アクティブ・レンジャー日記 [関東地区]
南アルプスの山々にまつわる歴史や信仰
2018年12月04日みなさん、こんにちは。
南アルプス自然保護官事務所の本堂です。
突然ですが、みなさんは南アルプス登山の歴史がいつ頃から始まっているかご存じでしょうか?南アルプス登山の歴史は平安時代、鳳凰三山へ修験者が登山したことが始まりと言われています。南アルプスの山々は人里離れた奥深い自然地域ですが、古くから信仰の対象となっており、人々との関わりがありました。今回はその歴史・信仰をみなさんにお伝えしたいと思います。
■夜叉神峠(やしゃじんとうげ)
△夜叉神峠にある祠
昔、甲斐の国の水出川(みでいがわ)といえば山崩れや大洪水を起こす、国一番の暴れ川でした。芦安村の人々は常にこの川に悩まされていて、その源には凶暴な夜叉神が棲んでいるといわれるようになりました。度重なる災害を朝廷に奏上したところ、天皇は勅使を出し、夜叉神を鎮めるため村が一望できる現在の夜叉神峠に村人とともに祠を建ててお祈りしました。以来、この川は静まり、人々は安心して暮らせるようになり、水出川も「御勅使川(みだいがわ)」と呼ばれるようになりました。
引用:「南アルプス 歩きながら覚える 夜叉神峠・鳳凰三山の高山植物 コラム:夜叉神峠の由来」より
編集:特定非営利活動法人 芦安ファンクラブ
神様の名前がそのまま峠の名前になっているということが驚きですよね。この祠は夜叉神峠を少し鳳凰三山方面へ進むと右手に見えてきます。白峰三山を楽しみながら、祠にもお祈りしてみてはいかがでしょうか。
■子授け地蔵伝説【鳳凰三山・地蔵ヶ岳】
△地蔵ヶ岳山頂直下にあるお地蔵さん
赤抜沢の頭と地蔵ヶ岳間の「賽の河原」と呼ばれる開けたところにお地蔵さんがあることをご存知でしょうか?このお地蔵さんは子授けのために地蔵ヶ岳に登拝した夫婦が、奉られている地蔵を1体持ち帰り、お願いがかなうと2体にしてお礼の登拝をしていたということで知られています。山梨県韮崎市の山岳会「白鳳会」では、「子授け信仰」を後世に継承するため、地蔵を山頂に運び上げる活動を続けています。1980年代に始まり、これまでに約20体を安置しているそうです。
参考記事:http://sannichi.lekumo.biz/ashiyasu/2015/06/post-2c15.html
■駒ヶ岳信仰【甲斐駒ヶ岳】
△山頂にある祠
甲斐駒ヶ岳は、江戸時代に信州人、今右エ門の次男 小尾権三郎という人によって現在の北杜市側の黒戸尾根から開山されました。黒戸尾根の登山道上にはところどころに剣や記念碑があります。麓の駒ヶ岳神社を拠点に駒ヶ岳講が盛んに行われ、現在でも駒ヶ岳神社では白装束の講者たちが般若心経を唱えて参拝したあと山頂を目指すという、講中登山が引き継がれています。
景色や高山植物を楽しみながら登ることも楽しみ方の一つですが、歴史や信仰を学んで登るのもまた新たな楽しみ方の一つになるのではないでしょうか?同行者にハナタカな一面を披露できること間違いなしですね!