2021年9月
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2021年09月06日今年、南アルプスで見つけた植物たち
南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
今年は例年に比べ梅雨明けが早かったものの、8月は長雨で、「もしかして、今が梅雨!?」と思わせる天気でしたね。7月から8月はたくさんの高山植物が咲きます。悪天候続きで開花ピークを逃してしまった方も多いかと思います。そこで今回は、この夏、南アルプスで見られた高山植物を紹介したいと思います。
ミヤマムラサキ ムラサキ科
小さく青い花。初対面は「かっわいい~!」から始まり、今では「今年も元気かな?」と久しぶりに友人に会うような気持ちを抱くようになりました。例年、7月末~8月上旬に見られますが、今年はなんと6月下旬には咲いていたとのこと。積雪量が少なかったため、かなり早い開花になったようです。北岳ではトラバース道で見られます。どんなに頑張っても6~7時間ほど歩かないと見られない場所に咲いていますが、頑張った先にはかわいいこの子が待っているので、来年はこの子を目指して頑張っていただきたいです!
ミヤマクワガタ ゴマノハグサ科
アクティブ・レンジャーの内定をいただいたとき、高山植物に全く興味が無かった私はとりあえず、高山植物の本を買い、南アルプスで見られる花を抽出する作業をしていました。(数が多すぎて着任から5年経った今も終わっていません)そのときの本に¨ミヤマクワガタ¨の文字を見つけ、「虫じゃん」と思っていました。5年経って、ようやく会えました。ミヤマクワガタ。全く虫らしさはなく、むしろ可愛らしいお花でした。オシベ2本とメシベが花の中心から飛び出ていて横向きに咲き、形が特徴的です。また来年も会えるといいなぁ、と思っています。
サンプクリンドウ リンドウ科
サンプクリンドウは三伏峠で発見された花です。南アルプスには¨キタダケソウ¨という希少な花がありますが、キタダケソウのレッドリストのカテゴリー(ランク)が絶滅危惧種Ⅱ類(絶滅の危険が増大している種)に対して、サンプクリンドウは絶滅危惧ⅠB類・EN(ⅠA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの)とされています。カテゴリー(ランク)だけでいうと、キタダケソウよりも数が少ないとされています。こんな貴重なお花に出会えて嬉しいと思うと同時に、無くしてはいけない、守っていかねばという想いになりました。
*レッドリストのカテゴリー(ランク)
https://www.env.go.jp/nature/kisho/hozen/redlist/rank.html
8月に北岳に登ったときの出来事です。広河原に着いた途端に雨。急いで雨具を着てスタート。途中、雨は止んだものの、稜線は真っ白。
見えるはずの北岳山荘はガスに埋もれて全く見えません。
・・・2時間後。
すっきり晴れました~!!赤い屋根の北岳山荘もばっちり見えますね。2時間前は北岳が半分しか見えませんでしたが、2時間後は甲斐駒ヶ岳も仙丈ヶ岳も富士山もしっかり見えました。山の天気は変わりやすいと言われますが、今回は良い方に変わってくれました。
天気予報を見てもすっきり晴れる予報が見られない日が続きますね。暑さもほどよくなり、事務所がある芦安は涼しいです。高山ではぼちぼち紅葉が始まります。街ではまだ半袖でもいいくらいですが、山では長袖、もしくはフリースがおすすめです。これからの時期は朝晩問わず冷えますので、防寒着を必ず持ってきてくださいね♪
2021年09月02日群れの季節
佐渡 菅野萌
皆さんこんにちは。
佐渡自然保護官事務所の菅野です。
佐渡ではトキが群れで行動する時期になり、色々なところでトキの群れに遭遇するようになりました。
▲「トキの木」を発見!いったい何羽のトキがとまっているのでしょうか
▲こちらは畦にずらり
こんな光景が見られるのも、佐渡にトキが暮らしていける環境があるからこそ。
その環境を作り出しているのは佐渡に住んでいる地域の方々です。
例えば、佐渡の農家の方の多くは畦の草管理に除草剤を使わず、草刈り機などを使用して、多くの生きものの生息環境を守っています。
これは「生きものを育む農法」の取り組みのひとつです。
除草剤がまかれていない畦は綺麗な緑色で、バッタやミミズなどの生きものがたくさんいるので、トキの大切なエサ場になっています。
佐渡の方々の理解と協力があるからこそ、現在の佐渡島内に400羽以上のトキが生息しているのです。
佐渡でトキの群れを見かけたら、トキだけでなく、その背景にも思いをめぐらせていただけたら嬉しいです。
また、トキの観察をする場合は車の中からそっと観察するようにお願いいたします。
<おまけ>
▲「緑の畦」をよく見ると、こんな鳥も!
鳥に詳しい職員に聞いたところ、おそらくチュウジシギだそうです
2021年09月02日夜叉神峠のニホンジカ被害
南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
先日、夜叉神峠に設置していたセンサーカメラの撤去を行いました。昨年12月に夜叉神峠登山口から西口登山口までの間に5基のカメラを設置し、どのくらいのニホンジカが生息しているのかを調査していました。
登山道から外れた場所に設置しているため、倒木で歩きづらい場所もありましたが、無事に5基のセンサーカメラの撤去ができました。データは生態系保全等専門員である金丸さんが分析中です。3月にメンテナンスをしてから撤去まで電池が切れていない機器もあったようで、夏季のニホンジカの動きを知ることができそうで、個人的にわくわくしています!
夜叉神峠登山口は登山口へのアクセスが楽にでき、1年を通して多くの方が登ります。一方、西口登山口は冬季閉鎖・マイカー規制区間に登山口があるせいか、このルートで登る人はほとんどいません。
△夜叉神峠登山口と西口登山口の位置関係
私自身、この業務を実施しなければ西口登山口から夜叉神峠に登ることはなかったと思います。夜叉神峠登山口からでも食害やシカを頻繁に見かけ、たびたび悲しい思いに浸っていましたが、4回ほど西口登山口の登山道を歩いてみて、食害や痕跡は思っていたよりひどいものでした。
見比べると一目瞭然。夜叉神峠登山口からの登山道は背丈が低いものの、ササが広がっているのに対して、西口登山口の登山道は画像を大きくしてみると、ちょこちょこと植物が確認できますが、大半は地面がむき出しになっています。むき出しになった地面では、雨が降ったときに地中に水が染み込みにくくなります。下層植生や落葉による地表面の覆いが少ないほど、地表流は増加します。この問題は夜叉神峠だけでなく、里山でも多く見られます。ほかにも樹皮剥ぎも多く見られ、「これはひどい」と強く感じました。
断言はできませんが、西口登山口からの登山道が使われていないこともニホンジカの影響が大きい要因の1つだと考えられます。ただ、登山道がかなり荒れているため、通行を呼びかけがたいです。
左の写真は沢を通過する前後の登山道です。木製の階段があったようですが、劣化と土砂で道が落ちています。右は西口登山道を登り始めてすぐの倒木の様子です。倒木があるのは写真で確認できますが、足元も悪いです。南アルプスの中にはニホンジカによる被害が見られるものの、アクセスが悪いこと、地面の状況が思わしくないなどの理由で対策が実施できない場所が多々あります。このような場所をどのようにしていくか、難しい課題です。
2021年09月01日 「秋への移ろい」 いろいろ奥日光
日光国立公園 大森健男
皆様こんにちは!日光のアクティブレンジャーの大森です。
日光市内ではまだまだ夏の日差しの日もありますが、このところの奥日光の朝はすっきりとした「さむさ」を感じる季節となりました。
湿原のヨシの穂も伸び、景色も秋の装いへと移ってきています。
秋への移ろい 秋の気配が広がる戦場ヶ原・・ 遠方は男体山
国立公園でのアクティブレンジャーの仕事は多種にわたりますが、奥日光では湯元などの所管地の車道や駐車場などの施設管理をはじめ、戦場ヶ原や小田代原の歩道等の巡視や管理が大切な業務となっています。
ということで、本日は小田代原での活動の一こまをお知らせします。
きれいなお花畑??
いやいやこれは、特定外来生物(植物)のオオハンゴンソウの抜き取りです。
特定外来生物とは、外来生物であって、生態系や人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼすもの等で、詳しくは環境省HPでご確認ください。
https://www.env.go.jp/nature/intro/1law/outline.html
例年ですと、日光パークボランティアの皆さんの活動として、奥日光の特別保護地区内を中心にオオハンゴンソウなど外来種の抜き取り作業を実施していますが、コロナの緊急事態宣言下で活動も制約を受け、この日はレンジャーとARの職員のみでの作業となりました。
昨年の小田代原での日光のパークボランティアの皆さんの作業。
例年ですと、奥日光地区で400kgくらいの外来植物除去を行っています。
この日抜き取った外来植物(メマツヨイグサ・オオハンゴンソウなど)
秋色が日増しに濃くなる奥日光ですが、戦場ヶ原の木道については、木道に「ずれ」や「傾斜」が生じているところがあります。安全を確保するため一部、木道を下げて通行いただいているところがあり、段差が生じていますのでご注意をお願いいたします。
一部、敷板部分を下げている木道(戦場ヶ原)。通行にはご注意を!
秋への移ろいを感じる 戦場ヶ原・奥日光の山々
現在、奥日光では緊急事態宣言発令に伴いビジターセンターや日光自然博物館などは閉館中です。
また千手ケ浜や小田代原へ向かう低公害バスも運休中ですので、詳しくは関係HP等でご確認をお願いします。
・日光湯元ビジターセンターHP http://www.nikkoyumoto-vc.com/
・日光自然博物館HP https://www.nikko-nsm.co.jp/
次回は、より色づいた奥日光をお知らせしたいと思います。
こんにちは、日光国立公園 那須管理官事務所の菅野です。
那須高原ではすっかり秋めいた涼しい風が流れています。
さて、みなさんは"森林"と言えば、どのような風景を思い浮かべますか?
私の場合、林床をササで覆われたブナ林が真っ先に連想されます。
甲子地域(福島県側)では、赤面山を登っていく途中にブナ林が広がっています。
▲赤面山のブナ林(2020年6月2日撮影)
木の樹皮を覚えることはなかなか難しく感じられますが、ブナの独特のまだら模様は印象的です。
実はこの模様、ブナ単体のものではなく、様々な色の地衣類(やコケ植物)が樹皮に付着してできています。
▲ブナの樹皮(クリックで拡大してみてください!)
地衣類とは、菌類と藻類からなる共生体。
藻類は自身がつくる光合成産物を栄養として菌類に提供し、
菌類は自身の体を藻類に提供して乾燥や紫外線から守っています。
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那須湯本温泉の周辺では、この地域特有の地衣類がみられます。
それがこのイオウゴケ(硫黄苔)です。
▲イオウゴケ(小丸山園地にて2020年11月13日撮影)
見た目は小さなキノコ?
でも名前はコケ?
いいえ、イオウゴケも地衣類の仲間。
大きさは1~3cmほどで、その名の通り、硫黄質の火山地帯や温泉地などでみられます。
"マリリン・モンローの唇"にも例えられる赤い子器をつけることが特徴です。
火山性ガスを噴出する場所は、多くの生物にとって生息・生育に適さない過酷な環境です。
どうしてイオウゴケはそのような環境に適応することができたのでしょうか?
少し調べてみましたが、理由はわかりませんでした。気になります。
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一見すると地味な地衣類、
じっくり観察してみると形、色、模様が実に多様でおもしろいです。
▲地衣類いろいろ(クリックで拡大してみてください!)
左:カブトゴケsp.(赤川渓谷線の散策路上にて2021年5月19日撮影)
中:サルオガセ属sp.(沼原湿原の樹上にて2019年10月21日撮影)
右:ロウソクゴケモドキ?(赤面山の岩にて2020年6月2日撮影)
地衣類はあまり目立たないので普段は見逃してしまいがちですが、
山や森だけでなく、街路樹の樹皮、土、石、コンクリートなど実は街なかでも見かけることができます。
身近な場所をふらっと散歩しながら、地衣類の小さな世界を探してみるのも楽しいかもしれません。