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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

尾瀬の冬支度

2021年11月04日
檜枝岐 前川公彦

みなさん、こんにちは。

檜枝岐自然保護官事務所の前川です。

前回、尾瀬の秋を紹介したばかりですが、尾瀬の冬の訪れは急でした。

地元檜枝岐では、先週の荒天で「山は雪だな」と話していたのですが、実際裏燧林道に行ってみると重い雪が積もっていました。この時期の木道ではスリップの可能性があります。特に木道上の雪が溶けた上にうっすらと積雪があったり、前の人の足跡に水分が滲んできているような状態は本当に滑りやすいです。経験のある方に聞いても、万全な対策は難しく、やはり最後は自分で滑らないように気を付けて歩くしかないということでした。いつものように裏燧大橋を通ろうとすると、両端の手すりが積雪対策のために取り外されており、少し怖い思いをしながら何とか渡り終えました。今の雪は半分みぞれ状態で、頭上の木からは時折、大量の水分を含んだ雪の塊の直撃を受けることがあるので注意が必要です。

初雪に覆われた裏燧林道 手すりが撤去された裏燧大橋

 初雪に覆われた裏燧林道  手すりが撤去された裏燧大橋

標高約1500mの御池から裏燧林道を通って、標高約1400mの見晴に出ると積雪量はかなり減り、草紅葉が表面に出ている状態になりました。この寒い中でもボランティアガイドによる自然観察会が開催され、数人の熱心な参加者がガイドの説明に聞き入っていました。翌朝は良く晴れましたので、スリップの起こりやすい木道上の除雪作業を行ってから桟木(サンギ)打ちを行いました。「桟木」というのは一般には屋根に瓦を引っかけるために使われている細長い木材のことを言いますが、尾瀬で桟木といえば木道でのスリップ防止のために設置する細長い木材を指します。写真で黒い木道に設置されている黄茶色の細長い木片が桟木です。歩行者は木道上でスリップしても、桟木に靴底が引っかかって止まるので、転倒などの事故の発生を減らすことができます。

ボランティアの自然解説に聞き入る参加者 木道上に等間隔に設置された桟木

ボランティアの自然解説に聞き入る参加者 木道上に等間隔に設置された桟木

桟木打ちが終わってから、来たのと同じ裏燧林道を引き返して御池に戻りました。天気が一転して晴天が広がり、気持ち良く裏燧林道を歩くことができました。樹木に積もった雪が落ち、雪の白さと空の青さの間で緑が映えています。小さな池塘では結氷が始まり、細かな氷片が水面を覆っていました。感触を確かめたくて、思わず水面に触れてしまいました。

白と青と緑と 細かな氷片に覆われた小さな池塘

白と青と緑と  細かな氷片に覆われた小さな池塘

尾瀬ではほとんどの山小屋が10月中に営業を終えます。今年開所した環境省の尾瀬沼新ビジターセンターも10月末で業務を終了しますので、施設の管理運営を委託している尾瀬保護財団や業者の方と閉所作業の準備を行ってきました。最初に手がけたのは、現在ビジターセンター職員の宿泊施設として利用されている旧ビジターセンターの雪囲いです。積雪の圧力で窓ガラスなどが破損しないように、窓枠周辺を木の板で囲みました。次に沼の湖岸に設置してある展望デッキは転落防止用の柱やロープを外して、積雪時の破損を防ぎました。最後に新ビジターセンターの正面を除いて雪囲いを行い、3~4mにもなる積雪から建物を守るための補強柱を立てていきました。乾燥や雪の圧力で曲がったりしている雪囲い板もありますので、どうしてもうまく入らない場合はノコなどで加工しました。これで本日の作業は終了しました。本日で閉所作業を終えた尾瀬沼ヒュッテの方達が目の前を通り過ぎ、「ご苦労さん」、「お世話になりました」、「来年もよろしく」とお互いに声を掛け合いました。

閉所作業を終えた旧ビジターセンター 柱やロープを外した展望デッキ

 閉所作業を終えた旧ビジターセンター  柱やロープを外した展望デッキ

閉所作業中の新ビジターセンター正面 閉所作業を終えた尾瀬沼ヒュッテ

 閉所作業中の新ビジターセンター正面  閉所作業を終えた尾瀬沼ヒュッテ

このように尾瀬では冬を迎える準備が着々と進められていますが、標高1660mの尾瀬沼と比べると檜枝岐事務所の標高は930mですので、本格的な冬の訪れはもう少し先のようです。

事務所の窓から見える風景 

事務所の窓から見える風景