ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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2018年9月

16件の記事があります。

2018年09月28日よく見かけるけど、実は「貴重な」生きもの

佐渡 近藤陽子

皆様、こんにちは。

佐渡自然保護官事務所の近藤です。


▲佐渡市畑野の田んぼと夕日

新潟県佐渡市は、雨が降る日が多くなり、肌寒くなりました。

虫の音色が秋の深まりを感じさせます。

 現在、佐渡島の自然界には約350羽のトキが生息しています。何羽ものトキが刈田に下りて採餌している光景も、もう珍しいものではなくなってきました。「トキが増えた」ことは、単にトキの羽数が増えただけでなく、「トキを取り巻く自然環境が豊かになった」とも言えます。


▲佐渡市佐和田地区の刈田で採餌するトキ7羽

 私たちの事務所がある佐渡市新穂(にいぼ)は、トキの野生復帰事業の中心地でもあり、島内最大のトキのねぐらがある地域でもあります。今回は、そんな豊かな自然に囲まれた私たちの事務所周辺で、「よく見かけるけど、実は貴重な生きもの」2選をご紹介します。



1.サドカケス 

 佐渡のカケスは、本州の亜種カケス(学名:Garrulus glandarius japonicus)とは異なり、佐渡島にのみに生息している亜種サドカケス(学名:Garrulus glandarius tokugawae)とされています。サドカケスの方が頭部が白く、くちばしが太いと言われることもありますが、この2亜種の外見的な違いはほとんどありません。

  

 

▲事務所のマツにとまるサドカケス。翼に入る青が美しい。

 そんな佐渡の名を冠するサドカケス。事務所の敷地内でよく目にしますが、どうやら繁殖もしているようです。3月のある日、1羽のサドカケスが事務所へ続く道路沿いの地面から苔を剥いでいました。巣材を集めて、付近の林で営巣することにしたようです。

  

 
▲くちばしいっぱいに苔をくわえるサドカケス

 このあたりには、エサとなる昆虫もドングリもたくさんあります。結局、巣を見つけることはできませんでしたが、事務所で仕事をしていると、毎日鳴き声が聞こえてくるので(この文章を作成している現在も)、きっと子孫を残していることでしょう。いつか巣を見つけてヒナの成長を見守りたいものです。

  

 ちなみに、カケスは英語でJay(ジェイ)。「ジェッ!ジェッ!」という特徴的な鳴き声が、英名の由来になっています。



2.サドガエル

 こちらも佐渡の名を冠した佐渡島固有のカエルで、事務所周辺の田んぼやため池などで確認されています。

サドガエルの特徴は、「黄色い腹」と「鳴き声」。学名Glandirana susurraの「susurra」はラテン語で「ささやく」を意味し、実際にサドガエルの鳴き声は非常に小さく、耳を澄まさないと聞こえないほどです。サドガエルには、鳴嚢(めいのう)というカエルが鳴くときに膨らませている皮膚の膜が発達していないため、アマガエルのような「ケロケロ」と響く鳴き声は出さず、「ジー、ジー」という小さな機械音のような鳴き声を出します。


 

▲サドガエルの背面と黄色の腹面。

 田んぼのあぜを歩くと、ピョンピョンと飛び跳ねて出てくるので、容易に見つけることができます。そんなサドガエル、島内での生息範囲は限られており、数が減っていることが近年の研究で明らかになりました。2018年現在、近い将来絶滅の恐れがある「絶滅危惧IB類」に指定されています。

 


▲サドガエルを捕食するトキ

 サドカケスもサドガエルも、そしてトキも、里地里山の生きもの。人が手間暇かけて管理した水田や里の環境が彼らの命を支えています。現在は、トキが舞うほど自然豊かな佐渡ですが、かつて田んぼでは農薬による影響からか、死んだドジョウが浮いているのをよく目にした、と聞きます。そのような環境のままであったなら、トキだけでなく、トキのエサとなるドジョウまでも姿を消してしまっていたかもしれません。

 

 人間のそばにいる生きものたちは、自然の豊かさと私たち人間の生活の安全性を示す、実は貴重な存在なのかもしれません。守るに十分値するかと思います。

 あなたも身近にいる生きものに目を向けてみてはいかがでしょうか。彼らはきっと多くのことを教えてくれるでしょう。



【特別出演:佐渡の里地里山のみなさん】  


▲農道で、自分の体と同じくらいの長さのイモムシと戦うスズメ。(佐渡市羽茂村山)

巣にはお腹を空かせて待っているヒナでもいるのでしょうか。

何としてでもこのイモムシを持って帰りたいようです。

スズメは、人のいない環境では生息していない、私たちにはもっとも身近な野鳥の1つです。

▲親鳥にエサをねだるセグロセキレイの巣立ちヒナ。(佐渡市大和)

民家脇の電線にとまって、親鳥がエサを持って戻ってくるのを待っていました。

民家の横には、小川が流れ、田んぼや林もあり、子育てするには良い環境だったようです。

▲親鳥からエサをもらうツバメの巣立ちヒナ。(佐渡市沢根)

近年、減少していると考えられているツバメ。農耕地の衰退に伴うエサの減少、西洋風の家屋増加により巣 がかけにくくなったことなどが原因と考えられています。

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2018年09月27日6年ぶりの皇海山巡視

日光国立公園 太田祐司

みなさん、こんにちは!

日光国立公園の太田です。

9月上旬に日光国立公園の最南部の地域にある2000m峰皇海山に巡視に行ってきました。619日のAR日記で庚申山から皇海山を見て、この山への巡視の思いが強くなったと書きましたが、実はこの山は、過去の巡視記録を見てみると平成2410月に12日で巡視されて以来、現地調査が行われていませんでした。

【庚申山から見る皇海山】

私は、ARとしての3年の任期中に日光国立公園の日光地区をできるだけ歩き回り、公園計画にある歩道23箇所も、可能な限り歩いてみたいと考えていました。しかし、なかなか行けずにいた地域が皇海山周辺で、庚申山皇海山線歩道でした。

栃木県山岳遭難防止対策協議会が作成した「栃木県 山のグレーデイング」では登山道を歩く山では最難度で、1、2泊が適当と書かれています。深田久弥の日本百名山のひとつで有りながら、近年巡視が行われていないのは14時間を越える歩行時間にあったようです。しかし、群馬県側からの登山道を調べてみると3時間ほどで山頂に立てるようです。群馬県側の山域は国立公園区域外で、不動沢のコルと呼ばれる鋸山と皇海山の間のコルからの歩道が公園区域になるようです。とりあえず6年間のギャップを埋めることを先決とし、100名山ブームの山の休日利用状況の確認のため、土曜日に群馬側から巡視を行うことにしました。

舗装道路を離れて悪路の根利林道を低速で1時間30分ほど走行(今回の巡視で一番疲れたところです)すると、皇海橋の側にある登山口につきます。

登山道は、不動沢の沢沿いに付けられており数回の徒渉がありますが、ほとんどは飛び石で渡れます。

【不動沢の徒渉】

1時間半ほど沢沿いの道やガレた沢の中を歩いてから、沢を離れて急な滑りやすい登山道を上りきると、不動沢のコルです。ここからは日光国立公園の区域です。

【不動沢のコル】

稜線はコメツガを主体とした針葉樹林の中に登山道が続きます。稜線に出てからは時折強い雨が降る天気となり、カッパを着て黙々と歩きます。8月に着任した若いHアクティブレンジャーは、早く歩けと言わんばかりにぴったりと着いてきます。

【稜線歩道の悪路】

登山道には一部露岩があって補助ロープがある急なところもありますが、概ね樹林の中をのんびりと歩く道です。

【皇海山山頂】

皇海山山頂はコメツガやシラビソに囲まれ、雨のせいもあって展望はほとんど無く、静かな頂でした。日本百名山ですが雨のためかこの日出会った登山者は10人足らず。しかし、栃木側の庚申山荘を早朝に出て、6時間ほどかけてやってきたというパーティと山頂でお話しすることができ、栃木側の情報を多少得ることができました。

山頂での昼食休憩中に雨が強く降り出し、急いで下山することにしました。栃木側の未踏査部分の調査の来年度実施についてHアクティブレンジャーと相談しながら、駆け下りました。登山口に着く頃には、天候が回復し日差しも出る皮肉な天候での巡視となりました。

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2018年09月26日【参加報告】箱根ビジターセンター特別イベント「芦ノ湖ハイク&クリーン」

富士箱根伊豆国立公園 三瓶雄士郎

こんにちは!富士箱根伊豆国立公園管理事務所の三瓶です。

先日9月12日に箱根ビジターセンターの特別イベント「芦ノ湖ハイク&クリーン」が開催されました。

↑チラシ

この活動は箱根ビジターセンターを運営しております(一財)自然公園財団箱根支部、箱根マウンテンリッパー様、湖尻観光協会様で構成されている「芦ノ湖ハイク&クリーン実行委員会」が企画されたものです。当所にもお誘いがありましたので、参加してきました。

↑活動の様子。

湖尻地区に面している芦ノ湖の湖岸沿いを中心に落ちているゴミや打ち上げられたゴミを回収しながら自然観察をする活動です。しかし、様々なゴミが打ち上げられているのに驚きました。

↑釣り糸などの釣り具関係

 釣りの最中、どうしても切れて無くなってしまいますが、絡まって使えなくなってしまった釣り糸などは持ち帰るようにしましょう。その他にもルアーや芦ノ湖では禁止されているプラスティック製ワームなども回収しました。

↑発泡スチロール

劣化に合わせて波の影響で粉砕していました。全て手で取り除くのは困難でやむを得ず土ごと回収しました。

↑湖際より拾い上げたゴミ

 サンダル、ビン、ペットボトルのキャップ、飲み物のフタ、あめ玉の袋

 いわゆるうっかり落としてしまう「うっかりゴミ」も混ざっています。

 出来るだけ鞄にしまったり、決められた場所へ捨てるようにしましょう。

参加者6名、約4時間の活動で軽トラック1杯分のゴミを回収することが出来ました。

少人数でもこんなに回収が出来るので、大人数だとより沢山のゴミが回収できるかと思います。

また、皆さまが「ゴミを持ち帰る」という気持ちがとても大事です。ゴミ箱がないからその場所に置いてくる(捨ててくる)のはやめましょう。

次回は12月に開催されるそうです。詳細は箱根ビジターセンターにお問い合わせください。

http://hakonevc.sunnyday.jp/index.html

少しでも綺麗になって箱根に生息する動植物が気持ちよく過ごせますように・・・。

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2018年09月26日ねぐら出一斉カウント

佐渡 原奈緒子

みなさんこんにちは、佐渡の原です。

すっかり秋めいて刈田や黄金色の絨毯の中に群れるトキを見かけるようになりました。

▲佐渡市畑野地区にて農道やあぜで採餌するトキ3羽

先日、トキが群れる季節恒例の「ねぐら出一斉カウント調査」を行いました。

ねぐら出一斉カウント調査とはその名の通り、複数あるトキのねぐら出にそれぞれ人を配置して、生息している羽数を一斉に数える調査です。

トキのモニタリングは環境省、新潟大学、地域のボランティアの方々が協力して放鳥が始まった2008年からほぼ毎日行われています。通常のモニタリングでも早朝のねぐら出数のカウント調査は行いますが、2015年からは1年に2回佐渡全島内のねぐら出羽数を同時にカウントし、個体数の把握に役立てています。今回の調査では合計19箇所から310羽のねぐら出を確認しました。

▲高台からトキのねぐら出を観察する様子

各ねぐらの近くには担当のスタッフやボランティアが配置されますが、全体の様子を把握するために、高台にも配置します。ねぐら出の無線連絡がはいると望遠鏡を使って羽数カウントの補助やねぐら出したトキがどちらの方向に飛んでいくのかを観察します。

▲佐渡市両津地区にてねぐら出するトキ1羽

トキは群れてねぐらをとる習性があり、多いときは1つの林から100羽以上もねぐら出をした記録があります。臆病な性格でもあり、林の外からは見えない場所にいることが多いですが、ねぐら出するタイミングはまず耳で確認できます。

林の中から「コッココッ」、「ココッ」と話声が聞こえてきます。トキはおしゃべりな鳥で状況によって様々な鳴き声を使い分けますが、この時の声は一緒に出るタイミングを相談している様に聞こえます。その後に「クワーッ、クワーッ」、「クワークワーッ」と猫とニワトリとカラスを混ぜ合わせたような声で鳴きながらねぐら出していきます。臆病なわりにはとっても目立つ行動をする所が面白い鳥だなと思います。

ねぐら出が終わるとえさ場に降りたトキを探して、足環の判読による個体識別を行います。

下の写真のように、高台からねぐら出するトキを追いかけて観察をしていると、トキが降下した田んぼを特定することはできますが、さすがに距離があるため、足環の判読はほとんどできません。

▲ねぐら出した後に近くの田んぼ(江)に降りた様子(赤矢印:トキ、黄色矢印:サギ)

田んぼの場所をモニタリングチームに無線連絡をして、近くにいる人が現場に向かいます。車の中から望遠鏡でのぞくとトキに足環が付いていることがわかります。

▲何色の足環がついているか見えますか?

▲さらにアップにして見てみましょう

モニタリングではトキの足環の一覧表になっている識別表を使って、個体を特定しています。写真の個体の左はピンク・赤・ピンクのNo.223、右は白・赤・白のNo.127とわかります。この足環の判読やねぐら出カウントによるデータの積み重ねにより、現在は353羽(佐渡島内351羽、本州2羽)の生息が確認されています。その内の257羽には足環が装着されています。すごいのは足環のある個体はどこにいるかほぼすべて追えているということです!! 10年前の2008年9月25日に佐渡で放鳥が始まりました。この10年でトキの数は順調に増えており、佐渡における生息場所も範囲を広げています。これからの10年はどんな年になっていくでしょうか。人とトキが共生してける社会の実現のお手伝いが少しでもできるように引き続きモニタリングを通して観察していきたいと思います。

◇放鳥トキ情報 野生下のトキに関する最新情報を毎週更新中!

http://blog.goo.ne.jp/tokimaster

◇公式ツイッター 「佐渡の車窓から」好評連載中!

https://twitter.com/kankyoshosado01?s=09

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2018年09月25日南アルプスの隠れスター!栗沢山

南アルプス国立公園 本堂舞華

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

みなさんは『南アルプスの山』と聞いてどんなことを思い浮かべますか?「アクセスが悪い」、「歩行時間が長い」、「登山初心者向けの山がない」などが挙げられると思います。確かに、マイカー規制がゆえに、時間に縛られた登山になってしまいますし、山小屋や山頂に着くまでの歩行時間がルートによっては日帰りでは難しいところもあります。そのため、気軽に登ることはできず、重装備になりがちかと思います。

南アルプスに登りたいけど、重装備はまだ持てない!日帰りでバスの時間にも追われない登山がしたい!今年こそ南アルプスデビューしたい!そんなあなたにぜひ、ご紹介したい山があります!

栗沢山頂上から見る甲斐駒ヶ岳

△栗沢山頂上から見る甲斐駒ヶ岳

長衛小屋から約2時間。標高2,714mの栗沢山です。北沢峠の標高が約2,000mなので、標高差は700mほどになります。栗沢山は早川尾根の最北端にあり、甲斐駒ヶ岳(東駒ヶ岳)の真正面に位置しています。山頂からは写真のようなとてもかっこいい甲斐駒ヶ岳を見ることができます。

栗沢山山頂から見る仙丈ヶ岳

△栗沢山山頂から見る仙丈ヶ岳

甲斐駒ヶ岳のほかにも仙丈ヶ岳や北岳、鳳凰三山やアサヨ峰などを見ることができます。360度展望を楽しむことができるので、「次はあの山に登りたい!」と目標とする山も決めることもできますね。アサヨ峰は早川尾根の中で1番標高が高い山で山梨百名山および日本三百名山に選ばれています。体力に自信がある方はアサヨ峰まで足を伸ばしてみるのもいいかもしれません。

栗沢山への主な登山口は長衛小屋から栗沢山山頂直登コースと仙水峠経由コースの2つに分かれます。

栗沢山直登コースの樹林帯

△栗沢山直登コースの樹林帯

栗沢山山頂直登コースは樹林帯を進みます。森林限界が高いので、頂上付近になるまでひたすら樹林帯の中を歩きます。視界が開けてくるとハイマツ帯、岩場になります。岩場と言っても高度感があるわけではなく、マークもきちんとあるのでご心配なさらず。北岳や仙丈ヶ岳を横目に爽快な稜線歩きを味わえます。

仙水峠経由コースは樹林帯をしばらく歩くと無数の岩石が現れます。

仙水峠下にある無数の岩

△仙水峠下にある無数の岩

この岩石は岩塊流(がんかいりゅう)と呼ばれ、氷期に凍結破砕作用で生産された岩屑が斜面下方へ移動し、後に細粒が流水によって除去されたために生じた地形のことをいいます。仙水峠は日本を代表する岩塊流の1つです。南アルプスでは仙水峠のほかに、早川尾根上にある白鳳峠でも同じような地形を見られます。

どちらのルートも変化に富んでおり、さまざまな景色を楽しむことができます。周回コースにすると両方のルートを楽しむことができるのでオススメです!日帰りにこだわらず、下山後は山小屋に宿泊して北沢峠周辺のコケなどを楽しむのもいいですね♪

山登り初心者の方、南アルプス主峰を制覇したけど栗沢山は登ってないというあなた!これからの紅葉の季節をこの栗沢山に登ってみてはいかがでしょうか?

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2018年09月19日尾瀬沼から奥鬼怒へ(後編)

日光国立公園 太田祐司

みなさん、こんにちは!

日光国立公園の太田です。

尾瀬から奥鬼怒を目指した巡視の後編を報告させていただきます。

小松湿原の水場は、2043m2055m標高点の間のコルにあると思い込んでいましたが、渇水期になれば枯れそうな、とても水汲みができそうも無い細い流れで慌てました。疑問に思い偵察で少しコルから登ると、樹木に水場の標識があり細いパイプから流れている水場がありました。

【小松湿原水場の標識】

ここで翌日までの水を各自2L背負ってさらに進みます。携帯電話の受信可能地点のチェックなどしながら、樹林帯を進み、鬼怒沼山を回り込むと鬼怒沼山への分岐です。

【鬼怒沼山への道】

ここには、鬼怒沼山山頂への方向標識はありますが、我々がやってきた黒岩山の方向を示す標識は無く、地図を持たない登山者は戸惑う場所かもしれません。

尾瀬沼を出てから約9時間が経過し、若い他の3人のメンバーも往復約30分の山頂に、行こうという強者はおらず、奥鬼怒湿原を目指すことにしました。30分ほど進むと、樹林帯の先に明るく開けた湿原が登場しました。

【奥鬼怒湿原】

奥鬼怒湿原は尾瀬ヶ原より標高が約600m高い2000mを越える高所にあり、取り囲む山が無いので、天上の楽園という言葉がピッタリに感じられます。

この夜は、湿原のそばの樹林の中にある避難小屋に宿泊しました。この日に会った登山者は、尾瀬沼から黒岩山を往復してすれ違った単独行者のみでした。夜は霧雨の降る中、湿原の木道を歩きながら、シカのライトセンサスを行い5頭のシカを確認できました。

翌朝は、奥鬼怒湿原を巡視後、下山口の片品村大清水を目指します。湿原の北端にある標識は、今までのものとは違い木製支柱の立派なもので、我々がやってきた遙か先の尾瀬沼を示していました。

【奥鬼怒湿原北端の標識】

巡視の最終日は、物見山の標高2113mから湯沢の標高1320mまで約800mを、一気に下る厳しいコースが待っていました。

鎖場などはありませんが、露岩の多い歩きにくい急傾斜の道が続きます。

【岩場を下る】

この尾根には岩の多い土地に生育するアスナロやシャクナゲが多く見られました。

登山者の少ない道(この日は、物見山の山頂で1名だけ)のためか、登山道のすぐ側には、ツキノワグマの痕跡が!

【クマハギ】

クマハギです。クマが樹皮を剥いで内側の形成層を歯で削り取って採食した跡です。尾瀬沼からのこのコースでは、他にも3箇所ほど確認できました。

2時間ほど急な道を下ると、水の流れる沢音が聞こえてきました。

【湯沢の倒木橋】

湯沢です。増水時以外には使用しそうにない倒木を利用した橋が架かっています。ここを越えて、約1時間の林道歩きで大清水に到着し、巡視を終えることができました。

今回の巡視は、登山道の状況確認以外にも、シカのライトセンサス調査等盛りだくさんの内容で、フィールドワーカーとしてのアクティブレンジャーの基礎技術習得の場としては、良い場所だったと思います。これからも、フィールドでの活動を頑張って行こうという思いを強くした巡視でした。

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2018年09月18日アクティブ・レンジャー写真展開催【ジオリア 伊豆半島ジオパークミュージアム】

富士箱根伊豆国立公園 下田 吉川貴光

待望のアクティブ・レンジャー写真展が今、伊豆半島でもっとも熱い【ジオリア 伊豆半島ジオパークミュージアム】で開催いたしました!!!

 

アクティブ・レンジャー写真展は、関東地方環境事務所管内の国立公園・国指定鳥獣保護区で活躍するアクティブ・レンジャーたちが現場で撮影した渾身の作品が展示されております。

 

展示スペースいっぱいに詰めこんだ写真や展示物をご覧いただき、少しでも国立公園・国指定鳥獣保護区や我々の活動などに関心を持っていただければ幸いです。

【伊豆半島ユネスコ世界ジオパーク 認定証】

世界的に貴重な地質遺産を通して、自然の保護や教育などを進めていく地域である伊豆半島ユネスコ世界ジオパークの拠点となっているところが、このジオリアです。ミニシアターや地質の観察コーナーなどがあり、楽しみながら学べるミュージアムとなっております。

伊豆半島にお越しの際は是非お立ち寄りください。

(※ジオリアは水曜日休館となっております。)

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2018年09月18日塩見岳での高山植物保護作業

南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

915日から17日にかけて、環境省事業として塩見岳にて南アルプス高山植物保護ボランティアネットワークの方々と伏工作業を行いました。

塩見岳東峰山頂直下ではかつてシナノキンバイやハクサンイチゲなどが見られるお花畑が広がっていましたが、ニホンジカの採食圧や踏圧によって植生の変化が進み、やがてニホンジカが好まない植物すらなくなり、山肌がむき出しになってしまいました。氷河跡地の上部は土壌が薄く、一度表土が剥がれ落ち、土壌侵食が起きてしまうと、植生の自然回復は困難になってしまいます。そのため、2009年(平成21年)から毎年、塩見岳東峰山頂直下ではヤシマットの設置を行っています。

作業のようす その1

△作業のようす その1

作業のようす その2

△作業のようす その2

前日は雨に打たれましたが、伏工作業当日は時折晴れ間もあり、暑すぎず寒すぎず、作業を行いやすい天候でした。南アルプス高山植物保護ボランティアネットワークの方々にもご協力いただき、塩見小屋から一人ひとり歩荷したマットをお花畑の裸地部分に敷き、四隅や途中部分に張りピンを木槌で打ち、シュロ縄で固定します。最後に抑えの石を置いて完成です。マットで覆うことによって土壌が流れにくくなるほか、マットはヤシ繊維製マットを使用し、耐久性があるので、保温性を高めることができます。地面の温度変化が穏やかになると、飛んできた種から芽が出やすくなる効果もあります。昨年設置したマットには新しい命が宿っていました!

昨年設置したマットに定着した植生

△昨年設置したマットに定着した植生

すでに高山植物は枯れてしまっていましたが、マットにはオンダテなどが根をつけていました。わたしは昨年に引き続き、2回目の参加になりますが、伏工の効果をはっきりとみることができたのでこの作業にやりがいをとても感じました。元のお花畑に戻るまでかなりの年月がかかってしまうと思いますが、いつかこの場所に緑やお花畑が戻ってきてくれることを願います。

山を歩いていると木々がほんのり黄色や赤色に染まっていました。高山植物のシーズンが終わり、いよいよ紅葉シーズンの始まりですね!!コケモモやナナカマドの実も赤くなり、一足先に秋を感じてきました。

赤く色づいたナナカマドの実

△赤く色づいたナナカマドの実

広河原でも白鳳渓谷の紅葉を一目見ようと多くの方で賑わいます。野呂川の清流の音を聞きながら紅葉を楽しむのもいいですね♪朝晩問わず、日中も冷える日がありますのでお越しの際は防寒着を必ず持ってきてくださいね。

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2018年09月17日9月9日(日)【初秋の湯坂路と石仏石塔群を訪ねて】行事報告(箱根地域)

富士箱根伊豆国立公園 三瓶雄士郎

こんにちは!富士箱根伊豆国立公園管理事務所の三瓶です!

 箱根はすっかり秋らしい、ひんやり冷たい風が吹くようになってきました。ススキが穂を出し始め、箱根地域で有名な「仙石原ススキ草原」も葉で緑一色だった草原が、先週から徐々に黄金色に染まり始めてきました。見頃まであともう少し・・・!その様子はまた後日アップ致しますのでご期待ください。

今回は9月9日(日)に箱根地域自然に親しむ運動の第6回目「初秋の湯坂路と石仏石塔群を訪ねて」を開催致しました。

=箱根地域自然に親しむ運動とは?=

箱根地域では一般の方により箱根の自然を知ってもらうべく【箱根地区 自然に親しむ運動委員会】(環境省・神奈川県・箱根町・(公財)神奈川県公園協会・(一財)自然公園財団箱根支部)が主催するイベントです。

今年度は9回の開催を予定しております。

内容は、鎌倉~室町時代にかけて造られた石仏や石塔が残る芦ノ湯付近を巡った後、古道「湯坂路」で自然散策をしながら小涌谷駅までトレッキングするイベントです。雨天が心配されましたが、無事開催することが出来ました。

↑今回のコース

 この回での魅力は「石仏石塔群」。この地域は昔「地獄」と呼ばれ天候が不安定になりやすく、強風や雨が多い地域だったことや火山活動による噴気や硫黄臭、山からの落石が絶えず発生していた場所だったからそう呼ばれていたそうです。いつぞや「地獄に落ちる」と恐れられていたため、地獄に落ちてもお地蔵様が救ってくださるよう願いを込めて、沢山の石仏石塔が造られたそうです。

↑出発の様子。先に見える御堂の中に石仏石塔群でシンボル的存在の「六道地蔵」が保管されています。

↑六道地蔵(約1300年に造立:国の重要文化財)

 高さは約7m以上もある輝石安山岩に丸彫りされた高さ約4mの磨崖仏(まがいぶつ)。

 磨崖仏とは自然の岩壁に彫られた仏像の事で、その時代から残る磨崖仏としては関東一の大きさを誇ります。

↑二十五菩薩像(約1293年から造立:国の重要文化財)

 国道1号線を挟み、岩に二十六躰半(阿弥陀如来像1躰、観音菩薩像1躰、地蔵菩薩像24躰半)が彫られています。幾年にも渡って彫られたと考えられたそうです。名の由来として「二十五菩薩像」の数に近いことからそうなぞられて呼ばれているそうです。着任してからこの場所に何回か訪れていますが、いつ訪れても言葉が出ないくらい圧巻の姿です。

石仏石塔群を巡った後は古道「湯坂路」で自然観察会です。

↑湯坂路の様子

秋の植物が花を咲かせ、とても良い雰囲気が漂っています。この道は、かの豊臣秀吉公が北条攻めの時の通った道でもあるそうです。

↑オミナエシ。秋の七草の一つ。黄色の花が特徴で、この時期は虫のレストランになります。

↑ヤマホトトギス。花の斑模様が野鳥の「ホトトギス」の腹の模様に似ていることからそう呼ばれています。

↑千条の滝(ちすじのたき)

 斜面から染み出た水が直接滝になっている地学的にとてもユニークな場所です。開催直前まで雨が降っていたため、水量はいつもより1.5割増し。普段は細い水筋がいくつも流れていますが、今日は滝らしい太い水筋がいくつも流れていました。

この後は小涌谷駅まで行き、解散しました。

参加者からは「身近にこんな石仏石塔群があったとは知らなかった」や「湯坂路の雰囲気がとても良かった」などのコメントをいただき、開催の成果は得られたかなと思います。

残る「箱根地域自然に親しむ運動」イベントは残り3回。

◆10月6日(土)「箱根火山を眺める、箱根外輪山ロングトレッキング」(主催:(一財)自然公園財団箱根支部)

◆11月6日(火)「紅葉の箱根路を訪ねて」(主催:環境省)

◆11月23日(金・祝)「箱根の冬鳥観察会」(主催:(公財)神奈川県公園協会)

他にもパークボランティアが主催する自然観察会もございます。

◆10月14日(日)「バリヤフリーで楽しむ秋の箱根」(環境省との共同開催)

◆10月27日(土)「芦ノ湖水門と歴史を訪ねて」

各イベントについてメールまたは往復はがきで申込を受け付けております。締切は各開催日より10日前ですので、ご注意ください。詳しくは下記のURL先をご覧ください。

http://hakonevc.sunnyday.jp/shitashimuundou.html#

ご参加お待ちしておりまーす!

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2018年09月14日【小笠原】 島の森を 作ルンジャー!!

小笠原国立公園 玉井徹

こんにちは

小笠原の玉井です。

8月は台風のバーゲンセールの様でしたが、ようやく落ち着いたところです。

9月9日 (日)8:30~12:00

母島で第2回こどもパークレンジャーを開催!

島に暮らす元気な15名が集まりました。

第2回は「森作り」

場所は前回と同じく、新夕日ヶ丘自然再生区。

希少な固有昆虫の保全や、森林の再生を進めています。

前回はここで、「虫さがし」をテーマに昆虫調査をしました。

今回は、その昆虫類の住処となる森を作ろうという企画です。

在来の樹木を植栽し、昆虫と植物のかかわりを知ってもらいます。

題して...

「島の森を 作ルンジャー」!!

さっそく、外来樹木の駆除を行っているエリアで植栽を行います。

まずは穴掘り!赤土で根も多く、一苦労。

その後苗を植え、防草シートで外来植物や雑草を防ぎます。

傷つけないように優しく植えよう!

どの班もかなり上手な仕上がりに                  〈オガサワラシジミ〉

                                   2018.4.30 撮影

今回植えた木は、コブガシ。

コブガシは様々な昆虫はもちろん、現在母島にしか生息していない

オガサワラシジミが繁殖するために利用する、ごく限られた植物のひとつです。

(オガサワラシジミは、国内希少野生動植物種、国の天然記念物に指定されています)

この日、全員で9本のコブガシの苗を植栽できました!

その後は、外来樹木・アカギの材を利用してモニュメントを作成。

指でスタンプし、それぞれの名前をサインしました。

しっかり育って、昆虫が集まってほしいなぁ

植栽したコブガシはアクティブ・レンジャーがその後も見守ります。

次回は、12月の開催を予定しています。

第3回も一緒に楽しく島の自然を守りましょう

みんなの参加を待っています!

https://www.env.go.jp/kids/gokan/jpr/

                                    小笠原自然保護官事務所 玉井

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