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関東地方環境事務所TOPICS【地区便り】日光国立公園のきのこ>きのこエッセイ「きのこに魅かれること」

きのこエッセイ「きのこに魅かれること」

5月のとある気持ちのよい日、荒井陽子さんから仄かに甘い香りのするきのこのプレゼントがありました。アマタケに似ていましたが細い柄の微毛が基部だけで全面には生えていなかったのでモリノカレバタケということにして、味噌汁でいただきました。ごちそう様でした。

きのこが気になる理由を尋ねられると答えに窮します。美しい花や鳥ではなくどうしてあのようなわけのわからないものが気になるのか…。

そのような「?」に、手塚治虫、養老孟子、安野光雅、といった各界で著名な人がきのこの魅力を書いた本がありました。「キノコの不思議(光文社文庫)」というエッセイ集。数学者森毅が編者となり、ユニークでエロチック、奇怪で、時に危うい異形の存在についての話が尽きず、きのこが気になり始めた皆様におすすめしたいと思います。

さて、本通信紙の名前で思い出すのは、10年ほど前、妙高高原のミズナラの根本で見つけたオオワライタケです。とある白人の知人がパーティでハイになりたいと所望され、差しあげたところ、後日、全く効かなかったよととても残念そうな表情でした。アングロサクソン系に効かないのか、類似の毒のないきのこがあるのかどうか、きのこ関連の友人にたずねてもはっきりした答えはないようでした。

不可解で怪しい存在のきのこが生態系を支える偉大な生物でもあることについて、保育社「日本新菌類図鑑」の中の故今関六也博士の文が好きなのでご紹介します。「生物は常識として植物と動物とに分けられていたが、環境界と生物界との物質交流は植物と動物とだけでは完成されない。」「植物と動物だけでは有機物は蓄積されるばかりで、ついには植物の光合成に必要な原料は涸渇する。」「菌類は動物と異なりいっさいの有機物を余すことなく無機物に還元する、いっさいの植物の分解に対応する多種多様な酵素を生産するからである。」

生物界をヒンドゥ教の神々になぞらえると、植物は物質の生成者としてのブラフマンに、動物は世界の維持者であるビシュヌ神に、そしてきのこなどの菌類は世界のいっさいを破壊するシヴァ神に例えられるのかもしれません(破壊は創造の源とのことでもありますが)。

さて、左の写真は、先日霧降牧場で牛糞の上にでていたきのこです。ヒトヨタケ科のジンガサタケ属かヒカゲタケ属だと思います。が、いずれにしても現在は麻薬取締法の規制対象となるグループなので、このきのこが妖しい世界への橋渡し役なのかどうか、草原でしばし思案にくれました。

小沢晴司 記

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