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アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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佐渡

126件の記事があります。

2021年04月28日2021年も野生下のトキのヒナ誕生!

佐渡 近藤陽子

皆様、こんにちは。

佐渡自然保護官事務所の近藤です。

佐渡では、田植え前の水田に水が張られ、水鏡に写る大佐渡山地が大変美しい季節になりました。

4月26日(月)、野生下のトキたちからヒナが誕生していることが分かりました。

<ヒナに餌を与える親鳥 2021/4/26撮影>

私たち佐渡のアクティブ・レンジャーはトキの子育てに影響のない離れた場所から観察を行っています。

具体的には、トキの巣がある林の外から、葉と葉の隙間をぬって覗くようにして巣とヒナの様子を確認します。

<木々の隙間から見えるトキとトキの巣 2021/4/26撮影>

巣は浅いお椀状に中央がくぼんでいるため、ヒナがいてもなかなか見えません。

親鳥がヒナに餌を与えようとすると、ヒナがくびを伸ばして親鳥に近付きます。そのときに初めて巣からヒナの頭が見えます。

<ヒナに餌を与える親鳥 2021/4/26撮影>

今季最初のヒナ誕生を確認したペアは、飼育繁殖で増やして放鳥したトキではなく、佐渡の自然界で誕生した野生のトキたちでした。

佐渡には、トキの餌場となる生きもの豊富な水田、ねぐらや営巣場所となる林が存在します。こうした佐渡の里山環境がトキをはぐくみ、トキの命をつないでいます。

今後の他のペアのふ化も期待しつつ観察を続けます。

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2021年03月12日トキの天敵対策

佐渡 近藤陽子

皆様、こんにちは。

佐渡自然保護官事務所の近藤です。

先週、トキが今年も巣をかけると思われる木に、ポリカーボネート製の波板を設置してきました。

<ポリカーボネート製の波板を設置した営巣木>

トキは毎年同じ木の同じ枝に巣をかけることが多く、例年この木にはNo.161(オス)とNo.149(メス)というペアが営巣し、2015年から2019年までヒナを巣立たせていました。

しかし、昨年の繁殖期、このペアから誕生した巣立ち間近のヒナが巣から姿を消しました。

付近の別の巣でもヒナが消え、そのまた別の巣では、ヒナの死体が発見されました。

このヒナの死体を調査したところ、肉食獣テンのDNAが検出され、ヒナたちはテンの捕食にあっていたことが分かりました。


<トキのヒナの死体から獣医師がDNAサンプルを採取する様子 2020年6月撮影>

日本では、いまだ佐渡にしか生息が確認されていない、絶滅の危機に瀕しているトキ。

今年の繁殖期から、トキの営巣木へ天敵が登るのを防ぐ対策を積極的に行うことになりました。(第19回トキ野生復帰検討会 資料2 p12

対策の一つとして、この営巣木への波板設置があります。

つるつるした素材のものを木の幹に巻き付けることで、テンが木に爪をかけてトキの巣まで登れないようにします。

(過去にも野生下のトキの営巣木に波板を設置したことがありますが、そうした巣で捕食された事例はありません。また、飼育施設でもテン対策として、波板が用いられています。)

まず、波板を設置する前に、テンが営巣木へ飛び移ることのないよう、周囲を刈り払いします。

刈り払いが終わったら、波板を設置していきます。

林内の急な斜面で作業するため、安定した足場を確保するのに苦労します。

インパクトドライバーとコーススレッドを使って波板の四隅と縦二辺の中央の6か所をとめます。

この木は根元で三股に分かれているので、全ての幹に波板を巻いて設置完了です。


<波板設置完了>

今回作業に入った林の近くにある水田ではNo.161、No.149ペアが確認されていますが、今年もこの木に巣をかけるのでしょうか。

今後の動きを注視していきたいと思います。


<No.161、No.149ペア 2017年12月撮影>

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2021年02月10日トキの死亡確認

佐渡 近藤陽子

皆様、こんにちは。

佐渡自然保護官事務所の近藤です。

全国的に雪の多い冬ですが、佐渡もたびたび大雪に見舞われ、野生下のトキたちには厳しい状況が続いています。

この冬、これまでに12月から1月にかけて計3個体の死体が発見されました。このうち2羽は積雪の影響で衰弱死した可能性が示されています。

過去3年間では、2017年度の冬期には13羽、2018年度には26羽、2019年度には32羽のトキが死亡したと推定しています。厳しい冬を乗り越えるのはトキにとって容易なことではないのでしょう。

佐渡の野生下には推定442羽のトキが暮らしています。トキの個体数が増えると、残念ながら、死亡してしまうトキの数も増えてしまいます。

今回は、野生下のトキの死亡確認がどのように行われているのかを解説します。

野生下のトキの死体は、主に「市民からの連絡」によって発見されます。また、一部の放鳥トキには行動を把握するためにGPS発信器が装着されており、トキの位置情報をもとにして発見される場合もあります※。このような時は、私たち職員が現場へ向かい、状況を確認し、死体を回収します。

※トキの位置情報や体温などをパソコンなどの端末から職員が確認することができます。トキは日中餌を探して移動したり林で休んだりしますが、GPSの位置情報が1日以上動かない時や体温が極端に下がっている時は、発信器が何らかの理由で外れたか、発信器を装着したトキが死んでいることが考えられます。

<GPS発信器を装着された放鳥トキ>

■回収現場でわかること

トキの死体や死亡した環境を確認することで、死因を推定できる場合があります。たとえば水田で発見され、死体の頭や胸に穴が開き、大量の出血がある場合、猛禽の爪が刺さってできたと考えられ、採餌中に天敵に襲われたと推定できます。また、死体が見つからなかったとしても、落ちている羽などから個体を特定できる場合があります。トキの死体や死体回収現場には多くの情報が残されています。

<現場に落ちていたトキの羽。死亡確認の現場には、しばしば羽が散乱しています。この羽の先には、赤いマーカーが着色されており、羽の新鮮さや着色されている羽の部位から、2020年9月に放鳥された個体のものだと推定できます。>

<林床に残っていたトキの骨の一部。薄いピンク色をしていることでトキの骨だと分かります。回収後、獣医師に確認いただき、トキの骨と判断しました。細かく砕けていることから、骨を噛み砕くことができるほ乳類にも捕食されたと推定されます。>

■解剖によってわかること

死体を回収できた場合、必要に応じて鳥インフルエンザの検査を実施し陰性を確認した後に、佐渡トキ保護センターの獣医師が検死・解剖を行い、体内外の損傷、病気の有無、胃内容物などを詳しく調べます。

実際の例として、池のほとりで回収された目立った外傷のないトキの死体を解剖した結果、肺に水がたまっていたことが分かり、溺死と判断されました。なかには、解剖したら食道に大きなドジョウが詰まっていて、ドジョウの誤嚥で窒息死したと判断されたトキもいました。

トキの体内に残された餌を調べることで、季節ごとの餌生物の種類、採餌環境等が分かります。トキが何を食べているのかは観察だけでは特定することが非常に難しいため、死体を解剖して得られる情報は大変貴重です。

胃内容物の調査が思わぬ発見をもたらす場合もあります。2018年に死亡したトキのヒナの胃内容物を新潟大学の岸本准教授が分析した結果、佐渡では何十年も前の採取記録しか残されていないアカマダラハナムグリという昆虫が確認されました。アカマダラハナムグリの近年の佐渡での生息が明らかにされた事例です。


モニタリングや胃内容物の調査などにより、トキは100種以上の生物を採餌していることが確認されています。

<2021/1/2に死亡を確認した放鳥トキの胃内容物。吹雪が続く中、タニシやガガンボの幼虫を食べて命をつないでいたようです。>

こうした解剖に加え、捕食者を特定するためのDNA鑑定を行う場合があります。昨年の繁殖期に巣内で死亡したトキのヒナの傷口や体表面から唾液サンプルを採取し、DNA鑑定を行った結果、肉食獣のテンのDNAが検出されました。これにより、テンが野生下のトキのヒナを捕食したことが判明しました。

<トキのヒナの死体から獣医師がサンプルを採取する様子>

トキの死亡確認は、悲しい現実ではありますが、死してなおトキたちが教えてくれる多くの情報を可能な限り拾い集め、今後のトキ野生復帰の取組に活かしていきます。

市民の皆様からご連絡いただいた情報が、多くの発見につながっています。心から御礼申し上げます。

<トキの死体を見つけたら>

環境省佐渡自然保護官事務所へご連絡ください。

電話:0259-22-3372

E-mail:RO-SADO2@env.go.jp

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2021年01月08日雪が降る日のトキたちは

佐渡 菅野萌

皆さんこんにちは。

佐渡自然保護官事務所の菅野です。

この冬は昨年と比べて雪が降る日がとても多く、東京生まれの私にとっては雪景色が見られるこの日常がとても新鮮に感じられます。

そんな中、初めて雪の中での野生下トキのモニタリングを経験しました。

行く先々の道が真っ白で、車を滑らせたり、側溝に落とさないよう慎重に運転しなければならず大変でしたが、いつもと違ったトキの様子を見ることができました。

今回は、雪の日のトキの様子を紹介します!

雪の日でもトキはエサを探しにねぐらから飛び立ちました。私は毎朝布団の中から出るのに時間がかかってしまうので、寒い中飛び立っていくトキを見て感心してしまいました。

▲左の写真のトキは羽にマーカーがついているので去年の秋に放鳥されたトキです

写真ではなかなか伝わりにくいのですが、この写真を撮った日は雪に加えて風もかなり強い日でした。

ねぐらから飛び立ったものの、向かい風が強すぎて全く前へ進めていないトキたちをみて、つい小声で「頑張ってー!」とエールを送ってしまいました。

ねぐら出が終わった後にエサ場でトキを探してみると、凍った水田の横にたたずむトキが1羽・・・

畦に立ち尽くす姿から「凍っている・・・どうしょう・・・」という声が聞こえてくるような気がしました。

▲あれれ・・・いつもと違う・・・

さて、トキたちは一体どこでエサを食べているのでしょうか。

もう少し探してみると・・・トキが2羽いました!さかんに嘴で地面をつついています。

どうやら足下近くに水路があるようです。

多くのエサ場が凍りついてしまうなか、水の流れがある場所は凍っておらず、トキたちの貴重なエサ場になっているのです。

この他にも、トキがよく利用する場所として「江(え)」があります。

「江」は水田や水路に設けられた深みのことで、ここも凍りにくいのでトキにとって大切なエサ場になっています。

▲トキが江を利用している様子です

この「江」は、夏場に水田の中干しをする際に生きものの避難場所にもなります。

佐渡では「生きものを育む農法」として江を設置したり、冬の間も生きものが生息できるように田んぼに水を張っておく「冬期湛水(とうきたんすい)」を行ったりと、生物多様性に配慮した取組みが続けられています。

雪の多い冬はどの生きものにとっても厳しい時期ですが、その中でも懸命に生きているトキの姿を見て、野生生物のたくましさを改めて感じました。

どうか無事にこの冬を乗り切ってほしいと願うばかりです。

▲おまけ 強風にあおられて、頭のうしろの冠羽(かんう)が逆立っています

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2020年12月16日トキ写真展開催中です!

佐渡 菅野萌

皆さんこんにちは。

佐渡自然保護官事務所の菅野です。

12月14日からトキ野生復帰の普及啓発のために「トキ写真展」を開催しているのでご紹介します!

期間:2020年12月14日(月)~2021年3月31日(水)

時間:8時~16時

場所:佐渡汽船両津港 両津南埠頭ビル2階 入場料無料

両津港ターミナル2階待合室を出て、土産物街を通り抜けた先の1番奥で写真展を開催しています。

▲会場の様子

写真展では野生下・飼育下のトキの写真などを展示しています。

野生下のトキの写真コーナーでは、親にエサをもらうヒナや群れで採餌している様子など、トキの様々な姿を捉えた写真を展示しています。

▲展示写真の1つ。野生下のトキの写真は全て今年撮影したものです!

飼育下のトキの写真は、佐渡トキ保護センターからお借りしています。

孵化したばかりのトキの写真や、まだ小さいヒナに人工給餌している様子を捉えた写真など、飼育下だからこそ撮影できた写真を展示しています。

▲卵から出てきたばかりのヒナの写真はなかなか見られません!

この他にもトキ野生復帰の取組についてのポスターや実物の1/4サイズのトキの巣、飼育下のトキに与える人工飼料の見本も展示しています。

▲実物の1/4サイズのトキの巣(左)と人工飼料(右)

両津港にお立ち寄りの際は是非ご覧ください!

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2020年12月14日トキの威嚇行動

佐渡 近藤陽子

皆様、こんにちは。

佐渡自然保護官事務所の近藤です。

先日、冬期湛水している水田にコハクチョウとオオハクチョウがおりていました。トキの餌となる生きものが育まれる冬期湛水。ハクチョウなどの渡り鳥にとっても大切な餌場や休息場所になっているようです。

さて、ハクチョウの近くで餌を探すトキたちを観察していた際、トキ同士の小競り合いを目撃しました。

今回は、トキの威嚇行動について紹介します。

(※日頃観察している私なりの解釈であり、科学的に証明されているものではありません)

トキの小競り合いは、とまり木の取り合い(良い休息場所の確保)や餌場の取り合いをする時に見られます。餌場の取り合いと言っても、水のたまった同じわだちに一緒に頭を突っ込んで食べるような至近距離の時に生じることが多く、水田に広く散って餌を探しているときにはあまり起こりません。

この日、あぜに沿って餌を探しながら進んでいたトキ2羽が、ちょうど鉢合わせになるような状況で小競り合いは起こりました。

鉢合わせになった2羽のトキ。お互い頭を低くして相手の出方を見ているようです。

(左側のトキは今年9月に放鳥されたトキで、背中には、放鳥したトキの行動を調べるために装着されたGPS発信器が付いています)

2羽とも大きく鳴きながら威嚇を始めました。右側にいたトキが翼を下げて初列風切羽を広げています。初列風切羽は特に「とき色」が濃い部分ですが、これを見せつけることで何か意味があるのかもしれません。

数秒鳴き合った後、GPSの付いたトキが鳴きながら相手をつつこうとしています。

同じくGPSの付いたトキが、付近に落ちていた枯草(武器のつもり?)をくわえ、のっし!のっし!と大股で追いかけます。

相手のトキは退散しました。枯草をくわえているGPS付きのトキは追うのをやめ、何となく満足そうに見えます。

小競り合いの起こった水田は広く、追いやられたトキは数メートル離れた場所で再び落ち着いて餌を探し始めました。

小枝や枯草などを渡す行為は、トキの求愛行動としても知られています。


<お互いに枯草をくわえ合うトキのペア>

ですが、必ずしも枯草をくわえて相手に近付くことが求愛行動というわけではないようです。

トキの行動には様々なパターンがあり、私たちが理解しているのは、そのごく一部なのでしょう。

先入観にとらわれることなく、よく観察し、トキへの理解を深めていきたいと思いました。

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2020年12月03日ねぐら出一斉カウント調査

佐渡 菅野萌

皆さんこんにちは。

佐渡自然保護官事務所の菅野です。

佐渡の紅葉もピークを過ぎてきたようで、いよいよ冬が迫ってきていることを実感します。去年はそれほど多く雪は降りませんでしたが、今年はどうなるのでしょうか。

▲葉が散ってしまう前に、なんとか秋らしい写真が撮れました

さて、そんな中11月17日~20日に今年2回目の「トキのねぐら出一斉カウント調査」が行われました。

これは、ねぐらから飛び立つトキを一度に数える調査で す。ねぐらに集まるトキが最も多くなる9月と11月に、環境省が地域の活動団体の皆様と協力して行っています 。

この調査で得られた記録は、佐渡島内の野生下トキの個体数を推定するために使われます。

「一度に数える」とは言っても、野生下のトキは島内のあちこちに分散しており、ねぐらもたくさんあります。到底1日では調査できないので、島内を大きく3つのエリア(東側:両津・新穂・金井地区、西側:畑野・真野・佐和田・相川地区、南側:羽茂、赤泊地区)に分けて、計3日間(追加調査を行うこともあるので4日間になることも)で調査を行っています。

普段のモニタリングは環境省・新潟大学・地域のボランティアの方々からなるモニタリングチームで行っていますが、この調査を行うためには各ねぐらを観察する調査者が足りません。そこで「人・トキの共生の島づくり協議会」の構成団体やその関係者にも協力してもらい、今回は計39名で調査を行いました。

▲ねぐら出するトキ(この写真は別の時期に撮影したものです)

この調査の前にモニタリングチームではトキのねぐら探しを行います。

トキは毎日特定の場所でねぐらをとるのではなく、頻繁にねぐらの場所を変えます。そのため、急に新たなねぐらが出来たり、今までたくさんのトキが使っていたねぐらが使われなくなったりすることもあります。一斉カウント調査で正確にトキの個体数を数えるためには、事前にトキがねぐら出している場所を把握しておく必要があります。

使っているねぐらを見つけるには、過去にねぐらになっていた記録のある林や地域住民の目撃情報があった近辺の林を観察し、ねぐら出があるかどうかを確認します。

時には、エサ場におりているトキの羽数と、その周辺のねぐらから飛び立ったトキの羽数の違いもヒントになることがあります。

例えば、観察していた各ねぐらから飛び立ったトキが合計5羽だったのにもかかわらず、周辺のエサ場に10羽もトキがいたとしたら、その付近に別のねぐらがあるかもしれない!と考えるのです。

ちょっとした推理ゲームみたいですよね。

▲他の場所からねぐら出しているのかも!

もっとも、遠く離れた所からねぐら出したトキが飛んできて合流しただけとも考えられるので、その辺りは他の地点の記録なども参考にしながら判断します。

そんな事前調査を終えて迎えた調査当日。

トキは日が昇り始めると活動しだすので、調査者は日の出前に各ねぐら周辺にスタンバイします。最初は暗い車の中で一人ねぐら出を待つので寂しいのですが、辺りが明るくなり始めるとトキのねぐら出があちこちで始まり、「○○から20羽出ました!」「××から3羽!あっ・・・4羽!」などと無線が飛び交って賑やかになります。

ちなみに、私も調査日1日目と3日目はねぐらの付近でスタンバイして羽数を数える役割でしたが、残念ながら両日とも私が観察していたねぐらからはトキが出てきませんでした・・・・。

さて、今回の調査結果ですが、佐渡島内24か所のねぐらから合計388羽のねぐら出を確認することができました!現在、島内には野生下のトキが458羽生息していると推定されているので、8割程度の確認となりました。

次のねぐら出一斉カウント調査は来年の9月。

その頃には、野生下のトキはどのくらいの個体数になっているのでしょうか。

▲多くのトキがいる平野部からはずいぶんと離れた場所でねぐら出していたトキ

追加調査で確認したこのトキたちもきちんとカウント数に含めました

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2020年11月27日鳥インフルエンザ対策

佐渡 近藤陽子

皆様、こんにちは。

佐渡自然保護官事務所の近藤です。

環境省が実施している調査において、11月16日(月)に新潟県阿賀野市で採取した環境試料(水)から、11月25日(水)に高病原性鳥インフルエンザウイルスが検出されました。

新潟県内での発生ということで、佐渡自然保護官事務所がある佐渡トキ保護センター野生復帰ステーションでは、トキたちを感染から守るため、敷地内に消石灰がまかれました。消石灰には消毒効果があります。

<野生復帰ステーション入り口。門の外には靴裏消毒用の消毒槽が設置されています。>

<消石灰散布の様子>

また、鳥インフルエンザウイルスを持ち込まないために、トキを飼育しているエリア内への車両(職員の車両も含む)の進入は原則禁止になり、私たち職員がこのエリアに入る際は、靴裏の消毒を行います。


<敷地内数カ所に設置された靴裏消毒槽>

トキの飼育でどうしても使う必要がある車両については、逆性石けんを用いて車両をしっかり消毒します。


<車両消毒のための逆性石けんが含まれているマット>

<逆性石けん噴霧器>

<車両消毒の様子>

11月27日時点では佐渡での高病原性鳥インフルエンザの確認はありませんが、鳥インフルエンザウイルスを運ぶとされるガンカモ類は多数飛来しています。

トキがどの程度鳥インフルエンザにかかりやすいのかは不明ですが、細心の注意を払ってできうる限りの対策に努めたいと思います。

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2020年11月20日トキが飛び立つ前に見せる行動

佐渡 近藤陽子

皆様、こんにちは。

佐渡自然保護官事務所の近藤です。

私たち佐渡のアクティブ・レンジャーは、佐渡の野生下で暮らすトキのモニタリングを主な業務としています。トキのモニタリングで得たデータは、トキ野生復帰の取組の評価や今後の事業の目標・方針を立てるために活用されます。

トキのモニタリングでは、トキの脚に装着されている足環(あしわ)を確認して個体を識別し、どの個体が、いつ、どこで、何をしていたか、を記録します。こうしたモニタリングによって、トキの生存状況、繁殖結果、トキが好む環境などが分かります。

<全ての放鳥トキと野生下で誕生したトキの一部に個体識別のための足環(左脚に番号リング、右脚にカラーリング)が装着されています。>

<野生下トキの足環の識別表。佐渡市羽茂(はもち)地区で観察していたので、羽茂グループを参照し、写真の個体がB94であると分かりました。>

個体の識別は、モニタリングの基本かつ最重要要素ですが、でこぼこした水田や草の茂みを歩き回るトキの足環を読むのは至難の業です。

<手前の草に脚が隠れてしまっています。>

トキの識別にはスピードが要求されます。観察中、歩行者や車が通過したり、上空を猛禽が飛んだりして、トキが驚き飛んでしまうことがあるからです。トキが飛んでしまっては、足環を読むどころか観察すらできません。

そのため、私たちはトキが飛ぶ前に見せる行動にとても敏感です。

前置きが長くなりましたが、今回はトキが飛び立つ前に見せる行動を紹介します。

通常、モニタリングは車に乗って行います。トキを驚かさないために、観察するトキから150メートル程度(田んぼ約2枚分)離れた安全な場所で停車し、エンジンを切って観察します。エンジンを切った車は生きものとして認識されないのか、そして、車内の人間は確認しにくいのか、車の中からだとトキを警戒させずに自然な行動を観察することができます。

トキの警戒行動は、餌場にいれば、下を向いて餌を捕るのをやめ、頭を高く持ち上げて動きがとまります。水田からあぜに上がってより高い位置からこちらの様子をうかがう個体もいます。木に止まっているのであれば、動きをとめ、頭を高く持ち上げてこちらをじっと見つめます。この場合、150メートル以上離れていても、それ以上近付くと飛んでしまうので、私たちはエンジンをとめてトキを刺激しないよう、そこから観察します。しばらく車の中でじっとしていると、トキたちはまた頭を下げて餌を探し始めたり、羽繕いを始めたりします。このようにトキの警戒が解けると飛翔するリスクは軽減するので、観察を続け、スピーディに識別していきます。

 ですが、トキはいつまでも食べている訳ではありません。おなかがいっぱいになれば飛び立ちます。飛び立つ前になると、餌を捕ることに集中しなくなり、歩いたり、きょろきょろしたり、落ち着きがなくなります。そして、「コッ...コッ...」と短く鳴き始めます。鳴き始めたらほぼ確実に飛ぶので、未識別であればその個体を優先的に識別し、識別済みであれば、飛翔写真を撮影するために、一旦観察を中断し、カメラをかまえます。ファインダーをのぞきながら、トキがフンをするのを確認したら、いよいよいつでも撮影できるように心の準備を整えます。鳥は、飛び立つ前、より身を軽くするためによくフンをするからです。素早く飛び立つトキを綺麗に写真に収めるために、飛び立つ前のこうした行動が、近藤個人的には目安になっています。

 

<鳴いているトキ。のどを膨らませて鳴き声を出しています。飛び立つ前の仕草です。>

<しばらく鳴いたあと、飛び立ちました。>

<飛び立つ前にあらかじめファインダーに入れておいて撮影>

飛び立つ前に鳴くと書きましたが、何かに驚いて慌てて飛ぶ場合はほとんど鳴きません。できるだけ目立たずに危険から離れるための行動かもしれません。

日々同じ生きものを観察していると、さまざまなことが見えてきます。

観察は、言葉を話さない生きものを理解する一番の近道かもしれません。

<オスのキジに近付くトキの幼鳥。どんな会話をしているのでしょう。>

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2020年11月06日トキ野生復帰事業の普及啓発

佐渡 近藤陽子

 皆様、こんにちは。

 佐渡自然保護官事務所の近藤です。

 佐渡では朝晩冷え込む日が多くなりました。山々の紅葉が深まり、見頃を迎えています。


<野生復帰ステーションの木々も色づき始めました>

 さて、私が勤務する佐渡自然保護官事務所では、学校などから見学依頼があった場合に、トキ野生復帰についての解説や施設案内を行っています。

 佐渡自然保護官事務所は、佐渡トキ保護センター野生復帰ステーションという施設内にあります。ここでは、私たち佐渡自然保護官事務所と野生復帰ステーションの新潟県の職員さんとが同じ部屋で仕事をしており、見学者の対応は環境省と新潟県が協力して行うことがよくあります。その場合、新潟県はトキの飼育・繁殖・順化訓練に関する話を、私たちは野生下のトキに関する話をしています。

<手前が佐渡自然保護官事務所、奥が新潟県。新潟県側には野生復帰ステーションで飼育されているトキの様子が映し出されたモニターが並んでいます。>

 今回は、先月対応した佐渡島内の3つの学校への解説・案内の様子を紹介します。

1.佐渡高校2年生

<順化ケージ内で新潟県の獣医師からトキの訓練について説明を受ける生徒>

 新潟県職員とアクティブ・レンジャーがトキの野生復帰の取り組みのレクチャーを行い、野生復帰ステーション内、※順化ケージ、※※トキのテラスなどの施設を案内しました。

※順化ケージ

トキが野生下で生きていくために必要な飛翔能力、採餌能力、社会性などを身につけるために訓練を行う、佐渡の里山環境を再現した大型のケージ。野生復帰ステーションの敷地内にあります。

※※トキのテラス

野生下に再導入したトキを適切に観察できるとともに、トキが生息する佐渡島の自然豊かな里地里山等を展望できる施設。野生復帰ステーション管理棟から徒歩5分ほどの場所にあります。

2.新穂(にいぼ)中学校1年生

<トキのテラスのピロティで解説をしている様子>

 アクティブ・レンジャーがトキのテラスでトキの野生復帰の取り組みについて解説しました。

3.新穂小学校3年生

<新潟県の獣医師が児童からのインタビューに答える様子>

 新潟県職員とアクティブ・レンジャーが野生復帰の取り組みのレクチャーを行い、順化ケージを案内して、児童からのトキのプロとしてのインタビューに答えました。

 トキの野生復帰は、「トキの飼育・繁殖」、「生息環境の整備」、「社会環境の整備」など、様々な側面から様々な人々が関わって進められています。トキを放鳥しても生息環境が整っていなければ、地域の方の理解がなければ、野生復帰は実現しません。

 トキの野生復帰の普及啓発を通して、佐渡の豊かな自然環境に目を向け、故郷を大切に思う心が、佐渡の未来を担う子供たちに育まれてくれると嬉しいです。

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