アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
本州から戻ってきたNo.180の行方
2015年05月20日佐渡自然保護官事務所の後藤です。
着々と田植えが進む佐渡では、トキのふ化がピークを迎えています。
野生下のトキの繁殖状況は放鳥トキ情報(http://blog.goo.ne.jp/tokimaster)などでも逐次お知らせしていますが、これまで1羽のトキにスポットを当ててお伝えする機会があまりなかったので、今回は佐渡のトキの中でも特に注目されている!?No.180というメスのトキの様子をお伝えしたいと思います。
2014年6月に放鳥されたNo.180のこれまでの動きを、分かりやすく時系列にまとめてみました。
2014年
6月6日 3ヶ月間の訓練を終え、佐渡市の野生復帰ステーションから放鳥(第10回放鳥)
7月1日 海を渡った新潟県村上市で確認。その後同県新発田市などでも目撃される。
2015年
3月26日 佐渡島内に戻って来ていることを確認
4月13日 モニタリングチームの市民ボランティアがNo.84(6歳オス)と行動を共にしている様子を確認。
4月18日以降 数日間No.180の確認がなくなる
4月26日 No.90(6歳オス)と2羽で探餌しているのを確認
5月4日 スギの樹上に造巣を開始している様子を確認
5月7日 抱卵を確認
5月8日 抱卵中止を確認
これまでの観察から、メスは繁殖期になると相手を探して広範囲を移動すると考えられており、一度島外へ出たNo.180も相手を探して佐渡に戻ってきたのかもしれません。
佐渡に戻って来た後も相手を探しているためか、島内の広い範囲で確認されていました。
そして、4月13日には1羽で巣材を運び巣作りしていたNo.84(6歳オス)と一緒に行動していることが確認されました。
〈巣をいじるNo.180(中央)と近くにとまるNo.84(左)と様子を見に来た?若鳥1羽(右))
しかし、4月18日以降1度No.180は観察されなくなります。
観察されなくなった理由は不明ですが、その間、No.84は足環なし(年齢、性別不明)と行動している様子が観察されています。
その後No.90(6歳オス)という別のオスとペアになり営巣し抱卵まで至りましたが、すぐ中止が確認されました。中止した理由は不明です。
実はNo.180は中国から供与された溢水(イーシュイ)の孫にあたり、これまで放鳥数が少ない系統であるため、繁殖成功が期待されていました。
今年は再営巣するには時期的にも少し遅いため、来年の繁殖期に期待したいところです。
今回はNo.180の動きについてご紹介しましたが、広い佐渡島において1羽のトキの行動を詳細に把握出来ているのも、ほぼ毎日モニタリングに出て下さっているボランティアの方々のおかげです。
感謝の気持ちを忘れず、今後とも協力して観察を行っていきたいです。