2021年8月 3日
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2021年08月03日荒川岳に防鹿柵を設置しました
南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華
みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
7月中旬、荒川岳の西カール底と前岳南東斜面の2カ所に防鹿柵を設置しました。西カール底、前岳南東斜面は前岳・中岳分岐と荒川小屋の間を指します。この2カ所は荒川岳の重要な景観を構成している場所であることから、お花畑を守るために平成23年度より設置しています。
前岳南東斜面のお花畑にある柵は登山道を横断するように設置され、横断箇所にはドアノブ付きの扉が設置されています。南アルプス山域で登山道を横断するように防鹿柵を設置している場所はこの荒川岳のみです。
開けっ放しにしてしまうと、ニホンジカが入り込んでしまい、柵を設置している意味がなくなってしまいます。お花畑を守るためにも、¨開けたら閉める¨を徹底していただきますよう、ご理解・ご協力をお願いします。
今年もシナノキンバイやハクサンイチゲ、ミヤマクロユリなど数多くの高山植物が綺麗に咲いていました。稜線ではミヤマムラサキ、ツガザクラ、チングルマなどが咲いていました。
雨降りの中、水がしたたる高山植物はとても美しかったです。
高山植物が一面に広がるこの景色を見るたび、¨今年も咲いてくれてありがとう¨という温かい気持ちになります。いつまでもこの素晴らしいお花畑が残ってくれることを切に願います。
2年ぶりの開山!
富士山が2年ぶりに開山してから1ヶ月(静岡県側では3週間日ほど)ですね。例年梅雨明けまでは登山者も少なく比較的静かで、海の日くらいからいよいよ夏山シーズン本番となってきます。今年も4連休辺りから登山者が多くなってきた印象です。
これから富士登山を計画している方に、現地で働く環境省のアクティブ・レンジャーが安全・快適・楽しい登山にするためのポイントをお伝えしたいと思います。
富士登山成功のカギは・・・・
8シーズン富士山で働き、毎年多くの登山者を見て感じていますが、声を大にして言いたいです!
富士登山成功のカギは「準備」です!!
良い思い出になるかどうかは、かなりの部分を「準備」が占めていると思います。
特に今年は新型コロナウィルスへの対策や救助体制に影響を与えないためにも例年以上に確実な準備をすることが重要です。
自分の行動次第で「より楽しく安全な」登山になるなら、準備するに越したことはありませんよね?
日本一高い富士山は決して簡単ではありません。富士登山を成功に導くにはどの準備も非常に重要です。すでに「装備とルール」については7月14日に高木アクティブ・レンジャーが投稿済(「【富士山編】開山前から出来る装備の状態とルールの確認」ですので、今回は体力強化についてお伝えします。
富士山は楽じゃない!
富士山の五合目から山頂まではルートによって異なりますが、距離は片道4.5km~10.5km、標高差は片道で1,400m~1,800m。登山時間は標準で往復10~13時間。日常生活にはない運動強度です。
の標高
(往復)
(五合目〜山頂)
下り:4.0時間
下り:4.0時間
下り:4.5時間
下り:4.0時間
*コースタイムは個人差が大きいのであくまで目安です
それも行きは登りっぱなし、帰りは下りっぱなしと同じ筋肉を酷使します。さらに登るほど酸素は薄くなり、行動すること自体が大変になります。
みなさん、平地で10km歩いたことあるでしょうか??1日に6時間以上歩いたことありますか?それよりも山は何倍も大変です!
何故、体力強化が必要?
体力・筋力がないことで、起こり得るリスクはなんでしょうか?かなり沢山あります。
●ふんばりが効かなくなり身体のバランスが保てない
⇒転倒や落石を起こすなどの危険性が高くなる
⇒自らが怪我をしたり、他の登山者に怪我を負わせてしまうリスク
●予定より大幅に時間がかかってしまう
⇒日没による道迷いや公共交通機関に間に合わなくなる危険性
●バテてしまう
⇒集中力がなくなり道間違いをしたり、危険物に気付かない危険性
⇒景色を楽しむ余裕がない
⇒単純にしんどくてつらい。楽しくない
パトロールをしていると特に下山時にゾンビのように足を引きずって歩いている登山者をよく見かけます。見る度に「もっと準備しておけば、きっと違っただろうに、、、」と残念に思います。
皆さんだいぶお疲れです・・・・
体力は一日にしてならず!
体力強化には時間がかかります。日々の生活にちょっとした運動を取り入れてじっくり「登れる身体」を作っていくことが重要かつ効果的です。まだ身体ができていないと思う方は登山日を遅らせてでも、まずは身体を作る方を優先した方が結果的に安全で楽しい登山をすることができると思います。
今日から行動に移しましょう!
何をすればいい?
まず鍛える必要があるのは、
●長時間バテない持久力
●下半身や体幹
できれば1か月前くらいからこの2つを意識し準備したいところです。
<持久力>
①いつもより沢山歩く習慣を(毎日)
⇒1駅手前で下りて1~2キロ長く歩いてみたり、エスカレーターやエレベーターを使わずに階段を使ったり、急に負荷の高いことをするのではなく、まずは日々の生活に上手に取り入れていくことがポイントです。
②登山を想定して少し負荷をかけてみる(週1~2回)
⇒日々歩くことに慣れてきたら、登山を想定して、坂道を登ったり、ジョギングをしたりと長めの運動を週に1~2回やってみましょう。息が上がってしまうほどの運動ではなく、長時間続けられるペースを意識してみましょう。少し重い荷物を持って歩いてみるのも良いと思います。水泳や自転車こぎなども持久力アップには有効ですね。
③プレ登山で実際に登山をしてみる(月1~2回)
⇒富士登山の前に山に登ってみましょう。舗装路とはまた違いますし、自分がどんな所が苦手なのか(登り、下り、岩場、ザレ場など)というのを事前に知っておくのも重要です。5~6時間の山に登れば、富士山を1日(1泊2日の場合)登った時の自分の体力の消耗度も想像しやすくなると思います。
持久力の強化は心肺機能の強化にもなるので、空気の薄い富士山では、その効果も期待できると思います。
<下半身や体幹>
①スクワット
⇒登りでも下りでも酷使する「大腿四頭筋」を鍛えましょう!毎日続けることで着実に筋肉はついていきます。
②腹筋・背筋・プランクなど
⇒体幹を鍛えることで体全体の安定性が高まります。体の動きのスムーズさ、重い荷物を長時間背負ったり、不安定な足場でバランスを取ったり、あらゆる状況で助けてくれます。
下半身や体幹のトレーニングの方法はインターネットで検索すると沢山出てくると思いますので、ご自身の体力にあったものを試してみましょう!
何よりも続けることが大切です!そしてその努力が登山をより楽しく安全なものにしてくれます。
日本の宝である富士山を皆さんに思う存分楽しんでもらいたい!!と言うのが 私の願いです。
この日記が、準備不足によるリスクを知っていただき行動に移すきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。
次回は富士箱根伊豆国立公園内で富士登山本番の前の予行練習におすすめの山をご紹介したいと思います!