関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。
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皆様、こんにちは。
佐渡自然保護官事務所の近藤です。
▲佐渡市畑野の田んぼと夕日
新潟県佐渡市は、雨が降る日が多くなり、肌寒くなりました。
虫の音色が秋の深まりを感じさせます。
現在、佐渡島の自然界には約350羽のトキが生息しています。何羽ものトキが刈田に下りて採餌している光景も、もう珍しいものではなくなってきました。「トキが増えた」ことは、単にトキの羽数が増えただけでなく、「トキを取り巻く自然環境が豊かになった」とも言えます。
▲佐渡市佐和田地区の刈田で採餌するトキ7羽
私たちの事務所がある佐渡市新穂(にいぼ)は、トキの野生復帰事業の中心地でもあり、島内最大のトキのねぐらがある地域でもあります。今回は、そんな豊かな自然に囲まれた私たちの事務所周辺で、「よく見かけるけど、実は貴重な生きもの」2選をご紹介します。
1.サドカケス
佐渡のカケスは、本州の亜種カケス(学名:Garrulus glandarius japonicus)とは異なり、佐渡島にのみに生息している亜種サドカケス(学名:Garrulus glandarius tokugawae)とされています。サドカケスの方が頭部が白く、くちばしが太いと言われることもありますが、この2亜種の外見的な違いはほとんどありません。
▲事務所のマツにとまるサドカケス。翼に入る青が美しい。
そんな佐渡の名を冠するサドカケス。事務所の敷地内でよく目にしますが、どうやら繁殖もしているようです。3月のある日、1羽のサドカケスが事務所へ続く道路沿いの地面から苔を剥いでいました。巣材を集めて、付近の林で営巣することにしたようです。
▲くちばしいっぱいに苔をくわえるサドカケス
このあたりには、エサとなる昆虫もドングリもたくさんあります。結局、巣を見つけることはできませんでしたが、事務所で仕事をしていると、毎日鳴き声が聞こえてくるので(この文章を作成している現在も)、きっと子孫を残していることでしょう。いつか巣を見つけてヒナの成長を見守りたいものです。
ちなみに、カケスは英語でJay(ジェイ)。「ジェッ!ジェッ!」という特徴的な鳴き声が、英名の由来になっています。
2.サドガエル
こちらも佐渡の名を冠した佐渡島固有のカエルで、事務所周辺の田んぼやため池などで確認されています。
サドガエルの特徴は、「黄色い腹」と「鳴き声」。学名Glandirana susurraの「susurra」はラテン語で「ささやく」を意味し、実際にサドガエルの鳴き声は非常に小さく、耳を澄まさないと聞こえないほどです。サドガエルには、鳴嚢(めいのう)というカエルが鳴くときに膨らませている皮膚の膜が発達していないため、アマガエルのような「ケロケロ」と響く鳴き声は出さず、「ジー、ジー」という小さな機械音のような鳴き声を出します。
▲サドガエルの背面と黄色の腹面。
田んぼのあぜを歩くと、ピョンピョンと飛び跳ねて出てくるので、容易に見つけることができます。そんなサドガエル、島内での生息範囲は限られており、数が減っていることが近年の研究で明らかになりました。2018年現在、近い将来絶滅の恐れがある「絶滅危惧IB類」に指定されています。
▲サドガエルを捕食するトキ
サドカケスもサドガエルも、そしてトキも、里地里山の生きもの。人が手間暇かけて管理した水田や里の環境が彼らの命を支えています。現在は、トキが舞うほど自然豊かな佐渡ですが、かつて田んぼでは農薬による影響からか、死んだドジョウが浮いているのをよく目にした、と聞きます。そのような環境のままであったなら、トキだけでなく、トキのエサとなるドジョウまでも姿を消してしまっていたかもしれません。
人間のそばにいる生きものたちは、自然の豊かさと私たち人間の生活の安全性を示す、実は貴重な存在なのかもしれません。守るに十分値するかと思います。
あなたも身近にいる生きものに目を向けてみてはいかがでしょうか。彼らはきっと多くのことを教えてくれるでしょう。
【特別出演:佐渡の里地里山のみなさん】
▲農道で、自分の体と同じくらいの長さのイモムシと戦うスズメ。(佐渡市羽茂村山)
巣にはお腹を空かせて待っているヒナでもいるのでしょうか。
何としてでもこのイモムシを持って帰りたいようです。
スズメは、人のいない環境では生息していない、私たちにはもっとも身近な野鳥の1つです。
▲親鳥にエサをねだるセグロセキレイの巣立ちヒナ。(佐渡市大和)
民家脇の電線にとまって、親鳥がエサを持って戻ってくるのを待っていました。
民家の横には、小川が流れ、田んぼや林もあり、子育てするには良い環境だったようです。
▲親鳥からエサをもらうツバメの巣立ちヒナ。(佐渡市沢根)
近年、減少していると考えられているツバメ。農耕地の衰退に伴うエサの減少、西洋風の家屋増加により巣 がかけにくくなったことなどが原因と考えられています。
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アクティブ・レンジャーとは、自然保護官の補佐役として、国立公園等のパトロール、調査、利用者指導、自然解説などの業務を担う環境省の職員です。管内には、日光、尾瀬、秩父多摩甲斐、小笠原、富士箱根伊豆、南アルプス国立公園があります。
皆様、こんにちは。
佐渡自然保護官事務所の近藤です。
▲佐渡市畑野の田んぼと夕日
新潟県佐渡市は、雨が降る日が多くなり、肌寒くなりました。
虫の音色が秋の深まりを感じさせます。
現在、佐渡島の自然界には約350羽のトキが生息しています。何羽ものトキが刈田に下りて採餌している光景も、もう珍しいものではなくなってきました。「トキが増えた」ことは、単にトキの羽数が増えただけでなく、「トキを取り巻く自然環境が豊かになった」とも言えます。
▲佐渡市佐和田地区の刈田で採餌するトキ7羽
私たちの事務所がある佐渡市新穂(にいぼ)は、トキの野生復帰事業の中心地でもあり、島内最大のトキのねぐらがある地域でもあります。今回は、そんな豊かな自然に囲まれた私たちの事務所周辺で、「よく見かけるけど、実は貴重な生きもの」2選をご紹介します。
1.サドカケス
佐渡のカケスは、本州の亜種カケス(学名:Garrulus glandarius japonicus)とは異なり、佐渡島にのみに生息している亜種サドカケス(学名:Garrulus glandarius tokugawae)とされています。サドカケスの方が頭部が白く、くちばしが太いと言われることもありますが、この2亜種の外見的な違いはほとんどありません。
▲事務所のマツにとまるサドカケス。翼に入る青が美しい。
そんな佐渡の名を冠するサドカケス。事務所の敷地内でよく目にしますが、どうやら繁殖もしているようです。3月のある日、1羽のサドカケスが事務所へ続く道路沿いの地面から苔を剥いでいました。巣材を集めて、付近の林で営巣することにしたようです。
▲くちばしいっぱいに苔をくわえるサドカケス
このあたりには、エサとなる昆虫もドングリもたくさんあります。結局、巣を見つけることはできませんでしたが、事務所で仕事をしていると、毎日鳴き声が聞こえてくるので(この文章を作成している現在も)、きっと子孫を残していることでしょう。いつか巣を見つけてヒナの成長を見守りたいものです。
ちなみに、カケスは英語でJay(ジェイ)。「ジェッ!ジェッ!」という特徴的な鳴き声が、英名の由来になっています。
2.サドガエル
こちらも佐渡の名を冠した佐渡島固有のカエルで、事務所周辺の田んぼやため池などで確認されています。
サドガエルの特徴は、「黄色い腹」と「鳴き声」。学名Glandirana susurraの「susurra」はラテン語で「ささやく」を意味し、実際にサドガエルの鳴き声は非常に小さく、耳を澄まさないと聞こえないほどです。サドガエルには、鳴嚢(めいのう)というカエルが鳴くときに膨らませている皮膚の膜が発達していないため、アマガエルのような「ケロケロ」と響く鳴き声は出さず、「ジー、ジー」という小さな機械音のような鳴き声を出します。
▲サドガエルの背面と黄色の腹面。
田んぼのあぜを歩くと、ピョンピョンと飛び跳ねて出てくるので、容易に見つけることができます。そんなサドガエル、島内での生息範囲は限られており、数が減っていることが近年の研究で明らかになりました。2018年現在、近い将来絶滅の恐れがある「絶滅危惧IB類」に指定されています。
▲サドガエルを捕食するトキ
サドカケスもサドガエルも、そしてトキも、里地里山の生きもの。人が手間暇かけて管理した水田や里の環境が彼らの命を支えています。現在は、トキが舞うほど自然豊かな佐渡ですが、かつて田んぼでは農薬による影響からか、死んだドジョウが浮いているのをよく目にした、と聞きます。そのような環境のままであったなら、トキだけでなく、トキのエサとなるドジョウまでも姿を消してしまっていたかもしれません。
人間のそばにいる生きものたちは、自然の豊かさと私たち人間の生活の安全性を示す、実は貴重な存在なのかもしれません。守るに十分値するかと思います。
あなたも身近にいる生きものに目を向けてみてはいかがでしょうか。彼らはきっと多くのことを教えてくれるでしょう。
【特別出演:佐渡の里地里山のみなさん】
▲農道で、自分の体と同じくらいの長さのイモムシと戦うスズメ。(佐渡市羽茂村山)
巣にはお腹を空かせて待っているヒナでもいるのでしょうか。
何としてでもこのイモムシを持って帰りたいようです。
スズメは、人のいない環境では生息していない、私たちにはもっとも身近な野鳥の1つです。
▲親鳥にエサをねだるセグロセキレイの巣立ちヒナ。(佐渡市大和)
民家脇の電線にとまって、親鳥がエサを持って戻ってくるのを待っていました。
民家の横には、小川が流れ、田んぼや林もあり、子育てするには良い環境だったようです。
▲親鳥からエサをもらうツバメの巣立ちヒナ。(佐渡市沢根)
近年、減少していると考えられているツバメ。農耕地の衰退に伴うエサの減少、西洋風の家屋増加により巣 がかけにくくなったことなどが原因と考えられています。