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関東地方環境事務所TOPICS【地区便り】日光国立公園のきのこ>きのこエッセイ「法律の中のきのこ」

きのこエッセイ「法律の中のきのこ」

きのこは植物の仲間とするのが、自然公園法等の取り扱いのようです。

自然公園法で、特別保護地区内では植物採取や動物捕獲は許可を要すると規定されていますが、きのこの取り扱いは明記されておらず、分類学上きのこは植物に該当せず不要許可として扱う判断がありました。が、社会通念上、きのこを「植物」に含む見解(隠花植物など)もあり、他法令で植物として扱われる例もあることなどから、平成14年に環境省部内での事務連絡があり、生態系の一部であるきのこを植物的要素とみなし、植物と同様に取り扱うとの解釈の整理がなされています。
他法令として例示されたのは植物防疫法で、第2条第2項に、「この法律で「有害植物」とは、真菌、粘菌、細菌、寄生植物及びウイルスであつて、直接又は間接に有用な植物を害するものをいう。」とあるのを引用しています。蛇足ながら同法第2条第1項では、「この法律で「植物」とは、顕花植物、しだ類又はせんたい類に属する植物(その部分、種子、果実及びその他これに準ずる加工品を含む。)で、次項の有害植物を除くものをいう。」とあり、明らかな「植物」と、細菌やウイルスまでも含む「有害植物」とを分けているところが、個人的には気になります。いずれにしても「植物」という表現を使っていることには違いはありませんが。

また、麻薬取締法(麻薬及び向精神薬取締法)でも、平成14年の関連政令改正により、麻薬成分(Psilocybin、Psilocin)を含むきのこは、同法による麻薬原料植物に指定されています。ただ、どのきのこにこれらの成分が含まれるか、さらには、きのこの分類そのものが菌学研究の世界でも十分解明されていないことなので、そもそも目の前のきのこが麻薬原料植物なのかどうかというレベルで議論があるかもしれません。

ちなみに、種の保存法(絶滅のおそれのある野生動植物種の保存に関する法律)に関しては、法案の国会提出に先立つ平成4年2月の自然環境保全審議会野生生物部会への答申「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保護対策について」に際し、当時次のような用語の注釈が付されています。「本報告においては、「野生生物」とは一般的に(地球上に存在する)すべての野生の生物を意味するときに用いている。「野生動植物」はレッドデータブックの選定対象でもあり、当面保護の対象としている野生の動物及び植物を意味し、原生動物、菌類、地衣類、藻類、蘚苔類等を除くその他の種の総体をいう。」
現在、同法の運用上は、野生動植物といった場合は菌類は含まないとするわけですが、当面の取り扱いであり、かつ藻類や蘚苔類も一緒に除かれるわけなので、生物分類学上の「植物界」「動物界」と並ぶ、「界」としての「菌界」を明快に意識したものとはいえないような気がします。

小沢晴司 記

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