ACTIVE RANGER

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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佐渡

68件の記事があります。

2018年08月30日親子でトキモニタリング体験!

佐渡 原奈緒子

みなさん、こんにちは。佐渡の原です。

残暑はまだまだ厳しいですが、早生の稲はすっかり黄金色になり、秋はもうすぐそこまで来ているようです。トキたちは稲が生い茂る田んぼよりもあぜや草地を多く利用しています。

▲羽茂地区にてあぜ・草地で採餌するトキ12羽 8/28撮影

今回は8月17日に開催した親子を対象にしたトキの観察会についてご紹介します。

トキの放鳥がこの秋で10周年をむかえることを記念し、夏休み特別企画として「親子でトキモニタリング体験」を行いました。今回は5組12名の小中学生の親子に参加頂きました。トキはとてもおくびょうな性格なため、「トキのみかた」という地域ルールがあり、トキの行動を妨げないように気をつけています。観察会ではこのルールにもなっているトキが逃げない距離感(150~200m)を体感してもらいながら双眼鏡や望遠鏡を使って野生下のトキの観察をしました。観察しながら、トキとサギの見分け方や幼鳥の特徴などモニタリングのポイントを伝授していきました。

▲望遠鏡をのぞいて水浴びするトキの様子を観察します

そしてトキの大切な餌場である田んぼ!

生きものに配慮した農法で米作りをしている佐渡の田んぼは生きものの宝庫です。


観察会ではトキのえさ場である田んぼの生きもの観察も行いました。

▲サドガエルもしくはツチガエルの卵塊を発見!

卵塊がある場所は避けるようにして、生きものを捕まえました。

▲捕まえた生きものを観察しやすいように仕分けます

はじめは網を使ってでしか虫に触れなかったけれど、次第に自分の手で捕まえられるようになる子もいました。参加者からは「こんなに沢山の野生のトキに会えて親子で大喜びでした。子どももとても興味を持っていました。」「トキや田んぼの生きものに興味をもてるようになりました。」「田んぼの生きもの初めてみました。」という声もあり、トキだけでなくトキが生息する佐渡の素晴らしい自然について親子で楽しんで学んでもらえました。

現在、佐渡島内には350羽のトキが生息しています。今の子どもたちにとってトキは普通に見られる鳥になりつつあります。しかし、ここに至るまでに長い歴史と多くの人の努力があったこと、島ぐるみで取り組まれているトキの野生復帰の取組みをこれからの未来を担う子供たちに感じてもらい、繋いでいってもらうきっかけになればと思います。

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2018年08月03日トキのえさって?

佐渡 原奈緒子

みなさん、こんにちは。佐渡の原です。

佐渡の野生下では今期60羽の幼鳥が新たに巣立ちました。

今では、親から離れて幼鳥だけで行動したり、30㎞近く離れた場所に飛来している様子が確認されています。

▲田んぼでエサを探す今年生まれのNo.B52およびB53

トキは動物食で野生下ではドジョウ、カエル、バッタ、サワガニ、ミミズなどの田んぼにいる生きものを好んで食べることが観察されています。

▲佐渡にしかいないサドガエルを食べるトキ

▲ドジョウを食べるトキ

トキが1日に必要なエネルギー(232kcal)をドジョウに換算すると、50匹程度になります。

1羽のトキが150匹のドジョウを食べているとすると、現在佐渡には約350羽のトキが生息しているので、なんと1日で、50(匹)×35017,500匹!!!のドジョウが必要との計算になります。

※野生下のトキは、上述のとおりドジョウだけでなくさまざまな動物を食べており、ここで紹介させて頂いた例はあくまでも全てドジョウに換算した場合の数です。

佐渡の田んぼは私たちにおいしいお米を供給してくれるだけでなく、たくさんの生きものの生活を支えている場所なのです。

では飼育下のトキはどのようなものを食べているのでしょうか。

野生下のトキのように生きたドジョウもあげます。

しかし、それだけでは栄養に偏りがでるため、トキのために考えられた馬肉飼料をあげています。佐渡トキ保護センターの馬肉飼料作りをご紹介させていただきます。

▲馬の肉を使ったトキ専用の特別なエサ(馬肉飼料)

栄養バランスのとれた馬肉飼料は月に12回飼育員さんたちが手作りします。原材料は馬肉、にんじん、たまご、魚粉やトウモロコシなどを合わせたトキ専用の粉末飼料です。にんじんはヘタをとり、ゆでてつぶします。たまごは鳥インフルエンザの懸念から生卵ではなくゆで卵にしたものを購入し、殻ごとつぶします。

▲馬肉を入れる前の材料

材料を混ぜたものをミンチ機にかけて、粗挽きのひき肉になったら完成です。

▲馬肉を混ぜてミンチにする様子

飼育下では1日にドジョウ50(40kcal)、ペレット30g(122kcal)とこの馬肉飼料50(90kcal)を与えています(ペレットとは魚粉を主にした乾燥飼料です)。

今の時期は育ち盛りの幼鳥がいるため給餌量は少し多くなっています。

エサを盛り付ける時も、馬肉飼料のこのひき肉状の形がくずれると食いつきが悪くなるため、つぶさないように扱います。

このまま焼いたらおいしいかも、、、と思わず考えてしまいました。

この馬肉飼料のレシピはもともとスイスの動物園でトキの近縁種を対象に考案されたものを参考に、トキの獣医さんがトキの栄養面を考慮し、試行錯誤して考え出したものなのです。

「飼育はエサが命。どんなに良いケージにいてもエサが良くなければ健康なトキは育たない」とエサの重要さについて佐渡トキ保護センターの山本飼育員に教えて頂きました。

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2018年07月27日孤高のメストキ

佐渡 近藤陽子

 皆様、こんにちは。


▲佐渡市羽茂大崎

 全国的に猛暑が続いていますが、新潟県佐渡市も、本州より涼しいとはいえ、日中30℃を越える日が続いています。

 本格的な夏を迎え、佐渡のトキたちの間では繁殖期が終わり、ペアでの行動から群れの行動へと変わりつつあります。


▲群れで採餌するトキたち(佐渡市金井地区)


 多くのトキが群れを形成し始めている中、単独行動を貫く5歳のメスのトキがいます。

彼女の名前は、個体番号264。(※職員は「にーろくよん」と呼んでいます)

今月、264はなんと、佐渡島から直線距離にして約200㎞も離れた長野県安曇野市で確認されました。


▲2016年12月4日 佐渡市で撮影された264。関節上のカラーリング「オレンジ・青」が見えます。


 264は、佐渡で暮らしている時から、変わった行動をすることで(職員の間で)有名なトキでした。

彼女は、基本的に単独行動。

トキの群れがいない地域で自由気ままに生活していました。

佐渡にいるトキは、屋根や電柱・電線など、人工物にとまることはほとんどありません。

でも、264の定位置は電柱でした。

ねぐらも佐渡の集落内の電柱でとっていたこともあります。


▲電線にとまり羽繕いする264

 1羽で行動しているトキは、群れで行動しているトキよりも警戒心が強く、人や車が近付けば、すぐに飛び立ってしまいます。しかし、264は道路沿いの電柱にとまり、車が下を通過するのも気にせず羽繕いをしていることもありました。

 思えば、264は、多くのトキが生息する佐渡島中央の平野部ではなく、海岸線沿いを転々と移動しながら生活していました。本州へ飛び立つ日を見計らっていたのかもしれません。


▲海の見える水田で採餌するNo.264とB07。264が珍しくトキと一緒にいます。

 264が佐渡を飛び立ち、本州で確認されたのは実は、2018年3月のこと。初めは石川県珠洲市で確認されていましたが、珠洲市から徐々に南下して行き、石川県白石市(4月)、長野県塩尻市(5・6月)、そして今月に入って、長野県安曇野市で確認されました。安曇野市でトキが確認されたのは、今回が初めてです。

 トキだけに限らず多くの鳥類で、メスや若い個体は広範囲を移動することが知られています。本州で過去に確認された識別可能なトキ(足環が装着されているトキ)19羽中、17羽がメス、2羽が1歳未満の若いオスでした。メスに関しては、より良いオスを求めて繁殖期に広く移動すると考えられています。

 今後もいろいろと初記録を出していくのか。264が放鳥された日から見守る佐渡のトキ関係者は、本州へ渡り、1羽で生活している264を心配しつつも、彼女が今後どういう動きをするのか、期待を込めて注目しています。

 もし、本州でトキを見かけたら。

ゆっくり安心してエサを取り、ねぐらでしっかり休息できるように。

離れた場所から静かに見守ってあげてください。

孤高のメストキ、264。どうか無事で。

本州の皆様、264をよろしくお願いします。

トキ観察ガイドライン「トキのみかた」

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2018年07月23日「親子でトキモニタリング体験!」開催のお知らせ

佐渡 原奈緒子

みなさん、こんにちは。佐渡の原です。

さて、佐渡自然保護官事務所では、トキの放鳥10周年を記念した夏休みの特別企画として、「親子でトキモニタリング体験!」を開催します。

本イベントでは、双眼鏡・望遠鏡の使い方といった基本から学べるトキのモニタリング体験のほか、トキが利用している田んぼのえさ場で生きもの調査も行います。放鳥から10周年をむかえ、佐渡の野生下で約360羽にまで増えたトキ。トキを守っていくことがなぜ大事なのか、今後、どういう距離感でトキと付き合っていくべきか、野生で生きるトキの様子やトキが暮らせる環境について私たちと一緒に観察しながら考えてみませんか。

佐渡島外からの参加も可能です。興味のある方は下記の詳細をご覧下さい。

<トキ放鳥10周年 夏休み特別企画>「親子でトキモニタリング体験!」

日  時:平成30年8月17日(金) 14:00~17:00 

集合場所:トキ交流会館 2階会議室 (佐渡市新穂潟上1101-1)

募集対象:小学生以上の親子  定員5組10名程度(先着順)

参 加 費:1人 100円(保険代として) 

※集合場所までの交通費は自己負担となります

服  装:動きやすい格好、長靴、帽子

持 ち 物:飲み物、観察機材(持っていれば)

申込方法

  ○申込先 佐渡自然保護官事務所

・TEL 0259-22-3372(平日9時~17時)

・FAX 0259-22-3379(24時間受付)

*上記のいずれかに参加希望者の人数、氏名、年齢、緊急連絡先、観察機材の有無を連絡し、申込む。

○申込み〆切り:定員に達し次第終了

当日のスケジュール

14:00 集合

14:05 レクチャー

14:30 モニタリング体験

15:00 野生下トキ観察

15:50 田んぼの生きもの観察

16:40 まとめ

17:00 解散

お問い合わせ

 環境省 佐渡自然保護官事務所

電話:0259-22-3372 (平日9時~17時)

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2018年06月28日トキ放鳥(ほうちょう)までの道のり

佐渡 原奈緒子

こんにちは、佐渡事務所の原です。

突然ですが、みなさんは放鳥と聞くとどんなイメージを持ちますか?

佐渡では、6月8日(金)に第18回のトキ放鳥を行いました。

▲ケージから飛翔し放鳥された19羽のトキ

放鳥とは、簡単にいうと飼育下で増やした個体を野外に放すことです。

トキたちは厳しい自然界で生き抜いていくために、放鳥をむかえるまでに3ヶ月かけて様々な準備をしています。6月21日(木)には第19回放鳥のための訓練が開始しました。

【放鳥までの道のり】

道のり 其の一 健康診断

▲足環の装着

野外でも個体の識別ができるように足環を付けます。左足には写真のような個体

番号の入ったナンバーリングを装着します。写真の個体はNo.324で放鳥後も新穂地区で確認されています。他にも飛翔したときに識別しやすいようにアニマルマーカーを塗布したり、体重測定なども行います。

道のり 其の二 訓練開始!

▲順化ケージに放されるトキ

道のり 其の三 順化ケージ内での生活

▲順化ケージの中の様子。山の傾斜を利用して水田もつくられています。

順化ケージの広さは4,000㎡あり、サッカーコートより2まわり小さいくらいで、高さが15mある放鳥個体の訓練専用のケージです。ここで3ヶ月生活をして、野外で生活するために必要な飛ぶ力・エサを捕る力・社会性を身につけていきます。訓練を無事に終えると、いよいよ放鳥です。

道のり 其の四 放鳥

▲(左)ハードリリースと(右)ソフトリリース

上の写真はどちらもトキの放鳥の写真です。

左は第1回放鳥の様子で1羽ずつ箱に入れ、一斉に蓋をあけるハードリリース方式です。右は第2回放鳥以降の方法で順化ケージの扉を開放して自然に飛び立つのを待つソフトリリースの様子です。

佐渡では2008年からトキの野生復帰の取り組みとして再び佐渡の空にトキを戻す放鳥を行っており今回までの18回で、のべ308羽のトキを放鳥しています。

放鳥日は朝6時にケージの扉が開放され、私たちはケージから野外に飛翔したトキがどこへ行くのか、落下などの事故が起きないかを少し離れた場所から観察します。いつトキが飛翔するのかはトキ次第。この方法を始めてからの記録では最長で6日間、最短で半日で放鳥されています(15時には扉を閉じ、翌日の6時に再び扉を開放します)。

▲放鳥モニタリングの様子。モニタリングボランティアさんたちと行います。

▲離れた場所から、どこへ飛んでいくかを追いかけます

今回は全19羽が無事に1日で全羽放鳥されました。放鳥が終わって、2週間経ち半分以上の個体が既存個体に合流してねぐらをとったり、とまり木にいる様子が確認されています。短い日数で放鳥された方が、その後の生存率がよくなる傾向が確認されているため今後の動きにも期待し、モニタリングを続けていきたいと思います。

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2018年06月25日平成30年度「アクティブ・レンジャー写真展」開催中

佐渡 近藤陽子

 皆様、こんにちは。

<新潟県佐渡市金井 6/22撮影>


 平成30年度「アクティブ・レンジャー写真展」のご案内です。

 関東地方環境事務所では、平成22年度から、管内のアクティブ・レンジャーが撮影した動植物や風景の写真を多くの人々に紹介し、自然の素晴らしさ、大切さを伝え、自然保護や国立公園について普及啓発を行うことを目的とする巡回写真展「アクティブ・レンジャー写真展 国立公園・野生生物フォトコレクション」を開催しています。 




 展示する写真は、関東地方環境事務所管内の13の自然保護官事務所に勤務する19名のアクティブ・レンジャーが撮影した計28点の作品となり、国立公園や国指定鳥獣保護区といった日本を代表する雄大な自然風景やそこに生きる貴重な動植物の活き活きとした姿をご紹介します。



 佐渡自然保護官事務所からは、2名のアクティブ・レンジャーが撮影したトキ等の写真2点を出品します。佐渡会場では、飼育トキの誕生から放鳥までの貴重な写真も特別に展示いたします。

 両津港へお越しの際は、写真展へも足を運んでみてはいかがでしょうか。


<両津港ターミナル周辺図>

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2018年06月18日足環装着って何?

佐渡 近藤陽子

 皆様、こんにちは。

 新潟県佐渡市では、日中25℃を越える日が増え始め、夏の気配を感じるようになりました。

<佐渡市羽茂亀脇>

 この時期、自然界のトキたちの間では、ヒナの巣立ちが続々と確認されています。

<巣立ちしたトキの幼鳥>

上の巣立ちしたトキの写真を見て、何か気になることはありませんか?

自然界で巣立ったトキなのに、カラフルな足環(あしわ)が付いているんです。

この足環、いったいどうやって付いたのか。

今回は足環装着についてお話ししたいと思います。

そもそも足環は何のため?

 足環を装着すると、個々のトキを識別できるようになり、自然界のトキたちの動向や生存率が分かります。放鳥するトキ全てと、自然界で誕生したトキの一部(30羽程度)に足環を装着しています。

放鳥するトキは、放鳥前の飼育されている時期に捕獲され、足環を装着されます。

では、自然界の巣にいるヒナたちには、どうやって足環を装着しているのでしょうか。

答えは、「トキの巣がある木に登って、巣にいるヒナを捕獲し、足環を装着している」です。

~足環装着作業の流れ~

①樹上作業者がトキの巣がある木に登り、ヒナを捕獲します。

 捕獲したヒナは、専用のケースに入れられ、地上へ下ろされます。

<トキの巣がある木に登り、ヒナを捕獲する作業者>

<ヒナを捕獲する作業者 クロースアップ>

②地上にて、獣医師を含む作業者がヒナの身体測定と足環の装着等を行います。

 樹上作業者は、ヒナがいない間、巣の計測等を行います。

<捕獲され、地上におろされたヒナ3羽>    



<足環装着されるヒナ>


<雌雄判定のための羽毛採取>



<巣の計測>


<足環装着作業中、心配そうに巣上空を飛ぶ親鳥2羽>

③作業後、ヒナを巣に戻し、作業者は巣から離れます。

 モニタリング担当の職員が巣から離れた場所で観察を行い、親鳥が巣へ戻ったのを確認して足環装着作業の工程すべてが終了します。

<巣にもどされたヒナ>


<作業者が巣から離れたのを確認してから戻って来た親鳥>

※足環装着作業の際、親鳥は一時的に巣を離れることとなりますが、必ず巣に戻り育雛放棄することはありません。

※天敵となるカラスやテンなどが多い場所での足環装着は行わないなど、足環装着作業を行うことで生じるリスクを最小限にする様々な配慮や対策を講じたうえで実施しています。

 環境省は、トキのヒナの両脚が巣から出た時点を「巣立ち」と定義しており、巣立ったトキは、「ヒナ」から「幼鳥(ようちょう)」と呼び名が変わります。幼鳥は自由に飛べるようになると、島内を広く移動します。足環が付いていれば、どこで誕生し、何歳のオス/メスで、親は誰なのか等が分かります。

 このようにトキの動きを追跡することで、現在進められているトキの野生復帰事業を評価することができます。

 6月8日(金)には、第18回目となるトキの放鳥が行われ、日本の自然界に生きるトキはちょうど300羽となりました。この羽数も、足環によって個体の追跡ができているから出せる数字です。

<佐渡の自然界へ飛び立つ第18回放鳥トキ>

 いずれこうした追跡を行う必要がないほどにトキが増え、トキを支えることができる佐渡の豊かな自然がこれからもずっと続くことを願っています。

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2018年06月01日92×200の奇跡

佐渡 近藤陽子

 皆様、こんにちは。

 新潟県佐渡市では、爽やかに晴れ渡る日が増え、出かけるのが楽しくなる季節になりました。


<佐渡市鷲崎、二ツ亀 2018.5.26撮影>

 現在、佐渡のトキたちは繁殖期真っ只中。しかし、今年は多くのペアで繁殖の失敗が確認されています。巣を作っていたけれど、途中で作ることをやめてしまったペア。卵を温めていたけれど、途中で温めるのをやめてしまったペア。ヒナが誕生していたけれど、天敵の捕食にあったのか、ヒナが確認されなくなってしまったペア。今年、誕生したヒナの羽数は、昨年の3分の2ほどにとどまっています。

 そんな波乱に満ちた今年の繁殖期、職員が驚くような繁殖成功もありました。

 それは、No.92(オス)とNo.200(メス)ペアの繁殖成功です。

<No.92(オス)>

   
<No.200(メス)>

 たかだか繁殖成功と思うかもしれませんが、データ上、このペアが繁殖に成功することはほぼないとされていました。

 その大きな理由に、このペアの有精卵率の低さがあります。

 トキの繁殖失敗が観察で確認されると、職員は巣の下へ行って卵の殻を回収します。この卵の殻から有精卵か、無精卵か、トキが何個卵を産んだのかを調べます。

<トキの巣の下に落ちている卵殻 ※写真は92×200とは別ペア>

 2015年からペアとなり、毎年繁殖に参加している92×200(職員が記録を取る時、ペアを92×200、92/200などと記載します)。回収された卵殻の解析の結果、92×200の有精卵率はずっと1割ほど。自然界で繁殖している他のトキ達と比較しても、これはかなり低い数字です。

 有精卵率が低くなる要因として、トキの飼育形態が影響していると考えられています。No.92は人・人(じんじん:「人工ふ化・人工育雛」の職員が使用する略語。No.92は、ふ卵器内でふ化し、育雛器内で育ちました。)で、No.200が人・自(じん・じ:「人工ふ化・自然育雛」の略語。ふ卵器内でふ化し、トキの親に育てられたトキのこと)。

 トキのトキへの刷り込みは、ヒナの目が見えるようになった時期に起こっていると考えられています。ヒナの目が見えるようになった時期に育雛器に入っていると、初めて見る生き物が人間となり、こうして育ったトキは繁殖期にトキに対する繁殖へのモチベーションが、トキの親の元でふ化し育ったトキに比べて低くなるようです。その結果、上手く交尾ができずに有精卵を産むことができないのではないかと考えられています。

<親が育てない等の理由で人工育雛されているトキのヒナ>

 こうした背景もあり、3年連続で繁殖に失敗している92×200に対して、職員は今年も繁殖成功はしないだろうと予測していました。

 しかし!今年の繁殖期、92×200はついにヒナを誕生させました!しかも2羽!

<左からNo.92とヒナ2羽>

 毎年92×200の巣作りから抱卵、抱卵中止を観察し続け、頑張ってるけれど成功しないこのペアを見守ってきた私たち職員にとって、本当に嬉しいニュースでした。

 「繁殖の経験を積むほど有精卵を産む確率は高まる」とのデータは出ています。が、ここまで有精卵率が低かった92×200ペアの今年の大逆転は、これからのトキの前途が大きく開かれていくような希望を与えました。

 今後は、このヒナたちが無事に巣立ち、再来年、92×200の子供たちが繁殖する姿を見られることを夢見て、今年の繁殖期を引き続き見守っていこうと思います。


<ヒナに吐き戻したエサを与えるNo.92>

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2018年05月17日佐渡の春は島ならではの春

佐渡 原奈緒子

みなさん、こんにちは

佐渡ではカッコウが鳴き始めて、佐渡の短い春はあっという間に過ぎていったようです。

トキたちは繁殖期の真最中。ふ化が始まり、生まれたばかりの黒い顔のヒナが確認されています。


ヒナの顔は黒く、灰色の羽毛に包まれており、親鳥とは特徴が異なります。しかし、生まれた時からくちばしの先はピンク色をしていて、トキの面影があります。

▲左:ヒナ3羽に給餌する親(5月10日撮影)      ▲くちばしの先に注目!

一方、山では雪解けと共に一斉に春植物が花を咲かせていました。

佐渡にはタヌキより大きなほ乳類が生息していないため、シカ食害がないことも豊かな春植物を楽しめる理由の一つです。

▲上段:フクジュソウ、キクザキイチゲ、カタクリ

下段:様々な色形の雪割草(オオミスミソウ)

車道沿いにもいたるところに春植物の代表格であるカタクリの群生地があります。

よ~くみると違和感が、、、

葉っぱに注目です。わかりましたか?

なんと、佐渡のほとんどのカタクリは葉に斑が入っていません。

▲佐渡のカタクリ(斑なし)        ▲長野県で撮影したカタクリ(斑あり)

のっぺりとした黄緑色が太陽に照らされてきらきら光る様子がまだ雪が残る殺風景な山の景色を華やかにさせます。カタクリを見れば、このしっとりした感触を確かめずにはいられません。(カタクリは花を咲かせるまでに8年もかかると言われています。やっと咲かせた命を傷つけないように優しく扱いましょう。)

これは元々斑なしの個体が佐渡に入って、分布を広げたからとも言われています。

他にもこれからが見頃のホタルブクロは紅紫色と白色の2色がありますが、佐渡で見られるのは白色ばかり。これも白花の個体群が佐渡にあったために、全島的に白色が生育していると言われています。

鳥や人のように自由に行き来できない植物は佐渡で島ならではの分布をしています。

野生のトキが最後に生息していた佐渡島には四季を通して豊かな自然があり、人の生活するすぐそばで自然にふれあうことができます。これからの時期は海岸線にトビシマカンゾウの黄色が目立ちます。穏やかな夏の佐渡に足を運んでみませんか。

▲大野亀のトビシマカンゾウ(2017年5月27日)

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2018年03月09日トキと一緒にいる生き物

佐渡 近藤陽子

 皆様、こんにちは。

<佐渡自然保護官事務所のふもとから撮影した夕日 2/22撮影>

 新潟県佐渡市は、暖かく晴れる日が増え、春の気配を感じられるようになりました。トキたちも、凍り付いた水田が減り、ようやくエサを確保しやすい時期になったのではないでしょうか。

 間もなく、春の訪れとともに、渡り鳥たちが佐渡にもやって来ます。

今回は、渡り鳥も含め、トキと一緒にいる生き物をご紹介したいと思います。

 トキと一緒にいることが多い生き物。まずはサギ類。


<あぜで日光浴するトキとアオザギ>     

<水路で採餌するトキとダイサギ>

 トキもサギもどちらも大型の水鳥で、水辺でエサを取ります。トキが下りているところにサギが下りてきたり、サギが下りているところにトキが下りてきたり。サギ類は、トキにとって時としてエサ場の目印となる、ありがたい存在なのかもしれません。

 次によくトキと一緒にいる生き物。それは、カラスとトビ。

 

<採餌中のトキとハシブトガラス>


<トキと同じ木にとまるトビ>      

 カラスは、トキの放鳥が始まった2008年から、トキの天敵とされてきました。トキを追い回し、トキの卵を盗んだり、トキのヒナを攻撃して死なせてしまったりと、佐渡では悪者のイメージが強い鳥です。しかし、放鳥10周年を迎える2018年現在、トキを追いかけるカラスを見ることはほとんどなくなりました。トキの数が佐渡島内でも増加し、カラスにとって見慣れた鳥になったからかもしれません。

 また、トビは猛禽ですが、トキと一緒に木にとまっているところをよく目にします。営巣林もトキとトビとで共有していることも多く、トキの巣を見ていると思ったら、トビの巣だった。なんてこともあります。トキがトビの古巣を使用することもあります。天敵からお互い身を守りやすい等、営巣林を共有するメリットが何かあるのかもしれません。

 水田を利用するシギ類もトキと一緒にいます。

<積雪で限られたエサ場にあらわれたトキとタシギ>   


<トキの幼鳥と採餌するタカブシギ>

 越冬しに佐渡に渡ってくるタシギ、渡りの途中に佐渡に立ち寄るタカブシギ。佐渡の水辺が、トキだけでなく多くの鳥たちのオアシスとなっていることが分かります。

 その他、珍客とトキが一緒にいることもあります。


 

<トキの群れに混ざって採餌するアカガシラサギ>


<トキの群れに混ざって飛翔するヘラサギ>

 アカガシラサギは佐渡では毎年数羽確認されています。トキの群れに混ざって確認されることも多く、トキとともにねぐら出し、トキとともに採餌していました。また、トキと交尾のまねごと(擬交尾)をする様子も観察されています。

 ヘラサギは、希な迷鳥として確認されています。トキと同じトキ科に属する水鳥で、ハクチョウの群れとともに行動していたり、トキの群れとともに行動していたり、白っぽい鳥といる印象を受けました。佐渡で確認されることがほとんどないヘラサギと、日本では佐渡でしか見ることのできないトキの群れ。ヘラサギとトキ3羽が一緒に飛翔する姿を捉えたこの写真は大変貴重なものと言えるでしょう。

 そして、時にはこんなことも...

 

<トキににじりよるクロネコ>        

<トキを狙う茶トラネコ>

 トキを襲うそぶりを見せるネコたちですが、実際に襲った様子が観察されたことはありません。観察していると、トキは、首を伸ばして大きく見えるような姿勢を取り、「ター!ター!」と警戒して鳴き続けます。ネコの獲物としては大きいようで、ネコも狙ってはみるものの、本気で襲うつもりはないようです。トキたちもそれを知ってか知らずか、ネコが近付いてもすぐに飛び立つことはせず、しばらく様子を見ていることが多いように感じます。

 

 最後に、トキと一緒にいる生き物。

一度は、絶滅してしまったトキですが、今では人間もトキと一緒にいる生き物に含まれるようになりました。



 

これからも、こんな風景がずっと続きますように。

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