ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2021年9月21日

2件の記事があります。

2021年09月21日箱根の2つの滝(箱根地域)

富士箱根伊豆国立公園 山口光子

皆さん、こんにちは。

富士箱根伊豆国立公園管理事務所の山口です。

盛夏はあっという間に過ぎ、今年は涼しくなるのが急でした。日暮れも早くなり、秋がすぐそこまで来ています。現在は全国的に緊急事態宣言の最中にありますので、外出もなかなか出来ない状況ですが、こんな時こそ、美しい国立公園の景観に癒やされて欲しいと考えます。今回のAR日記では、ご自宅で箱根の名瀑2つを楽しんで頂ければ幸いです。箱根は芦ノ湖のイメージが強く、周囲の国立公園地域に比べて滝があるイメージが少ないかもしれませんが、見応えのある滝が存在します。

1つ目は、癒やし系の「千条(ちすじ)の滝」です。

【千条の滝】

実はこの滝、2020年6月にもAR日記でご紹介しています。

⇒AR日記「石仏群と千条の滝」http://kanto.env.go.jp/blog/2020/06/post-875.html

今回は前回と異なる角度からの写真です。

大きな滝ではありませんが、滝の幅が広く、細く幾すじもの水が流れ落ちています。苔の緑色や岩の黒色が、白い滝筋をより美しく引き立てます。これからの季節は、滝の上に育ったイタヤカエデの紅葉が加われば、秋ならではの素敵な景観になること間違いないでしょう。小涌谷駅から徒歩10分程度でたどり着けますので、箱根観光時の自然散策におすすめです。

この場所の詳細はこちら⇒箱根ジオパークHP「H21 千条の滝(ちすじのたき)」

https://www.hakone-geopark.jp/area-guide/hakone2/021tisujinotaki.html

2つ目の滝も、2020年3月にAR日記で一部だけ紹介していますが、実はこのときは、台風被害で滝の足元に近づくことが出来ませんでした。

⇒AR日記「柱状節理の岩壁」http://kanto.env.go.jp/blog/2020/03/post-835.html

この滝に近づけるようにルートが整備され、手すりが出来ていましたので、様子を見に行ってきました。

これが力強い「飛龍(ひりゅう)の滝」の姿です。

【飛龍の滝】

このときは水量も多く、迫力ある景観を眺めることが出来ました。実は神奈川県下最大規模の滝(落差が上段15m、下段25mで落ちる2段の滝)です。

【滝手前の目印となる橋】

この橋の向こうに進むと、飛龍の滝足元まで近づけます。

【注意看板】

ただし、このような看板があるとおり、水量の多いときには、この橋の上で滝を眺めて下さい。

【↑このような場所を歩きます。】

滝の足元に近づくときには、水が流れる場所もあるので、濡れる覚悟で進みましょう。鎖はしっかりと設置してありますが、滑らないように十分注意して、ゆっくり慎重に歩く必要があります。無理はしないで下さい。

飛龍の滝は起伏が激しい「湯坂路~畑宿」を歩く、飛龍の滝探勝歩道ハイキングコース上に位置します。この景観を眺めに行く場合には、足元は登山用靴がおすすめで、ストックなども持つと良いでしょう。

この場所の詳細はこちら⇒箱根ジオパークHP 「H15 飛龍の滝と柱状節理(ひりゅうのたきとちゅうじょうせつり)」https://www.hakone-geopark.jp/area-guide/hakone3/015hiryuunotaki.html

コロナ禍でまだ県境をまたぐ外出は自粛となっていますので、緊急事態宣言やまん延防止措置対策が解除されるまで、ご自宅で引き続きAR日記をお楽しみ下さい。そして、早くコロナ禍が落ち着くことを祈りましょう。

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2021年09月21日【那須】 「アサギマダラの楽しみ方」

日光国立公園 善養寺聡彦

みなさま、こんにちは。 日光国立公園 那須管理官事務所の善養寺聡彦です。

今回は、「アサギマダラ」

アサギマダラは那須地域では夏に見られます。

9月中旬でも那須連山の稜線や那須平成の森などにも見られます。

アサギマダラは、タテハチョウ科アサギマダラ属の蝶。

アゲハチョウレベルの大きさがありますので、目立ちます。

色や模様は、ド派手ではありませんが、栗色をベースに、

薄青色(浅葱色:あさぎいろ)の透かし部分をあしらった、シックな蝶です。

(注:個人の感想です)

ヨツバヒヨドリで吸蜜するアサギマダラ

アサギマダラは、以前は、「夏の高原でたまに見かける珍しい蝶」という見方が一般的でした。

(注:個人の判断です)

ところが、しだいに全国の情報が集まると、

地域によって見られる季節が異なり

また必ずしも高原の蝶ではなかったのです。

(※今ではアサギマダラが集まる島として有名な姫島(大分県)では、

海岸にアサギマダラが密集するのですが、

このことを島の人が蝶の専門家に報告しても、

長らく信じてもらえなかったそうです。)

姫島では海岸のスナビキソウにアサギマダラが集結する

【渡り】

高原では、アサギマダラは夏に見られます。

しかし低地に多くのアサギマダラが見られる地域もあります。

また、姫島のように海岸に群れる地域もあります。

実はアサギマダラは、春は北上し、秋は南下する、

つまり '渡り' をしているのです。

成虫はおおよそ奄美諸島以南で越冬しますが、春に北上します。

関東以南の地域では幼虫が越冬しますが、これが羽化した成虫も北上に加わると思われます。

越冬虫のアサギマダラ幼虫(南房総市)

北上は温暖化の影響もあるのか、北海道を越え、樺太に達しているものもあるようです。

北上によってアサギマダラは日本各地で数を増やしていると考えられます。

夏は高原などの涼しい地域で過ごします。

お盆を過ぎる頃、南下します。

暑さを嫌う蝶なので、最初は高原を移動しますが、

秋の深まりとともに平地でも見られるようになります。

南は、沖縄諸島、先島諸島、さらに台湾に達することが、

マーキング調査によって確認されています。

【マーキング調査】

蝶の長距離移動というと、北米のオオカバマダラが有名です。

北はカナダまで分布しますが、秋には北米全域の蝶が南下し、

メキシコの山中のごく限られた地域の樹木に集まって

集団越冬することが知られています。

(※蝶の集合場所は他にもあることが知られています。)

大木の枝が折れるほどに密集する光景は、色々な番組等で紹介されています。

この移動の様子は、蝶に特殊なシールを貼ってマークし、

マークされた個体が再捕獲されることで明らかにされました。

これと似た方法で、アサギマダラの移動の様子が明らかにされてきています。

アサギマダラの場合は、特殊なシールがなくても、

サインペンさえあれば、このマーキングによる移動ルートの研究に参加できます。

アサギマダラには翅(はね)に透けた部分(この部分の鱗粉が極めて小さい)があり、

ここにサインペンで文字が書けます。

蝶を捕獲した人(標識者)は蝶を捕獲した地点の名称、日付、標識者、番号などを記入します。

MARU:丸沼(群馬県片品村)-記号は任意です-

8/27:標識日(8月27日)

ZEN:標識者固有記号(勝手に決めます)

02:通し番号(標識者の都合により決めます)

蝶が移動した場所で誰かがこの蝶を再捕獲すると、

蝶が長距離を移動したことが証明されます。

この調査に参加する人は年々増え、データも膨大なものになってきています。

自分が標識して放蝶した個体が、遙か遠方で見知らぬ人に再捕獲されて連絡が入る。

そしてそれは科学的に重要なデータとなる。

なんとロマンに満ちたことでしょう。

(私が日光湯元で標識した蝶が、与那国島で再捕獲されました。)

今、アサギマダラは全国で南下中!!

出会ったらよく観察してみてください。

そして翅に注目!!!

マークが付いていたら捕獲して記録(写真を撮るなど)。

インターネットで「アサギマダラ、マーキング」で検索すると、

連絡先が見つかります。

マークがなくても捕獲してマーキング!

再捕獲に期待!

アサギマダラの存在が、グググっと近くなります。

【タオルキャッチ】

アサギマダラの捕獲と言っても、捕虫網が必要です。

もし捕虫網がなかったら、白いタオルを振るように回してみましょう。

「なにそれ?」

そうです。変な話です。

でもやってみましょう!!

なぜか? なぜか? なぜか?

アサギマダラはあなたに向かってやってきます。

マーキング調査を行っている人は、

この方法で、空高く飛翔している蝶を呼び込んで捕獲します。

これを、「タオルキャッチ」といいます。

この行動は、移動期の蝶に強く見られるようです。

なぜこのような行動があるのか?

どんなメカニズムなのか?

よく分かっていません。

実は私はこの行動の研究をしていますが、かなり難問です。

タオルを使ったモデルにアタックするアサギマダラ

マーキングをしなくても、その優雅な羽ばたき、

群飛する光景、海を渡りきる強さ、大海原で方向を定める驚異の能力に魅せられて

写真を撮る人たちも集まります。

マーキングをする人、写真を撮る人は、

この渡りをする蝶を追って、今日も移動しています。

(私もその一人のようです。)

今度アサギマダラに逢ったら、「がんばれよ!」

と応援してやってください。

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