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関東地方環境事務所TOPICS【地区便り】日光国立公園のきのこ>きのこエッセイ「銅色のきのこ」

きのこエッセイ「銅色のきのこ」

日本の銅山でも最も著名な足尾では、もう銅は採ってないのだそうです。それどころか、今、日本で使う銅のほとんどが海外からの輸入なのだそうです。昨年冬に足尾で町づくりに関して検討する委員会が始まり、作業グループでアイデア出しをしたとき、地元商工会青年部の方が教えてくれました。

過去400年近くの間に足尾で産出した銅の総量は70万トン程度とのこと。今、日本ではたった1年でこの量以上の銅を消費しています。チリ大使館に勤めていたことのある産銅分野にも明るい専門家に話しをうかがったところ、日本で消費する銅の40%程度がチリ産で、4分の1程度はインドネシアからとのことでした。その他にカナダやオーストラリア等があります。日本でも全く銅が採れないわけではなく、北海道の豊羽鉱山と、鹿児島の菱刈鉱山で、他の鉱物資源を精錬する工程で銅が取り出されるそうです。

今、チリ共和国では、銅山の閉山技術や鉱害防止等についての技術向上を目的とした国際協力プロジェクトがJICAによって展開しています。近代に日本で蓄積された銅山の鉱害防止に関する技術や、関連法制度の整備での知見が、チリ共和国でのこの分野の国際協力作業で役立つとの観点からの取組みとのことです。

振り返れば、日本の産銅事業での技術開発で、もっとも先進的な取組みをしていた鉱山の一つが足尾にほかなりません。類推すれば、足尾の産銅事業での鉱害防止に関する様々な取組みは、過去の歴史の中の話だけでなく、世界に日本が貢献する技術開発分野の成果の一つとして、今の時代にも生きているものといえるのかもしれません。

そのような視点を持つことができれば、足尾本山に佇む巨大な工場建築群の景観は、そこを訪ねる旅行者に、より深いメッセージや印象を与えてくれるように思います。
足尾町では、この間、荒廃した渓谷地域の緑化に官民あげて取組み、これが町の大きなPR材料とされてきましたが、同時に、通常負の遺産として捉えられる足尾での産銅事業の歴史に直に向き合うことの重要性も指摘されはじめています。
上述のドラマを携えた足尾の工場群や谷の景観と、奥日光の瑞々しい森の景観とを対比させた日光-足尾地域全体のエコツーリズムプログラムは、日本を代表する魅力的な環境教育プログラムの一つでありましょう。

さて、写真のきのこは、足尾の谷からすぐ北側の奥日光で、日光のきのこについて精通するA先生夫妻等に、連休のさなかご案内していただいたシャグマアミガサタケです。猛毒として知られ、コメツガやウラジロモミ等のそばに発生するといいます。
その赤銅色に、近くの足尾で精錬されていた銅のイメージを重ねるのは、少々思い込みの過ぎたることと、反省しています。

小沢晴司 記

写真:シャグマアミガサタケ


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