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アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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富士箱根伊豆国立公園 下田

64件の記事があります。

2021年12月18日お汁粉よりも甘い場所「下田市須崎 爪木崎海岸」

富士箱根伊豆国立公園 下田 齋田滉大

みなさん、こんにちは。お正月に食べるおせち料理やお雑煮が楽しみでならない齋田です。

地元千葉県のお雑煮といえば、はばのりや青のりをたっぷりと振りかけた「はば雑煮」が一般的ですが、伊豆半島の南部では、お雑煮に「かき菜」と呼ばれる野菜を入れる家庭がほとんどです。

聞くところによると、中国地方の北部では、お汁粉のように甘い「小豆雑煮」を食べる風習があるそうです。新年早々幸せな気分になれそうですね。

さて、今回の日記では、お汁粉に負けないくらいに甘い香りが漂う伊豆半島の人気スポットをご紹介します。

そんな夢のような場所があるのは、下田市須崎に位置する爪木崎。夏場はたくさんの海水浴客で賑わいますが、冬の季節にはたくさんの花々が海岸沿いを彩ります。

【爪木崎海岸のニホンズイセン】

写真は去年の1月上旬に撮影したものです。今年も12月上旬頃から元気いっぱいに咲き始めました。

今シーズンの開花はほぼ例年並みのようで、年明け頃には甘くやわらかい香りに包まれながら一足はやい春の訪れを感じることが出来るはずです。

ぽかぽかとした陽気の下でぼーっと景色を眺めていると、まるで南の島にいるような気分にさせられます。

ちなみに、左手に広がる赤色は前回の日記にてご紹介した「クリスマスツリー」です。

この真っ赤な植物はアロエの里だけでなく、伊豆半島各地の海岸沿いにぽつりぽつりと自生しています。

アロエの里で見られるおよそ3万株のツリーの様子はこちらの日記をご覧下さい。

下田市須崎の爪木崎海岸では、1月中旬から2月上旬頃にニホンズイセンの花が見頃のピークを迎えます。

気になるアクセスですが、伊豆急下田駅からバスに揺られること、わずか15分程で辿り着く事が出来ます。

さらに、12月20日から131日までの期間には「下田市爪木崎 水仙まつり」の開催に合わせた臨時直行便が運行するようです。冬の景勝地としての人気の高さがうかがえますね。

伊豆半島では珍しいアクセス抜群の絶景スポットなので、空いた時間のちょっとした散策にもおすすめです。

年末年始は伊豆半島の下田で一足はやい春の訪れを感じてみてはいかがでしょうか?

来年も富士箱根伊豆国立公園伊豆半島地域のアクティブ・レンジャー日記をよろしくお願いします。

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2021年11月30日一足はやいクリスマスツリー?「下田市白浜 ○○○の里」

富士箱根伊豆国立公園 下田 齋田滉大

みなさん、こんにちは。プレゼントは貰うよりも贈る方が楽しく感じる齋田です。

プレゼントを選んで当日に渡すまで、相手が喜ぶ顔を想像するとわくわくして仕方がありません。

さて、今回の日記では、海辺に広がるクリスマスツリーをご紹介します。

ツリーが見られるのは、伊豆半島を代表とするビーチ「白浜大浜海水浴場」のすぐそばにある海岸です。

夏は磯遊びを行う地元の子どもたちで賑わいますが、寒い冬にはツリー目当てに多くの観光客が訪れます。

冬の下田を観光したことのある方はすでにピンときているかもしれませんが、しばらくお付き合い下さい。

冬の伊豆半島の海辺でどのようなツリーが見られると思いますか?

ヒトデやウニのトップスターではありません。ヒントは温暖な伊豆半島ならではの、あの植物です。

昔は万病の妙薬とされ、「医者いらず」と呼ばれていました。なんと刺身でも食べることが出来ます。

植物好きのみなさんはもうお分かりでしょうか?

今回ご紹介するクリスマスツリーの正体はこちらです!!

【キダチアロエ(下田市白浜アロエの里)】

青い海を背景に真っ赤にそびえ立つおよそ3万株のクリスマスツリー。もとい、キダチアロエ。

アロエの花をこの日記で初めて見たという方は、そのビジュアルにびっくりしたのではないでしょうか?

一つの花茎だけでもインパクトがあるキダチアロエがこれほどまでに群生する様子は、まさに圧巻ですね。

都会の街中に輝くイルミネーションを観に行くことも素敵なクリスマスの過ごし方ですが、伊豆半島で大自然からのプレゼントを探してみるのも楽しいかもしれません。

下田市白浜アロエの里では、12月上旬から1月下旬頃にキダチアロエの花が見頃のピークを迎えます。

気になるアクセスですが、伊豆急下田駅からバスに乗り、わずか20分程で辿り着く事が出来ます。

秘境にある絶景スポットが多い伊豆半島の中では抜群のアクセスの良さですね。

撮影機材を担いだ気合いを入れての見学はもちろん、空いた時間のちょっとした散策にもおすすめです!

今年の冬は伊豆半島の下田に真っ赤なツリーを眺めに来てはいかがでしょうか?

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2021年10月27日プルースト効果と呼ぶそうです「伊豆半島から見る夕日」

富士箱根伊豆国立公園 下田 齋田滉大

みなさん、こんにちは。久方ぶりに袖を通したセーターの匂いに懐かしさを隠せない齋田です。

特定の香りを嗅いだときに遠い昔のような心もちがするのは、なんだか不思議な気分ですね。

この季節は、金木犀や古本等の匂いをきっかけに、いつかの思い出が蘇る方も多いのではないでしょうか。

さて、今回はそんな懐かしさを感じる伊豆半島の秋の景色をご紹介します。

秋の香りを共有することは難しそうなので、美しい景色から感じる懐かしさや伊豆半島の自然の魅力について、写真を通してお伝えできればうれしく思います。

*緊急事態宣言が解除されたため、伊豆半島で出会える昆虫シリーズは連載をお休みさせて頂きます

まず初めにご紹介するのは、大きな奇岩で有名な黄金崎より望む夕日です。

【黄金崎より望む夕日】

やわらなか西日を受けて黄金色に輝く岩肌が眩しい、西伊豆町宇久須の黄金崎。

安山岩が温泉水や地熱等によって変質したことで、このような黄金色の岩肌になったと言われています。

その美しさもさることながら、学術的にも非常に価値が高いらしく、昭和63年には「黄金崎のプロピライト」として静岡県の天然記念物に指定されました。

また、環境省の「富士山がある風景100選」に選定されており、富士山の展望地としても有名です。

この日は北の空が雲に覆われてしまい、残念ながら富士山を見ることはできませんでしたが、晴れた日には写真右上部に富士山を望むことができます。

さて、突然ですが、みなさんは岩の形が何かの生き物のように見えませんか?

面長な顔立ちに、ぴんと立った耳。立派なたてがみもあります。波に濡れた鼻先は柔らかそうです。

もうお分かりですね。この岩は動物の馬の形にそっくりなことから、「馬ロック」と呼ばれています。

私は岩のくぼみが大きな瞳のように見えるのですが、みなさんの目にはどのように映っているでしょうか?

黄金崎へは、修善寺駅よりバスで70分、黄金崎クリスタルパークにて降車後、徒歩15分で辿り着くことができます。

続いてご紹介するのは、伊豆半島を代表する夕日スポット、大田子海岸より望む夕日です。

【大田子海岸より望む夕日】

伊豆半島が誇る夕日の名所、西伊豆町田子の大田子海岸。日本夕日百選に選定されています。

海に浮かぶ大きな奇岩は、沖よりの左側から順に男島・女島(2つを合わせて田子島)、男島と女島の手前にそびえる怪獣のような岩はメガネッチョ(ゴジラ岩)と呼ばれています。

大田子海岸ではほぼ年間を通して夕日を楽しむことができますが、春分と秋分の頃には男島と女島の中央に太陽が沈み、幻想的な光景を見ることができます。中でも、メガネッチョの大穴に夕日が重なる構図は有名で、全国の夕日を集めたカレンダーや海をモチーフとした写真集等で使用されることが多いです。

うるんだ赤い硝子球のような夕日が海の果てに沈んでいく様子は、言葉では表現することのできないほどに情緒的ですね。

私はこの景色を眺めるたびに、子どもの頃に友達と自転車で遠出をしたときの思い出が蘇ります。

大田子海岸へは、修善寺駅よりバスで80分、大田子にて降車後、徒歩3分で辿り着くことができます。

伊豆半島から見る夕日はいかがでしたか?

懐古の情に浸りがちな秋の季節に、是非一度、伊豆半島の真っ赤な夕日を眺めにお越し下さい。

夕日のあたたかさや潮風のやわらかさ、波の音、浜辺の湿った匂いが、きっとみなさんを懐かしい気持ちにしてくれることと思います。

咳エチケットの徹底やソーシャルディスタンスの確保等の基本的な感染症対策に努めながら、伊豆半島の豊かな自然を存分に満喫しましょう!

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2021年09月30日伊豆半島で出会える秋の昆虫たち -トンボ科編 ①-

富士箱根伊豆国立公園 下田 齋田滉大

みなさん、こんにちは。足早に進んでいく季節の移ろいに消化器系がまったく追いつかない齋田です。

急激な気温の低下による体調不良というわけではなく、目まぐるしく変化する旬の食べものを最も美味しいタイミングでお腹いっぱい味わっておかないと、といった具合なので至って元気です。

さて、前回の日記に引き続き、晩夏に見られる生き物をご紹介しようと考えていたのですが、撮影日和を待つうちに伊豆半島の長い夏は終わりを迎えたようで、夕暮れ時には秋の声が静かに響き始めました。

今回からは、不要不急の外出を自粛している生き物好きのみなさんのために、巡視(国立公園を構成する施設の点検や利用状況の把握等を行う業務)の際に見かけた"秋の"昆虫たちをタイムリーにご紹介します。

まずはこちら、げじげじ眉毛やちょび髭のように見える黒班が特徴的な「マユタテアカネ」です。

【マユタテアカネ】

そのビジュアルに親近感を覚えざるを得ないマユタテアカネ。撮影時にはアキアカネやミヤマアカネが周囲を飛び回っていましたが、吸い寄せられるようにマユタテアカネだけにカメラを向けていました。

下田管理官事務所が管轄する伊豆半島地域でこそ普通種ですが、他のアカネ属と同様に湿地環境の悪化に極端に弱く、富士箱根伊豆国立公園の箱根地域(神奈川県)ではレッドリストの指定を受けるほど個体密度が低下しています。

そのため、最近ではマユタテアカネやアキアカネ等の止水性種の生息環境を保全するための試みが全国的に広がりを見せており、一部の地域ではそれらの個体数がやや回復傾向にあるようです。

ちなみに、「富士山がある風景100選」に選定された伊豆半島地域の「石部棚田」も例に漏れず、水田を利用する生物の保全に力を入れています。とても興味深い取り組みですが、それらの事例についてはまた別の機会にゆっくりとご説明できればと思います。

伊豆半島では、水田や湿地、池沼等を中心に11月下旬頃まで観察することができます。

続いて、なんだか白いごはんが食べたくなる名前の「シオカラトンボ」です。

【シオカラトンボ】

雄は成熟すると腹部に厚く白粉を吹くことからその名が付いたシオカラトンボ。トンボといえば真っ先に本種が連想されるほど、みなさんにとって馴染みの深いトンボではないでしょうか。

さて、「夏によく見るけれど、秋の昆虫として紹介するの?」と疑問を感じた方も多いと思います。しかし、名前の由来となった青白く成熟した個体が最も多く観察できるのはこの季節なのです。意外に思われるかもしれませんが、未成熟の雄の体色は雌と同じく黄褐色です(希に成熟した雄のような体色をもつ雄型雌も見られます。そのような個体では副性器の有無や尾部付属器の形態等による雌雄の判別が可能です)

ちなみに、よく似た種類にコフキトンボやオオシオカラトンボ、シオヤトンボ等がいます。私は静止した状態でないと同定(生き物の種類を特定すること)ができませんが、陸上昆虫類等の調査に従事されているトンボ屋さんの多くは、周囲の環境や飛び方、草木へのとまりかた等の特徴から遠目でもある程度の判断が付くとのことです。

伊豆半島では、河川のワンドや池沼等の止水域を中心に12月中旬頃まで観察することができます。

今回は、秋の季節に富士箱根伊豆国立公園伊豆半島地域にて観察できるトンボ科の昆虫のうち、最も普通に見られる「マユタテアカネ」と「シオカラトンボ」についてご紹介しました。

この日記を通じて伊豆半島の秋や生き物たちの魅力を感じて頂ければうれしく思います。

次回も伊豆半島で出会った昆虫たちを紹介します!塩辛にはごはん派の方も日本酒派の方もお楽しみに!

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2021年08月26日伊豆半島で出会える夏の昆虫たち -アゲハチョウ科編 ②-

富士箱根伊豆国立公園 下田 齋田滉大

みなさん、こんにちは。線香花火の玉を落とさないことに定評のある齋田です。

そんなに集中してじっと動かずにいるのが楽しいのかと聞かれると、それはちょっと答えづらいです。

さて、伊豆半島の長い夏も終盤に差し掛かり、国立公園内では動植物が観察しやすい季節となりました。

山や河川、草原や湿地、どこへ行っても生き物たちと出会うことのできる、自然観察にはもってこいの季節ではありますが、コロナ禍が続くなか泣く泣く外出を自粛している方も多いのではないでしょうか?

そんな生き物好きのみなさんに伊豆半島の夏の雰囲気をお伝えするべく、前回の日記に引き続き、巡視(国立公園を構成する施設の点検や利用状況の把握等を行う業務)の際に見かけた昆虫たちをご紹介します。

まずはこちら、どことなくスポーティな印象を受ける「アオスジアゲハ」です。

【アオスジアゲハ】

名前の由来となった水色の帯が可愛らしいアオスジアゲハ。細かい動きで俊敏に飛ぶため、めったに写真を撮らせてくれません。この日は機嫌が良いのか数秒ほどのシャッターチャンスを貰うことができました。

幼虫はクスノキ科の植物を食べて育つため、都市部のみなさんは公園や街路樹にて見かけることがほとんどかと思いますが、本来の生息地は平地から低山地等の照葉樹林とされています。

雄は吸水性が強く、降雨後に雨水が地面を流れる箇所や温泉水が流れ込む河原周辺にて集団吸水を観察することができます。アゲハチョウ科の雄にとってナトリウム塩の摂取が配偶行動に重要な役割を持つことは有名ですが、吸水行動によって得られたアンモニアを窒素源として筋肉や精子の生産に役立てていることを証明する論文もあるようです。興味のある方は、オープンアクセスの文献等で調べてみると面白いかと思います。

照葉樹林が多く見られる伊豆半島では、低山地を中心に広いエリアにて観察することができます。

続いて、あまりの大きさに画角からはみ出してしまう「モンキアゲハ」です。

【モンキアゲハ】

その名の通り、黄白色の斑紋が特徴的なモンキアゲハ。夏型の雌は特に大きく、日本最大級のチョウと言われています。元々は南方系の種類ですが、最近は関東・北陸地方にも生息域を広げているようです。

千葉県に長く住んでいた私にとって、伊豆半島で暮らし始めるまではあまり馴染みのないチョウでした。その大きさにまだ慣れていないせいか、写真に撮るといつもどこかがはみ出してしまいます。

幼虫はカラスザンショウやミカン類といったミカン科の植物を食べて育ち、成虫はウツギ類やヒガンバナ等を中心に様々な花を訪れます。

成虫の活動期は他のアゲハチョウよりもやや長く、羽化は9月の中旬頃まで断続的に見られます。しかし、どういうわけか夏の終わりに出会うモンキアゲハは写真のようにスレていることが多い印象です。羽化のタイミングによって成虫の発生個体数や生存率等が異なるのでしょうか。羽化直後に見られる傷一つ無い姿も美しいのですが、過酷な野生下を生き抜いた証である痛んだ翅にはそれとは違った美しさを感じますね。

栽培ミカン類が豊富な伊豆半島では、人家や農地を中心に広いエリアにて観察することができます。

今回は、夏の季節に富士箱根伊豆国立公園にて観察できるアゲハチョウ科の昆虫のうち、撮影に協力してくれた「アオスジアゲハ」と「モンキアゲハ」についてご紹介しました。この他にも、カラスアゲハやキアゲハ等が多く見られるのですが、彼らについてはまた別の機会に解説できればと思います。

緊急事態宣言の対象区域が拡大され、地域によっては一層の外出自粛が呼びかけられていますが、この日記を通じて少しでも伊豆半島の夏を感じて頂ければうれしいです。

次回も伊豆半島で出会った昆虫たちを紹介します!虫好きの方もそうでない方もお楽しみに!

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2021年08月18日伊豆半島で出会える夏の昆虫たち -アゲハチョウ科編 ①-

富士箱根伊豆国立公園 下田 齋田滉大

みなさん、こんにちは。どういうわけかパクチーにはまっているパクチニストの齋田です。

最近は通勤中に出会うキアゲハたちにただならない親近感を覚えてしまい、まあまあ困惑しています。

さて、伊豆半島の夏も後半戦に差し掛かり、国立公園内では多くの動植物が観察できる季節となりました。

山や河川、草原や湿地、どこへ行っても生き物たちと出会うことのできる、自然観察にはもってこいの季節ではありますが、コロナ禍が続くなか泣く泣く外出を自粛している方も多いのではないでしょうか?

そんな生き物好きのみなさんに伊豆半島の夏の雰囲気をお伝えするべく、前回の日記に引き続き、巡視(国立公園を構成する施設の点検や利用状況の把握等を行う業務)の際に見かけた昆虫たちをご紹介します。

まずはこちら、アゲハチョウ科といえばこのチョウ「ナミアゲハ」です。

【ナミアゲハ】

翅脈に沿った黒色模様がオシャレなナミアゲハ。名前の「ナミ(並)」の通り、最も普通に見られる種類です。

幼虫はミカン科の植物を食べて育ち、成虫はアザミ類やヤブガラシ等を中心に様々な花を訪れます。

人家の庭木等やベランダでも見られることが多く、都市部のみなさんにも馴染みの深いチョウだと思います。

楽曲のタイトルや歌詞、小説の題材、俳句の季語等、夏の象徴として扱われることの多いナミアゲハ(揚羽蝶)ですが、夏と呼ぶにはまだ早い3~4月頃にも発生し、それぞれ「春型」・「夏型」と区別されます。季節型によって体サイズや模様が若干異なるため、写真を撮って見比べてみるのも面白いかもしれません。

伊豆半島では、人家や農地を中心に海岸部から低山地までの広いエリアにて観察することができます。

続いて、ゆらゆらと妖しく踊る「ジャコウアゲハ」です。

【ジャコウアゲハ】

黒いレースのような翅が美しいジャコウアゲハ。雄成虫の腹端から発生する匂いが麝香(じゃこう)に似ているため、その名が付きました。

幼虫は毒草として有名なウマノスズクサやオオバウマノスズクサといったウマノスズクサ科の植物を食べて育ちます。これらの植物はアルカロイド系のアリストロキア酸によって昆虫たちによる食害から身を守っていますが、なんとジャコウアゲハの幼虫には通用しません。それどころか、幼虫はウマノスズクサ科の有毒成分を積極的に体内に取り入れ、天敵からの防御に利用しているのです。

ちなみに、ジャコウアゲハによく似た種類にクロアゲハやオナガアゲハ等がいますが、いずれも無毒です。面白いことに、彼らは有毒であるジャコウアゲハに姿形を似せることで身を守っているようです。このような擬態様式はベイツ型擬態と呼ばれ、アゲハチョウ科の仲間ではベニモンアゲハ(有毒)に擬態するシロオビアゲハ(無毒)が有名です。

伊豆半島では、ウマノスズクサ科が生育する農地や樹林地にてスポット的に観察することができます。薄暗い林縁部を優雅に舞う姿はドレスを纏った魔女のようで、出会うと不思議な気分にさせられますよ。

今回は、夏の季節に富士箱根伊豆国立公園にて観察できるアゲハチョウ科の昆虫のうち、撮影に協力してくれた「ナミアゲハ」と「ジャコウアゲハ」についてご紹介しました。

食害を防ぐために毒を持つウマノスズクサ、ウマノスズクサの毒を体内に蓄積させることで捕食者から身を守るジャコウアゲハ、ジャコウアゲハに姿を似せることで天敵を欺くクロアゲハ。生き物たちの世界はとても興味深く、知れば知るほど面白いですね。

今週より緊急事態宣言の対象区域が拡大され、一層の外出自粛が呼びかけられていますが、この日記を通じて伊豆半島の夏やそこで暮らす生き物たちの魅力を感じて頂ければうれしく思います。

次回も伊豆半島で出会った昆虫たちをご紹介します!虫好きの方もそうでない方もお楽しみに!

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2021年08月13日伊豆半島で出会える夏の昆虫たち -カワトンボ科編-

富士箱根伊豆国立公園 下田 齋田滉大

みなさん、こんにちは。私が作った竹とんぼだけ上手く飛ばない齋田です。

さて、伊豆半島の夏も後半戦に差し掛かり、国立公園内では多くの動植物が観察できる季節となりました。

山や河川、草原や湿地、どこへ行っても生き物たちと出会うことのできる、自然観察にはもってこいの季節ではありますが、コロナ禍が続くなか泣く泣く外出を自粛している方も多いのではないでしょうか?

そんな生き物好きのみなさんに伊豆半島の夏の雰囲気をお伝えするべく、前回の日記に引き続き、巡視(国立公園を構成する施設の点検や利用状況の把握等を行う業務)の際に見かけた昆虫たちをご紹介します。

まずはこちら、河津七滝から浄蓮の滝を結ぶ踊子歩道で出会った「ミヤマカワトンボ」です。

【ミヤマカワトンボ】

写真ではとても小さく見えてしまいますが、腹長60mm前後と大きく(みなさんが都市部で見かけるハグロトンボは45mm前後)、カワトンボ科の中では世界でも屈指の大きさを誇るトンボです。

後翅の濃い褐色帯や体サイズ等の特徴から、遠目でも識別しやすく、比較的覚えやすい種類かと思います。

富士箱根伊豆国立公園では、山地の樹林に囲まれた渓流を中心に多くのエリアにて観察することができます。

初めて出会う方は、腹部を碧く光らせながら渓流沿いを優雅に飛ぶ姿に思わず見とれてしまうことでしょう。

続いて、こちらも同じく踊子歩道で出会った「アサヒナカワトンボ」です。

【アサヒナカワトンボ(伊豆個体群)】

写真を見て「ニホンカワトンボに見えるけど?アサヒナカワトンボの色とはちょっと違うよなあ」と思ったみなさんは流石です。そこそこのトンボ好きですね。

たしかにニホンカワトンボの橙色翅型に酷似していますが、残念ながら伊豆半島には生息していません。

ちなみに、アサヒナカワトンボとニホンカワトンボの間では両者の中間的特徴を持つ種間雑種が知られていますが、文献によると伊豆(単独生息域)個体群はニホンカワトンボとの雑種由来集団と考えられているようです。

さて、気になる見分け方ですが、アサヒナカワトンボの胸部はニホンカワトンボのそれよりもわずかに小さいらしく、一般的には「頭でっかち(頭部が相対的に大きく見える)がアサヒナ」と言われています。トンボ屋の友人に貰った様々な写真を見比べましたが、私はあまりピンときませんでした。

富士箱根伊豆国立公園では、踊子歩道や伊豆山稜線歩道等の渓流や細流にて観察することができます。

今回は、夏の季節に富士箱根伊豆国立公園にて観察できるカワトンボ科の昆虫のうち、代表的な2種について紹介しました。

先週よりまん延防止等重点措置の実施区域が拡大され、地域によっては一層の外出自粛が呼びかけられていますが、この日記を通じて少しでも伊豆半島の夏を感じて頂ければうれしく思います。

次回も伊豆半島で出会った昆虫たちを紹介します!虫好きの方もそうでない方もお楽しみに!

※外出の際には、咳エチケットの徹底やソーシャルディスタンスの確保等の基本的な感染症対策に努めましょう。また、各自治体のガイドライン等によく目を通し、責任ある行動を心掛けましょう。

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2021年08月06日伊豆半島で出会える夏の昆虫たち -カミキリムシ科編-

富士箱根伊豆国立公園 下田 齋田滉大

みなさん、こんにちは。仰向けに転がった蝉が突如として動き出すとびっくりする齋田です。

巷ではこの現象を「セミファイナル」と呼ぶそうですね。半ば/蝉「semi」と最後「final」を掛けた言葉遊びでしょうか。

さて、伊豆半島の夏も後半戦に差し掛かり、国立公園内では多くの動植物が観察できる季節となりました。

自然観察にはもってこいの季節ではありますが、コロナ禍が続くなか、外出を自粛している方も多いのではないでしょうか?

今回の日記では、みなさんに伊豆半島の夏を感じて頂ければと、巡視(国立公園を構成する施設の点検や利用状況の把握等を行う業務)の際に見かけた昆虫たちをご紹介します。

まずはこちら、バームクーヘンでおなじみの恵比須島にて出会った「ホシベニカミキリ」です。

【ホシベニカミキリ】

関東以西の温暖な地域で見られる南方系のカミキリムシ。どことなく南国チックな風貌をしていますね。

富士箱根伊豆国立公園では、海岸線付近の極相林やその周辺にて観察することができます。

真っ赤なボディにアシンメトリーの黒斑を持つオシャレさんですが、防潮林として植えられたタブノキを食べてしまうやっかいものとしても知られています。

続いて、河津七滝を通る踊子歩道にて出会った「シロスジカミキリ」です。

【シロスジカミキリ】

山間部で見られる大型のカミキリムシ。人差し指と比較すると大きさがイメージできるかと思います。

その圧倒的な体サイズからなる迫力もさることながら、筆で描いたような白い模様に目が引かれますね。

富士箱根伊豆国立公園では、クリやコナラの二次林を中心に多くのエリアで観察することができます。

「カブトムシを探しに行ったらでっかいカミキリムシを見かけた」という場合は本種であることが多いです。

今回の日記では、夏の季節に富士箱根伊豆国立公園にて観察できるカミキリムシ科の昆虫のうち、代表的な2種について紹介しました。

伊豆半島の豊かな自然の中では、このほかにもさまざまな生き物たちと出会うことができます。

「夏の生き物といえば昆虫でしょ!」という声が聞こえた気がするので、しばらくは伊豆半島で出会った昆虫たちにスポットを当てた内容をお届けします。

不要不急の外出自粛が呼びかけられているなか、みなさんにはこの日記を通じて少しでも富士箱根伊豆国立公園の夏を感じて頂ければうれしく思います。

※外出の際には、咳エチケットの徹底やソーシャルディスタンスの確保等の基本的な感染症対策に努めましょう。また、各自治体のガイドライン等によく目を通し、責任ある行動を心掛けましょう。

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2021年06月30日今年も満開でした!「梅雨の下田公園」

富士箱根伊豆国立公園 下田 齋田滉大

みなさん、こんにちは。折りたたみ傘の骨組みに髪をひっぱられがちな齋田です。

ここしばらくはどんよりと灰色の雲に覆われた空模様が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。

さて、伊豆半島南部では、そんな憂鬱な天気を忘れさせるかのような色鮮やかなあじさいが咲き誇りました。

アクティブ・レンジャー日記をご覧のみなさんは、不要不急の外出を自粛している方がほとんどかと思いますので、写真から梅雨の季節の楽しい側面を感じて頂ければ嬉しいです。

こちらの写真は、伊豆半島では定番のあじさいスポット「下田公園」の6月上旬の様子です。

下田公園は、北条氏が水軍の拠点とした下田城の障子掘を間近にみることができる数少ない城址として日本史好きには堪らない閑静な公園ですが、梅雨の時期には雰囲気が一変します。今年も敷地全体が鮮やかなあじさいに包まれました。

  

【下田公園のあじさい】

下田公園内のフォトスポットやあじさいの開花時期等については、昨年の日記『自然の万華鏡?「梅雨の下田公園」』をご覧下さい。

富士箱根伊豆国立公園伊豆半島地域に安心してお越し頂ける日常が戻ることを、心より願っています。

※外出の際には、咳エチケットの徹底やソーシャルディスタンスの確保等の基本的な感染症対策に努めましょう。また、都道府県内の移動においても各自治体のガイドライン等によく目を通し、責任ある行動を心掛けましょう。

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2021年03月31日伊豆半島のジオサイトを紹介します! 第3弾

富士箱根伊豆国立公園 下田 齋田滉大

みなさん、こんにちは。お花見の席ではやたらとシャッターを頼まれる齋田です。

最近はお子さんを笑顔にさせる技術とペットをカメラ目線にさせる技術だけが向上しています。

さて、少々日が空いてしまいましたが、これまでの日記に引き続き、富士箱根伊豆国立公園伊豆半島地域で見られるジオサイトをご紹介します!

■伊豆の秘境「入間千畳敷」(静岡県南伊豆町)

伊豆半島のほぼ先端部「入間(いるま)」に位置する入間千畳敷へは、入間海岸から「南伊豆歩道(吉田~入間コース)」を50分程歩くと辿り着くことが出来ます。

ちなみに、コースの入口となる入間海岸へは、最寄り駅となる伊豆急下田駅からバスに揺られること45分。バス停「入間」にて下車後、入間集落へ通じる山道を40分程歩くと到着します。

そのアクセスの困難さが物語るように、入間はまさに伊豆の秘境。大自然に囲まれた海岸からトレッキングスタートです!

コース前半には薄暗い照葉樹の森を通過しますが、遊歩道には案内標識が設置されているため、道に迷う心配はありません。林内の一本道をひたすらにもくもくと進みます。

うっそうとした森を抜けると、しだいに視界が開けていき、崖沿いを這うように整備された道が現れます。

ここまで来ると千畳敷はもう目前です。眼下に広がる海の碧を楽しみながら複雑な海岸線を進みましょう。

道中では海底火山の噴出物によって形成された火山灰の地層を見ることが出来ます。

【海岸沿いの遊歩道】

海岸線の斜面をどんどん下り、波打ち際を抜けると、いよいよ千畳敷に到着です。

なんというスケールでしょう!海岸にせり出した広い台地は畳が千畳以上も敷ける程の広さがあります。

(例によって写真からサイズ感が伝わりづらくすみません...)

海底火山時代の後に隆起と浸食を繰り返し、長い年月を経てこのような平らな岩のテラスとなりました。

【入間千畳敷】

さて、千畳敷を観察すると、古代遺跡のように規則的な凸凹がいたるところに見受けられます。

これらは全て採石の跡です。海岸沿いに「石切場跡」が多く残る伊豆半島ですが、こちらの入間千畳敷も例に漏れず、やわらかく加工しやすい「伊豆石」が盛んに切り出されました。

採石された伊豆石は、城を築城する際の石垣や倉庫、建物の基礎として昭和の初め頃まで出荷され、入間地区の小学校の通学路を作るためにも使用されました。

【石切場跡】

足元に向けていた視線を東に見上げると、薄い層が幾重にも連なった大きな山のようなものがそびえ立ちます。

こちらは三ツ石岬です。断崖の中央部に走る白い地層と緑色の植生とのコントラストが印象的ですね。

写真をよく見ると、白い縞模様の地層を断ち切るように上下にのびる黒い箇所が確認できるかと思います。

これらは「岩脈」と呼ばれ、火山灰の地層をマグマが貫入して固まったものです。

【三ツ石岬】

富士箱根伊豆国立公園伊豆半島地域で見られるジオサイト「入間千畳敷」では、伊豆半島南部を代表する様々な地層や地形を見ることが出来ます。

こちらの日記では紹介しきれない魅力もたくさんありますので、是非一度現地に足を運んでみて下さい。

大潮の干潮時にはタイドプールで磯の生物観察も楽しめますよ!生き物好きにはこちらもおすすめです。

※外出の際には、咳エチケットの徹底やソーシャルディスタンスの確保等の基本的な感染症対策に努めましょう。また、都道府県内の移動においても、各自治体のガイドライン等によく目を通し、責任ある行動を心掛けましょう。

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