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アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

関東地方環境事務所のアクティブ・レンジャーが、活動の様子をお伝えします。

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南アルプス国立公園

149件の記事があります。

2019年12月09日白峰三山、白くなりました

南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

朝晩の冷え込みが強くなり、ようやく冬らしさを感じられるようになってきました。下界から見る白峰三山も白くなってきたようです。晴れ間を狙って、夜叉神峠登山口から火事場跡(鳳凰三山縦走路の途中)まで歩いてきました。夜叉神峠は鳳凰三山縦走路の通過点になっており、頂上では日本第2位の高峰、北岳をはじめとする白峰三山を眺めることができるスポットで、登山口から約1時間で登ることができます。登山初心者の方にもオススメのトレッキングコースです。

夜叉神峠から見た白峰三山です。昨年よりも雪の付きが良く、白く輝いていました。間ノ岳の中心にある細沢カールにもしっかり雪が付いています。夜叉神峠周辺の木々は葉を落とし、物寂しい雰囲気もありましたが、白くなった白峰三山と雲一つない青空がよく映えていました。夜叉神峠までの登山道はうっすら雪が付いている程度なので、まだアイゼン等は必須ではないかと思います。

夜叉神峠から少し足を伸ばして火事場跡まで。ここ数日、冷え込みが強かったせいか、ふかふかの新雪を楽しむことができました。

今の段階では写真の通り積雪量は少なく、軽アイゼン等を使用しなくても歩ける状態です。今後、積雪量が増えたり、冷え込みによる凍結が考えられますので、軽アイゼン等を携帯するようにしてください。

登山道を歩いていると、雪がキラキラ綺麗!!思わず写真を撮っちゃいました。

太陽の光具合によっては宝石のようにキラキラ輝いていました。風が吹くと雪が舞い、寒さよりも綺麗だなぁ、という気持ちが大きかったです。とはいえ、気温は1度を切っていたので、長く立ち止まったり強く風が吹くと寒かったです。

10月の台風により、多くの方がご存じかと思いますが南アルプス山域は林道や登山道ともに大きな影響がありました。例年であれば年末年始営業をする山小屋もありますが、今年は営業をしない小屋も多くあります。計画をされる際は、各山小屋へ事前に問い合わせるようにしてください。

また、12月から山梨県の一部の山域で登山計画書の提出が義務になりました。

引用:山梨県警察

南アルプス山域内では以下の通りです。

白峰三山(北岳、間ノ岳、農鳥岳)、小太郎山、仙丈ヶ岳、甲斐駒ヶ岳、鋸山、アサヨ峰、鳳凰山、千頭星山、笹山(黒河内岳)、笊ヶ岳

詳細:https://www.pref.yamanashi.jp/kankou-sgn/tozan_sangakujouhou.html

登山計画書を提出することによって遭難したときの手がかりになり、早期発見に繋がります。夜叉神峠登山口入り口の東屋では登山計画書を提出できるようになっているため、現地での提出が可能です。ただ、各登山口に必ずしも登山計画書を提出できるようになっているわけではないので、事前に提出することが望ましいです。雪山登山の装備も大切ですが、登山計画書の提出もしっかりして、楽しく安全に雪山登山しましょう。

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2019年12月02日南アルプスとニホンジカ問題 その3

南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

2週間にわたりお伝えした「南アルプスとニホンジカ問題」も今回で最後となります。今回は南アルプス国立公園でどのようなニホンジカ対策が行われているのかお伝えしたいと思います。

1.防鹿柵の設置

防鹿柵(ぼうろくさく)とは、ニホンジカの食害を防ぐための柵です。防護柵、シカ柵、植生保護柵とも呼ばれます。南アルプス国立公園に設置されている防鹿柵は大きく3つに分けられます。

■夏季(初夏から晩秋のみ)設置、¨季節型¨

杭の中にポールを差し込み、ニホンジカが噛みちぎれない繊維のネットをポールにかけます。積雪量が多く、設置したまま越冬すると雪圧で杭やポールが曲がってしまうので、初夏に立ち上げ作業、晩秋に撤去作業を行います。主に北岳や荒川岳、茶臼小屋周辺に設置されており、南アルプス地域の中で最も多い形です。荒川岳にある防鹿柵は登山道を横切って設置されているため、開閉できる扉が付いています。

■背の低い¨こたつ型¨

設置方法は季節型と同じです。写真は撤去時で、ネットが上がっています。他の柵に比べて背が低いため、景観への影響が少ないです。主に北岳や荒川岳に設置されています。

1年中設置可能¨金属製柵¨


季節型やこたつ型と異なり、立ち上げ・撤去作業は不要です。ただ、雪圧で曲がってしまうので、メンテナンスは必要です。融雪直後でもすでに柵があるので、天候が悪くて立ち上げ作業ができない場合でも問題ありません。主に三伏峠や聖平に設置されています。

柵の効果について

この写真は聖平に設置されている柵です。柵内外で比べると一目瞭然。柵内は背丈が高く、多くの花が咲いているのに対し、柵外は刈り取られた芝生のようです。

この柵は南アルプス地域で最初に設置された柵です。かつてはニッコウキスゲが群落を作っていた地域ですが、ニホンジカの食害により消失。柵設置から4年後に株が発見されました。群落になるまではまだ時間がかかりますが、効果はしっかりと確認できています。

2.土壌流出防止策

前回の記事で土壌流出についてお伝えしました。南アルプス山域でもニホンジカの食圧や踏圧によって土壌流出している地域がすでにあります。最も被害が大きい場所が塩見岳東峰直下です。

  

左)奥は裸地化した斜面、手前は過年度マットを敷いた斜面

右)マット設置のようす

急斜面になっており、緑がない部分が目立ちます。塩見岳では土壌流出を防ぐために植物の繊維で作ったマットで地面を覆う対策を行っています。マットで覆うことで土壌が流れにくくなるほか、地面の温度変化が穏やかになり、飛んできた種から芽が出やすくなる効果もあります。

3.捕獲

上記で紹介した2つはニホンジカから¨守る¨対策でしたが、守るだけではニホンジカそのものの数は減りません。南アルプスではニホンジカの捕獲に対しても積極的に取り組んでいます。環境省だけでなく、林野庁や県、市町村も捕獲を実施しています。

  

夏季は登山者が多いので安全性を重視したわな猟を、マイカー規制後は銃猟を主として行っています。この地帯は急斜面が多いことや気象条件に大きく左右されるので、簡単に捕獲できません。また、捕獲した個体の搬出にも費用や労力を費やします。最近は目撃情報が減っているものの、被害は減っていない。つまり、人間が歩いていけないような場所で生活している可能性が高いです。学習能力が高く、年々捕獲が難しくなっていますが、狩猟者の皆さんには頑張っていただきたいです。獲った命を無駄にせず、活用するために山麓ではジビエ料理を提供しているお店があります。ニホンジカの肉は鉄分が多く含まれ、低カロリー高タンパクなので、オススメです。

防鹿柵や土壌流出防止策を行ってもすぐ元の景観に戻るわけではなく、ましてや元の景観に戻るかどうかも分からないですが、自分たちが見た自然を後世に残すためにもこのような地道な作業はとても大切だと思います。全国で大きな被害の原因になっているニホンジカですが、彼らも生き延びるために必死です。増えすぎたニホンジカの数を調整し、人間とニホンジカがうまく共生できる日がくることを願います。

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2019年11月28日南アルプスとニホンジカ問題 その2

南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

さて、前回の「南アルプスとニホンジカ問題 その1」に続き、今回ニホンジカがどのような被害を及ぼしているかについてお伝えしようと思います。

平成29年度の全国の鳥獣による農作物被害総額は約164億円、そのうちニホンジカによる被害額は約55億円にのぼります。約55億円と聞いてすでに驚きですが、これでも前年度より約1億円減少しています。

(農林水産省よりhttp://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/h_zyokyo2/h29/181026.html )

ニホンジカによる主な被害

■綺麗な高山植物が見られなくなる!?

   

先端がなくなっているのにお気づきでしょうか?左は北岳、右は易老岳で撮影しました。高山植物は融雪後、短い期間で発芽・展葉・開花、そして結実します。ニホンジカにとって、発芽直後や葉を付けた直後が1番食べ時のようで、この時期に採食されると、結実に至らない可能性が高くなります。高山植物の多くは多年草(同じ株から何年も枯れずに花を咲かせ続けることのできる植物のこと)ですが、結実し、種子ができないとなると種子を生産できなくなってしまい、やがて消失します。私たちが安全に登山できる時期には、茎だけが残り、開花している高山植物に出会うことができなくなってしまいます。

右の写真は有毒でニホンジカが食べないとされているバイケイソウです。先端がなく、上部の葉は茎に近いところまでなくなっています。最近では、ニホンジカが食べないとされている有毒の植物にも食痕が見られています。

■樹木を傷つける

前回の記事で¨ニホンジカは樹皮も食べてしまう¨とお伝えしました。写真は夜叉神峠です。1週間前の巡視では樹皮がついていたのに、この部分だけ綺麗さっぱりなくなっていました。このように樹皮が食べられた樹木はやがて枯れていきます。枯れて、根に元気がなくなり保水力が保てなくなると、大規模な土壌流出の恐れがあります。ニホンジカは樹木を食糧としているだけでなく、繁殖の時期になわばり争いをするオスたちが角を磨くために角を樹木に擦りつけて、剥がしてしまいます。

■土壌の流出

植物を食べ尽くしたニホンジカは落ち葉も食べるようになります。すると、地面が剥き出しになり、土壌が流出します。急峻な斜面ほど起こりやすいですし、地下浸透の機能もなくなってしまいます。強雨時は山の中腹から一気に崩れることもあります。裸地化した森林は再生がとても難しいです。

■生物多様性の低下

ニホンジカの食害により、まず、種類と植物が森林を多く面積が少なくなってきます。やがて、ニホンジカが好まない植物だけが残るようになります。

この写真は聖岳の薊畑というところです。ニホンジカの食害が出る前はお花畑が一面に広がっていましたが、今ではマルバタケブキが繁茂しています。(一部、防鹿柵で設置している区域もあります)

ニホンジカが食べない植物が残り、樹皮が剥がされ樹木がなくなっていくと植物の種類が単純になってきます。有毒の植物も食べ始めている今、植物の単純化どころか裸地化が進んでいる地域もあります。土壌が流出するとその場所で生活していた他の動物の居場所もなくなってしまいます。大型動物のえさとなる動植物も少なくなり、とても棲みにくい環境になってしまいます。

ニホンジカが増えている理由として、耕作放棄地の増加、狩猟者の減少が挙げられます。農村から人々が少なくなり、草食獣にとって無法地帯になってしまったことも大きな原因です。

街では大きな被害は見られないですが、里山や高山では上記以外にもさまざまな被害が見られます。

次回は全国各地で被害が確認されている中、3,000m級の山々が連なる南アルプス国立公園ではどのような対策を行っているのかお伝えしたいと思います。

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2019年11月18日南アルプスとニホンジカ問題 その1

南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

みなさんはニホンジカに対してどのような印象を持っていますか?

¨かわいい¨という印象や奈良のシカやバンビを連想される方も多いかと思います。都心に住んでいると野生のニホンジカにはなかなか出会うことができないので、¨珍しい¨と思う方もいらっしゃるでしょう。

そんなニホンジカですが、現在、国内で最も被害が大きい動物とされています。そもそもニホンジカってどんな動物なのか、どのような被害が出ているのか、実際に南アルプス国立公園行われている対策って具体的にどんなもの?など、数回に分けて詳しくお伝えしていきたいと思います。

1弾!ニホンジカってどんな動物?

■食べ物


ニホンジカは草食動物です。果物、穀物、野菜、落ち葉何でも食べます。高山植物や樹皮も食べてしまいます。個体差もありますが、メスは1日で5kg以上も食べるそうです。写真を撮影した時はコケのようなものを食べていました。

■毛

夏は1枚目の写真のような茶色に白い斑点模様。斑点模様は子どもだけでなく大人のニホンジカにも見られ、木漏れ日を模しているそうです。冬は無斑で濃い茶色になります。

■出産

1才半で大人になり、2才から出産します。2才からは毎年出産ができるようになります。

■季節移動する

南アルプス地域に生息するニホンジカは夏に高山帯に登り、冬は寒さや積雪を避けるため、標高が低いところに移動します。冬になると頻繁に目撃されるのは季節移動で下りてきているせいです。近年は暖冬で積雪量が少ないこともあり、4月下旬くらいには2,400m地点まで上がっている個体もいます。

■群れで行動する


ニホンジカはカモシカと異なり、単体で動くことはほぼなく、写真のように群れで行動します。気に入った場所にはしばらくの間滞在し、その場所の植物を食べ尽くしてしまいます。

■角

  

ニホンジカの角はオスのみ生えます。春から夏にかけて生えかわります。左の写真は角が落ちて角がない状態です。右の写真は角が生えていますが、黒くて丸く、いつも見る角と違いますよね。これは袋角といって、しっかりとした角が生えるまで皮膚で覆っている状態です。時間が経つにつれて皮膚が破け、白い角が見られます。

■学習能力が高い

例えば、ニホンジカを捕獲するために森の中にわなを設置したとします。10頭の内、1頭が捕獲できたとすると他の9頭は¨自分の仲間が捕まった、ここは危ない場所¨と、わなに対する警戒心を持つようになります。銃を用いた捕獲でも同様です。そういったシカをスマートディア(スレジカ)と呼びます。スレジカはわなが設置されていた周辺の道を通らなくなります。狩猟者は再び、ニホンジカが通っているシカ道を探し出さなければなりません。

ニホンジカの増加は南アルプス国立公園だけでなく、里山でも高山でも全国的に大きな被害をもたらしています。次回は具体的にどのような被害があるのかをお伝えしたいと思います。

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2019年11月13日北岳の登山者カウンター、撤去しました

南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

11月中旬に登山者カウンターの撤去作業を行いました。登山者カウンターの設置は平成22年から毎年設置しており、広河原から北岳山頂に続く、大樺沢ルート、白根御池小屋ルートにどれくらいの人が利用しているのかを調べています。

△登山者カウンターを撤去している房村自然保護官

今年は153日間、設置していました。153日間のうち、晴天日はかなり少なかったように思えます。平日でも雨が降ったり止んだり、週末になれば台風や雨量規制により林道が通行止めになってしまったり。登山計画を立てていた方でも天候不良により断念された方も多いと思います。日照時間が短かったせいか、登山者カウンターにも不具合が多くありました。これからデータをまとめて集計しますが、今年は林道の通行規制が多かったため、大樺沢ルートも白根御池小屋ルート、両ルートで入山、下山ともに少ないかと予想しています。

雲が多く、暗くなってしまっていますが、奥に見えるのは北岳です。左俣ルートは真っ白になっています。八本歯のコルにも雪がしっかり付いているのが分かります。フリースを着ていても肌寒さを感じたくらいなので、稜線部はかなり気温が低くなっていることでしょう。

北岳山頂付近は冬らしさが感じられましたが、広河原山荘から少し歩いたところではまだ綺麗に紅葉していました。

昨年の今頃はほぼすべての木々が葉を落とし、森の中はかなり視界が良くなっていましたが、今年はまた葉がたくさんついていました。地面には落ち葉のじゅうたんが所々にありました♪

山梨県、長野県のマイカー、車両規制が終了、野呂川広河原インフォメーションセンターも閉所し、開山前の静かな南アルプスになりました。台風直後は野呂川の流水がコーヒー牛乳のように濁っていましたが、1ヶ月ほど経ち、ようやく透明な水になってきました。登山者カウンターの撤去も終わり、わたし自身、今シーズンの広河原へ足を運ぶのは最後になりました。徐々に白くなる白峰三山を下界から眺めようと思います。

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2019年11月06日秋の荒川岳へ

南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

10月初旬に23日の行程で荒川岳の防鹿柵撤去作業へ行ってきました。今回の作業で撮影した写真をみなさんにご紹介したいと思います。

初日は雨風が強く、荒川小屋までの予定を急遽、千枚小屋停滞に変更。小屋の中にいてもとても風が強く、お手洗いへ行くにもやっとの思い。夜になると風の強さは変わらないものの、雲が取れて満点の星空を見ることができました。ダウンとフリースを着込んで寒さ対策万全で挑みました。

星空の撮影において、標高が高い場所での撮影は大きなポイントになっているそうで、空気の量が多いと天体の光を弱めたり、大気の揺らぎによって細かい部分が見えなくなってしまうことがあるそうです。プロが撮影するような綺麗な星空ではないですが、個人的には頑張って撮影しました!寒い中頑張って撮影して良かったです!

翌日は早朝から晴天。千枚小屋では玄関口から出ると目の前に富士山が見えます。この日はこれまでに見たことがない雰囲気の富士山を見ることができました。これぞまさに、日が昇る瞬間!!

日が昇ってくると山梨県の河口湖や静岡県の沼津の街や港、東京都の伊豆大島まで見渡すことができました。晴天が続くという予報を見て、わくわくした気持ちで千枚小屋を出発。千枚岳、悪沢岳(東岳)、中岳を経由して、防鹿柵が設置されている西カール底と前岳南東斜面を目指します。

悪沢岳を通過し、ガレ場を経てコルまで一気に下ります。この長い道のりを登った先に中岳があります。参加者の中には「ここに釣り橋があれば標高を下げずに中岳まで行けるのに!」とおっしゃっていた方も。悪沢岳から170mほど下り、コルから110mほど登ります。これだけの距離を上り下りすることを考えると、釣り橋が欲しいと思っちゃいますよね...

それにしても迫力があります。南部エリアに登って思うことはひとつひとつの山がとても大きく、毎回圧倒されます。北アルプスや北部エリアに比べて、山小屋が少なかったり間隔が広かったり、登山口に辿り付くまでに一苦労してしまうほどですが、山そのものに南アルプスの魅力がぎっしり詰まっていて個人的には大好きな山域です。

コルから中岳までの登りはただ登っているだけでなく、振り返ると悪沢岳、左手には赤石岳を眺めながら歩くことができます。夏はたくさんの種類の高山植物が咲いています。秋は秋で山の斜面の紅葉がとても綺麗です。

ウラシマツツジが綺麗に紅葉していました。赤く染まったウラシマツツジと空の青さが映えますね。綺麗に色付く紅葉に見とれて何度も足を止めて写真を撮影していたせいか一向に進めませんでした。

11月4日で芦安-広河原のバスの運行が終了し、南アルプスの山々に静けさが戻ってきました。今年度は、悪天候の日が続き、閉山間際には台風19号により登山道や林道に大きな影響を受けました。通常であれば長野県側の戸台-歌宿のバスが11月中旬まで運行していますが、林道の通行止めにより運行をしておりません。登山の計画を立てられている方はご注意ください。来シーズンは天候に恵まれて、多くの方が南アルプスの山々へ来ていただきたいと思います。

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2019年10月23日台風19号の爪痕

南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

各地で大きな被害をもたらしている台風19号が去ってから1週間ほどが過ぎました。事務所がある芦安を流れる御勅使(みだい)川では台風通過中は水量がかなり増え、流れもとても早くなっていたようです。台風通過後もご覧の通り。


普段はとてもきれいな水が流れ、岩などが見えるくらいの水量ですが、ここ数日は綺麗な御勅使川を見ることができていません。水量が増しているだけでなく、木が流されてしまっています。

被害は山の麓だけではありません。台風通過後の晴れた日に北岳に設置してある登山者カウンターの点検に行ってきました。

一見、なんの変化もないように見える登山道。広河原から北岳方面に登る際に必ず通過する登山道です。写真を拡大してみると小石がたくさん。そして、隙間を埋めるように流れてきている砂。白根御池小屋と大樺沢の分岐の間にはいくつか沢があり、登山道にあふれてあることはよくありますが、こんなに小石や砂が流れてくるほどの水量ではありません。台風通過中、この登山道が水の流れ道になってしまっていたようです。

北岳での主な被害は白根御池小屋経由の登山道が一部崩落(現在は通行可能)、大樺沢ルートの仮設橋が崩壊し、通行止めになっています。

ロープが引っ張ってあるだけなので、くぐれば通過できますが、大樺沢ルートは急流で渡渉をして通過できるような川ではありません。また、右岸も崩落により通行できないルートになっていますので、興味本位だとしてもくぐって大樺沢ルートへは行かないようにしてください。北岳山頂は白根御池小屋経由ルートを使って登山してください。

広河原インフォメーションセンターの前を流れる野呂川。北沢峠のほうから水が流れています。左は台風前に撮影したようす。右は通過後。見比べてみてください。

  

川のようすが変わってしまっています。川の真ん中に生えていた植物もすべて流され、土砂だけが残っています。河川の入り口が砂浜に変わってしまいました。台風通過中は川の一面を茶色の水で覆い、御勅使川と同様、石が見えないくらいの水量だったようです。山小屋のスタッフの方々は本当に恐ろしい思いをされたと思います。

今回の台風の影響で通行できなくなっている林道や登山道はとても多いです。とても有難いことにSNSで近状を発信している山小屋もあります。ただ、状況が変わっていることもあるかもしれないので、登山を計画されている方は事前に山小屋に確認をするようにしてください。

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2019年10月15日紅葉進む仙丈ヶ岳へ行ってきました

南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

10月初旬に仙丈ヶ岳へ巡視に行ってきました。標高3,033mの仙丈ヶ岳はなだらかで優雅な姿から「南アルプスの女王」と呼ばれています。南アルプスの山々の中でも比較的、危険な箇所が少なく、3,000m級の山デビューにおすすめの山です。

今年は紅葉の進みが遅いと言われていますが、高標高域では徐々に進んでいました。今回の巡視で見ることができた景色の一部をみなさんに紹介したいと思います。

■日の出と甲斐駒ヶ岳

今回の巡視は1泊2日。前日の夜に突如大雨が降り、翌日の天気がどうなってしまうのか、不安に思いましたが、起きてみるとこの景色。雲海が広がり、徐々に甲斐駒ヶ岳が赤く染まっていきました。遠くからでも目立つ甲斐駒ヶ岳の白さは、山全体が花崗岩に覆われているからです。仙丈ヶ岳が「南アルプスの女王」と呼ばれていることに対して、荒々しい山容からコアなファンからは「南アルプスの貴公子」と呼ばれているようです。

■日本のTOP3!

「日本で1番高い山はどこ?」と聞かれて、多くの方は「富士山」と答えることができるでしょう。では、「日本で2番目と3番目は?」と聞かれたら...悩んでしまう人が多いと多いと思います。日本で2番目に高い山は北岳、3番目は間ノ岳になります。(同位で北アルプスの奥穂高岳もあります)左にある色が薄い山が富士山、1番高く見えるのが北岳、右が間ノ岳になります。この仙丈ヶ岳からは1番、2番、3番を一緒に見ることができます!このような構図でTOP3を見ることができる場所は仙丈ヶ岳だけです!

■藪沢カールと紅葉のようす

南アルプス山域には2万年前頃に作られた氷河・周氷地形が残っています。カールは別名「圏谷(けんこく)」といい、氷河によって山頂付近が削られてできたもので、スプーンで削ったように丸みを帯びたゆるやかな谷地形が特徴的です。仙丈ヶ岳では小仙丈カール、大仙丈カール、藪沢カールの3つを見ることができます。ところどころ紅葉が進み、とても綺麗でした。カールの下にあるのは仙丈小屋です。今回の巡視では、仙丈小屋付近でライチョウファミリーに出会うことができました。ヒナも大きく育ち、冬支度を始めているようで、お腹の部分が少し白くなっていました。

■馬の背の紅葉と八ヶ岳

馬の背ヒュッテから仙丈小屋までの登山道を登り、ふと後ろを振り返ってみるとこの景色!うっすら見える八ヶ岳連峰と紅葉真っ盛りの馬の背の組み合わせがいいな、と感じました。この日の朝方は予報よりも天気が落ち着き、八ヶ岳を始め、南アルプスの山々はもちろん、北アルプスもよく見えました。

東日本に大規模な爪痕を残していった台風19号。南アルプス山域にもかなりのダメージを受けてしまった模様です。林道や登山道が崩れてしまい、通行のメドが立っていない場所もあります。しばらくは地盤が緩み、落石や崩落の危険性が高くなるかと思いますので、登山の計画を立てている方は本当に気をつけてください。台風の影響により営業期間を短縮し、営業が終了している山小屋もありますので、入山される前に状況を確認するようにしてください。

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2019年10月07日南アルプス初心者にオススメ!

南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

みなさんは『南アルプスの山』と聞いてどんなことを思い浮かべますか?「アクセスが悪い」、「歩行時間が長い」、「登山初心者向けの山がない」などが挙げられると思います。マイカー規制が始まる前の入山は長い時間林道を歩かなければならないですし、マイカー規制中ですと、バスの乗車時間に追われながらの登山になってしまいます。また、ルートによっては山小屋や山頂に着くまでの歩行時間が日帰りでは難しいところもあります。そのため、気軽に登ることはできず、重装備になりがちかと思います。

そんなあなたにおすすめの場所があります。こちらです!

看板の写真で、「なんだこれ!」と思う方もいらっしゃるかと思いますが、看板の真ん中に『仙水峠』と標記されているのがお分かりでしょうか?そうです、オススメの場所とは!仙水峠です。仙水峠の標高は2,264m。スタート地点である北沢峠の標高は約2,000mなので、標高差は300mもありません。3時間半もあれば往復することができます。長時間歩くことなく、南アルプスの自然を存分に味わうことができちゃいます!仙水峠は手軽に南アルプスを楽しめるだけではなく、他にも魅力がありますのでご紹介します。

■「南アルプスの天然水」を感じる

ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、南アルプスの山々では水が豊富です。南アルプスの麓にも甲斐駒ヶ岳を源流とする『尾白川渓谷』や鳳凰山・地蔵ヶ岳を源流とする『精進ヶ滝』などがあります。芦安から広河原へ来る間にもたくさんの滝がありますよね。とても水に恵まれている山域なのです。

川の底が見えるくらい透明度が高く、水温はとても低いです。また、山小屋の方が苦労してひいてくださっている水はどの小屋もとってもおいしいです。飲み比べてみてもいいですね。

■シラビソ林に広がるコケ

長衛小屋から仙水峠へ歩いていくとシラビソ林が広がります。木々の根元などいたるところからたくさんのコケたちがお出迎えしてくれます!


写真のように日が差すと光が当たっている部分のコケがとても美しいです。長期間雨が降らないとコケも水分を失ってひからびてしまいますが、この日は前日に小雨が降ったようでコケに瑞々しさがあり、美しさがさらに増していました。

■斜面にたくさんの岩石がごろごろ?

コケが美しい森を抜けるとびっくり!きっとこれまでに見たことがない世界が広がっています!


右を見ても左を見ても、上を見ても下を見ても岩石だらけです。この岩石は岩塊流(がんかいりゅう)と呼ばれ、氷期に凍結破砕作用で生産された岩屑が斜面下方へ移動し、後に細粒が流水によって除去されたために生じた地形のことをいいます。仙水峠は日本を代表する岩塊流の1つです。地質マニアの方にはたまらないスポットですね!南アルプスでは仙水峠のほかに、早川尾根上にある白鳳峠でも同じような地形を見ることができます。

仙水峠は栗沢山や早川尾根、甲斐駒ヶ岳の分岐点にもなっています。体力がある方は足を伸ばしてみても良いかもしれません。この周辺は長衛小屋を過ぎるとトイレがありません。そのため、携帯トイレを持参するようにしてください。紅葉シーズンを南アルプスで過ごしてみてはいかがでしょうか?

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2019年10月01日北岳、色づき始めました

南アルプス国立公園 南アルプス 本堂舞華

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

秋晴れを狙って、925日に北岳へ行ってきました。3日間ほど晴れの日が続く予報ですが、この日は週の半ばだったこともあり、すれ違う登山者は両手で収まるほどの人数でした。

3週間前にも二俣周辺の巡視へ行きましたが、3週間で景色が変わりました!

  

9/6撮影                    △9/25撮影

25日撮影のほうが少し低い地点からの撮影になっていますが、ほんのり色付いているのがお分かりでしょうか?すこーしオレンジ色っぽくなっていますよね。標高が高いところではもっと綺麗に色付いているのかもしれません。

ここ数日でかなり冷え込み、標高が高い山小屋では¨バケツに氷が張った¨との声をちらほら聞きます。下界ではまだ半袖で活動していられますが、立ち止まる時間が長いと寒さも感じられます。朝晩の冷え込みも夏季シーズンと異なり、寒くなっているので暖かい服装で登るようにしてください。

山は紅葉が進んでいるというのに、二俣では高山植物を楽しむことができました。数は少ないですが、元気よく咲いている子たちを紹介します!

【ヤマハハコ】

先端に白と黄色のドライフラワーのような花を付けます。二俣周辺にたくさん見かけます。漢字では「山母子」と表します。ミネウスユキソウに似ていますが、咲いている標高や花弁に大きな違いがあるので、区別は付くかと思います。

【タカネナデシコ】

花弁の先端が細く、深く糸のように裂けています。形がユニークで一度見たら忘れない形です。鮮やかな色をしているので、お花畑の中でも一際目立ちます。この花を初めて見たとき、とて目立っていて惹きつけられたのを覚えています。

他にも以前の日記で紹介した¨オヤマボクチ¨や黄色い大きな花を付ける¨キオン¨、秋の訪れを感じさせる¨トリカブト¨が咲いていました。展望がないときは足元に注目して登ってみてくださいね。

今日から10月ですね。南アルプスはあと1ヵ月ほどで閉山です。南アルプス南部では多くの山小屋が営業を終えました。また、10月中旬には北部の山小屋でも営業を終了する小屋があります。登山の計画をされる方は泊まる予定の山小屋に事前に連絡してみるのがよいでしょう。昨年は10月に北岳でまとまった降雪がありました。今年はいつ頃から降り始めるのか楽しみです♪

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