2018年6月 1日
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2018年06月01日小笠原諸島・兄島のカタツムリを救う!
小笠原国立公園 玉井徹
こんにちは!
はじめまして、小笠原自然保護官事務所・新任アクティブレンジャーの玉井です。
今回は小笠原諸島・兄島でのカタツムリを守る対策についてご紹介します。現在小笠原では、"独自の生態系"と"固有種"を守るために、さまざまな外来種駆除の取り組みが行われています。なかでも兄島では、固有のカタツムリを捕食しているクマネズミの駆除活動が進められています。
〉上 ネズミに補食されたカタマイマイ
〉下 兄島固有のクチベニカタマイマイ
〉兄島。奥に父島が見える。
兄島は父島の北、約500mの海峡をはさんだところに位置しています。無人島で、世界的にも珍しい乾性低木林が広がっており、今でも原生の自然が残っています。また、兄島固有のカタツムリも多く生息しています。
クマネズミの駆除を行うため、兄島へは、父島の宮之浜というビーチから出発します。宮之浜は、町からもアクセスがよく、海の底はほとんどがサンゴで人気のあるビーチです。ここから兄島へ向かうわけですが・・・このときからすでにカタツムリ保全の取り組みは始まっています!靴底についた泥の中にはプラナリアが潜んでいる可能性があります。このプラナリアは、カタツムリを捕食し、絶滅へと追いやってしまいます。そのため、兄島にプラナリアを持ち込まないために、履物はすべて泥を落としてきれいな状態にします。さらに、お酢のスプレーを使って死滅させます。また、リュックや衣服についていないかもチェックします。これでようやく乗船です。
船に揺られること約10分。さっそく、兄島のビーチに着きました。ここから険しい道のりを歩荷します。
〉海抜0mからの急な登り、安全には十分注意します。
設置予定エリアに到着、作業開始です。
この日の作業はベイトステーションの設置です。
〉とにかく暑いです!日差しが非常に強く、5月でも汗が滝のように流れます。水分・栄養補給は欠かせません。
〉ベイトステーション。両端に入り口があり、ネズミがそこから入って、中の殺鼠剤を摂食するという仕組みとなっています。
作業は事前に決めておいたルート上にベイトステーションを設置していきます。もちろん、整備された道ではないので、作業中、足下には十分注意します。なぜなら、何気ないところでも落ち葉の下には固有のカタツムリがたくさん生息しているからです。作業によって、カタツムリへの影響を及ぼすことのないように気を配ります。この日は約80個のベイトステーションを設置し作業が終わりました。今後は殺鼠剤の補充や痕跡の確認、調査などが始まります。
このように、兄島にプラナリアを持ち込まないことや、ネズミを駆除することで、固有のカタツムリの保全に取り組んでいます。小笠原諸島は世界自然遺産であるとともに、人が自然を守る最前線であることを知ってもらえたらと思っています。
2018年06月01日360度アジサイの花に包まれる 伊豆半島下田公園
富士箱根伊豆国立公園 吉川貴光
(下田公園 アジサイ)
この時期、下田公園ではたくさんの花を咲かせたアジサイを楽しむことが出来ます。今年は例年よりも開花が早いようで、6月に入る前にはもう5分咲きになっていました。
歩道を歩いていると次々と目に飛び込んでくる色とりどりのアジサイがとても綺麗です。
(開国記念碑)
歩道の途中には、黒船艦隊を率いたペリーによって下田が開港してから100年を記念した開国記念碑があります。
(空堀)
戦国時代、攻め入る豊臣軍に対して、北条軍が南伊豆の防衛拠点としていた下田城の跡が下田公園です。当時防衛の為に作った空堀の跡が残っています。
そこから更に先へ進むとアジサイの群生地があります。山の斜面を埋め尽くすように咲いたアジサイに圧倒されます。下田公園のアジサイの数は15万株300万輪といわれ、見応えは十分です。
1つ1つが大きく、手のひらを超えるような見事な花が咲いています。
100種以上のアジサイが咲いており、様々な形や色の花を楽しむことができます。
背丈ほど伸びたアジサイは歩道を覆っており、アジサイのトンネルを歩くような感覚でした。下から見上げるアジサイもとても綺麗でした。
伊豆急下田駅から徒歩20分程歩いたところにある下田公園では6/1~6/31までアジサイ祭りが開催されます。これから梅雨を迎え、どんどん花が増えていくと思います。アジサイ以外にも見所満載の下田公園にぜひ足を運んでみてください。
皆様、こんにちは。
新潟県佐渡市では、爽やかに晴れ渡る日が増え、出かけるのが楽しくなる季節になりました。
<佐渡市鷲崎、二ツ亀 2018.5.26撮影>
現在、佐渡のトキたちは繁殖期真っ只中。しかし、今年は多くのペアで繁殖の失敗が確認されています。巣を作っていたけれど、途中で作ることをやめてしまったペア。卵を温めていたけれど、途中で温めるのをやめてしまったペア。ヒナが誕生していたけれど、天敵の捕食にあったのか、ヒナが確認されなくなってしまったペア。今年、誕生したヒナの羽数は、昨年の3分の2ほどにとどまっています。
そんな波乱に満ちた今年の繁殖期、職員が驚くような繁殖成功もありました。
それは、No.92(オス)とNo.200(メス)ペアの繁殖成功です。
<No.92(オス)>
<No.200(メス)>
たかだか繁殖成功と思うかもしれませんが、データ上、このペアが繁殖に成功することはほぼないとされていました。
その大きな理由に、このペアの有精卵率の低さがあります。
トキの繁殖失敗が観察で確認されると、職員は巣の下へ行って卵の殻を回収します。この卵の殻から有精卵か、無精卵か、トキが何個卵を産んだのかを調べます。
<トキの巣の下に落ちている卵殻 ※写真は92×200とは別ペア>
2015年からペアとなり、毎年繁殖に参加している92×200(職員が記録を取る時、ペアを92×200、92/200などと記載します)。回収された卵殻の解析の結果、92×200の有精卵率はずっと1割ほど。自然界で繁殖している他のトキ達と比較しても、これはかなり低い数字です。
有精卵率が低くなる要因として、トキの飼育形態が影響していると考えられています。No.92は人・人(じんじん:「人工ふ化・人工育雛」の職員が使用する略語。No.92は、ふ卵器内でふ化し、育雛器内で育ちました。)で、No.200が人・自(じん・じ:「人工ふ化・自然育雛」の略語。ふ卵器内でふ化し、トキの親に育てられたトキのこと)。
トキのトキへの刷り込みは、ヒナの目が見えるようになった時期に起こっていると考えられています。ヒナの目が見えるようになった時期に育雛器に入っていると、初めて見る生き物が人間となり、こうして育ったトキは繁殖期にトキに対する繁殖へのモチベーションが、トキの親の元でふ化し育ったトキに比べて低くなるようです。その結果、上手く交尾ができずに有精卵を産むことができないのではないかと考えられています。
<親が育てない等の理由で人工育雛されているトキのヒナ>
こうした背景もあり、3年連続で繁殖に失敗している92×200に対して、職員は今年も繁殖成功はしないだろうと予測していました。
しかし!今年の繁殖期、92×200はついにヒナを誕生させました!しかも2羽!
<左からNo.92とヒナ2羽>
毎年92×200の巣作りから抱卵、抱卵中止を観察し続け、頑張ってるけれど成功しないこのペアを見守ってきた私たち職員にとって、本当に嬉しいニュースでした。
「繁殖の経験を積むほど有精卵を産む確率は高まる」とのデータは出ています。が、ここまで有精卵率が低かった92×200ペアの今年の大逆転は、これからのトキの前途が大きく開かれていくような希望を与えました。
今後は、このヒナたちが無事に巣立ち、再来年、92×200の子供たちが繁殖する姿を見られることを夢見て、今年の繁殖期を引き続き見守っていこうと思います。
<ヒナに吐き戻したエサを与えるNo.92>