野生生物の餌付け、とりわけハクチョウの餌付けは“美談”として語られてきたように思います。しかし、野生生物の保護をするのであれば、取り組むべき課題は“生息環境の保全・保護・復元”です。
餌付けは、ハクチョウの生態を狂わせる恐れがあります。餌を与えてもらえる場所があることで、ハクチョウが本来の渡りルートを外れ、あるいは渡りスケジュールを狂わせる可能性があります 。現在、羽田沼には餌付けにより100羽以上のハクチョウが飛来していますが、餌付けを行っていなかった1980年代前半までは飛来数が5~10羽であったことを考えると、これは異常な状態と言わざるをえません。また、この異常な高密度の状態で鳥インフルエンザ等の伝染病が発生した場合、病気が一気に蔓延してしまう危険性があります。
さらに、本来の食性とは違うパンやお菓子を摂取することで健康状態に影響を及ぼす可能性もある他、完全にペット化して餌を探さなくなってしまう可能性もあります。
かつては、大田原市では各地の河原にハクチョウが飛来していたそうです。餌付けにより密集した不自然な姿ではなく、あちこちの水辺で水草をついばむ姿を見られるようになることが、子どもたちにとっても、大人にとっても、自然環境の大切さや理解を深めることにつながると考えます。