モニタリング業務は、佐渡島内に生息するトキの個体数の把握や行動記録等を目的としており、地域の市民ボランティアの方々と協力しながら記録を積み重ねていきます。
歩き回るトキの足環のナンバーを読み取るのはとても難しいですが、識別できたときの喜びはひとしおです。
先日は初めて、ねぐらから飛び立つトキと、ゆっくりと水田を歩き餌をとるトキの様子を観察することができました。雪の里山で見る朱鷺色はとても美しいもので、いつまでもこの風景を残していきたいと思いました。
今後もトキの野生復帰に向け努めてまいりますので、どうぞよろしくお願いします。
2016年02月02日トキを観察する際に
佐渡 近藤陽子
皆様、こんにちは。
先日降った雪は大分とけましたが、寒さは相変わらず厳しい佐渡です。
トキたちは繁殖期に入り、ペアで行動するようになりました。群れで行動していた時と比べ発見が難しくなっています。モニタリング時にもトキが雪の背景等に紛れてしまい、気付かず近くを通行して飛ばしてしまう事があります。
トキを観察する上で、「トキを飛ばさない」ことが実はとても重要なのです。
トキは現在でも日本では「野生絶滅」扱いとなっているため、観察する際の特別なルールが存在します。
(佐渡観光協会 http://www.visitsado.com/00sp/1211/02.pdf)
① トキに近付かない
② 車内から観察する
③ 大きな音や光を出さない
このルールがなぜ設定されているかと言いますと...
① トキに近付かない
人が近付くと、トキは警戒して餌を採ることをやめ飛び立ってしまいます。人が頻繁に近付くなどして、トキが落ち着いて餌を採ることができない場合、餌場を放棄してしまうこともあります。トキを観察する時は双眼鏡やフィールドスコープ(望遠鏡)を使い、遠くから静かに観察しましょう。また、観察する時も配慮が必要です。トキが木にとまっている時、付近の田んぼなどが餌場になっている可能性もあります。そのような場所に長い時間人がいると、トキが餌場におりられなくなってしまいます。
<モニタリングチームによるトキ観察時の様子>
② 車内から観察する
トキは人の姿を見ると警戒して飛び立ってしまうため、車から降りずに観察しましょう。車を停める場合は、以下の点に注意しましょう。
・他の通行の妨げにならにようにする。(目立つ場所に車を停めない)
・私有地に無断で入らない。
・ぬかるんだ場所に入って道を痛めない。
<車内でトキの群れが横断するのを待つ地域の方。トキは警戒することなく、のんびり餌を採りながら水田へ移動しています。>
③ 大きな音や光を出さない
大きな音やカメラのフラッシュなどは、トキを驚かせてしまいます。エンジン音や話し声に配慮し、写真を撮影する時は、フラッシュをたかないようにしましょう。またカメラ機能付き携帯電話やコンパクトデジタルカメラなどでは、トキが大きく写るような写真を撮ることはできません。
トキを観察したい方にはこれらのルールは少し窮屈に感じるかもしれません。しかし、こうしたルールを地域の方々が守ってきたことで、現在の佐渡のトキたちは人間の生活圏まで生息域を広げたのではないかと思います。
もうこうしたルールが必要のないほどトキが増えることを願い、今はこのルールを私自身も守ってモニタリング業務に励んでいきたいです。
※農林業に従事されている方へ
農林業に従事されている方は、田んぼ等での作業中にトキが近くにいても特別な配慮は必要ありません。普段通りの作業を行うことで、人とトキの共生を目指しましょう。
2016年01月28日1月のトキたち
佐渡 近藤陽子
明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
佐渡では、暖冬傾向が続いていたところ、先週になって急にまとまった雪が降りました。
みなさまのところではいかがでしたでしょうか?
現在佐渡では、あちこちで銀世界が広がっています。
トキたちにとってはエサ場となる水田が雪に覆われてしまい大変な季節ではありますが、繁殖期に入りペアで仲良くしているトキの姿を目にするようになりました。
トキにも人と同じように好きな相手、嫌いな相手があり、好きな相手には小枝をくわえて渡したり、お互いに羽繕いをしたりします。羽繕いされる方は冠羽(後頭部に生える飾り羽根)を立ち上げ気持ちよさそうにしています。羽繕いするほうは相手の首や腹部、脚の羽根など、仲が良くなくては触ることの出来ない箇所を羽繕いし、スキンシップをはかっているように見えます。
現在、群れ行動からペア行動へとトキの動きが変化し、さらに降雪のためモニタリング業務でトキを見つけることが困難な状況にありますが、観察されるトキたちは雪に覆われていない水の流れのあるエサ場をちゃんと見つけて逞しく生きている様子が確認されています。
厳しい寒さに負けず、無事繁殖期を乗り越え、今年も多くのヒナが巣立ちを迎えることができますように。
おまけ
<佐渡の野鳥>
オジロワシ(2016/1/7撮影)
ジョウビタキ(2016/1/10撮影)
ミソサザイ(2016/1/10撮影)
2015年10月28日第13回放鳥から1ヶ月が経って
佐渡 広野行男
皆様こんにちは。
9月25日に実施された第13回放鳥から1ヶ月が経過しました。
<両津地区にて確認されたNo.222(愛称:ゆるり)>
今回放鳥された個体はなかなか既存の群れと合流せず、放鳥した19羽のうち未だ5羽の行方が分かっていません。
また、残念ながら放鳥から3週間後にはNo.228の死体も確認され、野外で生きていく厳しさを痛感させられました。
行方が分かっていない個体の中には、本州へ渡った個体もいるかもしれません。
もし見かけることがありましたら、以下のトキ目撃情報ダイヤルにご連絡をいただけたらと思います。
≪トキ目撃情報ダイヤル(トキ交流会館)0259-24-6040≫
<13回放鳥の識別表>
さて、野外のトキの中には、1月頃からの繁殖期を前にして早くも相手を探している様子がみられます。
先日は、No.A13(2014年生まれ♂)がNo.A04(2013年生まれ♀)に迫り、雄が雌の上にのって愛情を確かめ合う擬交尾をしようとする様子が確認出来ました。
<参考:No.81(2007年生まれ♂)とNo.66(2009年生まれ♀)の擬交尾の様子:2015/7/2撮影>
残念ながら、No.A13はNo.A04に逃げられてしまいましたが、だんだんとトキの様々な恋模様が観察される季節となっていきます。
重要な動きを見逃さないよう、観察していきたいと思います。
追伸
佐渡にはハクチョウが渡ってきており、冬鳥の季節が徐々に近づきつつあります。
<トキとハクチョウ:2015/10/9撮影>
<トキとハクチョウ:2015/10/23撮影>
皆様、こんにちは。
<10月1日 佐渡市外海府の枯木にとまるNo.247>
佐渡では、稲刈りも終盤を迎え、山々は紅葉で色づき始めています。
さて、先月9月23日~24日にかけて、第15回目となるトキの放鳥が佐渡で行われました。オス5羽、メス14羽の計19羽が飛び立ちましたが、このうちの2羽が、佐渡から海を渡った新潟県弥彦村と長岡市でそれぞれ確認されました。
10月10日、新潟県弥彦村で2014年生まれのメスのトキ(個体番号269)が、
<9月23日 放鳥直後の269>
10月13日、新潟県長岡市で2015年生まれのメスのトキ(個体番号276)が確認されました。
<9月23日 放鳥直後の276>
放鳥当日、この2羽が野生下へと飛び立って行く様子を観察していた私にとって、本州での確認は嬉しいニュースでした。
放鳥直後のトキたちは、新しい環境に適応するため、早朝から長時間飛び回ります。どこが安全なねぐらなのか、どこが良い餌場なのか、あちこち飛び回って一生懸命情報を収集します。飛び疲れて止まりたくても安心して休める止まり木がどこにあるのか分かりません。分からないことだらけの新しい「野外」という環境は、運が悪ければ天敵に襲われてしまう場所でもあります。放鳥直後から一度も確認されないトキや放鳥数日後に死体で確認されるトキもいます。
順化ケージという守られた環境とは異なる厳しい野生下で、環境に適応し逞しく生きる新規放鳥トキたちを確認できた時は本当にホッとします。
No.269、No.276、よく生きていてくれた!10月20日現在も本州で確認されているこの2羽。今後も継続して観察されることを願っています。
来年は、本州でのトキたちの繁殖にも期待できるかな...?
<2016年生まれの幼鳥。佐渡にて。>
① トキに近づかず、やさしく静かに見守りましょう。
② 地域に迷惑をかけないようにしましょう。農地へ無断で入らないようにしましょう。
③ 車から降りずに観察しましょう。
④ 大きな音や光を出さないようにしましょう。
⑤ 繁殖期間(2月~6月)は、巣に近づかないようにしましょう。