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アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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佐渡

133件の記事があります。

2021年10月11日第25回放鳥 ー順化訓練を経て、いざ大空へー

佐渡 右田京子

皆様、はじめまして!
佐渡自然保護官事務所に9月よりアクティブ・レンジャーとして着任しました右田 京子(みぎた きょうこ)と申します。素晴らしい佐渡の魅力やトキの野生復帰に向けた私たちの活動について、少しでも皆様にお伝えできるよう、業務に励みたいと思います。これから、どうぞよろしくお願いします。

早速ですが、第25回トキ放鳥が行われましたので、その様子についてお伝えします。

9月17日に佐渡市野浦地区にて5羽を放鳥し、9月28日~29日に佐渡市新穂地区にある野生復帰ステーションの順化ケージより9羽の放鳥を行いました。

【9月17日 佐渡市野浦地区での放鳥の様子】

▲トキの生息環境整備に取り組む野浦地区の住民の皆さんと一緒に放鳥しました。当日は小雨まじりの曇り空でしたが、放鳥の際はぴたりと雨もやみ、5羽のトキたちは一斉に飛び立って行きました。放鳥場所上空を旋回したのち、山側の谷へ。

【9月28日~29日 野生復帰ステーション順化ケージからの放鳥の様子】

                     

▲順化ケージの放鳥口付近に集まってきて・・・  飛び立ちました!

初日は9時に放鳥口を解放したもののなかなか動きはなく、夕方やっと1羽が飛び立ちました。2日目は6時に放鳥口を解放し、7時半頃に7羽が一斉に飛び立ちました。残り1羽も放鳥口の外の池に歩いて出て採餌をしばらく続けた後、14時半頃に無事に飛び立ちました。

これから新しい世界で生活をしていくトキたちと自分を重ね、「頑張れよ-!」という思いもひとしおです。

さて放鳥前のトキたちが、どのように過ごしているかご存じでしょうか?

いきなり野外での生活は難しいので放鳥前は3か月間、採餌・飛翔・群れ行動・人への慣れなどの順化訓練を行います。

今回は、トキが訓練を行っていた順化ケージの環境の一部を紹介したいと思います。

【トキたちが訓練していた順化ケージ】

▲順化ケージ内部(奥行き80m×幅50m×高さ15m)

とても広々としていて、奥に向かって傾斜があります。そして奥側半分は飼育員も立ち入らないトキたちの聖域(草ボウボウの自然のままの状態)になっています。安心できる場所を確保しつつ様々な状況に慣れる訓練ができるように工夫されています。

 

▲トキたちの痕跡

いたるところにトキたちの痕跡が残っていました。ちなみに田んぼなどで見られるトキの足跡のそばには、餌を探したクチバシの跡が点々と穴になって残っています。

▲ケージ内の生き物

ケージ内をほんの数分探索しただけで様々な生き物に遭遇しました。

ドジョウなどの給餌も行われていますが、自然の中でこういった生き物を捕って食べる方法も覚えます。

訓練を経て大きく羽ばたいていったトキたち、今後、地域の方々に見守られながらうまく定着してくれることを期待したいと思います。

(参考)トキの放鳥方法

9月17日に佐渡市野浦地区にて箱からトキを放鳥した方法は、ハードリリース方式と呼ばれています。順化訓練後のトキを放鳥場所に移動し、直ちに放鳥する方式で、既存の群れサイズの拡大とトキの分布拡大を促すことを目的としています。

9月28日~29日に野生復帰ステーションの順化ケージからトキを放鳥した方法は、ソフトリリース方式と呼ばれています。

放鳥場所で飼育し、トキが環境に順化したのちに放鳥する方式で、分散を抑制し、放鳥場所周辺での群れ形成を目的としています。

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2021年09月02日群れの季節

佐渡 菅野萌

皆さんこんにちは。

佐渡自然保護官事務所の菅野です。

佐渡ではトキが群れで行動する時期になり、色々なところでトキの群れに遭遇するようになりました。

▲「トキの木」を発見!いったい何羽のトキがとまっているのでしょうか

▲こちらは畦にずらり

こんな光景が見られるのも、佐渡にトキが暮らしていける環境があるからこそ。

その環境を作り出しているのは佐渡に住んでいる地域の方々です。

例えば、佐渡の農家の方の多くは畦の草管理に除草剤を使わず、草刈り機などを使用して、多くの生きものの生息環境を守っています。

これは「生きものを育む農法」の取り組みのひとつです。

除草剤がまかれていない畦は綺麗な緑色で、バッタやミミズなどの生きものがたくさんいるので、トキの大切なエサ場になっています。

佐渡の方々の理解と協力があるからこそ、現在の佐渡島内に400羽以上のトキが生息しているのです。

佐渡でトキの群れを見かけたら、トキだけでなく、その背景にも思いをめぐらせていただけたら嬉しいです。

また、トキの観察をする場合は車の中からそっと観察するようにお願いいたします。

<おまけ>

▲「緑の畦」をよく見ると、こんな鳥も!

鳥に詳しい職員に聞いたところ、おそらくチュウジシギだそうです

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2021年07月15日試行錯誤は続く!

佐渡 菅野萌

皆さんこんにちは。

佐渡自然保護官事務所の菅野です。

日中は蒸し暑くてたまらない季節になってきましたね。

▲まだ佐渡ではアジサイが咲いていますが・・・

さて、今週はそんな蒸し暑さにも負けずに、佐渡市内の元気な小学生の見学に対応しました。

小学生等を対象とした普及啓発活動も佐渡のアクティブ・レンジャーにとって大切な業務の1つです。

今年度は学校からの見学依頼が多く、私もすでに6件の案内対応をしています。

たいてい私が案内を担当するのは「トキのテラス」という施設で、野生トキの観察とトキが生息する佐渡の里地の展望ができます。昨年6月に全面オープンしたこの施設の屋内観察室にはトキの生態に関する展示物があり、また、野外のトキを観察できるように望遠鏡が備え付けられています。ここでトキについて説明したり、トキと佐渡の農業とのつながりを説明したりしています。

▲大きな窓からはトキが暮らす佐渡の里山の風景を一望できます

見学依頼ごとに対象者の年齢や人数、案内時間が異なるため、飽きさせないためにどうすれば良いか、一番伝えたいことを効果的に伝えるにはどうすればよいか、毎回試行錯誤しています。


▲ある時はフリップを使ってみたり


▲デジタルサイネージの自作の動画で説明してみたり

▲展示物を利用して子供達の目線を変えてみたり

なかなか納得のいく案内はできていないのですが、場数を踏んだおかげでようやく基本スタイルが固まってきたように思います。

トキが暮らせるということは、それだけ他の生きものもたくさん生きていける環境であること。

そんな環境が維持されているのは、佐渡の農家の方々が生きものに優しい方法で農業をしているからだということ。

トキのことだけでなく、トキと人が共に暮らしている佐渡の素晴らしさを、佐渡の未来を担う子供達にしっかりと伝えるためにはどうすればよいのか、私の試行錯誤はまだまだ続きます!

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2021年07月05日退職のご挨拶

佐渡 近藤陽子

皆様、こんにちは。
佐渡自然保護官事務所の近藤です。

このたび結婚が決まり、今月いっぱいで退職し、佐渡を離れて故郷の愛知県に戻ることになりました。


<近藤、フィールドにて>

2014年10月に着任してから約7年。

トキとともに歩む日々でした。


時系列に大きなイベントを振り返りたいと思います。


■2016年
放鳥されたトキではなく、野生下で誕生したトキのペアから42年ぶりにヒナが巣立ちました。日々観察を続けてきた私たちには感動の瞬間でした。


<野生下で誕生したトキのペアから誕生し、42年ぶりに巣立った幼鳥3羽>


■2018年
佐渡トキ野生復帰10周年記念式典の開催に関わり、同年、11年ぶりに中国から提供されたトキ、オスの楼楼(ロウロウ)とメスの関関(グワングワン)が佐渡トキ保護センターに到着する様子を見届けました。


<佐渡トキ野生復帰10周年記念式典の様子>



<佐渡トキ保護センター野生復帰ステーションでのロウロウ・グワングワンの様子>


■2019年
トキの野生復帰が順調に進み、トキは環境省のレッドリストにおいて「野生絶滅」から「絶滅危惧IA類」に見直されました。


<あぜで休息するトキ17羽>

1羽1羽トキを観察し、個々の動向を日々追っていた私には、記憶に残るトキたちがたくさんいます。

<近藤の記憶に残るトキたちを取り上げたアクティブ・レンジャー日記記事>
「野生下で生きる」2020年3月9日
「野生復帰を支えたトキたち」2019年12月24日
「帰って来たNo.264」2018年11月30日

「孤高のメストキ」2018年07月27日
「海を渡ったトキたち」2018年11月6日

「トキの個体特性」2018年10月18日

「92×200の奇跡」2018年06月01日

見上げればトキが舞う佐渡の空。

いつか本州でもこのような景色が見られることを心待ちにしています。

愛知県に戻っても、「トキと共生する佐渡の里山」として世界農業遺産に認定された佐渡の里山環境の素晴らしさ、佐渡に息づく伝統文化、そして大好きな佐渡の人たちの温かさを、自らの経験をもとに、広め続けていきます。


今後とも、佐渡とトキ野生復帰を応援いただけますと幸いです。


約7年間、本当にありがとうございました。



<2008年9月25日に行われた第1回放鳥の唯一の生き残りで、国内の野生トキでは最高齢(15歳)のNo.11。また会う日までどうか元気で。>

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2021年06月18日第24回トキ放鳥 ~ハードリリース方式~

佐渡 菅野萌

皆さんこんにちは。

佐渡自然保護官事務所の菅野です。

佐渡では6月上旬に第24回トキ放鳥を行い、計17羽のトキが放鳥されました!

今回の放鳥も、昨年秋に実施された第23回トキ放鳥と同様にハードリリース方式(※1)とソフトリリース方式(※2)を併用して行いました。

この日記では6月5日に生椿(はえつばき)地区の棚田で行われたハードリリース方式での放鳥の様子をお伝えしようと思います。


佐渡トキ保護センター野生復帰ステーションの順化ケージで約3か月間の訓練を受けたトキたちを捕獲し、放鳥箱に入れて放鳥場所まで移動します。

▲トキを放鳥箱に入れる様子

トキ捕獲作業は獣医師と飼育員が中心になって行いますが、アクティブ・レンジャーも手伝いをします。その後ひと足先に放鳥場所に移動して会場の準備をします。

上の写真は、私の持ち場の様子です。

報道発表用の写真・映像撮影をする必要があるので、ビデオカメラや望遠カメラを用意してあります。

放鳥されたトキが直後に落下するなどの事故があった場合に備え、トキ用の捕獲網もすぐ手に取れる場所に置いておきます。

会場の準備が整った頃、トキの入った放鳥箱をのせた車が放鳥場所に到着します。

そのあと関係者やマスコミの方々が放鳥場所へ到着し、いよいよ放鳥が始まります。

今回はトキのためのビオトープ整備に関わっている団体の代表者等に放鳥者になっていただきました。

放鳥者が放鳥箱にかけられた赤と白のテープをハサミで切ると・・・

放鳥箱の扉が開き、トキが飛び立っていきます。

前回の放鳥時はあいにくの雨でしたが、今回は青空が広がる中、無事に全10羽が飛び立っていきました。

▲放鳥されたトキ

※1 ハードリリース方式

順化訓練後のトキを放鳥場所に移動し、直ちに放鳥する方式で、既存の群れサイズの拡大とトキの分布拡大を促すことを目的としています。

※2 ソフトリリース方式

放鳥場所で飼育し、トキが環境に順化したのちに放鳥する方式で、分散を抑制し、放鳥場所周辺での群れ形成を目的としています。

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2021年06月03日トキの卵

佐渡 近藤陽子

皆様、こんにちは。
佐渡自然保護官事務所の近藤です。



<親鳥とトキのヒナ2羽 2021/6/1撮影>

佐渡では5月28日に、野生下のトキの今期最初の巣立ちが確認され、トキの繁殖期も終わりが近付いてきました。

繁殖に成功し、ヒナを巣立たせるつがいがいる一方、巣造りしていたのにやめてしまったつがい、卵を温めていたのにやめてしまったつがいなども多数確認されています。

このようにトキが繁殖を中止した場合、トキが巣や林にいないのを確認してから巣の下へ行き、卵殻の回収を行います。



<巣の下に落ちていたトキの卵殻>

昨日も卵殻回収しに、繁殖を中止したトキの巣の下に行きましたが、卵殻ではなく、なんと卵まるごと1つを回収しました。落下したのに割れていない卵を拾うことはほとんどありません。




※野鳥の卵の採取は鳥獣保護管理法で禁止されています。トキの卵回収は種の保存法に基づくトキ保護増殖事業の一環として特別に実施しています。

どのような理由で落下したのか、天敵のカラスが持ち去ろうとして落としたのか、定かではありませんが、トキの卵を観察できる良い機会なのでご紹介します。

トキの卵は、青みがかった薄い灰色の地に、茶褐色の濃淡のある斑点が散らばっています。鈍端(丸い方の端)ほどこの斑点が多く散らばっています。



<短辺4㎝ほど>


<長辺7㎝ほど>



大きさは約7㎝×4㎝、重さは66.4gでした。

平均的なトキの卵の重さは約70gなので、こちらの卵は落下後に水分が抜けて少し軽くなったようです。

拾った卵や卵殻は、トキが何個卵を産んだのか(産卵数)、卵は有精卵だったのか(有精卵率)、今回のような未孵化卵(みふからん)の場合は卵を割って卵内のヒナの発生段階などを調べるために用います。

※ 第16回トキ野生復帰検討会p26
2.繁殖の成否に関する考察 (1)繁殖の成否に関する要因と分析 ① 未孵化による失敗


<有精卵か否かを調べるための検査の様子>



<検査液に卵殻を入れ、有精卵だと青白く光ります>

2008年に放鳥を開始してから徐々に個体数が増え、2012年に野生下での繁殖に成功し、現在、佐渡には約430羽のトキが生息していますが、2020年には個体数の増加の勢いが鈍化しました。

まだまだ野生復帰の道半ばですが、トキが佐渡だけでなく、本州でも安定して生息する未来が訪れることを願っています。

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2021年05月25日サドガエル

佐渡 近藤陽子

皆様、こんにちは。

佐渡自然保護官事務所の近藤です。

先日、トキのモニタリングボランティアさんの水田にお邪魔して、「サドガエル」を見せてもらいました。

あぜの草刈りをすると、驚いて草むらから水田に飛び出してきます。

<草刈りするボランティアさんの後ろについて、飛び出すサドガエルを見つけます>



この佐渡の名前を冠する「サドガエル」、いったいどんなカエルなのでしょうか?



<サドガエル 横から>


<サドガエル 前から>


<サドガエル 上から>

サドガエルはツチガエルの仲間で(ツチガエル属)、環境省レッドリストで絶滅危惧IB類※に選定されている新潟県佐渡島の固有種です。アマガエルの喉のように鳴くときに膨らむ鳴嚢(めいのう)を持たず、小さくジージーと機械のような音で鳴きます。サドガエルの学名、Glandirana susurraの「susurra」は、ラテン語で「ささやく」を意味します。ツチガエルに似ていますが、おなか側が濃い黄色をしているのが特徴です。水田やため池などの流れのない水辺に生息し、5月中旬から8月上旬に繁殖します。オタマジャクシのまま冬を越し、翌年に成体になります。近代的農法による水管理や圃場整備、管理放棄による植生遷移の進行などは、サドガエルの生息に大きな影響を与えると考えられています。また、ウシガエルなどの外来種がいるところでサドガエルの確認はなく、ウシガエルが住まない水深の浅い湿地環境が主な生息地となっています。

絶滅危惧IB類:IA類ほどではないが、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの

参考:環境省レッドリスト2018 補遺資料 p22



この日、ボランティアさんの水田では7匹のサドガエルを確認することができました。


うち1匹を捕獲して短時間観察しました。


<サドガエルの特徴、黄色の腹部>

<水田にリリースしたサドガエル>



サドガエルが生息するボランティアさんの水田には、トキもよく飛来します。

<ボランティアさんが農作業するすぐ横で餌を探すトキたち>

佐渡では、一度絶滅したトキを再び佐渡の自然に帰すため、農薬や化学肥料を使わない、または、使う量を減らすなど生きものに配慮した農法が進められ、水田にはサドガエルを含むトキの餌となる多くの生きものが育まれてきました。

参考:佐渡市認証米「朱鷺と暮らす郷」



人の生活を支える自然が守られることで、私たちは自然の恵みを継続していただくことができます。

トキやサドガエルの存在は、生きものと人がともに生きる豊かな里山環境の象徴と言えるのではないでしょうか。

これからも、こうした生きものが生き生きと暮らす佐渡であってほしいと願います。

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2021年04月28日2021年も野生下のトキのヒナ誕生!

佐渡 近藤陽子

皆様、こんにちは。

佐渡自然保護官事務所の近藤です。

佐渡では、田植え前の水田に水が張られ、水鏡に写る大佐渡山地が大変美しい季節になりました。

4月26日(月)、野生下のトキたちからヒナが誕生していることが分かりました。

<ヒナに餌を与える親鳥 2021/4/26撮影>

私たち佐渡のアクティブ・レンジャーはトキの子育てに影響のない離れた場所から観察を行っています。

具体的には、トキの巣がある林の外から、葉と葉の隙間をぬって覗くようにして巣とヒナの様子を確認します。

<木々の隙間から見えるトキとトキの巣 2021/4/26撮影>

巣は浅いお椀状に中央がくぼんでいるため、ヒナがいてもなかなか見えません。

親鳥がヒナに餌を与えようとすると、ヒナがくびを伸ばして親鳥に近付きます。そのときに初めて巣からヒナの頭が見えます。

<ヒナに餌を与える親鳥 2021/4/26撮影>

今季最初のヒナ誕生を確認したペアは、飼育繁殖で増やして放鳥したトキではなく、佐渡の自然界で誕生した野生のトキたちでした。

佐渡には、トキの餌場となる生きもの豊富な水田、ねぐらや営巣場所となる林が存在します。こうした佐渡の里山環境がトキをはぐくみ、トキの命をつないでいます。

今後の他のペアのふ化も期待しつつ観察を続けます。

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2021年03月12日トキの天敵対策

佐渡 近藤陽子

皆様、こんにちは。

佐渡自然保護官事務所の近藤です。

先週、トキが今年も巣をかけると思われる木に、ポリカーボネート製の波板を設置してきました。

<ポリカーボネート製の波板を設置した営巣木>

トキは毎年同じ木の同じ枝に巣をかけることが多く、例年この木にはNo.161(オス)とNo.149(メス)というペアが営巣し、2015年から2019年までヒナを巣立たせていました。

しかし、昨年の繁殖期、このペアから誕生した巣立ち間近のヒナが巣から姿を消しました。

付近の別の巣でもヒナが消え、そのまた別の巣では、ヒナの死体が発見されました。

このヒナの死体を調査したところ、肉食獣テンのDNAが検出され、ヒナたちはテンの捕食にあっていたことが分かりました。


<トキのヒナの死体から獣医師がDNAサンプルを採取する様子 2020年6月撮影>

日本では、いまだ佐渡にしか生息が確認されていない、絶滅の危機に瀕しているトキ。

今年の繁殖期から、トキの営巣木へ天敵が登るのを防ぐ対策を積極的に行うことになりました。(第19回トキ野生復帰検討会 資料2 p12

対策の一つとして、この営巣木への波板設置があります。

つるつるした素材のものを木の幹に巻き付けることで、テンが木に爪をかけてトキの巣まで登れないようにします。

(過去にも野生下のトキの営巣木に波板を設置したことがありますが、そうした巣で捕食された事例はありません。また、飼育施設でもテン対策として、波板が用いられています。)

まず、波板を設置する前に、テンが営巣木へ飛び移ることのないよう、周囲を刈り払いします。

刈り払いが終わったら、波板を設置していきます。

林内の急な斜面で作業するため、安定した足場を確保するのに苦労します。

インパクトドライバーとコーススレッドを使って波板の四隅と縦二辺の中央の6か所をとめます。

この木は根元で三股に分かれているので、全ての幹に波板を巻いて設置完了です。


<波板設置完了>

今回作業に入った林の近くにある水田ではNo.161、No.149ペアが確認されていますが、今年もこの木に巣をかけるのでしょうか。

今後の動きを注視していきたいと思います。


<No.161、No.149ペア 2017年12月撮影>

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2021年02月10日トキの死亡確認

佐渡 近藤陽子

皆様、こんにちは。

佐渡自然保護官事務所の近藤です。

全国的に雪の多い冬ですが、佐渡もたびたび大雪に見舞われ、野生下のトキたちには厳しい状況が続いています。

この冬、これまでに12月から1月にかけて計3個体の死体が発見されました。このうち2羽は積雪の影響で衰弱死した可能性が示されています。

過去3年間では、2017年度の冬期には13羽、2018年度には26羽、2019年度には32羽のトキが死亡したと推定しています。厳しい冬を乗り越えるのはトキにとって容易なことではないのでしょう。

佐渡の野生下には推定442羽のトキが暮らしています。トキの個体数が増えると、残念ながら、死亡してしまうトキの数も増えてしまいます。

今回は、野生下のトキの死亡確認がどのように行われているのかを解説します。

野生下のトキの死体は、主に「市民からの連絡」によって発見されます。また、一部の放鳥トキには行動を把握するためにGPS発信器が装着されており、トキの位置情報をもとにして発見される場合もあります※。このような時は、私たち職員が現場へ向かい、状況を確認し、死体を回収します。

※トキの位置情報や体温などをパソコンなどの端末から職員が確認することができます。トキは日中餌を探して移動したり林で休んだりしますが、GPSの位置情報が1日以上動かない時や体温が極端に下がっている時は、発信器が何らかの理由で外れたか、発信器を装着したトキが死んでいることが考えられます。

<GPS発信器を装着された放鳥トキ>

■回収現場でわかること

トキの死体や死亡した環境を確認することで、死因を推定できる場合があります。たとえば水田で発見され、死体の頭や胸に穴が開き、大量の出血がある場合、猛禽の爪が刺さってできたと考えられ、採餌中に天敵に襲われたと推定できます。また、死体が見つからなかったとしても、落ちている羽などから個体を特定できる場合があります。トキの死体や死体回収現場には多くの情報が残されています。

<現場に落ちていたトキの羽。死亡確認の現場には、しばしば羽が散乱しています。この羽の先には、赤いマーカーが着色されており、羽の新鮮さや着色されている羽の部位から、2020年9月に放鳥された個体のものだと推定できます。>

<林床に残っていたトキの骨の一部。薄いピンク色をしていることでトキの骨だと分かります。回収後、獣医師に確認いただき、トキの骨と判断しました。細かく砕けていることから、骨を噛み砕くことができるほ乳類にも捕食されたと推定されます。>

■解剖によってわかること

死体を回収できた場合、必要に応じて鳥インフルエンザの検査を実施し陰性を確認した後に、佐渡トキ保護センターの獣医師が検死・解剖を行い、体内外の損傷、病気の有無、胃内容物などを詳しく調べます。

実際の例として、池のほとりで回収された目立った外傷のないトキの死体を解剖した結果、肺に水がたまっていたことが分かり、溺死と判断されました。なかには、解剖したら食道に大きなドジョウが詰まっていて、ドジョウの誤嚥で窒息死したと判断されたトキもいました。

トキの体内に残された餌を調べることで、季節ごとの餌生物の種類、採餌環境等が分かります。トキが何を食べているのかは観察だけでは特定することが非常に難しいため、死体を解剖して得られる情報は大変貴重です。

胃内容物の調査が思わぬ発見をもたらす場合もあります。2018年に死亡したトキのヒナの胃内容物を新潟大学の岸本准教授が分析した結果、佐渡では何十年も前の採取記録しか残されていないアカマダラハナムグリという昆虫が確認されました。アカマダラハナムグリの近年の佐渡での生息が明らかにされた事例です。


モニタリングや胃内容物の調査などにより、トキは100種以上の生物を採餌していることが確認されています。

<2021/1/2に死亡を確認した放鳥トキの胃内容物。吹雪が続く中、タニシやガガンボの幼虫を食べて命をつないでいたようです。>

こうした解剖に加え、捕食者を特定するためのDNA鑑定を行う場合があります。昨年の繁殖期に巣内で死亡したトキのヒナの傷口や体表面から唾液サンプルを採取し、DNA鑑定を行った結果、肉食獣のテンのDNAが検出されました。これにより、テンが野生下のトキのヒナを捕食したことが判明しました。

<トキのヒナの死体から獣医師がサンプルを採取する様子>

トキの死亡確認は、悲しい現実ではありますが、死してなおトキたちが教えてくれる多くの情報を可能な限り拾い集め、今後のトキ野生復帰の取組に活かしていきます。

市民の皆様からご連絡いただいた情報が、多くの発見につながっています。心から御礼申し上げます。

<トキの死体を見つけたら>

環境省佐渡自然保護官事務所へご連絡ください。

電話:0259-22-3372

E-mail:RO-SADO2@env.go.jp

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