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関東地方環境事務所TOPICS【地区便り】日光国立公園のきのこ>きのこエッセイ「夏がくれば思い出すのは」

きのこエッセイ「夏がくれば思い出すのは」

夏の初め、小池百合子環境相は日光国立公園を2度訪問されました。7月末の塩原温泉に続き8月上旬は尾瀬。

その日、小雨が止まない尾瀬を闊歩する大臣の足元には、可憐な草花に混じり様々なきのこも顔をだしていました。ベニタケ科、イグチ科、ラッパタケ科等。歩き初めて10分程、路傍に全身真っ白の清楚なきのこがありました。大きく平たい傘。ささくれに覆われた細長い柄。膜質のつばと根本の大きなつぼ。この小さな出迎え者を、私は小池大臣に紹介することにしました。「大臣。足元に白いきのこが顔をだしています。テングタケの仲間でドクツルタケといい、1本食べて死ぬ方もあるほど、日本でも最強の毒きのこの一つです。でも、森にとってはミズナラや針葉樹、様々な木と共生する大事な生き物です。」

大臣は足をとめ、しばしその白い姿をご覧くださいました。

テングタケ属は、一般に大型のきのこで、いくつもの毒きのこを含む注意を要するグループです。傘と柄が離れやすいこと、胞子紋が白いこと、つばとつぼがあること(つばは無い種もある。つぼは膜質袋状、いぼ状、粉状等様々)などの特徴があります。が、特に注意したい点は、傘の縁に放射状の溝線が有るか無いかです。溝線の無いグループには、ドクツルタケを始め、肝臓等の細胞を壊死させる致命的な猛毒菌がいくつもあります。溝線のあるグループには、今のところ前者ほど強力で致命的な毒きのこは無いとされ、美味なきのこも多く含まれます。ヨーロッパでローマ皇帝シーザーの名を冠するきのこもこのグループです。

童話の絵に描かれるような赤い傘に白い斑点を配したベニテングタケは、毒きのこの代表のように見られますが、傘に溝線があり、致命的ではないグループに属します。

ベニテングタケの毒は、ムスカリン、ムシモール、イボテン酸等とされ、食べると幻覚を見ることもあるといわれます。信州ではこれを食べる地域もある(普通は塩蔵する)ようです。私も、昔、とある夏の日、試食したことがありました。一日船酔いのようになりましたが、幻覚は見られませんでした。致命的でなくとも毒きのこ、安易な試食は避けるべし。

盛夏、調査で同僚とともに再び塩原温泉を訪れたところ、その美しい渓谷の歩道でドクツルタケに再会しました。また、近くでヤグラタケも見つけました。ベニタケの仲間に寄生する小さな白いきのこで、きのこの傘の上に櫓のように乗っかって生えます。さらに普通のきのこと違っているのは、成熟すると傘の肉そのものが茶色の粉塊に変わり、ひだだけでなく変成した傘表面から胞子を飛散させる特徴です。右写真で真ん中のきのこの傘の上が変色し始めています。

ヤグラタケがよく寄生するクロハツ
写真2

腐朽したベニタケ属にでたヤグラタケ
写真1

きのこというのはいろいろと不思議な世界を見せてくれます。小池大臣、もう一度日光国立公園を訪ねる機会がありましたら、きのこも待っている奥日光を是非おすすめいたします。

小沢晴司 記


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