檜枝岐
関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。尾瀬はミズバショウの盛り
2022年06月10日みなさん、こんにちは。檜枝岐自然保護官事務所の前川です。
尾瀬は今がミズバショウのシーズンを迎えています。つい先日、尾瀬の福島側の入口である御池(みいけ)から燧裏林道を通って見晴(尾瀬ヶ原)に行ってきましたので、その時の様子をお伝えします。
御池を出発してすぐにミズバショウの群落が目に入ってきました。朝早めに出たのでまだ太陽は低く、ミズバショウも日の当たっている部分と影の部分のコントラストが強く感じられました。ミズバショウは水分を好む植物だけあって、湿原を流れる小川の岸辺に沿ってたくさん咲いているのが見られました。まだ草の緑もあまり目立たないこの時期の湿原はくすんだ色をしていますが、ミズバショウの白い仏炎苞花(ぶつえんほう:花びらではなく、葉の変化したもの)は遠くからでも見分けがつきます。
小川沿いに咲くミズバショウ 朝日を浴びたミズバショウ
燧裏林道は燧ヶ岳の裏側(北側)にあり、途中いくつかの田代(田んぼのように平坦な湿地帯)を除いてはブナ林を通る登山道になっているため、ミズバショウはほとんど見ることができませんでした。燧裏林道は日当たりの悪い燧ヶ岳の北側にあるため、場所によってはまだかなりの積雪がみられ、木道が埋まっている個所もあるため、地図やピンクテープをよく確認して進みましょう。
燧裏林道を歩くこと約3時間、ようやく燧ヶ岳の西側に出ました。ここからは尾瀬ヶ原の平原の木道を歩きます。温泉小屋を過ぎて少し行くと、木道の両側に一面のミズバショウが咲いていました。まだ葉はほとんど出ていないので白い仏炎苞が目立っています。
木道周辺に咲くミズバショウ1 木道周辺に咲くミズバショウ2
このあたりはミズバショウの生育に適しているのか、左手に燧ヶ岳の南面側にも一面のミズバショウ群落が広がっていました。さらに歩いて行くと右手に至仏山が目の前に広がってきます。燧ヶ岳の南面には雪はあまり残っていませんが、至仏山の北面にはまだかなりの残雪があり、その優雅な山容と相まって、見る人を惹きつけます。
燧ケ岳南側に咲くミズバショウ 至仏山を望む
見晴からの帰り道、トガクシショウマを見ることができました。日本にのみ分布する1属1種の植物で、淡いピンク色の花が可憐でした。近年は尾瀬でも減少しているようですが、動物による食害ばかりではなく、人間による踏みつけが原因という意見もあります。いずれにても、歩いていてこのような貴重な植物に出会えるような環境を守ることは、私たちの責務であると思いました。燧裏林道を歩いていると樹間からポッと燧ヶ岳の荒々しい北面が顔を出しました。
トガクシショウマ 燧ケ岳の北面
燧裏林道も御池に近づくと陽も陰り、辺りの景色はひんやりした空気に包まれてきました。行きとは違い、夕暮れ時の太陽の光には優しい雰囲気が感じられました。
残雪の残る燧裏林道 夕暮れ時の御池田代