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アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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尾瀬国立公園 檜枝岐

20件の記事があります。

2021年12月03日尾瀬でホッと一息、道行沢

尾瀬国立公園 前川公彦

みなさん、こんにちは。

檜枝岐自然保護官事務所の前川です。

尾瀬には400年も前から利用されてきた古道が残っています。この古道は檜枝岐では沼田街道と呼ばれ、かつては会津と上州を結び、馬に荷物を載せて運んだ交易路でした。戊辰戦争の時には新政府軍をむかえ撃つため、300名もの会津藩士がこの街道を通って、群馬県の戸倉まで進軍し、交戦したということです。夏は沼山峠まで車で入ることができたので歩く機会がなかったのですが、シャトルバスも冬期休業に入りましたので、沼山峠から檜枝岐村の外れにある七入まで歩いてみました。

沼田街道は沼山峠から車道と別れ、森の中に入っていきました。長く街道として使われてきただけあって人が通るには十分に広く、草や石などの障害物もなくて歩きやすい道です。斜面に設置された木道は苔むしていました。

道行沢の入口 苔むした木道 

 道行沢の入口                    苔むした木道

歩き始めてすぐに抱返ノ滝(だきかえりのたき)に出会いました。今の時期の水量はあまり多くないのですが、それでも落差25mの高さから落ちている滝は壮観でした。抱返ノ滝から落ちた水を集めて小川が流れ始めました、これが道行沢(みちぎさわ)です。簡単にまたげそうな川幅の小さな流れで、森の中をゆるやかに流れていました。この時期は落葉のために森の中は見通しがきき、林床は川縁まで枯れ葉で覆い尽くされています。沼田街道は道行沢の脇に作られているので、水辺に降り立って沢の水を手に触れることができます。

抱返ノ滝  道行沢の流れ

 抱返ノ滝                     道行沢の流れ

沼田街道は道行沢に沿って、つかず離れずに下っていきました。たまに沢を横切るための橋が架かっていましたが、古くてどっしりした造りで、道標も親切でした。あとで村の人に聞いたところ、「さんばんきょう」と読むとのことでした。道行沢は小さな流れですが、途中で覆水することもなく流れが続いていて、沢を維持している森の豊かさを感じさせます。

道行沢にかかる三番橋とと道標

 道行沢にかかる三番橋と道標

尾瀬檜枝岐温泉観光協会が出している「巨木MAP」というパンフレットがあります(片品村でも大清水から市ノ瀬までの旧道の巨木MAPについて現在作成中です)。そこには沼山峠から七入までの沼田街道沿いで見られる巨木が地図上に示され、1本ずつの樹種や直径、樹高について書かれています。このパンフレット1枚あれば、沼山峠から七入までの沼田街道を迷うことなく歩けるばかりでなく、38本もの巨木についての情報を得ることができますので、もし道行沢を歩かれる場合はご持参していただくことをお勧めします。

巨木マップの表紙 巨木マップの内容

 巨木MAPの表紙と内容(尾瀬檜枝岐温泉観光協会発行)

下の写真は第31番目のブナの巨木です。巨木の番号は沼山峠側から順に1番から38番まで振られているので、もうだいぶ下まで降ってきたことになります。この付近はブナ平という地名の場所があるくらいブナの多い場所ですが、ひときわ大きさが目立つブナでした。静かな森の中を歩いていると、次々と出会う巨木には重みが感じられ、自然の中にいる自分の心が軽やかになります。

第31番目の巨木ブナ  巨木の標識

 第31番目の巨木ブナ                   巨木の標識

道行沢最後の橋に着きました。道行沢は相変わらず緩やかに流れています。川辺にはある程度の大きさの石もありますが、全体が箱庭のような「優しい」感じを受け、道行沢を歩く時の安心感を生み出しているように思いました。今まで檜枝岐で道行沢という名前は何度か聞いたことがあったのですが、それを語る人はきっとこのような風景を思い描きながら口にしていたのだろうなと思いました。大切なのは知識ではなく、実際に自分で行ってみて感じることです。

道行沢最後の橋 ブナ林の終わり 

 道行沢最後の橋                   ブナ林の終わり

歩いている途中、真っ黒な物質が落ちていました。最初はクマのフンかなと思ったのですが、良く見ると落ち葉の間からたまたま顔を出していた土でした。ただ、クマのフンと間違えるほど真っ黒な土で、良くは分かりませんが、この道行沢流域が大変豊かな土壌であることの証拠かなと思いました。森から出ると晴れやかな秋空が広がっていました。

落ち葉の下の土の色 森から出て見た秋の空 

 落ち葉の下の土の色                  森から出て見た秋の空

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2021年11月04日尾瀬の冬支度

尾瀬国立公園 檜枝岐 前川公彦

みなさん、こんにちは。

檜枝岐自然保護官事務所の前川です。

前回、尾瀬の秋を紹介したばかりですが、尾瀬の冬の訪れは急でした。

地元檜枝岐では、先週の荒天で「山は雪だな」と話していたのですが、実際裏燧林道に行ってみると重い雪が積もっていました。この時期の木道ではスリップの可能性があります。特に木道上の雪が溶けた上にうっすらと積雪があったり、前の人の足跡に水分が滲んできているような状態は本当に滑りやすいです。経験のある方に聞いても、万全な対策は難しく、やはり最後は自分で滑らないように気を付けて歩くしかないということでした。いつものように裏燧大橋を通ろうとすると、両端の手すりが積雪対策のために取り外されており、少し怖い思いをしながら何とか渡り終えました。今の雪は半分みぞれ状態で、頭上の木からは時折、大量の水分を含んだ雪の塊の直撃を受けることがあるので注意が必要です。

初雪に覆われた裏燧林道 手すりが撤去された裏燧大橋

 初雪に覆われた裏燧林道  手すりが撤去された裏燧大橋

標高約1500mの御池から裏燧林道を通って、標高約1400mの見晴に出ると積雪量はかなり減り、草紅葉が表面に出ている状態になりました。この寒い中でもボランティアガイドによる自然観察会が開催され、数人の熱心な参加者がガイドの説明に聞き入っていました。翌朝は良く晴れましたので、スリップの起こりやすい木道上の除雪作業を行ってから桟木(サンギ)打ちを行いました。「桟木」というのは一般には屋根に瓦を引っかけるために使われている細長い木材のことを言いますが、尾瀬で桟木といえば木道でのスリップ防止のために設置する細長い木材を指します。写真で黒い木道に設置されている黄茶色の細長い木片が桟木です。歩行者は木道上でスリップしても、桟木に靴底が引っかかって止まるので、転倒などの事故の発生を減らすことができます。

ボランティアの自然解説に聞き入る参加者 木道上に等間隔に設置された桟木

ボランティアの自然解説に聞き入る参加者 木道上に等間隔に設置された桟木

桟木打ちが終わってから、来たのと同じ裏燧林道を引き返して御池に戻りました。天気が一転して晴天が広がり、気持ち良く裏燧林道を歩くことができました。樹木に積もった雪が落ち、雪の白さと空の青さの間で緑が映えています。小さな池塘では結氷が始まり、細かな氷片が水面を覆っていました。感触を確かめたくて、思わず水面に触れてしまいました。

白と青と緑と 細かな氷片に覆われた小さな池塘

白と青と緑と  細かな氷片に覆われた小さな池塘

尾瀬ではほとんどの山小屋が10月中に営業を終えます。今年開所した環境省の尾瀬沼新ビジターセンターも10月末で業務を終了しますので、施設の管理運営を委託している尾瀬保護財団や業者の方と閉所作業の準備を行ってきました。最初に手がけたのは、現在ビジターセンター職員の宿泊施設として利用されている旧ビジターセンターの雪囲いです。積雪の圧力で窓ガラスなどが破損しないように、窓枠周辺を木の板で囲みました。次に沼の湖岸に設置してある展望デッキは転落防止用の柱やロープを外して、積雪時の破損を防ぎました。最後に新ビジターセンターの正面を除いて雪囲いを行い、3~4mにもなる積雪から建物を守るための補強柱を立てていきました。乾燥や雪の圧力で曲がったりしている雪囲い板もありますので、どうしてもうまく入らない場合はノコなどで加工しました。これで本日の作業は終了しました。本日で閉所作業を終えた尾瀬沼ヒュッテの方達が目の前を通り過ぎ、「ご苦労さん」、「お世話になりました」、「来年もよろしく」とお互いに声を掛け合いました。

閉所作業を終えた旧ビジターセンター 柱やロープを外した展望デッキ

 閉所作業を終えた旧ビジターセンター  柱やロープを外した展望デッキ

閉所作業中の新ビジターセンター正面 閉所作業を終えた尾瀬沼ヒュッテ

 閉所作業中の新ビジターセンター正面  閉所作業を終えた尾瀬沼ヒュッテ

このように尾瀬では冬を迎える準備が着々と進められていますが、標高1660mの尾瀬沼と比べると檜枝岐事務所の標高は930mですので、本格的な冬の訪れはもう少し先のようです。

事務所の窓から見える風景 

事務所の窓から見える風景

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2021年10月18日尾瀬の秋

尾瀬国立公園 前川公彦

みなさん、こんにちは。

檜枝岐自然保護官事務所の前川です。

10月に入り、尾瀬が色づき始めました。福島側から尾瀬に入る場合、一般車の入れる御池からのルートと御池からシャトルバスでしか入れない沼山峠からのルートの2つがあります。今回は御池から裏燧林道を通って尾瀬ヶ原(見晴)に至るルートで見つけた尾瀬の秋を紹介します。御池から裏燧林道を通って尾瀬ヶ原までは約9キロメートル、約4時間の道のりです。裏燧林道はその名の通り燧ヶ岳の裏側(北側)を通るルートで、林道とはいっても車の通れない登山道ですが、木道も設置されているので、その上を歩くことができます。林道はオオシラビソなどの針葉樹やブナなどの広葉樹の針広混交樹林内を歩くことになりますが、それほど密生していないので、明るい林内を快適に歩くことができます。

色とりどりの紅葉 ひときわ目立つ鮮やかな赤

 色とりどりの紅葉             ひときわ目立つ鮮やかな赤

さて、木道は晴れて乾燥している時には歩きやすいのですが、雨の後など濡れている時には大変滑りやすいので注意が必要です。私もこれまで何度か木道上で滑ったことがありますが、木道で滑って怪我をする人もいます。裏燧林道はいくつかの沢を越えて行きますが、大変太くて立派な木材を使用した贅沢な橋もかかっています。湿った岩や木の肌にはたくさんのミズゴケを見ることができ、尾瀬が多湿な場所であることを実感します。一見草原のように見える尾瀬ヶ原にはたくさんの池塘や小川が存在するだけではなく、一歩木道から外れればずぶずぶと靴が埋まってしまうような湿地になっています。まだ木道が作られていない頃に尾瀬の美しさに心を奪われた人たちは、腰まで泥に浸かって湿原を移動したと言われています。ミズバショウに代表されるように尾瀬のキーワードは沼、(高層)湿原、池塘といった水に関係するものです。尾瀬にはきっと日本人の心を潤してくれる「水分」が存在するのではないかと思います。

明るいブナ林を通る裏燧林道  堂々としたブナの巨木

 明るいブナ林を通る裏燧林道            堂々としたブナの巨木

小川にかかる木製の橋 岩の上に密生するミズゴケ

 小川にかかる木製の橋              岩の上に密生するコケ

尾瀬ヶ原に出ると視界が急に開け、一面の草紅葉が広がっています。草紅葉というのは草原に生える草類が赤や黄色に色づく様を言いますが、樹木の紅葉より少し早く出現するようです。イネ科植物では、葉の周辺部から紅葉が始まるので、色合いが複雑で地味な感じを受けますが、その分味わいがあるように感じます。

草紅葉の尾瀬ヶ原から至仏山を望む 逆光の中で黄金色に輝くイネ科植物

 草紅葉の尾瀬ヶ原から至仏山を望む      逆行の中で黄金色に輝くイネ科植物

早朝には霧で覆われていた尾瀬ヶ原も、午後になると傾いた太陽の下で草紅葉は黄金色に輝き、歩荷が一人静かに通り過ぎて行きました。

早朝の尾瀬ヶ原 尾瀬ヶ原を歩く歩荷

 早朝の尾瀬ヶ原                 尾瀬ヶ原を歩く歩荷

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2021年08月25日檜枝岐歌舞伎

尾瀬国立公園 前川公彦

みなさん、こんにちは。

檜枝岐自然保護官事務所の前川です。

尾瀬というと湿原や花々、近隣の山といった自然を思い浮かべる人が多いのではないかと思いますが、かつて秘境と言われた檜枝岐には独自の文化が残されています。

檜枝岐には古典芸能として有名な檜枝岐歌舞伎があります。歌舞伎は春と夏の2回、村人の手により村人のために行われています。なぜこの時期に行われているのかというと、それには村人のかつての生活と深くつながる理由があります。

檜枝岐村全景 檜枝岐の舞台(奥)と歌舞伎伝承館(右)

 檜枝岐村全景                    檜枝岐の舞台(奥の茅葺き)と歌舞伎伝承館(右)

(写真をクリックすると拡大します)

標高が900m以上あり、平地の少ない谷間にある檜枝岐では昔から全戸で近隣の場所に出作り小屋を持っていて、夏の間はそこに泊まり込んでソバやジャガイモなどの農業、養蚕、イワナやサンショウウオ獲り、さらには杓子(しゃくし)ぶちと言って木を削ってヘラやシャクシを作っていました。

雪が溶けた5月に愛宕神社の祭礼があり、それが済むと村人はみな出作り小屋に向かいました。また、出作り小屋で仕事をしている間もお盆の間は休養のため、みな帰村していたそうです。今では村の主な産業は観光へと変わったため、出作り小屋もほとんど残っていませんが、かつての習慣は今でも受け継がれ、毎年5月12日と8月18日には村人全体の楽しみとして歌舞伎が開催されてきました。

出作り小屋(現在は使われていません) 歌舞伎伝承館の内部

 出作り小屋(現在は使われていません)           歌舞伎伝承館の内部

観客席上段に鎮座する「鎮守神」 檜枝岐村で作られた杓子

 観客席の上段に鎮座する「鎮守神」             檜枝岐村で作られた杓子

檜枝岐歌舞伎は寛政・文化の頃、上方歌舞伎から習い覚えたと伝えられています。貴重な無形文化財ですが、上演されるのは上方歌舞伎の古典調のものが主体です。東京などで演じられている有名人による洗練された歌舞伎とはおもむきが違いますが、通常は他に仕事を持つ村人が伝承された歌舞伎を演じることに価値があり、歌舞伎上演の日を何より楽しみにしているという村人がたくさんいます。歌舞伎というと年配の方が見るものというイメージがありますが、檜枝岐ではたくさんの若い人や子供たちが見に来ます。

観客席から檜枝岐の舞台を見下ろす 春の歌舞伎上演時の様子(2021.5.12)

  観客席から檜枝岐の舞台を見下ろす         春の歌舞伎上演時の様子(2021.5.12)

歌舞伎が演じられるのは愛宕神社の境内にある茅葺きの地芝居小屋で、これを見下ろすように作られている観客席は古代ローマのコロセウムを思い起こすような造りになっています。夜間、ライトに照らされて浮かび上がる舞台上演時の雰囲気は決して銀座の歌舞伎座に劣るものではなく、これまで歌舞伎に縁遠かった私ですら強く惹きつけられるものを感じました。今回はコロナのため、無観客での上演となってしまいましたが、檜枝岐歌舞伎はこれからも村民のためにずっと続いていくものと思います。

春の歌舞伎上演時の様子 春の歌舞伎上演時の様子(2021.5.12)

         春の歌舞伎上演時の様子(2021.5.21)

さて、2018年に尾瀬国立公園協議会が策定した「新・尾瀬ビジョン」はこれからの尾瀬がめざす姿を示したものです。尾瀬国立公園協議会は尾瀬に関係する地域事業者(山小屋、交通、ガイド、ボランティアなど)や行政(国、県、市町村)で組織され、尾瀬国立公園のあるべき姿について3年間をかけて協議してきたもので、いわば尾瀬関係者の総意を表現したものと言えます。尾瀬がめざす姿は「みんなに愛され続ける尾瀬」であり、それを実現するための行動理念が3つあげられています。

  1. みんなの尾瀬

  2. みんなで守る

  3. みんなで楽しむ

新・尾瀬ビジョン表紙 「みんなで守る」について 

 新・尾瀬ビジョン表紙                「みんなで守る」について

このうち「みんなで守る」についての視点2では、"地域に息づいた歴史・伝統・文化は、地域に対する愛着を深める大切な資源であるため、その価値を再認識しながら、しっかりと後世に受け継いでいきます"と述べられています。今回ご紹介した檜枝岐歌舞伎も檜枝岐だけでなく、尾瀬にとっても非常に重要な存在だと思いました。

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2021年08月04日尾瀬沼に新ビジターセンターがオープンしました

尾瀬国立公園 前川公彦

みなさん、こんにちは。

檜枝岐自然保護官事務所の前川です。

尾瀬には尾瀬沼と山の鼻の2箇所にビジターセンターがあります。そのうち福島県側のビジターセンターである尾瀬沼ビジターセンターが新築され、7月にオープンしました。

尾瀬沼ビジターセンターは当初昭和39年に設置され、昭和60年には建替え工事を行い、翌年の昭和61年にリニューアルオープンしました。旧ビジターセンターは尾瀬の自然情報のみならず、公園の利用やマナーといった幅広い情報を提供する利用拠点として親しまれてきましたが、30年以上が経過し、老朽化が進んできたため、今回の新ビジターセンターの開設となりました。

新ビジターセンターは旧ビジターセンターに隣り合って建設され、写真のように晴れた日には旧ビジターセンター越しに燧ヶ岳を望むことができるという恵まれた立地です。建物は旧ビジターセンターと同様に周りの景色になじむようなこげ茶色です。

新ビジター周辺から見た燧ヶ岳  正面から見た新ビジターセンター

 新ビジター周辺から見た燧ヶ岳             正面から見た新ビジターセンター

(画像はクリックすると拡大します)

では、まずテラスを通って、靴の泥をよく落としてから館内に入ります。入口正面の右側には尾瀬の天気予報やコースタイムなどの情報が表示されています。左側はリュックなどの荷物を収容するための大型の棚があり、山から下山した人でも利用することができます。建物に入るとすぐ右側には受付があり、尾瀬やこのビジターセンターに関して質問すれば、知識の豊富なスタッフが何でも親切に答えてくれます。左側を振り向くと、尾瀬周辺の山などに関する情報が掲示されていますので、これからどこか尾瀬周辺に向かう人にはとても役立ちます。

入口正面の様子 続々と来訪者が訪れます

 入口正面の様子                   続々と来訪者が訪れます

受付と常設展示コーナー 

 受付と常設展示コーナー              入口近くで尾瀬の情報を集める来訪者

入口からまっすぐに進むと常設展示コーナーがあります。ここは新ビジターセンターのメインの展示場所となります。まず最初に目にするのが正面に置かれている尾瀬のジオラマです。大変丁寧に作り込まれていますので、これを見れば自分がどこにいて、これから向かおうとする場所の位置関係や距離感を立体的につかむことができます。尾瀬という湿地の特殊な地形もよく分かると思います。

常設展示コーナーをジオラマから壁面に沿って時計回りに見ていくと、まず尾瀬国立公園や尾瀬の自然環境についての概要説明があり、尾瀬の成り立ちについては液晶スクリーンで視覚的に知ることができます。続いて、尾瀬の生きものたち(昆虫、両生類、魚類、野鳥、花)、尾瀬と人の歴史のパネルが展示されています。中央部の展示台の上にはさらにはキツネの剥製など尾瀬に生息する動物たちと、シカの皮や角が展示されています。また、このコーナーの最後には尾瀬の周辺情報のパネルがあり、周辺観光地の写真が展示されています。この写真は尾瀬近隣の市町村や関係団体から選りすぐりの写真を提供していただいたもので、これを見ると尾瀬周辺には本当にきれいな景色がたくさんあることに驚かされます。

常設展示コーナーを巡る来訪者 一番奥に設置されているキツネの剥製

 常設展示コーナーを巡る来訪者            一番奥に設置されているキツネの剥製

入口から左側に向かうと企画展示コーナーになります。ここではホワイトボードスクリーンを使って、オコジョとヤマネに関する情報を提供しています。両方とも非常にかわいい動物なので、尾瀬のアイドル的な存在です。貴重なオコジョの映像もあり、オコジョやヤマネに是非会いたいと思っている方はここで情報を仕入れていくのが良いと思います。

企画展示コーナーの奥にはレクチャー室兼休憩コーナーがあります。大型スクリーンや音響システムが設置されており、講演会などで活用する予定となっています。両側の壁には尾瀬でのベストショットの写真パネルが飾られており、尾瀬の自然を歩くことの楽しさが伝わってきます。

企画展示コーナーのオコジョとヤマネ レクチャー室兼休憩コーナー

 企画展示コーナーのオコジョとヤマネ         レクチャー室兼休憩コーナー

これまで旧尾瀬沼ビジターセンターにおいても、現在の尾瀬がどのような状態にあり、いつ、どこに行けばどのような動物や植物に会えるというような訪問者への対応やリアルタイムの情報発信がなされてきました。さらに定期的な自然観察会や自然ふれあいイベントを通じて、これまで数多くの方々に自然に親しむ機会を提供してきました。

このようなビジターセンターの活動は今後も新ビジターセンターにおいて引き継がれ、これまで以上にたくさんの方々に尾瀬の自然の素晴らしさに気付いてもらえるような活動を行っていきますので、皆様方のご来訪をお待ちしております。

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2021年06月30日山の花の都と言えば

尾瀬国立公園 前川公彦

みなさん、こんにちは。

檜枝岐自然保護官事務所の前川です。

花の都と言えば、東京かパリを思い浮かべる人が多いと思います。

では、山の花の都と言えば・・・?全国各地の山の名があがるものと思います。

先日、燧ヶ岳と会津駒ヶ岳に登る機会がありました。植物に詳しくない私ですが、途中たくさんの花々に出会うことができましたので、その一部をご紹介させていただきます。

まずは、赤系統の花からですが、イワカガミ(イワウメ科)は見るものをやさしく誘うように優美なビロードのドレスのようなヒラヒラが広がり、チョウやハチといった昆虫たちは思わず吸い寄せられて花の中心に集まってしまうのだろうなと思いました。

燧ヶ岳の湿原にて イワカガミ

 燧ヶ岳の湿原にて  イワカガミ

これはお分かりですね、有名な食虫植物のモウセンゴケ(モウセンゴケ科)です。尾瀬のような、酸性で貧栄養の湿原のミズゴケ群落の中に生育します。葉は円形で表面に赤褐色の腺毛が生え、粘液を出して小型の昆虫類を捕まえ、栄養としています。尾瀬のように栄養の少ない場所で生き残っていくための工夫だと思いますが、群生しているモウセンゴケを見ていると、栄養源となる昆虫類が少ないような気がして、少し心配になります。これ以外に本州では尾瀬だけに生育している葉の長さが4~5㎝もあるナガバノモウセンゴケがありますが、注意していなかったので見落としていたのかもしれません。

モウセンゴケ

 モウセンゴケ

花ではありませんが、山に登ると日当たりの良い場所でよく見かける「動く赤い点」です。ネットで調べてみるとタカラダニという名称が多いのですが、他にも名前が出ていました。基本的に人には無害と出ていましたが、確かにこのダニに噛まれたという話は聞いたことがありません。ただ、潰して服などに付着すると汚れたり不快な気分になったりするので注意が必要とのことです。

タカラダニ

 タカラダニ

ショウジョウバカマ(ユリ科)は紫の同系色でまとめた高級感あふれるユリ科の植物です。雪解け後すぐの枯れ色の湿原に急に出現するので、大変目立つ存在です。なんか近未来のデザインを予感させるような、ユニークな形です。

ショウジョウバカマ

 ショウジョウバカマ

尾瀬では森林内の日当たりの良いところに生息するオオタチツボスミレが最もよく見かけるスミレ類ということですが、名前のよく似たこのオオタチツボスミレ(スミレ科)は湿原に生息します。実際この写真も湿地の上の木道から撮ったものです。九州から北海道にかけて普通に分布するツボスミレに比べて、両者とも株全体が立っているためタチツボの名前が付けられたようです。ただ、スミレの分類は大変難しいと聞いていますので、今後スミレはあまり出現してほしくないなあと心の中では思っています。

オオバタチツボスミレ

 オオバタチツボスミレ

「竜胆」は何と読むでしょうか?「リンドウ」と読めた人はよほど植物か漢字に詳しい人だと思います。立山竜胆(タテヤマリンドウ:リンドウ科)も湿原を歩いているとよく見かける花です。なぜ、こんなに端正な花なのに「竜胆」なのかというと、姿形ではなく、根の苦みが強く、竜の胆ほどに苦いという例えから付けられた名前だそうです。竜の胆を嘗めた人はいないと思いますが、クマの胆を嘗めたことはありますか?私はかつて一度だけ、健康に良いからとツキノワグマの胆を嘗めさせてもらったことがあります。もう40年も前のことなのに、その強烈な苦味は今でも鮮明に覚えています。

タテヤマリンドウ

 タテヤマリンドウ

これはハウチワカエデ(カエデ科)のタネです。タネには羽のようなもの(翼果:よくか)が付いており、落下の際にタネ自体が回転して揚力が発生するため、遠くまで飛んでいくことができます。できるだけ遠くまで子孫を分散させて、より良い場所で生き残ろうという作戦ですね。

ハウチワカエデのタネ

 ハウチワカエデのタネ

タムシバ(モクレン科)も登山道を歩いていると巨大な白い花びらで目立つ存在です。花の大きさは拳ほどもあり、葉を噛むと甘みがあるためカムシバ(噛柴)と呼ばれたのが転訛してタムシバと呼ばれるようになったという説があります。遠くから見ると木にチリ紙がたくさん咲いているようにも見えることから、冗談でチリ紙の木と呼んだりする人もいます。花を近くで見ると大きくて迫力があります。

チリ紙が咲いているようなタムシバの木 迫力のあるタムシバの花

チリ紙が咲いているようなタムシバの木 迫力のあるタムシバの花

この可憐な白い花の群落を見たことがある人はいますか?オサバグサ(ケシ科)は日本の固有種で本州の中部地方以北に分布する1属1種のユニークな植物です。檜枝岐村の帝釈山や台倉高山では登山口付近から生息がみられ、毎年6月には尾瀬檜枝岐温泉観光協会主催の「オサバ草まつり」が開催されます。参加者には記念ピンバッチがプレゼントされ、多い日には数百人が訪れるほどの人気があります。以前より減少傾向にあるという話も聞きますが、この時期登山道を歩けばいくつも見つけることができます。特徴的なのは一緒に生息していることの多いシダ類と葉の形がそっくりなことです。

可憐なオサバグサの花  林床に生えるオサバグサ

可憐なオサバグサの花 林床に生えるオサバグサ

黄色円内がオサバグサの葉  オサバグサ記念ピンバッチ

黄色円内がオサバグサの葉        オサバグサ記念ピンバッチ

 今の時期、尾瀬やその周辺では山の花の都と言いたくなるような花々の開花が楽しめます。

次回は夏を迎えた尾瀬の様子をお伝えしたいと思います。

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2021年05月28日ミズバショウの尾瀬

尾瀬国立公園 檜枝岐 前川公彦

みなさん、こんにちは。

檜枝岐自然保護官事務所の前川です。

檜枝岐村の桜もほとんどは散ってしまいましたが、尾瀬ではミズバショウの花が咲き始めました。なんと言っても尾瀬のシンボルはミズバショウですので、シンボル化されたミズバショウは村内のいたる所で一年中目にすることができます。ちなみに事務所に飾られている尾瀬国立公園の旗はミズバショウですし、環境省の尾瀬のパンフレットにも同じシンボルマークが使われています。そういえば旧檜枝岐村役場の正面に掲げられているのもミズバショウですので、尾瀬にとってミズバショウはとても大切な存在です。

檜枝岐村入口に立つ尾瀬のシンボル 事務所に飾られている尾瀬国立公園の旗

檜枝岐村入口に立つ尾瀬のシンボル     事務所に飾られている尾瀬国立公園の旗

先週、尾瀬の中央にある尾瀬沼地区に行く機会があり、歩いている途中で咲き始めのミズバショウを見ることができました。雪の残る沼山峠から大江湿原に降りた頃には雪はほとんどなくなり、川や水たまりにたくさんのミズバショウが出てきていました。木道に沿ってミズバショウが生えているのは歩く人を歓迎してくれているように思え、何ともうれしい気持ちにさせられます。ここでは時期がまだ早いのか、小ぶりの花が多いと思いました。

木道の脇に咲くミズバショウ 樹木の下の水たまりに顔を出したミズバショウ

木道の脇に咲くミズバショウ        樹木の水たまりに顔を出したミズバショウ

また、御池から燧ヶ岳の裏側を通って見晴地区(尾瀬ヶ原)に行った際にも、途中の温泉地区を過ぎてからはたくさんのミズバショウに出会いました。尾瀬沼と比べて、見晴地区では開花が早いのか、こちらの花の方が大きく咲いていました。草原が広がる尾瀬ヶ原では、あたり一面に広がるミズバショウを楽しむことができました。特に見晴地区から至仏山に向かって歩くと、木道の周りのミズバショウに極楽浄土への道へと誘われているような気分になり、「至仏山の名前の由来はこういうことだったのか」と勝手に納得していました。

至仏山に至る木道周辺に咲くミズバショウ

至仏山に至る木道周辺に咲くミズバショウ

一面に咲くミズバショウの群落

一面に咲くミズバショウの群落

今回は動物に食べられたミズバショウを見ることはなかったのですが、調べてみると冬眠明けのツキノワグマは根茎を食べることがあるそうです。ただ、アルカロイド(毒性があり、服用すると吐き気、脈拍の低下、呼吸困難、心臓麻痺などを起こす)が含まれているので、食料というより、体内にたまった老廃物を排出するための嘔吐剤や下剤として利用しているようです。サトイモ科とはいえ、食用にはならないようです。

檜枝岐村を尾瀬方面に向かう途中に中土合公園があり、以前訪れた際には尾瀬沼よりも一足早くミズバショウが咲いていました。久しぶりに訪れてみると花はすっかり落ち、巨大なバナナのような葉が生い茂っていました。その迫力にミズバショウの生命力を感じました。

花が落ちたミズバショウの葉が茂る中土合公園の池

花が落ちたミズバショウの葉が茂る中土合公園の池

次回はシーズンを迎えた尾瀬の様子をお伝えしたいと思います。

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2021年04月16日檜枝岐村の春

尾瀬国立公園 檜枝岐 前川公彦

みなさん、こんにちは。

檜枝岐自然保護官事務所の前川です。

標高が千メートル近い寒冷地の檜枝岐ですが、近頃は路傍の雪もすっかり消え、陽の当たらない建物の陰や、村を取り囲む山のくぼみに僅かに残るのみとなりました。ストーブの火も入れたり入れなかったりで、気温の上昇が膚で感じられる季節です。今回は檜枝岐村の春をご紹介します。

先日、道を歩いていると「福寿草開花中」の黄色のノボリが何本か立っているのに気付きました。道路に面した山側斜面の小道を登っていくと、脇の畦にいくつかの小さな黄色の花やツボミの群落がありました。ほとんどの花はまだツボミで、開花にはもう少しかかりそうでした。その後、1週間ほどして再び福寿草苑(と名付けた場所)を通りかかると、かなりの数の花が開花していました。その開花後の姿がなんともユーモラスな、車輪や風車を思い起こさせるような形でした。私は植物のことを余り良く知らないのですが、ノボリには福寿草のある特徴が書かれていました。さて、この可憐な福寿草の意外な秘密とは何でしょうか?(答えはこのAR日記の最後に書きました。)

福寿草の花(左)とツボミ(右)

福寿草の花(左)とツボミ(右)

福寿草と違って地味な姿ですが、春の植物といえばツクシです。道路を歩いていると、やはり道路際の日当たりの良い場所にはニョキニョキ生えていました。ツクシのことも余り良く知らないので、調べてみると和名はスギナでした。地下茎で繁茂し、栄養茎をスギナ、胞子茎をツクシと呼ぶそうです。シダの仲間なので胞子で増え、日本では食用ばかりではなく、飲用や生薬としても利用されてきたようです。木賊(トクサ)という字を見たことがありますか?檜枝岐村のすぐ近くに温泉で有名な木賊という地区(南会津町)があり、先年の台風被害等により、残念ながら現在、川沿いの露天風呂である岩風呂は入浴できませんが、そのうち復旧したら温泉に行ってみたいと考えています。スギナはトクサ科の植物です。

陽当たりの良い地面から顔を出したツクシ

日当たりの良い地面から顔を出したツクシ

この時期、溶けた雪の下から出てくるのは灰褐色の地面や枯れた植物の葉や茎が多いのですが、その中で一輪、とても目を引く青い花を見つけました。この場所、時期には余り似つかわしくない色、形なので、おそらく以前に誰かが植えたか、どこからか種が飛んできた栽培植物ではないかと思います。ひときわ目立つ存在なので、思わず写真を撮ってしまいました。

ひときわ目を引く青い花

ひときわ目を引く青い花

檜枝岐では、4月1日から渓流釣りが解禁になりました。事務所のすぐ裏を流れる檜枝岐川でルアーを投げてみました。するとすぐに当たりがあり、結構大型のイワナがかかりました。檜枝岐川は渓流というには少し川幅が広く、開けている感じなので、餌釣りよりもルアーやフライの方が適しているように思います。川に沿って歩いて行くと、大きな淵がいくつもあり、きっと大物が潜んでいるに違いないと感じます。

檜枝岐川のイワナ

檜枝岐川のイワナ

先日、帰宅途中に大物に出会いました。カモシカです。村の人からはカモシカが自宅の庭に来て、なかなか逃げなかったような話は聞きますが、こんな近くで会ったのは初めてです。話に聞いているように、それほど人を怖がる様子もなく、ゆっくり道路を横断して不思議そうな目でしばらくこちらを見ていました。そのおかげでこちらもスマホを取り出して、撮影することができました。さすがはウシの仲間だと大いに納得しました。

こちらを見つめるカモシカ

こちらを見つめるカモシカ

(福寿草の秘密の答え:全体が有毒な草とのことです。)

次回は尾瀬の春をお伝えしたいと思います。

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2021年03月15日尾瀬新ビジターセンターの除雪作業

尾瀬国立公園 檜枝岐 前川公彦

みなさん、こんにちは。

檜枝岐自然保護官事務所の前川です。

先日、初めて尾瀬沼に行き、新設なったビジターセンター(開所式は7月の予定)での雪下ろし作業を視察しました。

檜枝岐村から尾瀬沼の入り口である沼山峠までは雪上車で移動しました。関係者8人が檜枝岐村の外れにあるミニ尾瀬公園駐車場に集合し、ここから先は除雪されていない国道を進みました。初めて乗る雪上車は絶えずキャタピラーの振動が伝わり、乗り心地が良いとは言えませんが、どんな雪道でも進めるという安心感がありました。途中、カモシカが道路を横切り、少し上がった所からじっと見下ろしていました。カモシカをみるのは初めてですが、案外人を怖がらないなという印象でした。以前、同じ雪上車でこの道を行くのに3時間もかかることがあったそうですが、今回は雪が締まっていたせいか1時間弱で沼山峠駐車場に到着しました。

ミニ尾瀬公園駐車場にて、出発前の準備中

     ミニ尾瀬公園駐車場にて、出発前の準備中

沼山峠駐車場で各人、スキーやスノーシューをはいて出発しました。歩き始めは登りですが、すぐに峠に到着し、そこからは下りとなりました。峠から大江湿原にはそのまま下っていきますが、スキーチームは右側に迂回しながら緩斜面を下りました。大江湿原に入ると平坦な雪原が広がっており、尾瀬沼もすぐそこでした。開放感に包まれ、尾瀬に来た喜びを実感しました。大江湿原を横切って沼に近づくと左手にいくつかの建物が見えてきました。最初に出会うのは長蔵小屋。尾瀬の自然に魅せられて、尾瀬に移り住み、その後は自然保護の大切さを強く訴えた平野長蔵さんのひ孫さんが経営されています。

雪の大江湿原を行く

     雪の大江湿原を行く

長蔵小屋の隣に立つのが新旧の尾瀬沼ビジターセンターです。積雪の状況から、今回は新ビジターセンターの屋根の雪下ろしをすることになりました。地上からの積雪は3m位ありましたが、屋根の上にも2mは積もっているように見えました。屋根の雪はまるでキノコの傘のように新ビジターセンターの屋根に覆いかぶさっていました。建物の周りは雪が少なく、屋根の雪は雪庇となっているので、下から近づくのは危険な状態でした。

新ビジターセンターの屋根に積もった雪の状態

     新ビジターセンターの屋根に積もった雪の状態

ワイヤーソーを用いて端から徐々に切断しながら、屋根の雪を下ろすことになりました。ワイヤーソーといっても、ここでは30㎝程度の間隔でインシュロックを固定(ノコギリの歯の役割を果たします)した30mくらいの化学繊維のロープを用いて、切りたい雪の両側からロープをノコギリのように動かして切断を行いました。大変力のいる作業で、ロープの両側2人ずつで作業を行いました。

ワイヤーソーを屋根の雪の上に回して作業開始

     ワイヤーソーを屋根の雪の上に回して作業開始

両側からワイヤーソーを互いに引き合うこと数分間、引き手の体力も限界に近づいてきた頃、突然屋根の雪が切断され、落下しました。数m離れて撮影していた私にもすごい風圧で飛び散った雪の断片が吹き飛ばされてきました。雪崩の風圧はすごいと聞いたことがありましたが、こんな小規模な雪の落下でもあれほどの風圧を感じたので、本格的な雪崩ではどれほどのものになるのか想像もつきませんでした。

積雪の一部をワーヤーソーで切断したあとの状態

     積雪の一部をワーヤーソーで切断したあとの状態

写真を見ていただくとお分かりになると思いますが、1回の作業で切断できる雪の量は全体からみるとほんのわずかです。これから4日間にわたり新ビジターセンターの雪下ろし作業が続きます。私たちは積雪状況や作業手順の確認を行ったので帰途につきましたが、残る方は旧ビジターセンターに泊まり込みで雪下ろし作業をします。これから帰途につくという時、尾瀬沼の上にも青空が広がり、その向こうには東北地方最高峰の燧ヶ岳がくっきりとその姿を見せてくれました。いよいよこれから尾瀬の春が訪れかと思うと、早くこの尾瀬沼を再訪したい気持ちでいっぱいになりました。

尾瀬沼の向こうに姿を現した燧ヶ岳

     尾瀬沼の向こうに姿を現した燧ヶ岳

次回は尾瀬沼の初春について報告の予定です。

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2021年03月12日尾瀬の福島側入山口、檜枝岐村

尾瀬国立公園 檜枝岐 前川公彦

みなさん、こんにちは。

檜枝岐自然保護官事務所に着任しました前川と申します、よろしくお願いします。

2月に着任しましたが、初めてのアクティブ・レンジャー日記を書かせてもらいます。

檜枝岐村は福島県西部の山合いにあり、尾瀬国立公園の福島側の入山口です。豪雪地帯で、この時期は雪深い閉ざされた環境になります。檜枝岐に来て最初に感じたのは積雪の多さです。朝起きたら、村人はまずスコップやスノーダンプで玄関前の除雪を行います。これは雪国の人々の一日の始まりの習慣です。除雪車も朝から除雪を行うので、車の通行には問題がありません。屋根に積もった大量の雪は時に一晩で1m近くにもなり、家がつぶれないように除雪をします。

朝早くから活躍する除雪車

朝早くから活躍する除雪車

雪下ろしをしない屋根にはこんなに積っています

雪下ろしをしない屋根にはこんなに積っています

檜枝岐のメインロードを歩いていて目立つのは、村の象徴でもあるカラフルな衣装をまとった六地蔵です。碑文を読むと、米もできないこの地では、かつての凶作時には餓死者が出て、たくさんの子供が含まれていたため、その霊を弔い、母の嘆きを慰めるために建立されたとあります。今では子宝、子育ての守護として参拝する人も多いそうです。通りがかりに六地蔵を拝む村人の姿を見ることもあります。話は変わりますが、檜枝岐村に来て感心したのは、通りを歩いていると、老若男女の村人から挨拶されることです。今の日本のほとんどの所では廃れてしまった古き良き習慣がここには息づいているように感じました。

通りに面して建つ六地蔵、時折拝んでから通り過ぎる村人の姿も目にします

通りに面して建つ六地蔵、時折拝んでから通り過ぎる村人の姿も目にします

村に来て、一番うれしかったのは温泉に恵まれていることです。村営の公衆温泉が3つもあり(一軒は現在休業中ですが)、しかも村内全戸に温泉水が供給されているということです。事実、私の入居する村営アパートの風呂も蛇口をひねると温泉が出てきます。雪景色を見ながらゆったり温泉につかっていると、自然を含めて檜枝岐村の豊かさを実感できるような気になります。

通りに面して建つ六地蔵、時折拝んでから通り過ぎる村人の姿も目にします

檜枝岐自然保護官事務所の隣にある「駒の湯」、暖まります

30分も歩けば、村落の端から端まで歩けてしまう檜枝岐村ですが、谷間にあるためなかなか全景が見渡せません。村の南にある中土合公園の展望台に登ると村全体が見渡せます。写真を見ていただくと檜枝岐村がいかに狭隘な山間部に位置しているかが分かるかと思います。

中土合公園展望台からの檜枝岐村全景

中土合公園展望台からの檜枝岐村全景

まだ雪の残る中土合公園に登ってみましたが、誰も登っていないため新雪のラッセルが大変でした。天気も良く、素晴らしい展望でしたが、ふと足下を見ると動物の足跡が・・・。誰もいない公園から村を静かに見下ろす動物の姿を想像すると、檜枝岐村が山の動物に見守られているような気になってきます。

中土合公園に残されていた足跡

中土合公園に残されていた足跡

次回は尾瀬沼に開設中のビジターセンターの雪下ろしについて報告します。

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