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関東地方環境事務所

報道発表資料

2015年03月26日
  • 報道発表

(お知らせ)小笠原諸島 媒島(なこうどじま)でアホウドリの番(つが)いを初確認

<東京都、(公財)山階鳥類研究所同時発表>

平成27年3月26日(木)

関東地方環境事務所
所長 :上杉 哲郎
野生生物課長:荒牧 まりさ
同課長補佐:仁田 晃司
直通:048-600-0817

  • ※この事業は、(公財)山階鳥類研究所が、環境省、東京都、米国魚類野生生物局、三井物産環境基金、公益信託サントリー世界愛鳥基金、朝日新聞社、キヤノン株式会社等の支援を得て、伊豆諸島鳥島のアホウドリのヒナを小笠原群島聟島に移送し、新しい繁殖地を形成する目的で 2008(平成 20)年から実施しているものです。

今回確認された事項

  1. ①番いの雌はH21年に鳥島から聟島に移送した個体、6歳。(聟島での新繁殖地形成事業で装着したプラスチックリングY11を確認)
    番いの雄は鳥島生まれで、年齢不明。(鳥島で装着された金属足環を確認)
  2. ②平成26年のヒナ、その付近に落ちていた雄の成鳥の羽、今回の雌のDNAサンプルを解析した結果、ヒナは成鳥羽と雌の両方と遺伝的な共通性があった。
  3. ③媒島で番いはこの1組しか確認されず、平成26年にヒナが発見された近くで過ごしていた(アホウドリは毎年同じ番い、同じ場所で繁殖することが通例)。

媒島で確認されたアホウドリの番い

媒島で確認されたアホウドリの番い
手前が雌、奥が雄 【東京都提供】



<媒島での繁殖情報に関する問合せ>

 東京都環境局自然環境部緑環境課 佐藤、松本
  内線42-680 直通03(5388)3538

<DNA分析に関するお問い合せ>

 北海道大学総合博物館 江田
  011(706)4712

<鳥島での保護増殖事業、聟島での新繁殖地形成事業に関するお問い合せ>

 環境省関東地方環境事務所野生生物課 仁田
  048(600)0817
 山階鳥類研究所事務局広報 平岡
  04 (7182)1101

【参考資料】

平成26年5月に媒島で確認されたヒナ平成26年5月に媒島で確認されたヒナ 【東京都提供】

アホウドリの番い、手前の雌の左足に赤いリング(赤丸内)

アホウドリの番い、手前の雌の左足に赤いリング(赤丸内)【東京都提供】



(1)媒島でのアホウドリ番いの確認について

■確認日 平成27年2月8日(日)
■確認者 東京都小笠原支庁職員及び特定非営利法人小笠原自然文化研究所員
■確認場所 小笠原諸島聟島列島媒島
■経緯 アホウドリ類標識事前調査により確認(注1)
■その他

  • ・小笠原諸島では、1930年代に羽毛採取目的の乱獲により絶滅
    ・今回の繁殖確認の要因としては、東京都実施の植生回復事業の一環であるノヤギの排除により、アホウドリ類の繁殖環境が回復したことが考えられる(注2)。

注1 小笠原諸島聟島列島アホウドリ類標識調査

  • ・昭和53年からクロアシアホウドリ、コアホウドリのヒナに標識装着開始
  • ・平成26年5月7日に媒島でアホウドリと思われるヒナ1羽を確認
  • ・平成26年の標識装着数(実施日5月6日~8日)
     ①アホウドリ1羽、②コアホウドリ12羽、③クロアシアホウドリ1,040羽

注2 小笠原諸島におけるノヤギ排除事業

  • ・平成9年度から媒島、聟島、兄島など7つの島で実施
  • ・媒島では、平成9~11年度に実施し、417頭を排除し根絶
  • ・現在は、唯一ノヤギが残る父島で実施中


(2)今回のDNA分析結果について

 番いの雌(Y11リング)の血液サンプルは鳥島から聟島への移送時に保管されており、そのDNAと平成26年のヒナおよび雄成鳥羽のDNAを比較検討した。DNA分析は東京都小笠原支庁、小笠原自然文化研究所、北海道大学総合博物館、山階鳥類研究所の4者による共同研究で行った。


1 ミトコンドリアDNA分析

  • ・ミトコンドリアDNAは、細胞小器官ミトコンドリアのDNAで母系遺伝する。そのため、ミトコンドリアDNAは母系の遺伝情報のみを持ち、父系の遺伝情報は持たない。
  • ・ヒナと雌Y11は、制御領域2の部分配列(341bp)が完全に一致していた。
     ⇒ヒナと雌Y11は同じ母系系統にあることを示唆。


2 核DNA分析(マイクロサテライト分析)

  • ・マイクロサテライト領域は、核DNAにあるDNAの反復数の変異の多い領域で、人間の親子鑑定などにも利用される。各遺伝子座について、両親から1つずつ遺伝した2つの対立遺伝子を持つ。
  • ・ヒナは成鳥羽と雌Y11の両方と、すべてのマイクロサテライト座位(12座位)で対立遺伝子を共有していた
     ⇒ヒナがY11と成鳥羽の雄個体の子であることに矛盾はない。(仮に一つの遺伝子座についてでも対立遺伝子の共有がなければ、親子関係は否定される)。


(3)聟島における新繁殖地形成事業について

  • ・本事業は、アホウドリの最大の繁殖地である伊豆諸島鳥島が、噴火により破壊される危険に常にさらされているため、平成18年に制定された国の保護増殖計画に基づいて、火山を有さず、本種が過去に繁殖していた小笠原諸島に個体を再導入することにより、繁殖地の分散および規模の拡大を図るために行われた。
  • ・平成20年から24年までに鳥島で誕生した約1ケ月齢段階のヒナ計70羽を聟島に移送し、山階鳥類研究所による毎年4ケ月間の人工飼育の後に69羽が聟島から巣立った。
  • ・ヒナの移送と共に、聟島にアホウドリ繁殖地を形成させるため、デコイ(模型)の設置と録音した鳴き声を繁殖期に流して個体の定着を促した。
  • ・今回の結果は、小笠原諸島への再導入が成功したことを示す初めての成果だけではなく、アホウドリ類におけるヒナ移送による繁殖地形成の取り組みとしては世界初の成功例となった。

【参考説明図】

【参考説明図】【参考説明図】図:マイクロサテライト領域の解析による親子鑑定の模式図