小笠原国立公園
133件の記事があります。
2017年10月20日オガサワラハンミョウのモニタリング調査
小笠原国立公園 古田貴士
こんにちは。小笠原の古田です。
先月に引き続きオガサワラハンミョウの話題です。
本日、再導入を行ったハンミョウの定着状況を確認するため、再導入地におけるハンミョウのモニタリングを行いました。
この裸地は数日前にハンミョウの再導入を行った裸地です。
ハンミョウの生息地をできるだけ荒らさないように、成虫個体・幼虫の巣穴を踏まないように慎重に歩きながら、目視でハンミョウ成虫を探します。
すると・・・
ハンミョウを発見!
羽と胸部には個体識別のためにマーカーで着色してあります。
今回調査した裸地では、再導入したハンミョウ成虫を5個体、幼虫の巣穴を5つ発見しました!
下の画像中心部の小さな穴は幼虫の巣穴です(1齢幼虫)。直径は約2mmと非常に小さいです。
これからどんどん幼虫の巣穴が出てくることを期待しています!
国内希少野生動植物種
http://www.env.go.jp/nature/kisho/domestic/index.html
保護増殖事業
2017年10月16日マイマイイベント@小笠原世界遺産センター
小笠原国立公園 荻野裕太
こんにちは、小笠原ARの荻野です。
小笠原諸島世界自然遺産の中心的な価値となる小笠原固有の陸産貝類(マイマイ)。
外来種のプラナリアなどに捕食され、父島ではほとんどの種が人前から姿を消してしまい、
今では兄島などの無人島や母島に残されている状況となっています。
父島から消えゆくマイマイを少しでも残していくため、
現在では主にカタマイマイ属を中心に、小笠原世界遺産センター内の保護増殖室で、
飼育・増殖事業を実施しています。
父島の島民や観光客も、父島の野外では目にすることが出来なくなった固有陸産貝類、
遺産の中心的な価値となっていながら、目にすることなく小笠原を後にする観光客も多いのではと思います。
そこで今回は、村民の方をはじめ小笠原に来島された方々を対象に、
小笠原世界遺産センターにて、マイマイイベント@遺産センター
「知って楽しい!伝えて広がる!~MaiMaiworld~」を開催します!
開催日は、おがさわら丸が父島に入港中の10月29日(日)。
このイベントでは、飼育管理されているマイマイたちを、
普段一般公開されていないバックヤード内から見学したり、
実際にマイマイを飼育しているスタッフのガイダンスを聞きながら、
マイマイについての知識を深めたり、
マイマイクイズや粘土マイマイ作りなどの体験イベントも用意しています。
父島に来島の際はぜひお立ち寄りください。
2017年09月29日オガサワラハンミョウ「再導入」
小笠原国立公園 古田貴士
こんにちは。小笠原の古田です。
ハンミョウという昆虫をご存知でしょうか。ハンミョウは、空き地や未舗装路等に居る甲虫の仲間です。日本では26種程が確認されています。人が近づくと飛んで逃げて数m程先に着地し、更に近づくとまた飛んで逃げて数m程先に着地するといった行動を取ることがあります。道案内をしてくれているように見えることから「道しるべ・道教え」という愛称で呼ばれることもあります。
小笠原にもオガサワラハンミョウという固有のハンミョウがいます。成虫は体長約10-15mm。過去には父島にも生息していたそうですが、生息環境の悪化などにより、現在では兄島の限られた場所でしか見られなくなりました。数が非常に減ってしまったため、国内希少野生動植物種に指定され、保護増殖事業が実施されています。兄島では、過去の生息地において、外来植物の駆除や外来植物の落ち葉の除去などを行い、環境改善を進めています。
つい先日、保護増殖事業の一環として、人工飼育により生まれた成虫を、環境改善した兄島の裸地に放虫する事業を行いました。
以下は放虫時の様子です。
-
1. ハンミョウの入ったケースをハンミョウが産卵に好みそうな裸地に置きます。
2. ケースを開けます。
3. ハンミョウが出てきます。
4. しばらくするとハンミョウは飛び立ち、周辺に分散していきました。
今回は合計57匹の成虫を、かつての生息地2箇所に放しました。背中についているピンクや緑色は、放虫時期や場所、性別などを識別し、行動を観察するために付けたマーカーです。
無事に定着し、増えてくれることを願っています。
2017年08月13日小笠原世界遺産センター 夏休み特別企画!!
小笠原国立公園 荻野裕太
こんにちは、小笠原ARの荻野です。
夏休み期間、小笠原世界遺産センターでは夏休み特別企画を開催中です。
夏休みに小笠原に来島し「見て、触れて、感じたこと」を
来館者に絵日記として書いてもらう企画で、8月末まで開催しています。
絵日記を書いていただいた方には、小笠原諸島の絶滅危惧種の
トレーディングカード(全35種類)を一人一枚プレゼントしています。
また、書いていただいた絵日記は、センター内のパネルに展示しています!
観光で訪れた子どもたちや、地元の子どもたちなどの作品には、
小笠原で体験した夏休みの楽しい思い出などが、かわいらしいイラストと共に書かれており、
来館された方はパネル前で足を止めてじっくりご覧になっています。
小笠原諸島で過ごした夏の思い出を大切に持ち帰ってもらい、
また来たいと思える島にしていきたいと思います。
2017年07月21日外来アリ対策最前線in小笠原!
小笠原国立公園 古田貴士
こんにちは!小笠原の古田です!
最近、ヒアリが話題になっていますが、実は小笠原諸島にもヒアリではありませんが外来種のアリが侵入しています。
名前はツヤオオズアリ(Pheidole megacephala)です。
このアリの何が問題かというと・・・小笠原在来のアリの生息地に侵略的に増えていき、小笠原固有の微小な陸産貝類(大きさ数ミリのカタツムリ)を食べ絶滅に追いやってしまうことが、最近の研究で分かってきました。
そのため、現在環境省・林野庁・東京都・小笠原村などでツヤオオズアリの駆除を行っています。こちらは対策を行っている場所の1つ、父島の宮之浜です。
この浜は、兄島など周辺無人島へのカヤックツアーや、作業員の渡船の発着場となるので、浜に侵入しているツヤオオズアリを拡散させないために、駆除が必要となっています。
実際にはベイト剤(毒入りエサ)を設置し、ツヤオオズアリを駆除していきます(この辺りはヒアリと対策が似ています)。できるだけ他の生き物が食べないように、金属網でエサを包みます。以下は作業の様子です。
作業の様子(ベイト剤の交換をしています)
ベイト剤
設置トラップ
以下はツヤオオズアリ(働きアリ、体長は約2mm)です。
和名の通り、体にツヤ(光沢)があります。オオズ(大頭)アリですが、写真のものは働きアリなので頭部が大きくないです。兵隊アリは頭が大きいです。
ツヤオオズアリは多女王制(1つの巣に女王アリ(繁殖個体)が複数個体存在)なので繁殖力も強く、駆除には継続した努力が必要です。
貴重な陸産貝類を守るためにも、今後もツヤオオズアリ対策を継続していく予定です。
小笠原に来られる際には、外来生物を持ち込まない、拡げないようご協力をお願いします!
2017年07月13日保護したオガサワラオオコウモリの野生復帰!!
小笠原国立公園 荻野裕太
こんにちは!小笠原ARの荻野裕太です
小笠原固有で島に生息する唯一のほ乳類、オガサワラオオコウモリ。
島に自生する様々な樹木の葉や果実、花を食べて暮らしています。
一方で、農家や家庭菜園の果物を食べてしまう被害もあり、
小笠原では農業被害を防ぐため果樹園にコウモリ避けの樹脂製ネットを張るなどの対策に取り組んでいます。
固い素材の樹脂製ネットに比べ、柔らかい素材のキュウリネットなどで果樹を囲った場合、
コウモリがネットに絡まる事故が発生し、翼にケガをしてしまったりします。
和 名 : オガサワラオオコウモリ
学 名 : Pteropus pselaphon
絶滅危惧IB類(EN)(環境省第5次レッドリスト)
国指定天然記念物
今年5月小笠原世界遺産センター内に動物対処室ができ、
常駐の獣医師による野生動物やペットなどの初期治療が実施できるようになりました。
そうした中、今年7月初旬にネット絡まり事故で怪我をした1頭のコウモリが、
動物対処室に搬送されてきました。
搬送されたコウモリは、獣医師や地元NPOの懸命な治療やリハビリのおかげで、
無事に野生復帰できる状態まで回復し、放獣することができました。
当日は雨でしたが、放獣されたコウモリは、
優雅に空を舞い、夕暮れの小笠原の森へ戻っていきました。
動物対処室が出来る前は、島内ではこうした治療は出来ず、島外の動物病院などに移送して治療してもらっていましたが、動物対処室が出来、一定の治療ができるようになり、野生復帰にまでつなげられたことは、小笠原世界自然遺産の価値を守るとても画期的な1歩だと思います。
〈動物対処室の運営主体〉
おがさわら人とペットと野生動物が共存する島づくり協議会
https://www.vill.ogasawara.tokyo.jp/kankyo_kyougikai/
2017年06月30日小笠原に夏が来た!
小笠原国立公園 古田貴士
どうも、小笠原の古田です。
6月も終わりですが、ついに小笠原に本格的な夏が来た感じです!
気温も30℃を超えています。
暑いですが、小笠原のアウトドアを楽しむには素晴らしい時期ですね。
アウトドアといえば海水浴!シュノーケリング!港から徒歩5分で砂浜に行けます!
写真は港から徒歩5分の前之浜
是非是非小笠原にお越しください!海と空がとても碧いです!
また、遺産センターの展示もほんの一部ですが、7月から夏仕様に変更します!
変更後は来月にアップします!
変更前
2017年06月08日カタツムリ緊急救出プロジェクト
小笠原国立公園 荻野裕太
みなさん、こんにちは!小笠原ARの荻野裕太です。
6月8日(木)、父島の固有カタツムリを安全地帯に移送する救出作業(緊急捕獲)を行ってきました。
なぜ、カタツムリを緊急捕獲する必要があるのかというと...
小笠原諸島はほかの陸地と一度も繋がったことがない「海洋島」です。
海洋島では偶然にたどり着いたわずかな生き物や植物が独自の進化を遂げて、
現在の小笠原諸島に暮らす生き物達が暮らしています。
その小笠原諸島に暮らす代表的な生き物が「カタツムリ」です。
写真 チチジマカタマイマイ
しかし、残念ながら外来種のプラナリア(ニューギニアヤリガタリクウズムシなど)
によって固有種のカタツムリが激減しています。
どうにかして、外来種の脅威に負けないよう、
プラナリアの侵入を防ぐ柵内に引っ越しをさせています。
今回、どのようにカタツムリを引っ越しさせているのかご紹介します。
先程のチチジマカタマイマイはどんな場所に暮らしていると思いますか?
実は大きな落ち葉が積もって水分が豊富な腐葉土がある場所にいます。
実際に探してみるとなかなか見つからずに一苦労です。
写真 カタツムリ捜索風景
見つけたカタツムリ達は、殻に番号タグを付着して柵内に移します。
写真 左 番号付け作業 / 右 番号付け後のカタツムリ
定期的にモニタリングをして、柵内で元気に暮らしているか、確認しています。
父島固有のカタツムリをいつまでも残していきたいと思います。
2017年05月29日「小笠原の自然」の将来ビジョン
小笠原国立公園 古田貴士
小笠原自然保護官事務所の古田です。
最近、地域の方々と「小笠原の自然」について話をした際、環境省職員の私がイメージするものと地域の方々や観光客の方々がイメージするものにギャップがあることを知りました。
アクティブレンジャーは、仕事として保護区域や希少種の生息域に立ち入る機会が多いため、貴重な固有動植物を目にする機会は多いです。一方で、これら動植物の多くは、そもそも数が少なかったり、サイズが小さかったり、色合いが地味だったりして気づきにくいものが多いです。さらに、地域の方々や観光客は、そういった生息域に立ち入る機会が少ない、あるいは難しいため、目にする機会が少なくなるため、このようなギャップが生まれるようです。身近な自然だけでなく、小さくて地味かもしれませんが小笠原諸島世界自然遺産を代表する生き物も、もっと身近なものにするために、生息環境の改善や野生復帰を進めていくことで数を増やし、観光地としての小笠原の価値を更に高めることができればと考えています。
小笠原自然保護官事務所 古田貴士
写真:父島 二見湾
皆さん、こんにちは!小笠原ARの荻野です。
10月29日に小笠原世界遺産センターにてマイマイ(カタツムリ)イベントを開催いたしました。
写真 小笠原世界遺産センター正面玄関 welcomeボード
小学生以上を対象に小笠原固有のマイマイについて楽しく知ってもらおうと、
体験型の募集プログラムと誰でも参加できるセルフガイドコーナーを設置しました。
今回は20名弱の参加があった「募集型イベント」について紹介します!
最初に、参加者にマイマイワークブックをプレゼントしました。
ワークブックはイベントを体験しながら書き込めるシートになっており
生態クイズや生態観察などに役立つポイントもたくさん盛り込んであります。
写真 ワークブック
では、ここで募集型イベントの内容をより深くご紹介します。
まず、導入では「マイマイ」ってどのような生き物なのか?について、
私が実際に巨大マイマイになりきって、手足等が使えない状況はどのような感じなのか
巨大マイマイになって再現してみました。実際に体験するとなかなか殻が重たくゆっくりしか進めません。
なかなか進まない姿を参加者が見て、殻の重さや動きの難しさなどを感じてくれたのではないでしょうか。
写真 なりきり巨大マイマイ
次に生態観察とクイズを実施しました。
生態観察では地面に住むマイマイや木の上に住むマイマイが、それぞれ種ごとに殻の形や模様などが違うことをルーペや顕微鏡を使って観察しました。
また、クイズを通してマイマイが卵を産む部分はどこか?等々の普段あまり知られていないマイマイの生態の不思議に触れることができ、皆さん興味津々の様子でした。
写真 マイマイ生態観察
写真 マイマイクイズ
最後にマイマイが小笠原にたどり着いて現在に至るまでの様子をわかりやすく紙芝居の
読み聞かせで紹介しました。マイマイの飼育スタッフが作成した暖かみのある手作り紙芝居で、
プログラムで学んだことの振り返りを和やかに終えることができたと思います。
写真 紙芝居「父島のカタマイマイ」
今後も遺産センターならではのプログラムを開催していきたいと思います。