関東地域のアイコン

関東地方環境事務所

報道発表資料

2019年10月25日
  • 報道発表

野生下のトキの2019年の繁殖結果について(推定値)

                                     令和元年10月23(水)

                                     佐渡自然保護官事務所

首席自然保護官 澤栗 浩明

(℡:0259-22-3372)

 野生下のトキの2019年の最終的な繁殖結果(推定値)についてお知らせします。この推定値は、足環判読による生存状況確認、ねぐら出一斉カウント調査、繁殖期モニタリングのデータに基づいて、統計手法により推定したものです。

 2019年の野生下のトキの繁殖結果は、120ペアが営巣し、40ペアから95羽が巣立ったと推定されました(中央値)。

1 2019年の野生下のトキの繁殖結果

 2019年の野生下のトキの繁殖結果については、令和元年7月16日に速報値として実測値を報道発表したところですが、野生下のトキの個体数が増えたことにより、2019年は全ての繁殖ペアを網羅したデータを得ることができなかったと考えられます。このため、2019年の最終的な繁殖結果を統計手法により推定しました。

 足環判読による生存状況確認、ねぐら出一斉カウント調査、繁殖期モニタリングのデータを使用して、統合個体群モデルで推定した2019年の野生下のトキの繁殖結果は下記のとおりです。なお、野生下のトキの繁殖結果の推定は、今後も手法の改良を重ねながら毎年継続的に実施するため、今後の更なるデータの蓄積等により今回の推定結果の値が変化する可能性があります。

項目

推定結果

営巣ペア数

中央値120ペア(実測値99ペア、95%信頼区間:103ペア-137ペア)

巣立ちペア数

中央値40ペア(実測値33ペア、95%信頼区間:24ペア-59ペア)

巣立ち羽数

中央値95羽  (実測値76羽、95%信頼区間:63羽-131羽)

※95%信頼区間とは、95%の確率で真値が含まれる区間です。

(参考1)推定手法

①足環判読による生存状況確認

 放鳥トキ及び足環装着した野生生まれトキについて、トキモニタリングチームが足環を判読して生存状況を確認する調査で、第一回放鳥を行った2008年から実施しています。今回の分析には、トキの発見率が高い8-11月の観察履歴のデータを使用しました。

②ねぐら出一斉カウント調査

 佐渡島内のねぐらから飛び立つトキの個体数を数える調査で、2015年から毎年9月及び11月に実施しており、今年はモニタリングチーム及び「人とトキの共生の島づくり協議会」構成団体が実施しました。今回の分析には、合計個体数のデータを使用しました。

③繁殖期モニタリング

 繁殖期にモニタリングチームがトキの繁殖行動をモニタリングする調査で、2009年から実施しています。今回の分析には、放鳥トキが初めて繁殖成功した2012年からの足環装着を実施したヒナの個体数、発見した巣数、孵化の有無、1巣あたりの孵化羽数、巣立ちの有無、1巣あたりの巣立ち羽数のデータを使用しました。

④統合個体群モデル

 ①~③のデータを統合して解析することで、多数の個体群パラメータについて頑健で高精度の推定を行う手法です。統計学的手法の発達とコンピュータ性能の向上により、近年は多数の生物の個体群動態の推定において類似のモデルが用いられています。推定手法の利点として、観測に伴うデータの不確実性を全て考慮した解析が実現できること、直接的なデータが得られていない人口学的パラメータが推定できること、パラメータの推定精度が向上することなどが挙げられます。

※未識別個体:ペアでの営巣行動が観察されているものの、足環等による個体識別が困難であり、個体が確定できないため「未識別個体」としています。

(参考2)2012年~2019年の野生下の繁殖結果

 

営巣

ふ化

巣立ち

繁殖活動終了

ペア数

ペア数

ふ化羽数

ペア数

巣立ち羽数

2012

18

3

8

3

8

6/21

2013

24

8

14

2

4

7/5

2014

35

14

36

11

31

6/24

2015

38

12

21

8

16

6/19

2016

53

25

53

19

40

7/8

2017

65

36

92

31

77

7/19

2018

77

32

67

27

60

7/6

2019

99(120)

37

84

33(40)

76(95)

7/16

※2019年の括弧内の数字は、最終的な繁殖結果の推定値です。

※ふ化ペア数及びふ化ヒナ数については、根拠となるデータが繁殖期モニタリングのみであるため、統合個体群
 モデルによる推定は行っていません。

(参考3)野生下のトキの生存状況 

  放鳥トキ個体数

   放鳥数              364羽

   生存扱い             176羽

  野生下生まれトキ推定個体数       

   野生生まれ(足環なし個体)    141羽

   野生生まれ(足環装着された個体) 116羽

                  計433羽