報道発表資料

2020年11月19日

小笠原における陸産貝類の移殖について

環境省では、絶滅のおそれのある小笠原陸産貝類を保全するため、平成23年から小笠原諸島父島の生息域外においてこれらの飼育を実施してきたところです。 このたび、父島属島の巽島(たつみじま)においてチチジマカタマイマイ及びアナカタマイマイの個体群再生のために、飼育個体の移殖を実施することになりましたのでお知らせします。 飼育下で繁殖した陸産貝類を元々の生息地に移殖することは、環境省事業では初めての試みになります。

1 経緯

小笠原諸島に生息する陸産貝類の多くが小笠原固有種とされており、小笠原諸島が世界自然遺産として評価された要因となる重要な生物です。しかしながら、外来種である貝食性陸生プラナリア類及びネズミ類の食害等により、陸産貝類の生息状況が著しく悪化し、絶滅の危機に瀕しています。

環境省では、現地の小笠原世界遺産センター及び本土の恩賜上野動物園、多摩動物公園、井の頭自然文化園及び葛西臨海水族園において生息域外保全に取り組んできました。

同時に、移殖予定地の環境調査や生態系へのリスクの少ない移殖手法の検討、有識者への意見聴取等を実施し、移殖に向けた準備を進めてきました。

2 移殖予定地である巽島個体群のおかれている状況

チチジマカタマイマイの分布は、現在は父島南部の巽崎及び属島の巽島のみとなっています。巽崎においては、隣接地域に貝食性陸生プラナリア類が侵入しており、生息が危機的な状況で、巽島から個体群が消滅すると野生絶滅に極めて近い状態となります。

アナカタマイマイの分布は、現在は母島北端部及び父島属島の巽島のみとなっています。母島北端部の個体群は父島とは遺伝的差異が大きく、父島及び巽島の個体群とは異なる進化的価値があると考えられていることから、巽島の個体群が消滅すると父島系統の個体群が途絶えることとなります。

現在、巽島では貝食性陸生プラナリア類の侵入が確認されていない一方で、過去のネズミ類の食害や令和元年10月の台風による林内環境の変化等により、これら2種の個体数が極めて少なくなっている状況です。

3 移殖する個体について

巽島に移殖予定の個体は、2種とも現地で採取した個体をファウンダーとして飼育・繁殖させた個体であり、野外集団と遺伝的な違いはないと考えられます。飼育に際しては、寄生生物などを持ち込む可能性を下げるために人工基質(ペーパータオル等)、人工飼料のみを使用した飼育を行うなどのリスク管理も実施してきました。  

4 移殖実施の判断について

当該種の脅威となり得るネズミ類については、継続的に駆除等を実施した結果、生息が確認されない状態を維持できていること、野生個体群が林内環境の変化等を受けて脆弱な状態となっていること等を踏まえて、令和2年10月19日の小笠原諸島世界自然遺産地域科学委員会下部陸産貝類保全ワーキンググループにおいて「チチジマカタマイマイ及びアナカタマイマイ個体群再生計画」の本年度実施計画について最終的な助言を受け、今年度の移殖の実施を決定しました。

5 今後の予定

今後、現地での移殖作業は、野生個体群の産卵時期である令和2年11月頃から開始し、個体にマーキングする等により各種モニタリングを行いながら継続的に実施していく予定です。

なお、新型コロナウイルス感染症への対策及び作業員の安全性確保のため移殖作業等を公開する予定はありません。

【参考】

・チチジマカタマイマイ(絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN))

学 名:Mandarina chichijimana

特 徴:殻は、殻長20.0mm、殻径24.0mm程度で、やや円く、硬質、螺塔は高く、螺層はやや膨れる。体層周

縁は円い。殻表はほぼ平滑。殻色は淡黄褐色で、殻に4本の色帯をもつ。臍孔は閉じる。殻口は厚く肥厚・反転する。

分布域:小笠原諸島父島の南端部及び巽島。

生息環境:主にオガサワラビロウ等が多い湿性林の林床に生息する。

・アナカタマイマイ(絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN))

学 名:Mandarina hirasei

特 徴:殻は、殻長13.0mm、殻径21.0mm程度で、偏平、やや薄質、螺層はわずかに膨れる。体

層周縁は円い。殻色は淡黄褐色から濃褐色で、色帯をもたない。殻表はほぼ平滑。殻表

の光沢は弱い。臍孔は広く開く。殻口は厚く肥厚・反転する。

分布域:小笠原諸島父島の南端部及び年巽島。母島北部

生息環境:タコノキやオガサワラビロウが生育する林内の樹上から地上までを利用する。

チチジマカタマイマイ

移殖地の巽島

■ 問い合わせ先
○小笠原における陸産貝類の環境省事業について
・環境省関東地方環境事務所野生生物課  
TEL:048-600-0817
課長:佐藤 大樹
担当:酒井 郁
・環境省関東地方環境事務所小笠原自然保護官事務所
TEL:04998-2-7174
担当:成田 智史
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