関東地方環境事務所

ここからメニュー ジャンプしてコンテンツへ

ここからコンテンツ ジャンプしてメニューへ

TOPICS

関東地方環境事務所TOPICS【地区便り】日光国立公園のきのこ>きのこエッセイ「いまいちのチタケ」

きのこエッセイ「いまいちのチタケ」

「いまいちの何々」というとB級評価に聞こえると気にする方もいらっしゃるようですが、チタケは今市のものがおいしいのだそうです。これまでの転勤先で、チチタケをそれほどおいしく食べた経験がない私に、栃木の、特に今市のチタケはおいしいらしいと同僚が教えてくれました。今市市内で、4~5塊入ったパッケージを先日2000円で売っていたのはちょっと高かった、しかも県北の産と売り子が言っていたと添えながら。

チチタケが属するベニタケ科は、きのこの中でも他の科と見分けやすい科で、手にとって肉を押し潰そうとするとボロボロ崩れる特徴があります。きのこの肉の中に多数の球形細胞を含むためで、これは他の科にはない特徴です。

ベニタケ科は、乳液を含むチチタケ属と、これを欠くベニタケ属にわかれます。日本産としてはそれぞれ約50種以上が数えられる大きな科です。

7月半ば、知人を奥日光に案内したとき、戦場ヶ原周辺のミズナラ林内に、たくさんのベニタケ科のきのこがでていました。チチタケもありましたが、クサハツの仲間が多数見られました。ベニタケ属の中でもクサハツのグループは、名のとおり不快な臭いがあり、傘の表面に縁に向けた溝線や粒状の線が見られるほか、柄の肉が成長の早い時期から崩れたような中空になる傾向があるように思います。(写真のきのこはクサハツのグループ(クサハツ節)ではありません。)

ニオイコベニタケ(カブトムシ様の匂い有:ベニタケ属)
写真

ベニタケ科のきのこは一般に外生菌根菌とされ、きのこの菌糸が地下でブナ科やマツ科等の樹木の生きた根と結合し、菌から植物へは水や無機塩類を、植物から菌へは炭水化物などをやりとりするという一種の共生関係を作りだします。

菌糸が植物の根の細胞まで入り込むのは内生菌根、細胞の中まで入り込まないのは外生菌根となります。外生菌根菌は、ベニタケ科のほか、イグチ科やテングタケ属など多数あり、内生菌根菌は、一般に宿主につく菌はカビが多くきのことならない場合が大半となっています。

さて、日光に赴任して以来、食事の折など地元の方からチタケの絶賛があるたび、その味を理解しないわが舌を嘆きつつ、食文化の個性に栃木県おそるべしと呟いてしまうことを白状します。でも、日光で楽しみにしていることがあります。今までに食べたきのこで忘れられない美味しいきのことの再会です。     

北方や高地のカラマツ林にでるとされ、私は一度、北海道稚内市の風が強い丘のカラマツ植林地で見つけたのですが、上品な甘いかおりとお吸い物にしたときのアスパラのような食感に気品さえ感じられたキオウギタケです。去年は望み叶いませんでしたが、今年は、奥日光のカラマツの森で、夢がかないますように。

小沢晴司 記


戻る