佐渡
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2020年01月24日トキ、色づいています!
佐渡 菅野萌
皆さんこんにちは。
佐渡自然保護官事務所の菅野です。
新しい年を迎えましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
▲大佐渡の山々も真っ白・・・というわけではありません
佐渡は日本海側の天気らしく曇りや雨の日が多いですが、雪はあまり降らない日が続いています。
雪道運転をしなくて済むことにホッとしつつも、一方で、あたり一面真っ白になった佐渡の雪景色はさぞかし美しいのだろうなぁ・・・と思いながらトキのモニタリングをしていると・・・
おや?
なにやら視界の端に色の違うトキが!見間違いでしょうか。
もう少し角度を変えて見てみましょう。
やはり、色が違うトキがいます!
左側のトキは明らかに喉元や背中の羽の色が黒っぽく見えますよね?
実は、この羽の色の変化は繁殖期に見られる特徴で、「繁殖できることをアピールするため」あるいは「巣で子育てをしている時に天敵に見つかりにくくするため」だと考えられています。
この色の変化はどのように起きているのかというと・・・
なんと、首まわりの皮膚からはがれ落ちる黒い物質を、水浴び後に背中などの羽に塗りつけているのです!
繁殖期に羽の色を変化させる鳥は他にもいますが、皮膚からはがれ落ちる物質を塗ることで色を変えるのは、世界中でトキだけです。
羽色変化が始まっているトキを観察することが日に日に増え、いよいよ繁殖期に入ってきていることを実感している今日この頃。
今年はどのペアがどこで巣を作るのか?これからのトキたちの行動を注意深く見守っていきたいと思います!
2019年12月24日野生復帰を支えたトキたち
佐渡 近藤陽子
皆様、こんにちは。
佐渡自然保護官事務所の近藤です。
ここ数年、佐渡の野生下では、多くのヒナを誕生させてきたトキたちが、1羽また1羽と姿を消していっています。少しずつ世代交代が始まっているのかもしれません。
トキには個体識別用の足環が装着されていて、日々のモニタリングによって1羽1羽の動向が記録されています。そのため、どのトキが姿を消しているのかが分かります。
「トキが姿を消す」=「生存扱いから外れる」には、2パターンあります。1つは、死体が確認されたとき。もう1つは、モニタリングで1年以上観察されなくなったときです。
今日は、野生復帰を支えたメスのトキ3羽についてお話します。
【No.78】
<左からNo.68、巣立たせた幼鳥、No.78 2015/6/1撮影>
出生:2010年、野生復帰ステーション生まれ・メス
放鳥回:第4回放鳥(2011年3月11日放鳥)
最終確認日:2018年8月29日
子育て上手な大ベテランペア、No.68(オス)とNo.78(メス)は、モニタリングチームでは「ろくはちななはち」と呼ばれ、雌雄セットで親しまれていました。毎年3羽以上のヒナを巣立たせる子だくさんペアとして有名で、2014年から2017年の間に合計13羽のヒナを巣立たせました。2018年の夏を最後に、No.78の確認はなく、残されたNo.68は、足環のないメスを新たな相手として迎え、現在も佐渡の野生下で暮らしています。
【No.80】
<左からNo.80、No.67 2015/10/9撮影>
出生:2010年、トキ保護センター生まれ・メス
放鳥回:第4回放鳥(2011年3月12日放鳥)
最終確認日:2015年12月26日
2012年、36年ぶりに野生下でトキのヒナが誕生しました。この時、No.67(オス)No.80(メス)「ろくななはちぜろ」ペアも、みごと3羽のヒナを巣立たせました。この年に野生下で誕生したヒナは全部で8羽。この8羽には、佐渡市が全国から募集した愛称、「みらい」「きぼう」「ゆめ」など8つが付けられ、佐渡市に出生届も提出されました。67/80(ろくななはちぜろ)ペアは、2012年から2015年の間に計11羽のヒナを巣立たせました。毎年同じ集落のスギ林で営巣し、地域の方々に愛されたペアでした。残されたオスのNo.67はNo.95という新たなメスを迎え、現在もNo.80と過ごしていた地域で暮らしています。
【No.127】
<水田で採餌するNo.127 2018/5/7撮影>
出生:2011年、出雲市トキ分散飼育センター生まれ・メス
放鳥回:第9回放鳥(2013年9月29日放鳥)
最終確認日:2018年8月27日
孵卵器内でふ化し(人工ふ化)、人によって育てられた(人工育雛)トキは、野外での繁殖成功率が低いことが分かっています。人工ふ化・人工育雛のトキを、モニタリングチームでは、人人(じんじん)と呼んでいます。No.127は人人ですが、2014年から2017年の間に8羽のヒナを巣立たせました。多くの人人個体が繁殖に失敗する中、これは驚異的な数字です。No.127は人人トキの中でも際立って優秀なメスでした。2018年の夏を最後にNo.127の確認はありません。
※近年の放鳥個体の多くは、トキのもとでふ化し(自然ふ化)、トキに育てられた(自然育雛)個体です。
私たち佐渡のアクティブ・レンジャーは、日々野生下に生きるトキの動向を追跡・記録しています。モニタリングの経験から、どの地域に何番のトキがいるのか、何番のトキがどこの餌場を好むのかなど、個体ごとの特性を把握しているため、長く観察している個体ほど愛着がわいてきます。そうした個体が見られなくなったり、死体で発見されたりすると、「よく頑張った。ありがとう。」という気持ちになります。野生下を逞しく生き抜き、人知れず消えていくトキたち。私たちは君たちの活躍を忘れない。
日々トキたちの姿を見守る者として、佐渡のトキ野生復帰に大きく貢献したメスたちをご紹介させていただきました。
<No.127の娘、No.A11とA11が誕生させたヒナ 2018/5/25撮影>
2019年12月09日珍鳥、ご来島!
佐渡 近藤陽子
皆様、こんにちは。
佐渡自然保護官事務所の近藤です。
先週は、佐渡最高峰の金北山(きんぽくさん:1,172m)を有する大佐渡山地から平野部にいたるまで広く雪に覆われ、佐渡にも本格的な冬がやって来ました。
<雪に覆われた大佐渡山地>
佐渡のアクティブ・レンジャーは、早朝、トキがねぐらから飛び立つ様子を観察し、午前10時頃までトキの動向を追跡・記録するモニタリング業務を行っています。この時期の身を切るような寒さは、早朝のモニタリングを辛いものにしますが、ガンカモ類の渡りの時期だけあって、幸運にあずかることがあります。
先日、水田でトキを観察(※)していると、私の車の横に見慣れない色のカモがおりてきました。大きさはカルガモくらい。頭は白く、首から腹・背中にかけて鮮やかな橙赤色(とうせきしょく)。翼は黒と白のコントラストが美しく、観賞用に品種改良されたカモの仲間でもやってきたのかと思いました。
(※佐渡ではトキの生態に影響がないよう車内から観察を行っています)
このカモの正体は、「アカツクシガモ」。全国的にも珍しく、佐渡では2004年以来、15年ぶりの確認となりました。
<アカツクシガモ 2019/11/20撮影>
アカツクシガモの多くは、ユーラシア大陸中部で繁殖し、冬期、インドや中華人民共和国などのユーラシア大陸南部へ渡り、越冬します。日本には希な冬鳥、または旅鳥として飛来が確認されています。
漢字では「赤筑紫鴨」。日本では、「ツクシガモ」と「アカツクシガモ」が確認されていますが、どちらも西日本、特に九州北部(筑紫の地域)での確認が多いことが名前の由来になっているようです。
ちなみに、英名は「Ruddy Shelduck」。赤い(Ruddy)ツクシガモ(Shelduck)を意味します。ツクシガモの配色を知っている人には、Sheld(多彩な)+duck(カモ)でShelduck(ツクシガモ)と英名になっているのもうなずけるのではないでしょうか。
その後、このアカツクシガモが佐渡で再確認されることはなく、15年ぶりの飛来を確認したのは、私だけでした。
寒い日のモニタリング中に突然舞い込んできた幸運。鳥好きの私には、まるで夢のような出来事でした。
この時期の朝は辛いですが、朝日を浴びて輝きながら飛んでいくトキや、赤く染まる金北山は、いつ見ても息をのむ美しさで、よくよく考えれば、毎日こんな景色を見ながら仕事ができること自体が幸運だなあと思いました。
<光を浴びて飛ぶトキ>
自然の厳しさと美しさが溢れる冬の佐渡。夏とはまたひと味違った佐渡を一度体験してみてはいかかでしょうか。おどろくような幸運が巡ってくるかもしれません。
<冬の外海府>
2019年11月29日佐渡の眺め
佐渡 菅野萌
皆さんこんにちは。
佐渡自然保護官事務所の菅野です。
いよいよ11月も終わりに近づき、朝晩は手がかじかむようになってきました。
佐渡では紅葉が見頃を迎えている場所もあれば、すでに冬の装いになりつつある場所もあり、様々な景色を楽しむことができます。
▲林道を見上げると紅葉の鮮やかさが目に飛び込んできます
▲佐渡の北側にある「二ツ亀」と呼ばれる小さな島では、すでに冬の気配を感じます
前回の記事(http://kanto.env.go.jp/blog/2019/10/post-776.html)でご紹介したとおり、野生下トキのモニタリングでは高台に行くことがあります。
今回はそんな高台モニタリングの最中に出会った素敵な景色をご紹介したいと思います。
まずはこちら!
林道の途中に突如現れた見晴らしの良い場所。
広がる青い空に紅葉が映え、中央に見えるダムの水面が良いアクセントになっています。上から見下ろす紅葉もまた違った味わいです。
続いてはこちら!
先ほどの写真の地点よりも標高が高いので寒さが増すのですが、佐渡の里山だけでなくその先に広がる真野湾までも見渡すことができます。
モニタリングでは、複雑な道を覚えたり、車を脱輪させてしまわないように注意して運転したりと、大変なことが色々とありますが、こういった素敵な景色に出会えるのもこの業務の醍醐味なのではないかと思います。
皆さんも佐渡に来島される際はトキだけでなく、佐渡の海、山、田んぼなどが織りなす自然豊かな風景にも目を向けてみてください。
2019年10月31日上から見るトキ
佐渡 菅野萌
皆さんこんにちは。
佐渡自然保護官事務所の菅野です。
佐渡では朝晩がかなり冷え込む季節となり、事務所周辺の木々も色づき始めてきました。
大佐渡の山々も尾根の方から紅葉が深まり始め、朝日に照らされると一層赤みを増すのでとても綺麗です。
▲朝日に照らされる大佐渡の山々
さて、こんな良い眺めの場所で私は朝から何をしているのかというと・・・
もちろん野生下トキのモニタリングです!
ご存じのとおりトキは鳥ですから、ひとたび飛んでしまえば、林の1つや2つも何のその。
観察しているトキが建物や林の向こう側へと飛んで行ってしまえば、その行方をすぐに追うことはできません。
ねぐら出するトキを観察していても、飛んでいった方向しか把握することができず、実際どこのエサ場に降りたのかは探してみないと分かりません。そんな時、高台からのモニタリングが有効になるのです。
▲高台からのモニタリングの様子
写真のように平野部を一望できる高台から見下ろすと、トキの動きが一目瞭然!
どこでエサを食べているのかも正確にわかるので、トキを探して車で動き回っている他のモニタリングメンバーに場所を教えることができます。
写真だとハッキリしませんが、実際は動いているので目立ちます
しかし、あちこちでトキが飛んでいる様子が見えてしまうがゆえに、どの群れを追うべきか迷ってしまうこともしばしば・・・
なんとか「このトキたちを最後まで追うぞ!」と心に決めてエサ場におりるところまで見届けても、その場所が一体どこであるのか特定するのに一苦労。
やはりモニタリング技術は経験がものを言うのだなと思いながら、早く一人前になれるよう今日も奮闘中です。
2019年10月18日冬の使者、到来
佐渡 近藤陽子
佐渡自然保護官事務所の近藤です。
連日、台風19号の被害状況が報道され、被害のあまりの大きさに言葉を失う思いです。
亡くなられた方々に謹んでお悔やみ申し上げますとともに、ご遺族と被災された方々へ心からお見舞い申しあげます。1日も早い復旧・復興を心より願っております。
佐渡では、温泉施設が床上浸水の被害に遭い、一部地域では停電も起こりました。また、各地で崩落があり、復旧作業が進められています。
台風は、多くの被害をもたらしましたが、珍客も運んできました。
100羽を超えるハクチョウの群れです。
佐渡で見かけるハクチョウの多くは、渡りの途中に一休みするだけで、越冬する個体はほとんどいません。多くても20~30羽程度。佐渡に来て5年経ちましたが、一度にこれほどまとまった数のハクチョウを佐渡で見たのは初めてでした。
現在、佐渡に飛来しているハクチョウは、コハクチョウとオオハクチョウの両方がいるようです。
くちばしの黄色い部分が、くちばしの先にかけて鋭角に入るのがオオハクチョウ、丸く入るのがコハクチョウです。
<オオハクチョウ:くちばしの黄色い部分が、くちばしの先にかけて鋭角に入る>
<コハクチョウ:くちばしの黄色い部分が、くちばしの先にかけて丸く入る>
体の大きさもオオハクチョウのほうがコハクチョウよりも一回り大きいです。
遙かシベリアから渡ってきたハクチョウたち。佐渡でしっかり栄養を蓄えて、越冬地へ無事に渡って行ってくれることを願います。
おまけ
次の2枚の写真には、ハクチョウではない鳥が混ざっています。
<答え>
1枚目 ダイサギ
2枚目 トキ (右隅のねずみ色の鳥は、コハクチョウの幼鳥です)
2019年10月10日日本産トキ最後の生息地での放鳥
佐渡 近藤陽子
皆様、こんにちは。佐渡自然保護官事務所の近藤です。
2019年9月27日、佐渡市片野尾(かたのお)の棚田でトキの放鳥を行いました。地域の方々が放鳥箱を開けてトキを放す、初めての試みです。
片野尾は、佐渡海峡に面する前浜地区に位置し、前浜地区は日本産トキ最後の生息地として知られています。日本産トキが生息していた時からずっと、前浜地区ではトキの保護活動が行われています。
<佐渡市片野尾の棚田>
私たちが勤務する佐渡自然保護官事務所は、トキの順化訓練を行う施設「佐渡トキ保護センター野生復帰ステーション」の管理棟内にあります。放鳥当日、ここで放鳥のための順化訓練を受けた17羽のトキのうち10羽を、1羽ずつ箱に入れ、今回の放鳥場所とした片野尾へ運びました。
<最後の健康チェックを行い、1羽ずつ箱に入れていきます>
片野尾へ運ばれたトキが入った箱は、海が見える棚田の一角に並べられました。トキ保護に尽力した片野尾の住民の方々が各箱の脇に立ち、放鳥箱のテープカットを行いました。箱の蓋が開き、地域住民の方々や関係者が見守る中、10羽のトキが片野尾の空へ飛び立ちました。
<放鳥の様子>
<飛翔するNo.382>
放鳥を見守っていた地域の方々からは 「わあ!綺麗だなあ!」、「みごとだ!」、「歴史的瞬間だ!」などの歓声があがりました。
<放鳥されたトキを見上げる地域の方々>
片野尾での放鳥には、日本産最後のトキを見ていた方々もいらっしゃいました。
1981年、前浜地区に生き残った日本産最後の野生トキ5羽が人工繁殖のために捕獲されてから38年。
「ああ、懐かしい...」とトキを見上げる姿を見ていて、佐渡の人々のトキへの思いが、今のトキたちを支えているように感じました。
現在、片野尾で放鳥されたトキを含め、434羽のトキが日本の空を舞っています。
この先もトキが舞う佐渡でありますように。心から願います。
2019年08月28日暑いトキは・・・?
佐渡 菅野萌
皆さんこんにちは。
佐渡自然保護官事務所の菅野です。
気がつけば8月が終わろうとしている今日この頃。
少しずつ涼しくなり、野生下のトキのモニタリングがしやすい気候になってきました。
相変わらず足環は草陰に隠れてしまい読みづらいのですが、エンジンを切った車内の暑さに耐える必要がないのはありがたいことです。
▲稲穂とトキ
さて、時期がずれてしまったようにも思えるのですが、今回は暑い日のトキの様子についてご紹介したいと思います!
私たち人間は暑いと汗をかくことによって体温調節できるような仕組みになっていますよね?
ところが、鳥は汗をかくことができません。
では、トキは一体どうやって体温調節しているのでしょうか。
そのヒントがこちらの2枚の写真。
この写真は暑い日のトキの様子を連写したものです。
喉の辺りに注目してみてください。膨らんだり、縮んだりしている様子がわかるでしょうか。
なんとトキは嘴を開け、喉を動かすことによって熱を放出させているのです!
その様子を映像でご覧いただけないのがとても残念なのですが、犬が舌を出してハアハアやっているところを思い浮かべてもらうと良いかもしれません。
(ただし、トキは犬のように舌を出したりはしません)
▲農道でも暑そうにしているトキ
さらに、トキは羽毛のない、顔の赤い部分からも熱を発散しているそうです。
ちなみに、トキは大きく分けてペリカンの仲間です。
どうでしょう。喉の膨らんだ状態のトキを見ると、少し説得力があるように思えませんか?
2019年08月09日トキを探せ!
佐渡 菅野萌
皆さんこんにちは。
佐渡自然保護官事務所の菅野です。
今期の野生下のトキの繁殖期が終了してからもう少しで1ヶ月が経ちます。
繁殖期を終えたトキたちは群れで行動するようになるので、多いときには10羽以上でまとまって田んぼの畦で餌を探す様子や、枯れ木にとまって休む様子などが確認されるようになりました。
▲枯れ木で休息する7羽のトキ
アクティブ・レンジャーの業務の1つであるモニタリングでは、佐渡島を1km×1kmに分割した区画の中から設定した調査区をくまなく回り、トキがいるかどうかを確認する調査を行うことがあります。
私が担当した調査区の一つは、田んぼが広がる地域。
道も縦と横しかなく、簡単に調査できそうに思えるのですが・・・
▲佐渡の平野部の田んぼ
今は夏真っ盛り。稲の草丈もだいぶ伸びています。
この時期になるとトキは畦にいることが多いのですが、低い位置にいたり、餌を探して頭をさげていたりすると見つけにくいため、トキに気づかないこともあります。
▲このトキはなんとか見えています
「トキがいない」ということも大切なデータの一つなのでおざなりにはできません。
見えづらいと余計に見落としがないか不安になります。
目をこらして観察しているうちに、ひっそりと1羽でエサを探しているトキを見つけたときは「見落とさなかったぞ!」と嬉しくなるのですが、いざ確認場所を地図に記録しようとすると、いつのまにか調査区の外に出ていたというようなことも・・・
一人前にモニタリングをこなすにはまだまだ修行が必要そうです。
▼こちらのHPではモニタリング中に撮影した、野生下のトキの様子をご覧いただけます。
是非チェックしてみてください!
※佐渡自然保護官事務所ではトキの生態に影響を与えないように、原則として車内からのモニタリングを 行っています。
□放鳥トキ情報 野生下のトキに関する最新情報を毎週更新中!
http://blog.goo.ne.jp/tokimaster
□公式ツイッター 「佐渡の車窓から」
皆様、こんにちは。
佐渡自然保護官事務所の近藤です。
新潟県佐渡市では、この冬ほとんど雪が降らず、最近では冬を感じる前に春が来てしまったような暖かい日が続いています。
<佐渡自然保護官事務所の敷地内でもフキノトウが>
さて、「佐渡といえば朱鷺」と連想される方も多いかと思います。
佐渡は、1981年まで日本産最後のトキが生息していた場所であり、現在も野生復帰の取り組みにより、約400羽のトキが佐渡の野生下で暮らしています。
そうなんです。佐渡の野生下には約400羽ものトキがいるんです。
<木にとまるトキの群れ>
どうしてトキはここまで増えることができたのでしょうか?
佐渡の魅力でもあるその理由を3つお話します。
理由その1. 「佐渡の人々の思いによって長年トキの保護活動が行われてきた」
トキは、江戸時代には日本各地で見られる種でしたが、明治に入り狩猟が盛んにおこなわれるようになると、次々と姿を消していきました。そして、農業の近代化によってさらに数が減り、1981年には佐渡で5羽が生き残るのみとなりました。日本最後のトキの生息地となった佐渡では、戦前からトキの保護が叫ばれ、佐渡の人たちは100年以上も前からトキの保護活動をおこなってきました。こうした佐渡の人たちのトキを思う気持ちによって続けられた長年の保護活動が、現在のトキの状況につながっています。
理由その2. 「佐渡の環境」
佐渡市には、トキのエサとなる多様な生物が育まれる水田の確保を目的とした「朱鷺と暮らす郷づくり認証制度」というものがあります。トキは、浅い水辺でドジョウやカエル、水生昆虫などを食べていいて、水田はトキにとって欠かせない環境です。「朱鷺と暮らす郷づくり認証米制度」の水田では、畦畔の除草剤を使用せず、魚が行き来できる魚道(ぎょどう)を設置したり、夏場、水田を乾かす時期に、生きものの逃げ場となる「江」と呼ばれる深みを設置したりするなど、生きものを育む農法が採用されています。こうした水田はトキだけでなく、佐渡に渡ってくる希少な渡り鳥たちにとっても重要なエサ場となっています。
<佐渡の水田で確認された絶滅危惧種の鳥類>
また、佐渡には水田などの水辺のそばに、トキがねぐらとして使ったり、巣をかけたりできる大木が育つ林があります。水田と林が入り交じって存在する佐渡の環境は、トキが暮らすのに適した環境と言えます。
<佐渡自然保護官事務所のある佐渡市新穂正明寺からの景色>
理由その3. 「トキとの共生の島」
佐渡では、地域の人々のトキを見守り共生していこうとする意志や努力によって、トキが生息できる地域社会が築かれています。
<トキのエサとなる水田の生きものを調査・学習する授業>
<トキとの共生のためのルールが記載された看板>
今では、佐渡のあちこちで見られるようになったトキ。
その背景には、佐渡の豊かな自然環境と、人々の忍耐強く熱い思いがありました。
もし、佐渡でトキを見かけたら。
そんな背景があることを思い出していただけると幸いです。
<人の生活するすぐそばで暮らすトキたち>