報道発表資料
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小笠原諸島西之島の保全のための上陸ルールの策定について(お知らせ)
平成28年6月14日(火)
小笠原諸島世界自然遺産地域科学委員会
委員長 大河内 勇
事務局長 上杉 哲郎
(事務局担当)環境省関東地方環境事務所
国立公園課長 松本 英昭
国立公園課課長補佐 岩浅 有記
世界自然遺産専門官 千田 智基
電話048-600-0816
小笠原諸島で火山活動中である「西之島」においては、不注意な上陸により随伴生物等を人為的に持ち込むことで、世界的にも希有な新しい生態系の構築過程に人為的撹乱を生じさせてしまうことが懸念されています。今般、「小笠原諸島世界自然遺産地域科学委員会」(以下、科学委員会)及び小笠原諸島世界自然遺産を管理する関係行政機関(環境省関東地方環境事務所、林野庁関東森林管理局、東京都、小笠原村)として、今後の火山活動の沈静化も見据えつつ、世界遺産の顕著で普遍的な価値を損なわないために、上陸を計画する全ての方々に対して、以下のとおりルールを定めたのでお知らせします。
東京都小笠原村で現在、火山噴火活動中の火山島である西之島は、小笠原諸島世界自然遺産地域に含まれております。西之島は一部の地域を除き、新しい溶岩によって覆いつくされ、それらの場所では生物相が一掃されたものと思われます。
このような場所に、どのように生物が進出し、生態系を構築していくかは、小笠原諸島の生態系の成り立ちと進化を明らかにする最初のステップを解明することになります。これらは小笠原諸島の世界自然遺産の登録理由である【クライテリアix 】「陸上・淡水域・沿岸・海洋の生態系や動植物群集の進化、発展において、重要な進行中の生態学的過程又は生物学的過程を代表する顕著な見本である。」に合致することから、現在の西之島の状況は、世界自然遺産としてのOUV(顕著な普遍的価値)の重要な要素になり、国際的にも高く注目されています。
しかしながら、今後、火山活動が弱まるとともに、様々な理由で上陸が図られる場面が生じてくるものと思いますが、不注意に上陸すると随伴生物を持ち込むことになり、世界的にも希有な新しい生態系の構築過程に人為的撹乱を生じさせてしまうことで、顕著な普遍的価値が不可逆的に損なわれることが強く危惧されます。
西之島に関しては今回の火山活動で国民的な関心が生じており、今後、これまで世界自然遺産管理に関わっていない関係機関、小笠原で調査したことのない研究者、マスコミなどの上陸が予想されます。
そこで科学委員会及び小笠原諸島世界自然遺産を管理する関係行政機関として、世界遺産の価値を損なうことのないように、上陸を必要とする関係者各位に向けて、良識ある対応をお願いするために、以下のとおり【西之島の保全のための上陸ルール】を定めますので周知をお願いいたします。なお、旧西之島の部分は国有地として管理されており、なおかつ国立公園の特別保護地区であるため、工作物の設置やサンプル採取等の行為は環境省の許可が必要です。
【西之島の保全のための上陸ルール】
○西之島の在来生態系の保全の観点から人為的攪乱を可能な限り避けるため、上陸に当たっては調査等に必要な最小限の人員・頻度で計画すること。
○西之島での調査活動を行う場合には、基本的に新品またはそれに準ずる靴、衣類、バッグを使用すること。新品の装備が準備できない場合には、冷凍、アルコール洗浄等により丹念に清浄化する。また、調査準備中および調査中における機材への生物の混入を避けるため、準備は基本的にクリーンルームを設置した上で行うこと。
○西之島へ上陸する場合には、荷物および人間に付着した外来種の持ち込みを防ぐため、一度、荷物ごと全身を海に入ってから上陸する「ウェットランディング」を行うこと。
○上陸調査の計画過程で第三者(行政機関、有識者等)の検疫のチェックを受けるなど、透明性をもって実施すること。
上陸ルールの問合せ先:環境省関東地方環境事務所国立公園課 電話048-600-0816
(参考)
小笠原諸島の世界自然遺産地域では、離島への上陸に関しては、従前から観光客等の自主ルールや国有林の入林許可に関するルール等を設けると供に、自然系の研究者を中心として、「小笠原諸島において陸域調査を行う場合の研究者のガイドライン」(URL:http://www.tmu-ogasawara.jp/)を定め、小笠原で野外調査を行う上での生態系への配慮指針に従って行動することで随伴生物の侵入を防止してきました。
特に、西之島、南硫黄島、北硫黄島の3島は、人為の影響がほとんど及んでいない極めて重要な地域であることから、これらの地域への上陸については、原則、保全に必要な調査を行う研究者だけを対象とし、その調査頻度も必要最小限の上陸に制限(南硫黄島ではおおよそ10年以上に1回)するなどの配慮をしています。