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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

父島アクティブ・レンジャーの希少植物を守る仕事

2024年01月26日
小笠原 河村雅史
小笠原自然保護官事務所の河村です。

父島のアクティブ・レンジャーが毎月1回行っている、外来ネズミ対策に関する業務を紹介します。

父島中央部の東側には、東平サンクチュアリがあります。
アカガシラカラスバトの繁殖地を保護する目的で整備され、現在はアカガシラカラスバトのほかに、希少な植物の保護の拠点となっているエリアです。
枝に止まっているアカガシラカラスバ
業務中に見かけたアカガシラカラスバト

ネズミが植物に与える影響

サンクチュアリはノヤギ、ノネコの侵入防止を図るための柵で囲ってありますが、小さく木登りが得意なクマネズミには柵は関係なく、サンクチュアリ内にも生息しています。植物の花や種子を食べたり、枝や葉を折って落としてしまったりと、希少な植物に色々な影響を与えています。

環境省で行っている対策

環境省では、希少植物の多いエリアのネズミの生息密度を低下させる目的で、殺鼠剤を入れるベイトステーションを設置しています。
父島ではアクティブレンジャーが、毎月1度東平のベイトステーションの点検を行っています。
林内に置かれたベイトステーション
ベイトステーション

作業当日の様子

点検日は地図とGPSを頼りに、林内に設置されたベイトステーションを回ります。
作業内容は、①ベイトステーション内の生物・ネズミの痕跡の記録、②内部の清掃、③古くなった殺鼠剤の交換 です。ここで使っている殺鼠剤は即効性のあるものではないので、ベイトステーション内で死んでいるネズミを見かけることはほとんどありません。ベイトステーションやその周辺には、アリ、クモ、ゴキブリ、カメムシ、マイマイなどネズミ以外の生物がいることがよくあります。
ベイトステーションの点検後は、希少植物の状況の確認も行います。全体の生育状況や、開花・結実、ネズミの食害はないかなどを確認します。写真の3種は、国内希少野生動植物種に指定されています。植物が順調に生育しているのを見るのは、とても嬉しいことです。
ウチダシクロキ
ウラジロコムラサキ
コバトベラ

ベイトステーションの他の地点での利用

大体この流れで行って半日かからない行程ですが、ベイトステーション点検はネズミから小笠原の希少な植物を守るための大事な仕事です。小笠原では、今回紹介した父島東平のほかにも、兄島の希少な植物(コヘラナレン、ウラジロコムラサキ等)や、固有陸貝(マイマイ)の保全の目的で兄島島内などでもベイトステーションの使用があります。