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関東地方環境事務所

アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]

ニホンジカ対策 ¨攻め¨の取り組み

2020年11月05日
南アルプス

みなさん、こんにちは。

南アルプス自然保護官事務所の本堂です。

南アルプス国立公園の大きな課題として、ニホンジカによる食害や踏圧による被害があげられます。これまでにも、被害状況の調査や、防鹿柵や伏工の設置作業の様子を掲載してきました。掲載してきた対策は¨守り¨の取り組みが多いですが、防鹿柵や伏工では高山植物を守ることはできても、ニホンジカそのものの数を減らすことはできません。南アルプス国立公園では、¨攻め¨の取り組みである、捕獲も積極的に実施しています。南アルプス自然保護官事務所では国立公園内の林道沿いで、山麓などの周辺では林野庁や県、市町村などが捕獲を行っています。

南アルプスの高山植物を食べるニホンジカは雪解けや植物の芽吹きに伴い、5月から6月頃に高山帯へ移動し、降雪が始まる10月中・下旬頃に標高が低い場所へ移動します。『高山帯にいるニホンジカの捕獲は高山帯で行うほうが効率的ではないか?』と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、高山帯での捕獲は登山者の安全確保、変わりやすい気象条件への対応、捕獲した動物をどのように処理するかなどの課題が多くあります。そのため、標高を少し下げ、季節移動のタイミングを狙って、車でアクセス可能な場所で捕獲しています。

手法は安全性に考慮した足くくりわなを用います。足くくりわなはけもの道などに設置し、わな上を通過すると、わなが作動する仕組みになっています。けもの道は平坦な道だけでなく、写真のような急斜面にも見られます。南アルプス山域一帯の林道は平坦な場所が少なく、急斜面や足場が悪い場所が多いです。

ニホンジカの特性として学習能力が高いことがあげられ、一度捕獲された場所での捕獲は難しいと言われています。また、その年の気候や天気に大きく影響されるため、簡単には捕獲できません。

南アルプスは山深いため、捕獲した個体の搬出にも費用や労力を費やします。大きいもので100キロを超える個体もいます。


命を無駄にしないためにも、ジビエ料理として提供したり、毛皮や角を名刺入れやアクセサリーにするなど、利活用する動きもあります。

高山のニホンジカ問題は遠くの問題としてとらえられがちですが、高山帯の生態系だけでなく、里山での農林業被害も非常に多いです。最近では市街地にも現れるようになり、行動範囲を広げています。ただ、ニホンジカも生きるために必死です。ニホンジカと生態系のバランスが保てるように、ヒトとの共生ができる環境が作れるように、どのような対策を行うべきか、日々考えていきたいです。