アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
仙丈ヶ岳のニホンジカによる被害
2020年09月08日みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
8月下旬に仙丈ヶ岳にニホンジカの食害状況確認と環境省事業で設置している防鹿柵の確認に行ってきました。
登山道に入ってすぐ、さっそくニホンジカの痕跡を見つけました。
若干、写真がブレていますが、ニホンジカの糞です。周辺にもぽつぽつと落ちており、このあたりを生活圏として利用している様子が伺えました。
仙丈ヶ岳は、「花の仙丈」と呼ばれ、シナノキンバイが群落を形成し、斜面を彩っていましたが、ニホンジカの食害が見られるようになってからはご覧の通り。
植物は生育しているものの、不嗜好植物(ニホンジカが好まない植物)であるマルバタケブキが咲いていて、場所によっては綺麗に整備された芝生のようになっています。「花の仙丈」とはほど遠い状況になってしまっています。
1日目は糞や食害、樹皮剥ぎなどが見られる中、肝心のニホンジカの姿を確認できないままでしたが、2日目に仙丈ヶ岳を代表するカール(圏谷)の1つ、小仙丈カールでニホンジカを見つけました。
どこにいるでしょう。クリックすると画像が多少、大きくなるので探してみてください。
見つけられましたか?
3頭のニホンジカがいます。見つけたときは下草を食べていましたが、こちらに気づいたようでこのあと樹林の中に逃げていきました。私はカールの中にいるニホンジカを見たのは初めてだったので、衝撃的でした。登山者の利用や山小屋関係者の常駐がない今年は、ニホンジカにとっては楽園になっているようです。
仙丈ヶ岳には環境省事業で、5基の防鹿柵を設置しています。防鹿柵の効果は一目瞭然です。
植物の高さや種類が全く違います。防鹿柵の中にはオヤマリンドウやウサギギク、ハクサンフウロ、ミヤマバイケイソウなどが咲いていました。環境省以外にも林野庁や信州大学、長野県、伊那市等の11機関で構成されている南アルプス食害対策協議会が設置している防鹿柵もあります。時間がかかっても、いつの日か、以前のような「花の仙丈」に戻ってくれることを祈ります。