ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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佐渡

76件の記事があります。

2018年11月14日中国からやってきました

佐渡 原奈緒子

こんにちは、佐渡自然保護官事務所の原です。

今秋の佐渡は天気が荒れることが少ないので、いつもより長い間紅葉を楽しむことができます。

▲大佐渡スカイライン沿いの紅葉


さて、10月は佐渡トキ野生復帰10周年の記念式典があったことをご紹介しましたが、それに引き続き、もう一つ大きなイベントがありました。10月17日に中国から新たに2羽のトキがやって来ました。提供されたのはオスの「楼楼(ロウロウ)」とメスの「関関(グワングワン)」の2羽でどちらも2歳です。中国からのトキの提供は2007年以来の11年ぶりとなりました。

▲中国から送られてきたときの移送箱

底は3層構造になっていて、扉には通気窓があります。移送中、通気窓は布で覆われて光が入らないようになっていました。この箱に入った状態で中国から成田空港までは飛行機、成田空港から佐渡まではヘリコプターで運ばれてきました。

▲ヘリコプターにトキを乗せて、成田から佐渡まで運ぶ様子。

トキの獣医師と自然保護官らが同乗しています。

はじめの2週間は自主検疫のため野生復帰ステーションの収容ケージに2羽を隔離収容していましたが、問題ないとの検査結果が出たことから、10月30日にはそれぞれペアとなる個体と一緒に佐渡トキ保護センターの繁殖ケージに移されました。

▲日本の飼育番号が印字された足環を装着する様子(オスのロウロウ)

▲野生復帰ステーションとトキ保護センターは車で10分くらいの距離にあります

▲繁殖ケージにペアとなる個体と一緒に入ったメスのグワングワン(地面にいる方)

獣医さんがそっと見守り無事にケージへの移送が完了しました。

現在、日本の野生下には369羽のトキが生息していますが、元をたどると中国から送られてきた5羽のトキのいずれかの子孫になります。

・1999年 友友(ヨウヨウ)♂・洋洋(ヤンヤン)♀ 

来日した年に日本で初めてトキの人工繁殖に成功し「優優(ユウユウ)」が誕生

・2000年 美美(メイメイ)

 優優のパートナーとして来日

・2007年 華陽(ホワヤン)♂・溢水(イーシュイ)

この5羽に今回提供されたロウロウとグワングワンが加わることで日本のトキ個体群の遺伝的多様性の維持・向上が期待されており、来春の繁殖期に無事にヒナが生まれてくることを心待ちにしています。

また、今回のトキの提供を通して、トキは日本と中国の友好のシンボルであることを改めて実感しました。両国で進められているトキ野生復帰事業がますます発展していきますように。

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2018年11月06日海を渡ったトキたち

佐渡 近藤陽子

皆様、こんにちは。

新潟県佐渡市では、紅葉が見ごろを迎えています。

▲赤玉線 2018/10/25撮影

「トキといえば佐渡」という印象が強いのですが、実は本州へもトキは飛来しています。

以前No.264というメスのトキが長野県安曇野市で確認されたことをご紹介しました(この個体は11月5日現在、富山県黒部市にて確認されています)。このNo.264の前にも、多くのトキが本州へ渡っています。

本州へ渡ったトキたちは、その後どうなったのでしょうか。

佐渡島から日本海を渡り、本州へ飛来したトキたちの一部をご紹介いたします。

※トキの生存扱いについて

6ヶ月以上未確認:行方不明扱い、1年以上未確認:死亡扱い

■No.03 (第1回放鳥、佐渡トキ保護センター生まれのメス)

本州飛来地:新潟県、長野県、山形県、福島県、富山県

生存状況:2016年9月17日に佐渡市で確認されて以降、未確認のため、現在死亡扱い。

個体情報:下記No.04と姉妹。佐渡-本州間を1日で往復したり、繁殖期と非繁殖期で島内を広範囲に移動したりと、神出鬼没のトキで、出没する各地域でとても愛されていました。


▲2016年1月26日 雪の中でミミズを捕食したNo.03



■No.04(第1回放鳥、佐渡トキ保護センター生まれのメス)

本州飛来地:新潟県、福島県、宮城県、山形県、富山県、福井県、石川県

生存状況:2016年9月11日に石川県輪島市で確認されて以降、未確認のため、現在死亡扱い。

個体情報:上記No.03と姉妹。初放鳥翌年の2009年から本州で確認されるようになり、1羽で本州各地を移動しながら生活していました。長期間滞在していた富山県黒部市では、愛称「トキメキ」として親しまれ、特別住民票を発行されるなど、佐渡にとどまらず、本州の多くの地域の方に愛されていました。人や車を恐れない度胸があり、電柱や屋根にとまるなど、他のトキでは見られない多くの奇抜な行動が印象的なトキでした。04が行方不明扱いになった時は、ニュースにも取り上げられ、多くの関係者がショックを隠せませんでした。

▲2009年3月26日 まだ佐渡島内にいた頃のNo.04



■No.A45(2016年4月に42年ぶりに野生下生まれ同士のペアから誕生し、巣立った「純野生トキ」のうちの1羽のメス)

本州飛来地:新潟県新潟市

生存状況:現在も佐渡で継続的に確認されている。

個体情報:2017年4月13、14日に新潟市で確認されたが、同日14日に佐渡でも確認されました。今後の繁殖のための本州視察だったのでしょうか。

▲2016年6月10日 間もなく巣立ちを迎えるNo.A45 



■No.269(第15回放鳥、佐渡トキ保護センター生まれのメス)

本州飛来地:新潟県弥彦村、燕市、新潟市、三条市

生存状況:死亡確認

個体情報:放鳥された翌月に新潟県弥彦村で確認されましたが、放鳥2ヶ月後には、新潟県三条市内で死体となって確認されました。

▲2016年9月23日 放鳥当日のNo.269

 多くの鳥類で、メスはより良いオスを求めて、若い個体は新天地を求めて、広く飛び回ることが知られています。本州へのトキの飛来例は、現在までに23あります。そのうち17例がメスで、2例が1歳未満の若いオスでした。

 現在、本州で確認されている唯一のトキ、No.264。No.264が本州でも愛され、多くの人の記憶に残ってくれることを願います。そしていつか、本州でも大空を舞うトキの群れが見られる日が来ますように。


 

▲枯れスギのてっぺんにとまるトキと虹 2018/11/1撮影

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2018年11月01日雨上がりは山に行こう!

佐渡 原奈緒子

こんにちは、佐渡自然保護官事務所の原です。

▲佐渡市新穂地区の刈田で羽繕いをするトキ8羽(2018年10月29日)

各地で紅葉シーズン真っ盛りとなりましたね。佐渡はあまり山のイメージがない方もいるかもしれませんが、最高標高の金北山(1,171m)がある大佐渡山脈と日本海側には小佐渡山脈があり山頂の方から色づく山々を平野から眺めることができます。

今年は秋の初めに通過した大きな台風の影響を心配していましたが、山に行くタイミングを調節するといつも以上に色とりどりの秋の山を楽しむことができます。 それは、「雨の後に行くこと!」です。カラッと秋晴れの日に青空に映える紅葉もとてもきれいですが、雨で葉がぬれている時の紅葉は一段とツヤがでて、深い色を楽しむことができます。雨にぬれた美しさは紅葉だけでなく、コケや石も同様です。昔は来客がある前に庭先に打ち水をして美しい庭を演出することでおもてなしをしていたそうです。昔の人は自然の良さを引き出す方法を知っていたのですね。

▲雨の後の乙和池 いつもよりも色鮮やかな景色になっていました(2018年10月27日)

当所があるのはトキの飼育施設でもある新潟県佐渡トキ保護センター 野生復帰ステーションです。こちらの施設は一般には公開していませんが、同じ施設内にある観察棟は一般公開しています。観察棟からは佐渡の豊かな自然環境を見下ろせる他、順化ケージや飼育ケージの様子をモニターでライブ中継しています。

▲観察棟と観察棟から望める国中平野

※観察棟公開時間

4月~11月 9時~16時30分

12月~3月 9時~15時 (冬季は積雪状況により閉鎖することがあります)

運が良ければ野生下のトキが飛翔する様子に出会えるかもしれません。観察棟へは駐車場から5分程度山道を歩いて向かいますが、右に左に目を向けると落ち葉に隠れた秋の花を見つけることができます。日本海側はこれから雨が多い日になりますが、雨と上手につきあって短い秋を楽しみましょう。

▲観察棟周辺で観察できる花や実がついている植物(2018年10月26日)

▲観察棟周辺で一番紅葉していたヌルデ(2018年10月26日)

ウルシの仲間は紅葉時期が早く、紅色が鮮やかです。

◇新潟県佐渡トキ保護センター 野生復帰ステーション

http://tokihogocenter.ec-net.jp/station/index.html

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2018年10月24日トキ野生復帰10周年!新人トキがんばれ!!

佐渡 原奈緒子

みなさんこんにちは、佐渡自然保護官事務所の原です。

今年で佐渡でのトキの放鳥が始まってから10年が経ちました。10月14・15日に10周年を記念してトキの野生復帰10周年を記念した式典・フォーラム・放鳥式典が行われました。

放鳥式典は15日に行われ、11羽のトキが佐渡の大空に羽ばたきました。

放鳥式典には眞子内親王殿下にもご臨席頂き、トキの放鳥を行って頂きました。

▲放鳥式典会場にずらりと並ぶ放鳥箱

▲地元小学生によって放鳥されるトキ

私たちアクティブレンジャーはというと、式典会場から離れた見晴らしの良い場所で放鳥したトキに事故がないか、無事に飛べているかをモニタリングしていました。

▲放鳥トキの様子をモニタリングする職員

今回はハードリリース方式*で行われ、放鳥する場所としても初めての場所となりましたが会場の周りには先輩トキたちがたくさんいます。放鳥直後から田んぼや草地に降りて採餌を始めているのを確認できるほどでした。そして、放鳥から1週間も経たないうちに先輩トキの群れに合流して一緒にとまり木にいる様子も確認されています。

放鳥個体は事前に専用の広いケージで飛翔や採餌など自然に近い環境で十分な訓練を受けますが、飛び方を見るとまだまだ新人さんなのがわかります。

▲野外生活7日目の新人トキNo.354 おぼつかない着地(2018.10.22)

▲野生下生まれ2歳のNo.B06 華麗な着地 (2018.10.22)

放鳥されて佐渡の大空を飛ぶのはどんな気持ちでしょうか。仲間と訓練していた順化ケージが恋しくなったりもしているかもしれません。 それとも早速お気に入りのえさ場を見つけて他のトキたちと楽しく過ごしているでしょうか。新人トキたち、厳しい野生下でも無事に過ごしていけますように。これからも少し離れたところから見守っていきます。

*ハードリリース方式については6月28日掲載の「トキ放鳥(ほうちょう)までの道のり」をご覧ください。

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2018年10月18日トキの個体特性

佐渡 近藤陽子

皆様、こんにちは。

佐渡自然保護官事務所の近藤です。

▲今季初確認のコミミズク(2018年10月9日撮影)

 新潟県佐渡市では、トキの野生復帰の取組が進められており、佐渡の自然界に生息するトキの数は約370羽になりました。私たち、佐渡のアクティブ・レンジャーは、トキ野生復帰の取組を評価する上で重要な、トキのモニタリング(追跡調査)を行っています。日々トキを観察していると、いつの間にか1羽1羽の特性が頭に入ってきて、トキ観察の面白さにつながっています。



今回は、私たちの記憶に残るトキの一部をご紹介いたします。

■「ジャマイカくん」

個体番号:174(第10回放鳥、いしかわ動物園生まれのオス)

名前の由来:脚についている補助カラーリングの色が、ジャマイカを連想させるため(上から みどり・きいろ・あか)。

記憶に残る理由:足環の色はカラフルでおしゃれだが、メスにモテない控えめ草食系男子で、職員の同情を買っているから。


■「ぴみみ」と「きぴぴ」ペア

個体番号:212(第12回放鳥、佐渡の野生復帰ステーション生まれのオス)と237(第13回放鳥、佐渡トキ保護センター生まれのメス)

名前の由来:脚についている補助カラーリングの頭文字から(212:上からピンク・どり・どり、237:上からいろ・ンク・ンク)

記憶に残る理由:繁殖期になると突然姿を消し、山奥でこっそり繁殖している要注意ペアだから。

▲ぴみみ


▲きぴぴ
 

■「ろくちゃん」

個体番号:06(第1回放鳥、佐渡トキ保護センター生まれのオス)

名前の由来:個体番号から

記憶に残る理由:2008年の記念すべき第1回放鳥個体で、人のすぐ近くまで来てエサを食べるため、多くのスタッフに愛されたが、繁殖は一度も成功せず、トキのメスにはモテなかったから。2015年10月、残念ながら猛禽類に襲われ死亡が確認されました。


■「にひゃくじゅう」

個体番号:210(第12回放鳥、出雲市トキ分散飼育センター生まれのオス)

名前の由来:個体番号から

記憶に残る理由:放鳥後、ほかのトキが平野の水田やビオトープで確認されている中、トキがいるとは全く予想していなかった山奥のダム湖周りの林道へ下りて採餌する珍しい行動を取るトキだったから。2015年9月、残念ながら骨格と羽のみになって、いつも確認されていたダムから離れた海岸に死体が打ち上げられているところを発見されました。


 トキの個体特性を把握できる理由の一つに、トキにはそれぞれお気に入りのエサ場、お気に入りのねぐらがあることがあげられます。この地域に行くと、この番号のトキたちがいるだろう、と大方予想して私たちはモニタリングをしています。実際に私たちがモニタリングで使用しているトキの識別表も、地区別に分けられています。

 

▲トキ識別表

 佐渡のトキは約370羽にまで増え、今までトキが確認されていなかった場所でもトキが見られるようになりました。営巣場所も島内各所に広がり、すべての営巣場所を把握するのは困難です。しかし、日々トキをモニタリグすることで、私たちもトキが好みそうな場所がどのような環境なのかが分かってきました。私たちのモニタリング技術もトキたちによって磨かれていっています。

 

 トキの放鳥が始まって10周年。まだまだトキには未知の部分がたくさんあります。トキから学んだことを活かし、これからもモニタリングを続けていきたいと思います。

▲佐和田海岸からの夕日

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2018年10月10日トキからのおくりもの

佐渡 原奈緒子

みなさんこんにちは、佐渡自然保護官事務所の原です。

佐渡では稲刈りが終盤をむかえて、刈田が目立つようになりました。秋ならではの茶色い風景ばかりかと思えば、畑には橙色に色づいてきたおけさ柿が収穫の季節真っ盛りです。

▲柿畑で採餌するトキ(2018/9/28撮影)

佐渡にいればどの季節でもトキを見ることはできますが、一年の内で最も美しい「とき色」を見るなら今がベストです。なぜなら、「とき色」の成分であるカロテノイドは紫外線によって分解されてしまうため、夏から秋にかけて行う換羽が終わったばかりの今が最も鮮やかな色をしているからです。冬になり、繁殖期に入ると2歳以上の個体は首から分泌される物質をこすりつける世界でもトキしか行わない方法で羽色変化を行い繁殖モードにはいります。つまり真っさらなとき色を見ることができる期間は9月末から12月中頃までの3ヶ月程度ということになります。

▲繁殖羽のトキ(2017/02/08 撮影)

▲換羽後のトキ(2017/11/01撮影)

トキといえばどちらの方がイメージしやすいでしょうか。

私は繁殖期の方がより長い時間観察をしていることもあってか、繁殖羽のトキがしっくりきます。繁殖羽は営巣する林の中でカモフラージュの役目もあるようで、刈田にいても背景と同化して見逃しそうになることがあります。一方で今年生まれの幼鳥は冬になっても繁殖羽にはならず、とき色が成鳥に比べると薄いため群れで飛翔していても見分けることができます。

さて、前置きが長くなりましたが、今回はトキからのおくりものについてです。

それはこちら

▲トキの羽

運がよければ田んぼのあぜや道路際に落ちている事があります。休日に神社の参道で羽毛が落ちているのを見つけたこともありました。羽毛はほとんど白色をしていますが、よく見ると羽軸がとき色になっています。トキの羽をみつけたら持ち帰ることは構いません。水道水などで洗って、日陰で乾かして保管しましょう。ただし、トキは希少野生動植物種として「種の保存法」で守られているため他の人に売ることや、タダでもあげる事は法律で禁止されています。おくりものは大切に持っていましょう。

◇環境省ホームページ「希少な野生動植物種の保全について」

https://www.env.go.jp/nature/kisho/index.html

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2018年09月28日よく見かけるけど、実は「貴重な」生きもの

佐渡 近藤陽子

皆様、こんにちは。

佐渡自然保護官事務所の近藤です。


▲佐渡市畑野の田んぼと夕日

新潟県佐渡市は、雨が降る日が多くなり、肌寒くなりました。

虫の音色が秋の深まりを感じさせます。

 現在、佐渡島の自然界には約350羽のトキが生息しています。何羽ものトキが刈田に下りて採餌している光景も、もう珍しいものではなくなってきました。「トキが増えた」ことは、単にトキの羽数が増えただけでなく、「トキを取り巻く自然環境が豊かになった」とも言えます。


▲佐渡市佐和田地区の刈田で採餌するトキ7羽

 私たちの事務所がある佐渡市新穂(にいぼ)は、トキの野生復帰事業の中心地でもあり、島内最大のトキのねぐらがある地域でもあります。今回は、そんな豊かな自然に囲まれた私たちの事務所周辺で、「よく見かけるけど、実は貴重な生きもの」2選をご紹介します。



1.サドカケス 

 佐渡のカケスは、本州の亜種カケス(学名:Garrulus glandarius japonicus)とは異なり、佐渡島にのみに生息している亜種サドカケス(学名:Garrulus glandarius tokugawae)とされています。サドカケスの方が頭部が白く、くちばしが太いと言われることもありますが、この2亜種の外見的な違いはほとんどありません。

  

 

▲事務所のマツにとまるサドカケス。翼に入る青が美しい。

 そんな佐渡の名を冠するサドカケス。事務所の敷地内でよく目にしますが、どうやら繁殖もしているようです。3月のある日、1羽のサドカケスが事務所へ続く道路沿いの地面から苔を剥いでいました。巣材を集めて、付近の林で営巣することにしたようです。

  

 
▲くちばしいっぱいに苔をくわえるサドカケス

 このあたりには、エサとなる昆虫もドングリもたくさんあります。結局、巣を見つけることはできませんでしたが、事務所で仕事をしていると、毎日鳴き声が聞こえてくるので(この文章を作成している現在も)、きっと子孫を残していることでしょう。いつか巣を見つけてヒナの成長を見守りたいものです。

  

 ちなみに、カケスは英語でJay(ジェイ)。「ジェッ!ジェッ!」という特徴的な鳴き声が、英名の由来になっています。



2.サドガエル

 こちらも佐渡の名を冠した佐渡島固有のカエルで、事務所周辺の田んぼやため池などで確認されています。

サドガエルの特徴は、「黄色い腹」と「鳴き声」。学名Glandirana susurraの「susurra」はラテン語で「ささやく」を意味し、実際にサドガエルの鳴き声は非常に小さく、耳を澄まさないと聞こえないほどです。サドガエルには、鳴嚢(めいのう)というカエルが鳴くときに膨らませている皮膚の膜が発達していないため、アマガエルのような「ケロケロ」と響く鳴き声は出さず、「ジー、ジー」という小さな機械音のような鳴き声を出します。


 

▲サドガエルの背面と黄色の腹面。

 田んぼのあぜを歩くと、ピョンピョンと飛び跳ねて出てくるので、容易に見つけることができます。そんなサドガエル、島内での生息範囲は限られており、数が減っていることが近年の研究で明らかになりました。2018年現在、近い将来絶滅の恐れがある「絶滅危惧IB類」に指定されています。

 


▲サドガエルを捕食するトキ

 サドカケスもサドガエルも、そしてトキも、里地里山の生きもの。人が手間暇かけて管理した水田や里の環境が彼らの命を支えています。現在は、トキが舞うほど自然豊かな佐渡ですが、かつて田んぼでは農薬による影響からか、死んだドジョウが浮いているのをよく目にした、と聞きます。そのような環境のままであったなら、トキだけでなく、トキのエサとなるドジョウまでも姿を消してしまっていたかもしれません。

 

 人間のそばにいる生きものたちは、自然の豊かさと私たち人間の生活の安全性を示す、実は貴重な存在なのかもしれません。守るに十分値するかと思います。

 あなたも身近にいる生きものに目を向けてみてはいかがでしょうか。彼らはきっと多くのことを教えてくれるでしょう。



【特別出演:佐渡の里地里山のみなさん】  


▲農道で、自分の体と同じくらいの長さのイモムシと戦うスズメ。(佐渡市羽茂村山)

巣にはお腹を空かせて待っているヒナでもいるのでしょうか。

何としてでもこのイモムシを持って帰りたいようです。

スズメは、人のいない環境では生息していない、私たちにはもっとも身近な野鳥の1つです。

▲親鳥にエサをねだるセグロセキレイの巣立ちヒナ。(佐渡市大和)

民家脇の電線にとまって、親鳥がエサを持って戻ってくるのを待っていました。

民家の横には、小川が流れ、田んぼや林もあり、子育てするには良い環境だったようです。

▲親鳥からエサをもらうツバメの巣立ちヒナ。(佐渡市沢根)

近年、減少していると考えられているツバメ。農耕地の衰退に伴うエサの減少、西洋風の家屋増加により巣 がかけにくくなったことなどが原因と考えられています。

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2018年09月26日ねぐら出一斉カウント

佐渡 原奈緒子

みなさんこんにちは、佐渡の原です。

すっかり秋めいて刈田や黄金色の絨毯の中に群れるトキを見かけるようになりました。

▲佐渡市畑野地区にて農道やあぜで採餌するトキ3羽

先日、トキが群れる季節恒例の「ねぐら出一斉カウント調査」を行いました。

ねぐら出一斉カウント調査とはその名の通り、複数あるトキのねぐら出にそれぞれ人を配置して、生息している羽数を一斉に数える調査です。

トキのモニタリングは環境省、新潟大学、地域のボランティアの方々が協力して放鳥が始まった2008年からほぼ毎日行われています。通常のモニタリングでも早朝のねぐら出数のカウント調査は行いますが、2015年からは1年に2回佐渡全島内のねぐら出羽数を同時にカウントし、個体数の把握に役立てています。今回の調査では合計19箇所から310羽のねぐら出を確認しました。

▲高台からトキのねぐら出を観察する様子

各ねぐらの近くには担当のスタッフやボランティアが配置されますが、全体の様子を把握するために、高台にも配置します。ねぐら出の無線連絡がはいると望遠鏡を使って羽数カウントの補助やねぐら出したトキがどちらの方向に飛んでいくのかを観察します。

▲佐渡市両津地区にてねぐら出するトキ1羽

トキは群れてねぐらをとる習性があり、多いときは1つの林から100羽以上もねぐら出をした記録があります。臆病な性格でもあり、林の外からは見えない場所にいることが多いですが、ねぐら出するタイミングはまず耳で確認できます。

林の中から「コッココッ」、「ココッ」と話声が聞こえてきます。トキはおしゃべりな鳥で状況によって様々な鳴き声を使い分けますが、この時の声は一緒に出るタイミングを相談している様に聞こえます。その後に「クワーッ、クワーッ」、「クワークワーッ」と猫とニワトリとカラスを混ぜ合わせたような声で鳴きながらねぐら出していきます。臆病なわりにはとっても目立つ行動をする所が面白い鳥だなと思います。

ねぐら出が終わるとえさ場に降りたトキを探して、足環の判読による個体識別を行います。

下の写真のように、高台からねぐら出するトキを追いかけて観察をしていると、トキが降下した田んぼを特定することはできますが、さすがに距離があるため、足環の判読はほとんどできません。

▲ねぐら出した後に近くの田んぼ(江)に降りた様子(赤矢印:トキ、黄色矢印:サギ)

田んぼの場所をモニタリングチームに無線連絡をして、近くにいる人が現場に向かいます。車の中から望遠鏡でのぞくとトキに足環が付いていることがわかります。

▲何色の足環がついているか見えますか?

▲さらにアップにして見てみましょう

モニタリングではトキの足環の一覧表になっている識別表を使って、個体を特定しています。写真の個体の左はピンク・赤・ピンクのNo.223、右は白・赤・白のNo.127とわかります。この足環の判読やねぐら出カウントによるデータの積み重ねにより、現在は353羽(佐渡島内351羽、本州2羽)の生息が確認されています。その内の257羽には足環が装着されています。すごいのは足環のある個体はどこにいるかほぼすべて追えているということです!! 10年前の2008年9月25日に佐渡で放鳥が始まりました。この10年でトキの数は順調に増えており、佐渡における生息場所も範囲を広げています。これからの10年はどんな年になっていくでしょうか。人とトキが共生してける社会の実現のお手伝いが少しでもできるように引き続きモニタリングを通して観察していきたいと思います。

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2018年08月30日親子でトキモニタリング体験!

佐渡 原奈緒子

みなさん、こんにちは。佐渡の原です。

残暑はまだまだ厳しいですが、早生の稲はすっかり黄金色になり、秋はもうすぐそこまで来ているようです。トキたちは稲が生い茂る田んぼよりもあぜや草地を多く利用しています。

▲羽茂地区にてあぜ・草地で採餌するトキ12羽 8/28撮影

今回は8月17日に開催した親子を対象にしたトキの観察会についてご紹介します。

トキの放鳥がこの秋で10周年をむかえることを記念し、夏休み特別企画として「親子でトキモニタリング体験」を行いました。今回は5組12名の小中学生の親子に参加頂きました。トキはとてもおくびょうな性格なため、「トキのみかた」という地域ルールがあり、トキの行動を妨げないように気をつけています。観察会ではこのルールにもなっているトキが逃げない距離感(150~200m)を体感してもらいながら双眼鏡や望遠鏡を使って野生下のトキの観察をしました。観察しながら、トキとサギの見分け方や幼鳥の特徴などモニタリングのポイントを伝授していきました。

▲望遠鏡をのぞいて水浴びするトキの様子を観察します

そしてトキの大切な餌場である田んぼ!

生きものに配慮した農法で米作りをしている佐渡の田んぼは生きものの宝庫です。


観察会ではトキのえさ場である田んぼの生きもの観察も行いました。

▲サドガエルもしくはツチガエルの卵塊を発見!

卵塊がある場所は避けるようにして、生きものを捕まえました。

▲捕まえた生きものを観察しやすいように仕分けます

はじめは網を使ってでしか虫に触れなかったけれど、次第に自分の手で捕まえられるようになる子もいました。参加者からは「こんなに沢山の野生のトキに会えて親子で大喜びでした。子どももとても興味を持っていました。」「トキや田んぼの生きものに興味をもてるようになりました。」「田んぼの生きもの初めてみました。」という声もあり、トキだけでなくトキが生息する佐渡の素晴らしい自然について親子で楽しんで学んでもらえました。

現在、佐渡島内には350羽のトキが生息しています。今の子どもたちにとってトキは普通に見られる鳥になりつつあります。しかし、ここに至るまでに長い歴史と多くの人の努力があったこと、島ぐるみで取り組まれているトキの野生復帰の取組みをこれからの未来を担う子供たちに感じてもらい、繋いでいってもらうきっかけになればと思います。

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2018年08月03日トキのえさって?

佐渡 原奈緒子

みなさん、こんにちは。佐渡の原です。

佐渡の野生下では今期60羽の幼鳥が新たに巣立ちました。

今では、親から離れて幼鳥だけで行動したり、30㎞近く離れた場所に飛来している様子が確認されています。

▲田んぼでエサを探す今年生まれのNo.B52およびB53

トキは動物食で野生下ではドジョウ、カエル、バッタ、サワガニ、ミミズなどの田んぼにいる生きものを好んで食べることが観察されています。

▲佐渡にしかいないサドガエルを食べるトキ

▲ドジョウを食べるトキ

トキが1日に必要なエネルギー(232kcal)をドジョウに換算すると、50匹程度になります。

1羽のトキが150匹のドジョウを食べているとすると、現在佐渡には約350羽のトキが生息しているので、なんと1日で、50(匹)×35017,500匹!!!のドジョウが必要との計算になります。

※野生下のトキは、上述のとおりドジョウだけでなくさまざまな動物を食べており、ここで紹介させて頂いた例はあくまでも全てドジョウに換算した場合の数です。

佐渡の田んぼは私たちにおいしいお米を供給してくれるだけでなく、たくさんの生きものの生活を支えている場所なのです。

では飼育下のトキはどのようなものを食べているのでしょうか。

野生下のトキのように生きたドジョウもあげます。

しかし、それだけでは栄養に偏りがでるため、トキのために考えられた馬肉飼料をあげています。佐渡トキ保護センターの馬肉飼料作りをご紹介させていただきます。

▲馬の肉を使ったトキ専用の特別なエサ(馬肉飼料)

栄養バランスのとれた馬肉飼料は月に12回飼育員さんたちが手作りします。原材料は馬肉、にんじん、たまご、魚粉やトウモロコシなどを合わせたトキ専用の粉末飼料です。にんじんはヘタをとり、ゆでてつぶします。たまごは鳥インフルエンザの懸念から生卵ではなくゆで卵にしたものを購入し、殻ごとつぶします。

▲馬肉を入れる前の材料

材料を混ぜたものをミンチ機にかけて、粗挽きのひき肉になったら完成です。

▲馬肉を混ぜてミンチにする様子

飼育下では1日にドジョウ50(40kcal)、ペレット30g(122kcal)とこの馬肉飼料50(90kcal)を与えています(ペレットとは魚粉を主にした乾燥飼料です)。

今の時期は育ち盛りの幼鳥がいるため給餌量は少し多くなっています。

エサを盛り付ける時も、馬肉飼料のこのひき肉状の形がくずれると食いつきが悪くなるため、つぶさないように扱います。

このまま焼いたらおいしいかも、、、と思わず考えてしまいました。

この馬肉飼料のレシピはもともとスイスの動物園でトキの近縁種を対象に考案されたものを参考に、トキの獣医さんがトキの栄養面を考慮し、試行錯誤して考え出したものなのです。

「飼育はエサが命。どんなに良いケージにいてもエサが良くなければ健康なトキは育たない」とエサの重要さについて佐渡トキ保護センターの山本飼育員に教えて頂きました。

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