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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

「箱根仙石原湿原植物群落」保全活動(箱根地域)

2020年06月22日
箱根 山口光子

皆さん、こんにちは。

富士箱根伊豆国立公園管理事務所の山口です。

今回は今年で12回目となる、箱根ならではの自然を守る特別な作業「箱根仙石原湿原植物群落」ヨシ刈りを紹介します。普段は人の立ち入りが禁止されている特別区での活動ですが、環境省へ作業参加依頼があり、箱根町教育委員会生涯学習課の皆さん、そして箱根湿生花園の職員皆さんと、一緒に作業させていただきました。

昭和9年、箱根仙石原湿原はノハナショウブの群生地として、国の特別天然記念物に指定されました。80年ほど前の箱根では、地元の人たちがヨシやススキを刈り取って、日常生活の中でかやぶき屋根に使ったり、家畜の餌にして、野焼きや草刈り作業が盛んに実施されていました。それが自然に、湿原の維持管理に繋がっていたのです。

ですが、昭和45年以降、生活様式が変化して草刈りや野焼きが行われなくなると、残されていた湿原では「植生遷移」が進みました。驚くべきことに、人の利用がなくなった湿原は約50年で、ノハナショウブの群落や貴重な湿原性植物が消えて、ハンノキの森に変化し始めたのです。実は箱根仙石原湿原は、人との関係性があって今に残されてきた、貴重な湿原だったというわけです。

【野焼きしない実験区はハンノキが成長し、森に変化している/説明者は箱根湿生花園スタッフ様】

これではいけないと、箱根町では平成元年から野焼きを再開しました。しかし野焼きを繰り返すうちに、野焼きだけでは成長の早いススキやヨシが先に繁茂して、背丈の低い湿原性植物は成長が難しいことがわかってきます。

【左:2020年3月の野焼き様子  右:ヨシ刈り前6月の様子】

そこで平成21年から、有識者との相談も経て、以前は生活の中に根付いていた「ヨシ刈り」を再実施することが実験的に開始されました。それが今回私たちが関わった作業です。


【刈り取り作業の様子/写真は箱根町職員様より提供1】

作業前に10m四方の方形区を5箇所設置し、その中で刈り取り作業を行いました。

背丈の高いヨシを30本1束にまとめ、刈り取っていきます。

最終的には、刈り取った本数と、その重量を記録し、これまでのデータと比較します。

草刈り中は、むやみやたらに足跡をつけないように、気を遣います。

足元には、実際に湿原生植物が生きています。


【足元に観察されたモウセンゴケ(絶滅危惧Ⅰ類)】


【方形区外で観察された、可憐なトキソウ(絶滅危惧Ⅰ類)】

刈り取り後の方形区はこのような状態です。

【青い枠内にはヨシが無くなる/写真は箱根町職員様より提供2】

本来の自然の景観「箱根仙石原湿原植物群落」を後生に残す為に、このような活動が箱根では実施されています。7月には更に開花調査も予定され、箱根町の人たちによってこれからも継続されていきます。いつか、ノハナショウブの群落が再び日常に戻る日が来ることを目指して。大変ながらも、素敵な活動でした。アクティブレンジャーとしてこの活動に、今後も関わって行きたいです。

今回は普通では立ち入れない仙石原湿原の様子を紹介しましたが、「箱根湿生花園」に足を運ぶと、湿原の植物たち、そしてそこに暮らす生き物たちに出会え、学ぶことが出来ます。是非こちらにも足を運んでみて下さい。

箱根湿生花園HP ⇒ http://hakone-shisseikaen.com/

湖尻にある箱根ビジターセンターは、6月1日より開館しました。

駐車場も使えるようになっています。

ただし、状況が変わった際には変更がありえます。

箱根を訪れる際には情報を確認してお越し下さい。

「湖尻」にある箱根ビジターセンターHP →http://hakonevc.sunnyday.jp/

今後の親しむ運動イベント情報 →http://hakonevc.sunnyday.jp/shitashimuundou.html

県境をまたいだ移動が徐々に再開されています。ただし、まだ油断は禁物です。

新たな感染者増加の無いように、各自の安全対策実施がこれからは重要です。

ソーシャルディスタンスと手洗いうがいは再度心掛けていきましょう。