ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2019年10月

15件の記事があります。

2019年10月11日自然観察会【バリアフリーで楽しむ秋の箱根】行事報告(箱根地域)

富士箱根伊豆国立公園 箱根 三瓶雄士郎

こんにちは!富士箱根伊豆国立公園管理事務所の三瓶です。

現在関東に接近している台風19号。神奈川県でも海岸線の有料道路で一部通行止めが始まり、これからさらに交通規制が本格的に始まってくるそうです。明日は事務所に隣接している箱根ビジターセンターも台風接近に伴い終日閉館しております。また、周辺施設も臨時休業しております。ご注意ください。

さて、今回は10月6日(日)に箱根ボランティア解説員連絡会と共同開催した「バリアフリーで楽しむ秋の箱根」の様子をお伝え致します。

 このイベントは当初、箱根ボランティア解説員連絡会の主催行事でしたが、平成21年度より環境省も協力して開催する共催行事としているものです。今回は昨年に比べ晴天に恵まれ、すがすがしい秋の陽気に包まれながら開催できました。(昨年の様子は★コチラ

 

↑少人数ながらも子どもも参加!やはり子どもが参加すると場の雰囲気が一気に明るく賑やかになります。

今回は「香り」を中心に五感で楽しむことをテーマに箱根ビジターセンター横のバリアフリー園地で観察会を行いました。

(左)観察した香る植物 / (右)見つけた木の実に興味を示す0歳児

それぞれ特徴的な香りがするこの植物は、以下の香りがします。

◆サンショウバラ→「サンショウ」と名に入っているが全くの別種。バラ科で実からはフルーティーな香りがする。フォッサマグナ要素の植物の一つで、箱根では「ハコネバラ」と呼ばれています。

◆サンショウ→言わずもがな日本の香る植物の代表格。葉の白斑に香る成分が含まれているため、そこを傷つければ爽やかな香りが出ます。

◆ホオノキ、クロモジ→クスノキ科で爽やかな香りがする。属にジャパニーズハーブとも呼ばれる種類です。

◆ゴマギ→触るとゴマの香りがすることが名の由来です。個人的な感想だとゴマ油、ゴマせんべいの香りと認識してます。

◆クサギ→漢字で「臭木」と書くほど葉から強烈な匂いを放つ木です。優しく触れて嗅ぐとピーナッツバターや炊きたてのご飯の香りに似ているとか。自分は苦手な匂いの木でした。

撮影の時はムスっとしていますが、嗅いだり触ったりしてニコニコしながら楽しんでいました。もちろん大人にも効果的。植物アロマとして使われるクロモジには特にリラックス効果があります。

(左)ネイチャーゲーム【落ち葉でステンドグラス】/(右)作成と透かしてみた様子

黒い台紙に様々な形をくり抜いたものに、裏に葉を貼ってスカして色を楽しむもの。今回は観察した植物の葉の形にくり抜き、色づいた葉を透かして楽しみました。

↑ネイチャーゲーム【俳句でハイク】

午前の周辺散策で体験したこと・感じたことを5文字7文字で記録し、それを合わせて俳句になぞって発表するもの。本格的な俳句ではないので、そこはご了承ください。

〈出来た句〉

・ホオノキの 実をまわしては 香りきく

・はじめての ミミズの匂い クサギの木

・きのかおり もみじのうたで まんぷくだ

【合唱祭】

パークボランティアのハーモニカの伴奏にのせて、童謡「紅葉」や「夏の日の思い出」「夕焼け小焼け」等を皆さんで合唱しつつ、歌詞に合わせて踊ったりもしました。まさに音楽の秋ですね。

午後は、少し天候が崩れる予報だったため、少し早めに観察会が終了しました。

今回は子どもが参加してくれたことで、昨年は感じなかった子どもがいる賑やかさを体感することが出来ました。

特にやはり子どもの笑顔は何事にも勝りますね。参加者もパークボランティアも一番の笑顔のタイミングは、子どもが天真爛漫に遊んでいる時でした。来年はもっと子どもが参加出来るように増やしていきたいと思います。

【今回のイチオシ写真】

【仙石原ススキ原草原】

普段はカラーで撮影しますが、今回はセピアで撮影しました。ススキにはこういった色合いも合いますね。

見頃をむかえていますので、宜しかったらぜひ台風が過ぎた後にお越しくださいませ!

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2019年10月11日【小笠原】オガサワラハンミョウ

小笠原国立公園 玉井徹

10月になり、小笠原にもようやくやや涼しい風が吹き始めました。

今年も、オガサワラハンミョウの季節が到来です。

オガサワラハンミョウは現在、

世界で兄島にのみ生息する希少な昆虫です。

野生絶滅を避けるため、

世界遺産センターで増殖し兄島へ移殖しています。

世界遺産センターでの飼育は順調に進んでおり、

成虫が続々と羽化しています!

着々と準備は進み、個体を移殖するため、いざ兄島へ。

早朝、現場に到着。

オガサワラゼミの鳴き声が響きます。

ここはかつてオガサワラハンミョウが生息していた場所です。

オガサワラハンミョウは

林内にパッチ状に存在する裸地を好みます。

いよいよ、野生下へ。

まずはケースのまましばらく野外を観察させ

その後一斉に放虫します。

放虫後の行動は、すぐに飛び立ったり

様子を伺いながら歩行したり、ケースに留まったり様々です。

少し観察を続けてみます。

なにやら茶色い物体を咥えています。

オガサワラオオアリを捕食しているようです!

空腹だったのでしょうか。さっそく、大自然に馴染んでいますね。

〈モニタリング調査の際に個体を識別できるよう、体にピンクとグリーンのマーキングを施しています。〉

交尾を始める個体も確認。

オスは下顎でがっちりとメスにしがみついて離しません。

順調に産卵してくれることを願います。

しばらくすると、ほとんどの個体は

兄島の台地へ元気に飛び去っていきました。

今後は、定期的にモニタリングを行い

巣穴や成虫の様子を調査していきます。

なかなか立ち会えない貴重な現場で、いい経験になりました。

玉井

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2019年10月10日日本産トキ最後の生息地での放鳥

佐渡 近藤陽子

 皆様、こんにちは。佐渡自然保護官事務所の近藤です。

 2019年9月27日、佐渡市片野尾(かたのお)の棚田でトキの放鳥を行いました。地域の方々が放鳥箱を開けてトキを放す、初めての試みです。

 片野尾は、佐渡海峡に面する前浜地区に位置し、前浜地区は日本産トキ最後の生息地として知られています。日本産トキが生息していた時からずっと、前浜地区ではトキの保護活動が行われています。

<佐渡市片野尾の棚田>

 私たちが勤務する佐渡自然保護官事務所は、トキの順化訓練を行う施設「佐渡トキ保護センター野生復帰ステーション」の管理棟内にあります。放鳥当日、ここで放鳥のための順化訓練を受けた17羽のトキのうち10羽を、1羽ずつ箱に入れ、今回の放鳥場所とした片野尾へ運びました。

<最後の健康チェックを行い、1羽ずつ箱に入れていきます>

 片野尾へ運ばれたトキが入った箱は、海が見える棚田の一角に並べられました。トキ保護に尽力した片野尾の住民の方々が各箱の脇に立ち、放鳥箱のテープカットを行いました。箱の蓋が開き、地域住民の方々や関係者が見守る中、10羽のトキが片野尾の空へ飛び立ちました。

<放鳥の様子>

<飛翔するNo.382>

 放鳥を見守っていた地域の方々からは 「わあ!綺麗だなあ!」、「みごとだ!」、「歴史的瞬間だ!」などの歓声があがりました。

<放鳥されたトキを見上げる地域の方々>

 片野尾での放鳥には、日本産最後のトキを見ていた方々もいらっしゃいました。

 1981年、前浜地区に生き残った日本産最後の野生トキ5羽が人工繁殖のために捕獲されてから38年。

 「ああ、懐かしい...」とトキを見上げる姿を見ていて、佐渡の人々のトキへの思いが、今のトキたちを支えているように感じました。

 現在、片野尾で放鳥されたトキを含め、434羽のトキが日本の空を舞っています。

 この先もトキが舞う佐渡でありますように。心から願います。

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2019年10月07日南アルプス初心者にオススメ!

南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

みなさんは『南アルプスの山』と聞いてどんなことを思い浮かべますか?「アクセスが悪い」、「歩行時間が長い」、「登山初心者向けの山がない」などが挙げられると思います。マイカー規制が始まる前の入山は長い時間林道を歩かなければならないですし、マイカー規制中ですと、バスの乗車時間に追われながらの登山になってしまいます。また、ルートによっては山小屋や山頂に着くまでの歩行時間が日帰りでは難しいところもあります。そのため、気軽に登ることはできず、重装備になりがちかと思います。

そんなあなたにおすすめの場所があります。こちらです!

看板の写真で、「なんだこれ!」と思う方もいらっしゃるかと思いますが、看板の真ん中に『仙水峠』と標記されているのがお分かりでしょうか?そうです、オススメの場所とは!仙水峠です。仙水峠の標高は2,264m。スタート地点である北沢峠の標高は約2,000mなので、標高差は300mもありません。3時間半もあれば往復することができます。長時間歩くことなく、南アルプスの自然を存分に味わうことができちゃいます!仙水峠は手軽に南アルプスを楽しめるだけではなく、他にも魅力がありますのでご紹介します。

■「南アルプスの天然水」を感じる

ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、南アルプスの山々では水が豊富です。南アルプスの麓にも甲斐駒ヶ岳を源流とする『尾白川渓谷』や鳳凰山・地蔵ヶ岳を源流とする『精進ヶ滝』などがあります。芦安から広河原へ来る間にもたくさんの滝がありますよね。とても水に恵まれている山域なのです。

川の底が見えるくらい透明度が高く、水温はとても低いです。また、山小屋の方が苦労してひいてくださっている水はどの小屋もとってもおいしいです。飲み比べてみてもいいですね。

■シラビソ林に広がるコケ

長衛小屋から仙水峠へ歩いていくとシラビソ林が広がります。木々の根元などいたるところからたくさんのコケたちがお出迎えしてくれます!


写真のように日が差すと光が当たっている部分のコケがとても美しいです。長期間雨が降らないとコケも水分を失ってひからびてしまいますが、この日は前日に小雨が降ったようでコケに瑞々しさがあり、美しさがさらに増していました。

■斜面にたくさんの岩石がごろごろ?

コケが美しい森を抜けるとびっくり!きっとこれまでに見たことがない世界が広がっています!


右を見ても左を見ても、上を見ても下を見ても岩石だらけです。この岩石は岩塊流(がんかいりゅう)と呼ばれ、氷期に凍結破砕作用で生産された岩屑が斜面下方へ移動し、後に細粒が流水によって除去されたために生じた地形のことをいいます。仙水峠は日本を代表する岩塊流の1つです。地質マニアの方にはたまらないスポットですね!南アルプスでは仙水峠のほかに、早川尾根上にある白鳳峠でも同じような地形を見ることができます。

仙水峠は栗沢山や早川尾根、甲斐駒ヶ岳の分岐点にもなっています。体力がある方は足を伸ばしてみても良いかもしれません。この周辺は長衛小屋を過ぎるとトイレがありません。そのため、携帯トイレを持参するようにしてください。紅葉シーズンを南アルプスで過ごしてみてはいかがでしょうか?

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2019年10月01日北岳、色づき始めました

南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

秋晴れを狙って、925日に北岳へ行ってきました。3日間ほど晴れの日が続く予報ですが、この日は週の半ばだったこともあり、すれ違う登山者は両手で収まるほどの人数でした。

3週間前にも二俣周辺の巡視へ行きましたが、3週間で景色が変わりました!

  

9/6撮影                    △9/25撮影

25日撮影のほうが少し低い地点からの撮影になっていますが、ほんのり色付いているのがお分かりでしょうか?すこーしオレンジ色っぽくなっていますよね。標高が高いところではもっと綺麗に色付いているのかもしれません。

ここ数日でかなり冷え込み、標高が高い山小屋では¨バケツに氷が張った¨との声をちらほら聞きます。下界ではまだ半袖で活動していられますが、立ち止まる時間が長いと寒さも感じられます。朝晩の冷え込みも夏季シーズンと異なり、寒くなっているので暖かい服装で登るようにしてください。

山は紅葉が進んでいるというのに、二俣では高山植物を楽しむことができました。数は少ないですが、元気よく咲いている子たちを紹介します!

【ヤマハハコ】

先端に白と黄色のドライフラワーのような花を付けます。二俣周辺にたくさん見かけます。漢字では「山母子」と表します。ミネウスユキソウに似ていますが、咲いている標高や花弁に大きな違いがあるので、区別は付くかと思います。

【タカネナデシコ】

花弁の先端が細く、深く糸のように裂けています。形がユニークで一度見たら忘れない形です。鮮やかな色をしているので、お花畑の中でも一際目立ちます。この花を初めて見たとき、とて目立っていて惹きつけられたのを覚えています。

他にも以前の日記で紹介した¨オヤマボクチ¨や黄色い大きな花を付ける¨キオン¨、秋の訪れを感じさせる¨トリカブト¨が咲いていました。展望がないときは足元に注目して登ってみてくださいね。

今日から10月ですね。南アルプスはあと1ヵ月ほどで閉山です。南アルプス南部では多くの山小屋が営業を終えました。また、10月中旬には北部の山小屋でも営業を終了する小屋があります。登山の計画をされる方は泊まる予定の山小屋に事前に連絡してみるのがよいでしょう。昨年は10月に北岳でまとまった降雪がありました。今年はいつ頃から降り始めるのか楽しみです♪

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