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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

オガサワラハンミョウの移殖

2023年12月28日
小笠原 河村雅史
 小笠原自然保護官事務所の河村です。

 早速ですが、皆さんはオガサワラハンミョウをご存じですか?
ハンミョウは日本に25種類生息している昆虫で、成虫は裸地や砂地などで主に生活しており、肉食という特徴があります。そのうち、オガサワラハンミョウは、小笠原の兄島のみに生息しています。乾性低木林の間にできた開けた裸地に生息している小笠原固有種です。

 オガサワラハンミョウは唯一の生息地、兄島での生息数が減少傾向にあります。国内希少野生動物種に指定されており、環境省では保護増殖事業を行っています。

国内希少野生動植物種と、保護増殖事業の説明や対象種の一覧は環境省のこちらのページで紹介しています。
国内希少野生動植物種一覧 | 自然環境・生物多様性 | 環境省 (env.go.jp)
保護増殖事業 | 自然環境・生物多様性 | 環境省 (env.go.jp)

移殖当日の日記

 ハンミョウの保護増殖事業では、父島の遺産センターなどの生息域外での飼育、飼育している個体の兄島への移殖を行っています。兄島への移殖は産卵の時期に合わせて、成虫を野生に放し、そこで次の世代が育まれるようにすることが狙いです。今回の日記は、施設で飼育したオガサワラハンミョウの成虫を野外に放した日の記録です。

 昼間はまだまだ暑い秋の小笠原。移動中に気温が上がって弱ってしまうのを防ぐために、船は早朝に出発です。兄島に上陸後、約2時間歩いて現地に向かいます。
船からの風景
父島から船で約5分の距離にある兄島へ
移動用の容器に入れて大事に運んできたハンミョウを、外気に触れさせて、周囲の環境に慣れさせます。
ケースに入っているオガサワラハンミョウ
移殖するオガサワラハンミョウ(頭部・背中の色はマーキングです)
容器を並べている様子
外部の環境に慣らしていきます
 しばらくして、容器の蓋を開けて外に出られるようにします。順次移動用ケースから出ていき、裸地を高速で走る個体、土から水分を摂る個体、交尾をする個体などが確認されました。
成虫のオガサワラハンミョウが裸地で歩いている
元気に移動していくオガサワラハンミョウ
 オガサワラハンミョウは、飼育技術が確立されており、人工飼育で世代を重ねることができています。しかし、長年飼育を続けていると人工飼育への適応が進んだり、突然繁殖が難しくなってしまったりする可能性も否定はできません。絶滅を防ぐには野生の個体数を一定以上に保っていかなければなりません。
兄島の風景写真
オガサワラハンミョウが暮らす兄島

おわりに

 世界中で兄島だけで続いている野生のオガサワラハンミョウの命のリレー。これからもずっと続いてほしいと思います。

オガサワラハンミョウの基本情報は環境省のページでも紹介しています。
オガサワラハンミョウ | 自然環境・生物多様性 | 環境省 (env.go.jp)

最後になりましたが、
今年もAR日記をご覧頂きありがとうございました。来年もARの活動を皆様にしっかりとお伝えできるようにがんばっていきます。