報道発表資料
2023年12月20日
- 報道発表
世界自然遺産小笠原諸島南島で陸産貝類の再導入を開始します。
環境省では、絶滅のおそれのある小笠原陸産貝類を保全するため、平成23年から小笠原諸島父島の小笠原世界遺産センターや東京動物園協会加盟園館等において、陸産貝類の域外保全(飼育繁殖)に取り組んできたところです。
このたび、父島属島の南島(みなみじま)において、約200~300年前までは生存していたと推察されているチチジマカタマイマイ及びアナカタマイマイの個体群を再生するため、小笠原世界遺産センター内の施設で飼育繁殖した個体を再導入することとしましたのでお知らせします。
陸産貝類の再導入は、国内では初めての試みです。
このたび、父島属島の南島(みなみじま)において、約200~300年前までは生存していたと推察されているチチジマカタマイマイ及びアナカタマイマイの個体群を再生するため、小笠原世界遺産センター内の施設で飼育繁殖した個体を再導入することとしましたのでお知らせします。
陸産貝類の再導入は、国内では初めての試みです。
1 経緯
小笠原諸島に生息する陸産貝類は、その多くが小笠原固有種とされており、小笠原諸島が世界自然遺産として評価された要因となる重要な生物です。しかし、外来種の貝食性陸生プラナリア類及びネズミ類による食害等によって、陸産貝類の生息状況が著しく悪化し、絶滅の危機に瀕しています。
環境省では、小笠原世界遺産センターや東京動物園協会加盟園館等において生息域外保全に取り組み、「チチジマカタマイマイ及びアナカタマイマイの個体群再生計画」が策定された2020年からは、野生集団への早急な補強の必要が生じていた巽島において試験的な野生復帰を実施し、補強個体の定着・長期生存を確認しています。
南島には現在カタマイマイ属が生息していませんが、かつて当該二種の生息していた地域であり、現在まで貝食性陸生プラナリア類の侵入が確認されておらず、関係機関等の取組により植生回復が進んでいるとともに、陸産貝類の脅威となり得る外来ネズミ類もごく低密度の状態で維持されています。今般、巽島における試験的な野生復帰の成果が集積されてきたことも踏まえ、令和5年10月2日に開催された小笠原諸島世界自然遺産地域科学委員会 陸産貝類保全ワーキンググループにおいて本年度の「南島におけるチチジマカタマイマイ及びアナカタマイマイ個体群再生実施計画」について最終的な助言を受け、南島において再導入に着手することとしました。
環境省では、小笠原世界遺産センターや東京動物園協会加盟園館等において生息域外保全に取り組み、「チチジマカタマイマイ及びアナカタマイマイの個体群再生計画」が策定された2020年からは、野生集団への早急な補強の必要が生じていた巽島において試験的な野生復帰を実施し、補強個体の定着・長期生存を確認しています。
南島には現在カタマイマイ属が生息していませんが、かつて当該二種の生息していた地域であり、現在まで貝食性陸生プラナリア類の侵入が確認されておらず、関係機関等の取組により植生回復が進んでいるとともに、陸産貝類の脅威となり得る外来ネズミ類もごく低密度の状態で維持されています。今般、巽島における試験的な野生復帰の成果が集積されてきたことも踏まえ、令和5年10月2日に開催された小笠原諸島世界自然遺産地域科学委員会 陸産貝類保全ワーキンググループにおいて本年度の「南島におけるチチジマカタマイマイ及びアナカタマイマイ個体群再生実施計画」について最終的な助言を受け、南島において再導入に着手することとしました。
2 再導入するチチジマカタマイマイ及びアナカタマイマイのおかれている状況
チチジマカタマイマイの分布は、現在は父島南東部の巽崎及び属島の巽島のみとなっています。巽崎においては、隣接地域に外来種の貝食性陸生プラナリア類が侵入しており、生息が危機的な状況となっています。
アナカタマイマイの分布は、現在は母島北端部及び父島属島の巽島のみとなっています。母島の個体群とは遺伝的な差異が確認されており、重要な進化的価値を有しています。
アナカタマイマイの分布は、現在は母島北端部及び父島属島の巽島のみとなっています。母島の個体群とは遺伝的な差異が確認されており、重要な進化的価値を有しています。
3 再導入する個体について
南島と父島南西部の南崎周辺では共通の陸産貝類の化石が見つかることから、少なくとも陸続きであったと考えられる最終氷期には、チチジマカタマイマイ、アナカタマイマイの連続した個体群が生息していたと推察されています。そのため、父島南西部で2012年に捕獲したチチジマカタマイマイとアナカタマイマイを飼育・繁殖させた個体を、それぞれ90個体程度を再導入する予定です。
飼育に際しては、再導入先へ寄生生物などを持ち込む可能性を下げるために人工基質(ペーパータオル等)、人工飼料のみを使用して飼育を行うとともに、再導入実施前に便乗性生物の検査や飢餓処理などのリスク管理を実施してきました。
飼育に際しては、再導入先へ寄生生物などを持ち込む可能性を下げるために人工基質(ペーパータオル等)、人工飼料のみを使用して飼育を行うとともに、再導入実施前に便乗性生物の検査や飢餓処理などのリスク管理を実施してきました。
4 今後の予定
今後、現地での再導入作業は、令和5年12月頃から開始し、個体にマーキングする等により各種モニタリングを行いながら継続的に実施していく予定です。
【参考】
・チチジマカタマイマイ(絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN))
学名:Mandarina chichijimana
特徴:殻は、殻長20.0mm、殻径24.0mm程度で、やや円く、硬質、螺塔は高く、螺層はやや膨れる。体層周縁は円い。殻表はほぼ平滑。殻色は淡黄褐色で、殻に4本の色帯をもつ。臍孔は閉じる。殻口は厚く肥厚・反転する。
分布域:小笠原諸島父島の南端部及び巽島。
生息環境:主にオガサワラビロウ等が多い湿性林の林床に生息する。
・アナカタマイマイ(絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN))
学名:Mandarina hirasei
特徴:殻は、殻長13.0mm、殻径21.0mm程度で、偏平、やや薄質、螺層はわずかに膨れる。体層周縁は円い。殻色は淡黄褐色から濃褐色で、色帯をもたない。殻表はほぼ平滑。殻表の光沢は弱い。臍孔は広く開く。殻口は厚く肥厚・反転する。
分布域:小笠原諸島父島の南端部及び巽島、母島北部。
生息環境:タコノキやオガサワラビロウが生育する林内の樹上から地上までを利用する。
チチジマカタマイマイ アナカタマイマイ
南島
・チチジマカタマイマイ(絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN))
学名:Mandarina chichijimana
特徴:殻は、殻長20.0mm、殻径24.0mm程度で、やや円く、硬質、螺塔は高く、螺層はやや膨れる。体層周縁は円い。殻表はほぼ平滑。殻色は淡黄褐色で、殻に4本の色帯をもつ。臍孔は閉じる。殻口は厚く肥厚・反転する。
分布域:小笠原諸島父島の南端部及び巽島。
生息環境:主にオガサワラビロウ等が多い湿性林の林床に生息する。
・アナカタマイマイ(絶滅危惧Ⅰ類(CR+EN))
学名:Mandarina hirasei
特徴:殻は、殻長13.0mm、殻径21.0mm程度で、偏平、やや薄質、螺層はわずかに膨れる。体層周縁は円い。殻色は淡黄褐色から濃褐色で、色帯をもたない。殻表はほぼ平滑。殻表の光沢は弱い。臍孔は広く開く。殻口は厚く肥厚・反転する。
分布域:小笠原諸島父島の南端部及び巽島、母島北部。
生息環境:タコノキやオガサワラビロウが生育する林内の樹上から地上までを利用する。
チチジマカタマイマイ アナカタマイマイ
南島
【用語解説】
・野生復帰
生息域外におかれた個体を自然の生息地(過去の生息地を含む。)に戻し、定着させること。
・再導入
絶滅または絶滅の危機に瀕している種を、過去に生息していた地域に再び定着させることを試みること
・補強
現存個体群に同種の個体を加えること。
・野生復帰
生息域外におかれた個体を自然の生息地(過去の生息地を含む。)に戻し、定着させること。
・再導入
絶滅または絶滅の危機に瀕している種を、過去に生息していた地域に再び定着させることを試みること
・補強
現存個体群に同種の個体を加えること。
お問い合わせ先
関東地方環境事務所野生生物課
TEL:048-600-0817
課長:千葉 康人
課長補佐:小林 靖英
小笠原自然保護官事務所
TEL:04998-2-7174
自然保護官:松波 若奈
TEL:048-600-0817
課長:千葉 康人
課長補佐:小林 靖英
小笠原自然保護官事務所
TEL:04998-2-7174
自然保護官:松波 若奈